こんにちは、つみれです。
ミステリー好きな私が、「2021年に読んでおもしろかった国内ミステリー小説」についてランキング形式でまとめました。
それでは、さっそく書いていきます。
ランキングは2021年に単行本が刊行された作品のみとなっています。
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目次
2021年に読んでおもしろかった国内ミステリー小説!
2021年はミステリー大豊作の年で、おもしろい作品がたくさん刊行されました。
そのなかから私のおすすめ10作品を紹介していきます。
【10位】『テスカトリポカ』/佐藤究
2021年に読んでおもしろかったミステリー第10位は、佐藤究さんの『テスカトリポカ』。
麻薬カルテルの抗争や臓器売買などが描かれるアングラ感マックスの長編クライムノベルです。
本作は第165回直木賞受賞作です。
- バイオレンスな作品を読みたい
- 麻薬カルテルや臓器売買を題材にした小説が読みたい
- アステカ文明に興味がある
- 直木賞候補作が読みたい
本作の主人公は、壊滅したメキシコの麻薬カルテル元幹部「バルミロ・カサソラ」と、類まれな腕力と手先の器用さを持つ日本の青年「土方コシモ」の二人です。
彼ら二人を中心に据えつつ、さまざまな人物の視点を切り替えながら闇社会の事情を群像劇的に描いていく展開が本作の魅力。
特にメキシコ育ちのバルミロはメソアメリカ流の犯罪美学とアステカの呪術的精神を持ち合わせており、その残虐さも超一級品です。
とにかく迫力あるバイオレンスな描写がひときわ目立ちます。
バイオレンス系が苦手な私ですが、それでもよく練られた骨太な物語がおもしろくてついつい惹きこまれてしまいました。
また、ルビ(振り仮名)の振り方ひとつとってもメキシコ感・アステカ感の演出としてすばらしく、細部に至るまで作者のこだわりが感じられる一作でもありましたね。
▼『テスカトリポカ』詳細記事
作品情報
書名:テスカトリポカ
著者:佐藤究
出版:KADOKAWA(2021/2/19)
頁数:560ページ
【9位】『おれたちの歌をうたえ』/呉勝浩
2021年に読んでおもしろかったミステリー第9位は、呉勝浩さんの『おれたちの歌をうたえ』。
古い友人の残した暗号を、元刑事の男が過去の2つの時代の回想を交えつつ解き明かしていく長編ミステリーです。
本作は第165回直木賞ノミネート作です。
- とにかく先が気になるミステリーが読みたい
- 一風変わった友情の物語を楽しみたい
- 昭和・平成・令和の3時代に渡る物語を味わいたい
- 直木賞候補作が読みたい
本作のおもしろいところは3つの時代がそれぞれ異なる味わいで描かれていること。
基本的に物語の主軸を令和元年(2019)に置きながら、昭和51年(1976)の回想・平成11年(1999)の回想を交える形で、とある事件の真相に迫っていく構成になっています。
各時代の役割・位置づけは下記の通り。
- 昭和51年:メインキャラ5人のきらきらした過去と大きな謎の出発点を描写。
- 平成11年:どこかやさぐれてしまったメインキャラたち。昔の仲の良かった関係には戻れない印象。
- 令和元年:昭和の物語で発生した謎を解き明かすことに主眼が置かれた解決編。
序盤に大きな謎が提示され、3つの時代を切り替えながら少しずつ真相に迫っていく展開がめちゃくちゃおもしろいです。
私は徹夜で一気読みしてしまいました。
「謎解き」という面から見ると弱いところはありますが、序盤に提示される謎の牽引力と、時代の経過とともに変わっていくメインキャラの関係性に注目の一冊です。
▼『おれたちの歌をうたえ』詳細記事
作品情報
書名:おれたちの歌をうたえ
著者:呉勝浩
出版:文藝春秋(2021/2/10)
頁数:608ページ
【8位】『invert 城塚翡翠倒叙集』/相沢沙呼
2021年に読んでおもしろかったミステリー第8位は、相沢沙呼さんの『invert 城塚翡翠倒叙集』。
話題になった『medium 霊媒探偵城塚翡翠』の続編で、本作は「倒叙ミステリー」が3編収録された短編集となっています。
倒叙ミステリーとは、「最初から読者に犯人が明かされているミステリー」のことです。
- 前作『medium 霊媒探偵城塚翡翠』がおもしろかった
- 倒叙ミステリーが好き
- キャラクターが魅力的な作品が好き
前作『medium 霊媒探偵城塚翡翠』は、死者の言葉を伝えることができる少女・城塚翡翠が、その「霊媒能力」を駆使して事件を解決していく怪作ミステリーでした。
詳細はネタバレになるのでここでは書けませんが、この前作『medium』は発売当時「続編不可能」と言われた特殊な作品。
『medium』はかなりの衝撃作でした!
にもかかわらず、その壁を「倒叙」という武器を引っさげて乗り越え、満を持して発表されたのが本作『invert 城塚翡翠倒叙集』です。
短編が3編収録されている短編集で、その3編ともに倒叙ミステリー。まさに「倒叙集」の名に恥じない一冊といえます。
各編のおもしろさもさることながら、「続編不可能の壁をどのように乗り越えたのか」が最大の見どころなので、前作から続けて読んでもらいたいです。
というか、むしろ前作を読まなければ本作のおもしろさは半減すると言っても過言ではありません。
読む順番が極めて大事です。
▼『invert 城塚翡翠倒叙集』詳細記事
作品情報
書名:invert 城塚翡翠倒叙集
著者:相沢沙呼
出版:講談社(2021/7/7)
頁数:434ページ
【7位】『大鞠家殺人事件』/芦辺拓
2021年に読んでおもしろかったミステリー第7位は、芦辺拓さんの『大鞠家殺人事件』。
昭和初期、いまだ丁稚奉公の風習が根強く残る大阪船場の商家「大鞠家」で起こる連続殺人を描く長編ミステリーです。
- 戦時中が舞台のミステリーを読みたい
- 昭和初期の独特の雰囲気が好き
- 商人文化・町人文化に興味がある
本作の舞台「大鞠家」は大阪の船場というエリアにあり、外にいる人間にはわからない価値基準に支配されたかなり特殊な空間に位置しています。
大鞠家は江戸時代以来の「丁稚奉公」の風習に囚われていて、物語序盤から独特の世界観全開!
プロローグで語られる2つのエピソードも非常に不気味で、大鞠家が巻き込まれるその後の惨劇を暗示するような不穏さに満ちています。
また、トリックも独特の舞台「船場商家の大鞠家」であるからこそ成立するオリジナリティあふれたものとなっており、そのオンリーワンのおもしろさに思わず唸りましたね。
序盤の展開がやや単調でとっつきにくくはありますが、これも独特の要素が多い本作を理解するために大切な箇所。
じっくりと腰を据えて味わうことをおすすめいたします。
▼『大鞠家殺人事件』詳細記事
作品情報
書名:大鞠家殺人事件
著者:芦辺拓
出版:東京創元社(2021/10/12)
頁数:368ページ
【6位】『黒牢城』/米澤穂信
2021年に読んでおもしろかったミステリー第6位は、米澤穂信さんの『黒牢城』。
戦国武将の荒木村重が籠城中に直面する事件の謎を、捕虜となった敵将・黒田官兵衛が牢のなかから解き明かしていく一風変わった安楽椅子探偵ミステリーです。
本作は第12回山田風太郎賞受賞作です。
- 戦国時代を舞台にしたミステリーが読みたい
- 戦国武将「荒木村重」「黒田官兵衛」が好き
- 「安楽椅子探偵」もののミステリーが好き
- 直木賞候補作が読みたい
本作のすごいところは歴史小説的な舞台に本格ミステリー的な謎解き要素を取り入れた点。
そしてなんといっても戦国時代きっての謀将・黒田官兵衛の扱い方のオリジナリティです。
織田信長に対し謀反を起こした荒木村重を翻意させるため、黒田官兵衛は単身で村重の居城・有岡城を訪ねます。
しかし村重はその説得に応じなかったばかりか、官兵衛を捕らえ城内地下の土牢に幽閉してしまいます。
この史実を利用し、牢のなかにいる黒田官兵衛を「安楽椅子探偵」に見立てて、有岡城中の荒木村重が直面する謎を解かせてみせたのが本作です。
歴史小説とミステリー小説をキワモノ的にくっつけたのでなく、まったく違和感を感じさせないレベルで両ジャンルをかけ合わせているバランス感覚が見事!
歴史小説としてもミステリー小説としても大変に完成度が高いおすすめの一冊ですよ。
▼『黒牢城』詳細記事
作品情報
書名:黒牢城
著者:米澤穂信
出版:KADOKAWA(2021/6/2)
頁数:448ページ
【5位】『密室は御手の中』/犬飼ねこそぎ
2021年に読んでおもしろかったミステリー第5位は、犬飼ねこそぎさんの『密室は御手の中』。
怪しげな新興宗教団体の総本山で起こる密室殺人の謎を解くミステリー小説です。
- 本格ミステリーが好き
- 密室もののミステリーが読みたい
- バチバチの論理バトルを楽しみたい
本作はタイトルからも想像できる通り、密室トリックがテーマのミステリー小説です。
特に最初に起きた事件の現場は目を覆いたくなるほど凄惨で、思わず「一体何が起こった!?」とつぶやいてしまいそうになるほど。
これが実に前代未聞のトリックで、この衝撃を味わうだけでも一読の価値がありました。
物語終盤では、複数の人物が自分の推理を怒涛の如く披露しあうバチバチの論理バトル展開を迎えます。
この論理バトルによって、事件の真相が二転三転していくのが最高におもしろすぎる一冊です。
また、本作は犬飼ねこそぎさんのデビュー作。今後も大注目の作家さんになりそうですね!
▼『密室は御手の中』詳細記事
作品情報
書名:密室は御手の中
著者:犬飼ねこそぎ
出版:光文社(2021/7/28)
頁数:320ページ
【4位】『六人の嘘つきな大学生』/浅倉秋成
2021年に読んでおもしろかったミステリー第4位は、浅倉秋成さんの『六人の嘘つきな大学生』。
新進気鋭のIT企業の最終選考で、優秀な就活生六人の仮面が次々と剥がれ落ちていく不穏なミステリー小説です。
本作は第12回山田風太郎賞ノミネート作です。
- 就職活動で苦労した経験がある
- 不穏な雰囲気の物語が読みたい
- 二転三転する物語が好き
最初、この企業の最終選考はなごやかに進むはずだったのです。
しかし、学生たちはディスカッション中の会議室にいつの間にか六通の不審な封筒が置かれていることに気づきます。
封筒には六人の最終選考のメンバー一人ひとりの名前が書かれていました。
学生の一人が封筒の一つを開けると、なんと中には宛名に書かれた人物が「人殺し」であることを告発する紙片と、その事実を証明する複数の写真が入っていたのです。
それを皮切りに六人の学生たちそれぞれがいままで見せていた爽やかさを裏切るような、メンバーたちの「嘘」が次々に露わになっていきます。
最終選考の最中の不穏な雰囲気もさることながら、「誰がどういう目的でこの封筒を置いたのか?」という謎解きのおもしろさにも注目の一冊です。
▼『六人の嘘つきな大学生』詳細記事
作品情報
書名:六人の嘘つきな大学生
著者:浅倉秋成
出版:KADOKAWA(2021/3/2)
頁数:304ページ
【3位】『蒼海館の殺人』/阿津川辰海
2021年に読んでおもしろかったミステリー第3位は、阿津川辰海さんの『蒼海館の殺人』。
台風による洪水で館が孤立し、そのなかに主人公たちが閉じ込められてしまうクローズドサークル・ミステリーです。
クローズドサークル:外界との往来・接触が断たれた状況のこと。
あるいはその状況下において起こる事件を扱った作品のこと。
物語としては、前作『紅蓮館の殺人』の直後の事件が描かれています。
- 本格ミステリーが好き
- クローズドサークルものを読みたい
- 複雑な謎解きに挑戦したい
- 圧巻の解決編を堪能したい
- 前作『紅蓮館の殺人』の続編を読みたい
『蒼海館の殺人』の魅力は、なんといっても洪水によって館が孤立するという状況そのものです。
普通の館ミステリーであれば、館内に潜む殺人者にだけ気をつけていれば安全を確保できます。(それが難しいのですが)
ところが本作は水が館を取り囲んでいる上、降り続ける大雨によって次第に水位が上がっていくという状況。
つまり、ただ待っているだけでは犯人を含む館内の人物全員が溺死してしまうのです。
下記のダブルパンチで楽しませてくれるわけですね。
- 天災による外からの恐怖
- 館内の殺人者による内からの恐怖
「タイムリミット系クローズドサークル」とでも呼ぶべき趣向が最高におもしろい作品です。
▼『蒼海館の殺人』詳細記事
前作『紅蓮館の殺人』が気になる場合は、ぜひ下記の記事を読んでみてくださいね。
▼『紅蓮館の殺人』詳細記事
作品情報
書名:蒼海館の殺人
著者:阿津川辰海
出版:講談社タイガ(2021/2/16)
頁数:640ページ
【2位】『兇人邸の殺人』/今村昌弘
2021年に読んでおもしろかったミステリー第2位は、今村昌弘さんの『兇人邸の殺人』。
テーマパーク内に建設された不気味な建物「兇人邸」の調査に訪れたメンバーたちが、邸内に閉じ込められるクローズドサークル・ミステリーです。
また、「屍人荘の殺人シリーズ」の第3作目に当たる作品でもあります。
- クローズドサークルが好き
- パニックホラーが好き
- 特殊設定ミステリーが好き
- 前作『魔眼の匣の殺人』の続編を読みたい
本作のおもしろいところは、普通のクローズドサークル・ミステリーにはない特殊な要素があること。
なんと兇人邸内を「常人の運動能力をはるかに超えた首斬り殺人鬼」が闊歩しており、人間が近づくだけで襲ってきます。
さらに首斬り殺人鬼以外によるものと思しき殺人まで発生。
邸内に閉じ込められたメンバーは誰が裏切者なのかわからず、互いに疑心暗鬼に囚われていきます。
兇人邸に閉じ込められたメンバーは、首斬り殺人鬼と裏切者の両方を警戒しながら脱出を目指していくことになるわけです。
単なるミステリーではなく、パニックホラー的な要素があってスリル感抜群なのが最高な一冊です。
▼『兇人邸の殺人』詳細記事
上にも書きましたが、『兇人邸の殺人』は「屍人荘の殺人」シリーズの第3作目に当たる作品。
第1作目から順番に読んだほうが物語を深く味わえますよ。
▼「屍人荘の殺人」シリーズの読む順番紹介記事
作品情報
書名:兇人邸の殺人
著者:今村昌弘
出版:東京創元社(2021/7/29)
頁数:368ページ
【1位】『硝子の塔の殺人』/知念実希人
2021年のマイベストミステリーは、知念実希人さんの『硝子の塔の殺人』です。
本作は、雪山にそびえ立つ奇妙なガラスの塔で起こる連続殺人事件の謎を、名探偵と医師のコンビが追っていくクローズドサークル・ミステリー。
私が2021年に読んだクローズドサークルもののなかで、「閉ざされた空間でのパズル的な謎解き」を最も純粋に楽しませてくれた一作です。
- 本格ミステリーを読みたい
- 「館もの」のミステリーを読みたい
- 密室トリックが好き
- クローズドサークルが好き
- これまでいろいろな本格ミステリーを読んできた
シチュエーションやキャラクターが「館ミステリーの王道」をしっかりと押さえていて、安心感・安定感のある本格ミステリーとなっています。
ただ個人的には、他の本格ミステリー作品をある程度読んでから本作を読むのがおすすめ。
なぜかというと、既存の本格ミステリーを知っていれば知っているほど本作はおもしろさが増すんです。理由は下記。
- 往年の本格ミステリー作品をリスペクトした描写がある
- 「本格ミステリーにありがちな展開」を意識した作りになっている
もちろんいきなり本作を読んでも十分楽しめますよ!
▼『硝子の塔の殺人』詳細記事
作品情報
書名:硝子の塔の殺人
著者:知念実希人
出版:実業之日本社(2021/7/30)
頁数:504ページ
終わりに
2021年はミステリー大豊作の年と言われています。
上に挙げた作品はその評価も納得の名作ばかりで、私としてもミステリーの世界を大いに堪能できた一年でした。
上記ランキングを読んで紹介作品に興味を持たれた場合は、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
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