むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2022.06.9)

【感想】『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』/青柳碧人:日本の昔話をミステリー化した短編集第2弾!

こんにちは、つみれです。

このたび、青柳碧人(アオヤギアイト)さんの短編集『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』を読みました。

 

「日本の昔話」をモチーフにした短編5編が収録されたミステリー短編集です。

 

本作には下記の5編が収録されています。

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
書名:むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。

著者:青柳碧人
出版:双葉社(2021/10/21)
頁数:280ページ

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日本の昔話をミステリーにリメイクするシリーズの第2弾!

日本の昔話をミステリーにリメイクするシリーズの第2弾

私が読んだ動機

前作『むかしむかしあるところに、死体がありました。』がおもしろかったので続編にあたる本作も読みました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 本格ミステリーが好き
  • 日本の昔話をモチーフにしたミステリーを読んでみたい
  • 特殊設定ミステリーが読みたい
  • ミステリー短編集が読みたい

あらすじ・作品説明

『竹取物語』にミステリー的なエッセンスを取り入れた「竹取探偵物語」。

 

『おむすびころりん』の世界にまさかのSF的なループ要素を組み合わせた「七回目のおむすびころりん」。

 

『わらしべ長者』の物語をベースに、物々交換相手がみんな殺人者という衝撃の内容が魅力な「わらしべ多重殺人」。

 

一般的に知られている『猿蟹合戦』の物語は実は間違っていると、その真相を描き出す「真相・猿蟹合戦」。

 

『ぶんぶく茶釜』をモチーフに、稀代の悪猿・南天丸の不審死をミステリー的な味わいたっぷりに描写する「猿六とぶんぶく交換犯罪」。

 

「日本の昔話」という特殊な舞台を最大限に生かしたミステリーを5編収録した短編集。

「日本の昔話」をミステリーに書き換えた短編を収録

古ぼけた水車

本短編集『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』には、5編の短編が収録されています。

そのすべてが「日本の昔話」をリメイクしたミステリー作品を扱っており、どこか懐かしい独特の味わいがある謎解きを楽しめるものばかりです。

題材に取られている本家の昔話は下記の5つ。

  • 竹取物語
  • おむすびころりん
  • わらしべ長者
  • 猿蟹合戦
  • ぶんぶく茶釜
 

いずれもよく知られた有名な作品ばかりですね。

 

本作は元となった昔話にならって動物が人間の言葉を喋るなど、昔話由来の特殊な世界観でミステリーが展開されるオリジナリティが光る一冊となっていますよ。

興味がある人はぜひ『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』を手に取って読んでみてくださいね。

「竹取探偵物語」

『竹取物語』をモチーフにしたミステリー

『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』に収録されている短編の第一編目は「竹取探偵物語」。

昔話『竹取物語』をモチーフにしたミステリー作品です。

「竹取探偵物語」はこんな人におすすめ!
  • 『竹取物語』が好き
  • 特殊設定ミステリーが好き
  • 日本の昔話をモチーフにしたミステリーを読んでみたい

<あらすじ・作品説明>

竹取を生業にしている堤重直(ツツミシゲナオ)が友人の有坂泰比良(アリサカヤスヒラ)とともに竹林に行くと、光っている竹を発見。

 

さっそくその竹を切ってみると中には親指ほどの大きさの少女が。

 

「かぐや」と名乗るその少女はみるみるうちに成長し、絶世の美少女となった。

 

かぐやの成人の儀式にはその美貌のうわさを聞き付けた都の貴族が集まり、次々と求婚した。

 

かぐやは五人の求婚者に対し、<ゆかしき物>を持ってきた者と結婚する旨を伝える。

 

<ゆかしき物>の提出期限の日、なんと有坂泰比良が焼死体となって発見される。

よく知られている『竹取物語』のお話がモチーフになっており、初めて読むミステリーのはずなのに親近感がある作品です。

五人の貴族たちがかぐや姫に求婚したとき、それぞれ<ゆかしき物>という魔法の道具を持ってくることを婚姻の条件に出されるのも本家の物語と同じ。

しかし、物語の途中で一件の殺人事件が起こると、犯行にその魔法の道具の使用が疑われる流れになります。

 

不思議な力を持つ<ゆかしき物>が犯行に関わってくる特殊設定ミステリーのおもしろさが本作の醍醐味です。

 

「七回目のおむすびころりん」

ミステリーとSFがプラスされた『おむすびころりん』

『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』に収録されている短編の第二編目は「七回目のおむすびころりん」。

昔話『おむすびころりん』をモチーフにしたミステリー作品です。

チェックポイント
  • 『おむすびころりん』が好き
  • 「ループもの」のミステリーを読みたい
  • 日本の昔話をモチーフにしたミステリーを読んでみたい

<あらすじ・作品説明>

山のねずみ穴におむすびを落としてしまった米八(ヨネハチ)じいさんはねずみたちと仲良くなり、おみやげとして『なんでも望みのものが手に入る袋』をもらったという。

 

となりの惣七(ソウシチ)じいさんはその話を聞き、自分もその袋を手に入れようと件のねずみ穴におむすびを転がす。

 

ねずみたちと遊ぶのが面倒な惣七じいさんは猫の鳴き真似をしてねずみたちを怖がらせ、その隙に袋を奪取しようと目論む。

 

猫の鳴き真似に驚いたねずみたちは混乱し、穴の広場に設置してあった釣り鐘を落としてしまう。

 

釣り鐘が落ちる音が響き渡ると、惣七じいさんはおむすびを転がす前の時間に戻っているのであった。

おむすびをねずみ穴に転がして大金を得た隣のじいさんを羨んだ悪いじいさん・惣七が、手っ取り早く宝を得ようとしたところ、不思議なループ現象に巻き込まれるSFミステリーです。

 

なんと言っても本作のおもしろさは、本家『おむすびころりん』に登場するじいさんのうち、悪いほうのじいさんが活躍するブラックさ。

 

何度時間が巻き戻されてもめげずにねずみ穴に突入しお宝を手に入れようとする惣七の根性が最高に良かったです。

ラストのちょっとゾッとするような終わり方も好きですね!

「わらしべ多重殺人」

わらしべの交換相手が殺人犯

『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』に収録されている短編の第三編目は「わらしべ多重殺人」。

昔話『わらしべ長者』をモチーフにしたミステリー作品です。

「わらしべ多重殺人」はこんな人におすすめ!
  • 『わらしべ長者』が好き
  • 不可解な現象が起こる物語が読みたい
  • 日本の昔話をモチーフにしたミステリーを読んでみたい

<あらすじ・作品説明>

赤子を抱えるおみねは、行商人のDV夫・八衛門(ハチエモン)の暴力に耐えきれず、ぬか床にその顔を押し付けて殺害した。

 

甘やかされて育ったわがまま娘・椿(ツバキ)は、とある旅の帰路に山賊・八衛門に襲われそうになったが、隙をついて返り討ちにし、崖下に落として殺害した。

 

日々の暮らしに困窮していた武士・原口源之助(ハラグチゲンノスケ)は、かつて世話になった人物の葬儀代を用意できず金貸し・八衛門を頼ったが、侮辱されたため地蔵で殴打して殺害した。

 

まずしい男・半太(ハンタ)は人生を儚んで死のうとしたが、観音様が現出し物々交換が人生を好転させるとのお告げを受けた。

 

半太は三人の殺人者と次々に物々交換を行い、屋敷を手に入れるほど裕福になった。

本家『わらしべ長者』では、わらしべを元手に物々交換を繰り返し、大金持ちになる男のサクセスストーリーが描かれています。

一方、本作「わらしべ多重殺人」では、交換相手側の物語も並行して描かれており、なんと交換相手はみんな殺人者です。

しかも、3人の殺人者はみな「同じ人物」を殺害しており、その謎が本作の面白さをラストまで牽引してくれます。

 

短編でありながら二章構成となっており、不思議な事件が描かれる「第一章・春」と事件の解決編に当たる「第二章・冬」を楽しむことができますよ。

 

「真相・猿蟹合戦」

本当の猿蟹合戦とは

『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』に収録されている短編の第四編目は「真相・猿蟹合戦」。

昔話『猿蟹合戦』をモチーフにしたミステリー作品です。

「真相・猿蟹合戦」はこんな人におすすめ!
  • 『猿蟹合戦』が好き
  • 二転三転する物語が読みたい
  • 日本の昔話をモチーフにしたミステリーを読んでみたい

<あらすじ・作品説明>

狸の茶太郎(チャタロウ)は人間の長兵衛(チョウベエ)から「猿蟹合戦」の物語を聞く。

 

それは、一般に流布している「猿蟹合戦」そのもので、蟹は猿の南天丸(ナンテンマル)に騙されたうえ固い柿の実を投げつけられて殺されてしまうというものだった。

 

蟹の敵討ちのために集まったのは栗、蜂、臼、牛糞の4匹。

 

4匹は見事な連携で猿の南天丸を倒し、敵討ちを成し遂げたという。

 

しかし、そんな「猿蟹合戦」の物語を信じ込んでいる茶太郎の前に栃丸(トチマル)という一匹の猿が現れる。

 

南天丸の息子を名乗る栃丸は「猿蟹合戦」の物語は間違っていることを指摘し、茶太郎にとある取引を持ち掛ける。

本家の『猿蟹合戦』では、無残に殺された蟹の敵討ちのために、その友人たちが連携して猿に復讐を行う物語です。

本作「真相・猿蟹合戦」は、タイトルの通り、従来伝わっている『猿蟹合戦』は間違っていることを指摘する衝撃の一編です。

狸の茶太郎は、悪猿の子「栃丸」を名乗る猿によって「『猿蟹合戦』の真相を言い当てることができたら協力してそれぞれの復讐を成し遂げよう」と取引を持ち掛けられます。

 

本家大元の『猿蟹合戦』の物語に鋭いツッコミを入れながら進んでいく物語が最高におもしろかったですね。

 

本作は単品でも楽しむことができますが、あとに収録されている「猿六とぶんぶく交換犯罪」と連続した物語となっていて、併せて読むことでおもしろさが倍増します。

「猿六とぶんぶく交換犯罪」

二転三転する交換犯罪の顛末は

『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』に収録されている短編の第五編目は「猿六とぶんぶく交換犯罪」。

昔話『ぶんぶく茶釜』をモチーフにしたミステリー作品です。

「猿六とぶんぶく交換犯罪」はこんな人におすすめ!
  • 『ぶんぶく茶釜』が好き
  • 二転三転する物語が読みたい
  • 日本の昔話をモチーフにしたミステリーを読んでみたい

<あらすじ・作品説明>

幾度となく非行を重ねてきた悪猿「南天丸(ナンテンマル)」は、自分を殺す計画の存在を察知して以来、有力者・猩々翁(ショウジョウオウ)の屋敷に匿ってもらっていた。

 

猩々翁の屋敷には「もどろ沼」に囲まれた小島があり、南天丸は居処としてそこに建つ小屋をあてがわれていた。

 

本作の語り手「綿(ワタ)さん」とその友人「猿六」という二匹の猿がこの猩々屋敷を訪れた翌日、なんと南天丸が小島近くに浮かぶ舟の上で変死体となって発見された。

 

観察力・洞察力に優れた猿六は、悪猿の変死について調査を開始する。

各所で非行を重ねてきた悪猿・南天丸が猩々翁という有力者の屋敷敷地内で変死します。

南天丸は沼に囲まれた小島のそばに浮かぶ小舟の上で死んでいました。

たまたま屋敷を訪れていた猿の「猿六」が持ち前の観察力・洞察力を駆使し、探偵として事件の謎を解いていきます。

探偵や見取り図が登場するなど本格ミステリーの色彩が濃いのが良いですね。

 

「昔話の世界を舞台にした特殊設定ミステリー」という意味では本短編集でも随一のおもしろさを誇る一編となっていますよ。

 

一つ前に収録されている「真相・猿蟹合戦」と連続した物語になっていますので、先にそちらを読むことをおすすめします。

終わりに

本短編集は「日本の昔話」をオリジナリティあふれるミステリーにリメイクした作品が5編収録されています。

昔話由来の不思議な現象を謎解きに組み入れているのが魅力で、人の言葉を喋る動物や魔法の道具が活躍するのがおもしろかったですね。

 

個人的なお気に入りは1編目の「竹取探偵物語」。

昔話に登場するマジック・アイテムがミステリーの小道具として利用される展開が最高でした。

 

本記事を読んで、青柳碧人さんの『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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