兇人邸の殺人

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2021.08.31)

【感想】『兇人邸の殺人』/今村昌弘:異形の殺人鬼が闊歩する屋敷に閉じ込められる!

こんにちは、つみれです。

このたび、今村昌弘(イマムラマサヒロ)さんの『兇人邸(キョウジンテイ)の殺人』を読みました。

屍人荘(シジンソウ)の殺人シリーズ」の第3作目に当たる作品で、メインキャラの葉村譲(ハムラユズル)剣崎比留子(ケンザキヒルコ)が特殊な館に閉じ込められるミステリー小説です。

▼前作の記事

▼「屍人荘の殺人」シリーズの読む順番とあらすじ

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
書名:兇人邸の殺人

著者:今村昌弘
出版:東京創元社(2021/7/29)
頁数:368ページ

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異形の殺人鬼が闊歩する屋敷に閉じ込められる!

異形の殺人鬼が闊歩する屋敷に閉じ込められる

私が読んだ動機

シリーズ作品の前2作品がおもしろかったので読みました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • クローズドサークル・ミステリーが好き
  • パニックホラーが好き
  • 特殊設定ミステリーが好き
  • 前作『魔眼の匣の殺人』の続きが気になる

あらすじ・作品説明

成島IMS西日本社長の成島陶次(ナルシマトウジ)は、特殊な体質を持つ剣崎比留子の異能を当てにして、彼女とその友人・葉村譲に地方のテーマパーク「馬越(ウマゴエ)ドリームシティ」の潜入調査への同行を求める。

 

潜入調査の目的は本シリーズの謎の根幹に関わる「班目(マダラメ)機関」にまつわるもの。

 

葉村譲と剣崎比留子の二人も過去に二回、班目機関の研究がもたらす超常現象を目の当たりにしていた。

 

潜入チームは成島社長とその秘書、葉村・剣崎のコンビに実戦経験豊富な傭兵たちを加えた混成部隊。

 

一行は、テーマパーク内に建設された不気味な建物「兇人邸」に班目機関に関する秘密を嗅ぎ取る。

 

しかし、邸内は恐怖の首斬り殺人鬼が闊歩し、彼らの調査を阻むのであった。

前2作を読んでおいた方が楽しめる

本作『兇人邸の殺人』は、「屍人荘の殺人」シリーズの第3作目に当たります。

下記にシリーズの順番を書いておきます。

  1. 『屍人荘の殺人』
  2. 魔眼(マガン)(ハコ)の殺人』
  3. 『兇人邸の殺人』(本作)

シリーズで活躍する探偵・剣崎比留子、そのワトソン役・葉村譲が本作でも事件に巻き込まれていきます。

彼らが以前に体験した事件の顛末を描いた前作・前々作を読んでおいたほうが、本作の背景などを深く理解することができますよ。

珍しいクローズドサークル

『兇人邸の殺人』は、主人公一行がテーマパーク内にある不気味な建物「兇人邸」に閉じ込められるクローズドサークル・ミステリーです。

クローズドサークルの説明は下記の通り。

クローズドサークル

何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品 Wikipedia「クローズド・サークル」

外界との連絡手段が絶たれることも多い。

サークル内にいる人物のなかに高確率で犯人がいると思われたり、捜査のプロである警察が事件に関与できない理由づけになったりなど、パズルとしてのミステリーを効果的に演出する。

「嵐の孤島」「吹雪の山荘」などがその代表例として挙げられる。

ちなみに、作品内でも言及されていますが、クローズドサークルは通常「自然現象によるもの」と「人間の悪意によるもの」に分かれます。

「自然現象によるもの」は、たとえば大雨で橋が流されて主人公たちが孤立してしまうパターンが挙げられます。

「人間の悪意によるもの」は、たとえば屋敷の唯一の出入り口である扉が錠をおろされてしまうパターンが挙げられますね。

本作は非常に珍しいことにこのどちらのパターンにも当てはまらない特殊なクローズドサークルになっています。

詳細はぜひとも本作を読んで確認してみてくださいね。

首斬り殺人鬼

不審な男性のシルエット

本作では、常人の運動能力をはるかに超えた首斬り殺人鬼が兇人邸内を闊歩し、主人公たちを震え上がらせます。

この首斬り殺人鬼は人間と意思疎通ができないばかりか、人間の姿を見るなり襲いかかってくるという脅威の存在。

「近づくだけで死」という理不尽な生物が邸内を動き回っていて、主人公たちはこの怪物をうまく避けながら謎解きをしていかなければなりません。

パニックホラー的な要素を含んだ特殊なミステリーですね。

また、この首斬り殺人鬼は「陽光」(というか紫外線)を極端に嫌うという性質を持っています。

兇人邸には昼間に陽光が注ぐ部屋「首塚」があり、その部屋が三つの区画「本館主区画」「本館副区画」「別館」を分断しています。

つまり、昼間は首斬り殺人鬼がいない側の区画は安全地帯となるのです。

この趣向によって、「兇人邸」に閉じ込められる調査チームたちは、昼と夜とで邸内の行動範囲が変わるというめちゃくちゃおもしろい制約に縛られることになります。

脅威の首斬り殺人鬼の存在が本作のスリル感を否応なく盛り上げてくれますよ。

別に殺人者がいる

海辺にたたずむ男性のシルエット

本作のおもしろさはこの首斬り殺人鬼以外に殺人者がいると思われる点です。

つまり、味方であるはずの兇人邸潜入メンバーや兇人邸の従業員のなかに裏切者がいるということなのです。

首斬り殺人鬼の存在自体はあくまで主人公たちの行動を制限する「屋敷のギミックの一種」ということができ、本作のミステリー的なおもしろさはこの裏切者探しにあると言えます。

そもそも味方と言っても、兇人邸を訪れた目的に違いがあって、利害の不一致によっては敵対することもありえそうな不穏な雰囲気なんですよね。

首斬り殺人鬼に対する恐怖だけでなく、本来手を取り合って協力すべき仲間に対する疑心暗鬼に苛まれながらの脱出活動!

ホラーとミステリーとが絶妙なバランスで配合され、すばらしいエンタメ作品に仕上がっていますね。

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探偵不在の不安感

室内の窓

本作は、「探偵がいない不安感」をかき立てられる一冊となっています。

物語の序盤で潜入メンバーが首斬り殺人鬼の襲撃を受けた際、本シリーズの探偵役である剣崎比留子が行方不明になってしまうのです。

本シリーズの探偵役・剣崎比留子の推理能力は傑出していて、彼女が物語の序盤で姿を消してしまうことで生じる心細さは相当のもの。

「映画ドラえもん」でドラえもんが故障してしまうくらいの衝撃ですよね!(わかりにくい)

折りたたみ内で物語中盤の進行に言及しています!読みたい人だけクリックorタップしてね

物語中盤で無事に剣崎比留子は生存した状態で発見されるのですが、彼女が置かれた状況がまた特殊でおもしろいのです。

上でも本作の舞台となる「兇人邸」の構造の特殊性について多少触れていますが、兇人邸は昼間に陽光の注ぐ「首塚」という部屋を境に三区画に分かれています。

襲撃の際、剣崎比留子がとっさに逃げ込んだ先は三区画のうち首斬り殺人鬼の拠点ともいえる「別館」。

彼女はそこで孤立してしまうのです。

比留子は他の潜入メンバーとなんとか意思の疎通はできる状態ですが、近辺を殺人鬼がうろついている危険性から行動の自由を奪われてしまいます。

この状況も本作のおもしろさを増幅させている趣向の一つで、彼女は別館で身動き一つとれない状況にあるにもかかわらず、裏切者探しにおいて抜群の推理をつぎつぎと披露していくのです。

彼女は、「本区画」「副区画」側をある程度自由に行動できる他のメンバーから、その行動や発見物などを聞き取ることで情報を得て、推理を組み立てていきます。

つまり、兇人邸内で即席の「安楽椅子探偵」として活躍していくわけです。

本格ミステリーのお約束を押さえている

本作は、本格ミステリーのお約束的な要素もしっかり押さえています。

冒頭部で見取り図が提示されているのは、本格ミステリーファンとしてはとてもうれしい!

これだけでハチャメチャにテンションが上がります。

また、兇人邸の主人の指示で電話やパソコンのような通信機器は邸内に置かないルールになっており、屋敷の内部から外部に簡単に連絡が取れないようになっています。

個人的には外部と連絡が取れない状況を主人公たちが認識するシーンはクローズドサークル・ミステリーの見どころのひとつなので、このあたりの演出もうれしいポイントでしたね。

 

 

終わりに

『兇人邸の殺人』は、「屍人荘の殺人」シリーズの第3作目で、主人公たちが異形の殺人鬼の闊歩する屋敷内に閉じ込められるクローズドサークル・ミステリーです。

邸内を意思疎通不可の殺人鬼が歩き回っているため、登場人物たちの行動にかなりの制限がかかるという特殊な設定を存分に生かしたすばらしい作品でした。

本記事を読んで、今村昌弘さんの長編ミステリー小説『兇人邸の殺人』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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