こんにちは、つみれです。
このたび、今村昌弘さんの『魔眼の匣の殺人』(東京創元社)を読みました。
「屍人荘の殺人」シリーズの第2作目に当たる作品です。
前作『屍人荘の殺人』(紹介記事に移動)があまりにおもしろく、徹夜して一気読みしてしまったほどだったので、今作も期待して読み始めました。
前作がすごすぎたので次作はどうなるかと思っていましたが期待以上のすばらしい作品でした!
2022年8月12日に、本作の文庫版が発刊されました!
▼前作の記事
▼「屍人荘の殺人」シリーズの読む順番とあらすじ
それでは、さっそく感想を書いていきます。
ネタバレ感想は折りたたんでありますので、未読の場合は開かないようご注意ください。
作品情報
書名:魔眼の匣の殺人
著者:今村昌弘
出版:東京創元社 (2019/2/20)
頁数:333ページ
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目次
王道ミステリーに「予言」を組み込む新たな試み
私が読んだ動機
前作『屍人荘の殺人』が感動的におもしろかったので、続編が出たら読もうと思っていました。
前作『屍人荘の殺人』はあまりにおもしろすぎて徹夜して一気読みしちゃいました。
こんな人におすすめ
- クローズドサークルが大好物
- ミステリー論が好き
- 王道の中で新たな試みを行っている作品に惹かれる
- 前作『屍人荘の殺人』の続きが気になる
あらすじ・作品説明
神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲と剣崎比留子は、人里離れた山奥にある施設「魔眼の匣」を訪れる。
施設の主で予言者と恐れられる老女は、彼ら2名を含む来訪者に対し「この地で男女が二人ずつ、四人死ぬ」と予言。
最初は半信半疑だった来訪者たちだったが、そのうちの一人が間もなく死亡する。
「魔眼の匣」へと続く唯一の道である橋は焼け落ち、来訪者たちは不気味な予言の及ぶ範囲内で孤立してしまう。
前作『屍人荘の殺人』から順番に読みたい一冊
本作『魔眼の匣の殺人』は「屍人荘の殺人」シリーズの2作目に当たり、前作に『屍人荘の殺人』があります。
『魔眼の匣の殺人』はトリックや謎解きが作品中でしっかりと完結するので、必ずしも前作の読了を前提にした作品となっておらず、本作だけでも十分に楽しめます。
しかし、物語を最大限に楽しむならやはり前作『屍人荘の殺人』を先に読んでおいたほうがいいです。
シリーズを通して大きな謎が提示されており、それが少しずつ明らかになっていくのも本シリーズの醍醐味だからです。
『屍人荘の殺人』はすでに文庫版も発刊されていて、手に取りやすいのもいいですね!
王道のクローズドサークル
本作『魔眼の匣の殺人』は、王道のクローズドサークルものとなっています。
前作『屍人荘の殺人』も本作と同じくクローズドサークルを題材としたミステリーでしたが、その舞台自体がかなり特殊な設定なのが大きな特徴でした。
それに対して、本作は舞台に限って言えばあくまで王道のクローズドサークルなんです。
クローズドサークルの説明は下記の通り。
何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品 Wikipedia「クローズド・サークル」
外界との連絡手段が絶たれることも多い。
サークル内にいる人物のなかに高確率で犯人がいると思われたり、捜査のプロである警察が事件に関与できない理由づけになったりなど、パズルとしてのミステリーを効果的に演出する。
「嵐の孤島」「吹雪の山荘」などがその代表例として挙げられる。
前作はその特殊な舞台設定自体が読者にかなりの衝撃を与えましたが、本作はそういった一発芸的な大技を使っているわけではないのです。
舞台としてかなり王道で、既存のクローズドサークル作品に慣れ親しんできた人なら安心感すら覚えるほど。
それでも、「すばらしい!読んでよかった!」というすごい趣向が用意されていますので、その感動を下記で綴っていきます。
登場人物が覚えやすい
これは前作でもそうでしたが、本作もとにかく登場人物が覚えやすいように配慮されています。
どういうことかというと、登場人物の名前の特徴が結びつけられているんです!
「これはすばらしい!!」と部屋で叫びました。(言いすぎ)
ミステリーを読んでいて最初にぶつかる壁は、登場人物の見分けがつかなくなるということです。
下手をすると、誰が死んだのかわからなくなって何ページもさかのぼって間違いを修正するなどという余計な作業が発生してしまいます。
これ、けっこう時間がかかるんですよね。(私がばかだからですかね・・・)
しかし、本作では登場人物の名前と特徴とがうまく結びつけられています。
「めったなことでは勘違いなんて起こさせやしないぜ」という作者の配慮が感じられてうれしい限りですね。
どういうことか、少し例を挙げましょう。
「覚えやすい人から挙げると大学教授の師々田厳雄かな。いかにも厳しい先生っぽい名前だし、顔も厳めしいね。その息子の純君は親に似ず純粋な性格をしているのに」『魔眼の匣の殺人』kindle版、位置No. 1337
説明は野暮というものですが、厳しくて厳めしいから「厳雄」だし、純粋だから「純」です。これは覚えやすいですね。
しかも、上の引用箇所のように、登場人物の名前の覚え方講義が物語序盤で行われるというきめ細やかな配慮!
このダジャレ配慮によって、読者は「名前を覚える」というエネルギー消費の激しい仕事に余計な脳内メモリを割かず、本来注力すべき謎解きに集中させることができるのです!大発明ですね!
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「予言」という新たな試み
正直ネタバレになってしまうので、詳しいことは書くことができません。
しかし、本作の大事な小道具の一つに「必ず的中する予言」というのがあり、なんと物語序盤で下記の「予言」が提示されるのです。
「十一月最後の二日間に、真雁で男女が二人ずつ、四人死ぬ」
『魔眼の匣の殺人』kindle版、位置No. 996この予言が必ず当たるというなら、真雁(地名)から遠ざかればいいわけですが、その真雁がクローズドサークル化し登場人物はとじこめられてしまうので、物語はワクワク複雑なことになるのです。
この「予言」と「クローズドサークル」という合わせ技によって、真雁は一種のパニック状態に陥るわけです。
つまり、閉じ込められたメンバーのうち、男が二人、女が二人死ぬ、という状態です。
死亡人数枠が決まっているという新たな試みが本作のスリルを何倍にも増幅させています。
メンバーたちは自分がその四人にならないために知恵を絞るわけですが、その人間模様を楽しむのも一興といえるでしょう。
もちろん、この特殊な環境だからこそ成り立つすばらしい謎が用意されていることは言うまでもありません。
さらに、登場人物がみんないい味出しているわけですが、そのうち4人は死んでしまうというのが事前にわかってしまうという絶望感もなかなか味わい深いものがあります。
予言とはおもしろい要素に目をつけたな!と思いましたね!
ね?おもしろそうでしょ?
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ちなみに前作(↓)も最高です。むしろ前作から順番に読んでほしいです。
▼関連記事
【ネタバレあり】すでに読了した方へ
危険!ネタバレあり!ネタバレがあるよー!予言しますが、まだ読んでいない人は開かない方がいいでしょう。
終わりに
前作『屍人荘の殺人』の感想で私は下記のように書きました。
「私ならプレッシャーで2作目を生み出すのに苦労しそうなものですが、また本作のようなすばらしい作品を書いていただきたいです。」
まさに杞憂でしたね!
前作を読んだ人の期待にしっかりと応えてくれている名作でした。
3作目もありそうな終わり方で、今から待ち遠しいですね。
▼ 3作目もありました!続編の記事
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
つみれ
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zigsowさん、コメントありがとうございます!
わあ、嬉しいです!とても励みになります!!
前作みたいなびっくり感はないかもしれませんが、その分トリックで魅せるぜ!的な感じがとても好みでした。
気に入っていただけるといいなあ。
『medium』も読まれましたか!!
あの作品は私の周りでもかなり話題になっていて私も流行にのって読んだのですが、傑作でしたね!
湊かなえさんの『落日』、ぜひ読んでみようと思います。
お薦めくださりありがとうございます♪
つみれ
はじめまして!
気になっていた作品だったので、ブログ拝見させていただきました。
このブログを読んでさらに買いたくなったので次読む本はこれにします。
ちなみに私もMediumも読みました。とてもおもしろいですよね。
湊かなえの落日もとてもおもしろいのでおすすめですよ!