おれたちの歌をうたえ

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2021.08.20)

【感想】『おれたちの歌をうたえ』/呉勝浩:昭和・平成・令和の3時代に渡る壮大なミステリー!

こんにちは、つみれです。

このたび、呉勝浩(ゴカツヒロ)さんの『おれたちの歌をうたえ』を読みました。

元刑事の男が古い友人の残した暗号を、過去の2つの時代の回想を交えつつ解き明かしていく長編ミステリーです。

また、第165回直木賞候補作にノミネートされた作品でもあります!

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
書名:おれたちの歌をうたえ

著者:呉勝浩
出版:文春秋(2021/2/10)
頁数:608ページ

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昭和・平成・令和の3時代に渡る壮大なミステリー!

昭和・平成・令和の3時代に渡る壮大なミステリー

私が読んだ動機

第165回直木賞候補作にノミネートされたので読みました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • とにかく先が気になるミステリーが読みたい
  • 一風変わった友情の物語を楽しみたい
  • 昭和・平成・令和の3時代に渡る物語を味わいたい
  • 直木賞候補作が読みたい

あらすじ・作品説明

元刑事・河辺(カワベ)のもとに茂田(シゲタ)という男から一本の電話がかかってくる。

 

茂田によると、久しく会っていなかった河辺の古い友人「ゴミサトシ」が死んだということだった。

 

河辺は茂田とともに友人が残した「暗号」を解読しながら、40年前に起きたとある事件の真相に迫っていく。

元刑事とチンピラ

男性二人のシルエット

本作『おれたちの歌をうたえ』の物語は、元刑事である河辺のもとに茂田というチンピラ風の男から電話がかかってくるところから始まります。

電話によると、河辺の古い友人である「ゴミサトシ」が死んだという。

ゴミサトシは謎の「暗号」を残しており、それを河辺と茂田で解読していくというのが、本作の主筋の一つです。

そして、その暗号には「昭和51年の事件」が関わっていることがわかり、物語は過去の回想を交えながら進行していくことになります。

最初は険悪な河辺と茂田ですが、次第に「いいコンビ感」がにじみ出てくるのも良かったですね!

3つの時代を描く

本作は3つの時代の描写を切り替えながら進行していきます。

3つの時代は下記の通り。

  • 昭和51年(1976)
  • 平成11年(1999)
  • 令和元年(2019)

基本的に本作は物語の主軸を令和元年に置きながら、昭和51年の回想・平成11年の回想を交える形で、とある事件の真相に迫っていきます。

物語の軸となる一つの大きな謎は昭和の時代に発生しており、それを40年強という長いスパンでの謎解きしていく構成です。

3つの時代それぞれが一つの物語としてかなりおもしろく、また読者に訴えかける内容も異なっています。簡単に言うと下記のような感じ。

  • 昭和51年:メインキャラ5人のきらきらした過去と大きな謎の出発点を描写。
  • 平成11年:どこかやさぐれてしまったメインキャラたち。昔の仲の良かった関係には戻れない印象。
  • 令和元年:昭和の物語で発生した謎を解き明かすことに主眼が置かれた解決編。

この3つの時代の使い分けのうまさが本作の魅力の一つです。

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栄光の五人組

友人たちのシルエット

上では本作にメインキャラが5人登場すると書きました。下記の5人です。

  • 河辺久則(カワベヒサノリ)
  • 五味佐登志(ゴミサトシ)
  • 外山高翔(ソトヤマコウショウ)
  • 石塚欣太(イシヅカキンタ)
  • 竹内風花(タケウチフウカ)

彼らは「栄光の五人組」と呼ばれています。

この呼び名の由来は、彼らが小学生時代に行ったとある行動が「手柄」となり、周囲に褒めそやされたところにあります。

この呼び名のセンスはともかく、各メンバー本当にいい味出していていいキャラばかりなんですよ。

名前表記の変化

カーブする雪道

私が本作を読んでいておもしろいなと思ったのは、「栄光の五人組」同士で名前を呼びあうときの呼びかけ方です。

昭和51年では、彼らは「サトシ」とか「コーショー」のようにカタカナで呼びかけあっています。

ところが平成11年以降、彼らが再会したときは「佐登志」「高翔」のように漢字表記に変わっています。

なぜこのようになっているのか、答えは小説内で名言されていませんが、私はここに彼らの関係性の変化を読み取りました。

高校時代は親友といってもいいほどに仲の良かった彼らの関係性が、20年の時を経て変わってしまったことの暗示のように思えたのです。

この演出がめちゃくちゃ切なくてすばらしかったですね。

カタカナと漢字を使い分けて関係性の変化を表すのはドラマや映画では難しいはず。

まさに小説ならではの演出といっても過言ではないですよね。

それぞれが送ってきた人生

モノクロの階段

昭和51年の事件のあと、「栄光の五人組」の面々はそれぞれ自分の道を歩み始めます。

そして平成11年になるまで全体で連絡を取り合うことはありません。

なので、平成11年に至るまでの彼らの人生は少ない描写の範囲で想像するしかありませんでした。

ですが、平成11年の彼らのたたずまいを見ると、昭和51年の頃のきらきらした感じがなくなり、どこかくすんで色褪せて見えるんですよ。

再会した彼らの会話も、はたから見ていても危うさを感じさせるほど「一触即発」感があるんですよね。

思い当たる理由は下記の二つ。

  • 「昭和51年の事件」が彼らの心に暗い影を落としたこと
  • 社会の厳しさを知った彼らは、当時の関係性を無邪気なまま保てなかったこと

上に書いた「呼びかけ方」のカタカナ表記から漢字表記への変化も相まって切なさを感じさせますね。

さらに本作には平成11年から令和元年という年代ジャンプがあり、ここでも同様の寂しさを覚えるシーンがあります。

昭和の記憶が輝かしければ輝かしいほど、平成・令和の彼らの変化がつらいわけですが、そのあたりの演出もうまいのでぜひこの切なさを味わってほしいですね。

謎が魅力的

雪の林道

本作は、3つの時代を行き来したり、栄光の五人組の友情の変化にやきもきしたりと見どころの多い作品です。

それでも、本作の最大の見どころは、やはり昭和の物語のラストで提示される大きな「謎」にあるのではないかと思います。

小手先の技術で読者を煙に巻くのではなく、ストレートに謎の魅力で勝負している本作はまさに「これぞミステリー!」と叫びたくなるような一冊です。

序盤に大きな謎が提示され、3つの時代を切り替えながら少しずつ真相に迫っていくスタイルが単純におもしろすぎるんです。

続きが気になりすぎて、徹夜して一気読みしてしまいました。

 

 

終わりに

『おれたちの歌をうたえ』は、昭和・平成・令和の3時代の描写を切り替えながら、昭和の時代に発生した大きな謎の真相に迫っていく長編ミステリー。

キャラクター一人ひとりが魅力的だったり、メインキャラの「栄光の五人組」の友情の変化のもどかしさに悶えたりと読みどころ満載の一冊です。

ですが、やはり最高に魅力的なのは序盤で提示される一つの大きな「謎」。

この謎に牽引されるように物語が展開していくところは大作ミステリーの風格すら帯びていて、まさに一気読み必至の一冊です。

本記事を読んで、呉勝浩さんの長編ミステリー小説『おれたちの歌をうたえ』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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