こんにちは、つみれです。
このたび、松岡圭祐さんの『万能鑑定士Qの事件簿』1巻・2巻を読みました。
個人経営の鑑定家業を営む鑑定士・凜田莉子が、広範な知識と類まれなる観察力で数々の謎を解いていくミステリー小説です。
それでは、さっそく感想を書いていきます。
作品情報
書名:万能鑑定士Qの事件簿 I・II(角川文庫)
著者:松岡圭祐
出版:角川書店(2010/4/24)
頁数:(1巻)275ページ、(2巻)281ページ
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目次
鑑定士が謎を解く雑学系ミステリー!
私が読んだ動機
昔から読みたいと思っていたシリーズだったので。
こんな人におすすめ
- 人の死なないミステリーが読みたい
- 雑学・ウンチクが豊富な物語が好き
- 気楽に読める小説が読みたい
あらすじ・作品説明
都内各所に違法に貼られている不気味なシール「力士シール」。
それを記事に書くために雑誌記者の小笠原悠斗はシールの鑑定を依頼しようとしたが、鑑定家にことごとく断られてしまう。
そんな彼が最後にすがったのは、「万能鑑定士Q」の看板を掲げる個人経営の鑑定士・凜田莉子だった。
人の死なないミステリー
本シリーズ「万能鑑定士Q」シリーズのキャッチフレーズは、「面白くて知恵がつく 人の死なないミステリ」。
作中で殺人事件が描かれないことはもちろん、自然死すら扱われないという徹底ぶり!
従って「人が死ぬシーンが苦手なのでミステリーは嫌い!」という人におすすめのミステリーシリーズです。
本作、「人が死なないミステリー」なのは間違いないのですが、この1・2巻では社会的にかなり深刻な状況が扱われていて、読み進めるほどにハラハラさせられます。
いやー、これはおもしろかったですね。
必ずしも「人の死」の有無がミステリーのおもしろさに直結しないということを証明してくれています。
雑学系・ウンチク系ミステリー
「万能鑑定士Q」シリーズは、読むと雑学やウンチクに詳しくなれる「雑学系」ミステリーシリーズです。
「面白くて知恵がつく」のキャッチフレーズはダテではありませんね。
本シリーズの謎解きは、本格ミステリーのように作品中にヒントが全て提示されるわけではないのです。
主人公の鑑定士・凜田莉子がその広範な知識と優れた応用力で、他の人が気づかないようなわずかなとっかかりから一気に謎を解いていくのが本シリーズのスタイル。
基本的に「知識の有無」を問う謎解きがメインになっていて、読者が意気込んで「謎を解いてやるぜ!」というタイプのミステリーではないかもしれません。
不可解な謎を鑑定士・凜田莉子が豊富な知識で解き明かしていく様子を、「なるほどね!」と感心しながら読み進めるのが正しい読み方だと思いました。
むしろ読者としては、「物語を楽しむ」「雑学を楽しむ」くらいの軽い気持ちで読むのがおすすめですよ。
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万能鑑定士・凜田莉子の魅力
上にも書いた通り、本シリーズの謎解きは、主人公の鑑定士・凜田莉子の持っている知識によるところが大きいです。
莉子は非常に幅広い知識を持っていることと、それをしかるべき時に応用できる臨機応変さを兼ね備えていて、まさに文字通り「万能」。
表紙の少しクールなタッチの絵とも相まって近寄りがたさを感じさせる莉子ですが、そんな彼女も決して完璧でないのが良かったです。
基本的に莉子には無敵感が漂っているものの、意外と抜けていたり、ときには推理の間違いもするんです。
完璧と見せかけてわずかに隙を見せているキャラ造形がうまいですね。
莉子の過去
本作の読み始めは、莉子がかなりの才女で完璧に見えるため、「果たして彼女に感情移入できるのか」と心配していました。
ところがこれは杞憂に終わりましたね。
本作を少し読むとわかりますが、実は学生時代の莉子はかなりの劣等生でした。
それからどのようにして広範な知識や落ち着いた佇まいを得るに至ったのかという彼女の過去が、1巻の多くの紙幅を割いて詳細に語られます。
この莉子のバックグラウンドを深く知ることができる描写によって、彼女に自然と感情移入できる作りになっているんですね。
ミステリーは数多くありますが、探偵役がその推理力を手に入れた経緯などは意外と説明されない作品が多いです。
そんななかで、探偵役の過去に多くのボリュームを割いた本作はキャラクターものとしても優れていると思いました。
他のキャラクターについて
本作には、主人公の鑑定士・凜田莉子のほかにもシリーズを盛り上げてくれそうなキャラクターが複数登場します。
小笠原悠斗
本作には鑑定士の凜田莉子のほかに、彼女のワトソン的な立場の存在として雑誌記者の小笠原悠斗というキャラがいます。
これがなかなか頼りない!(笑)
特にこの1・2巻では実に頼りなく、物語を無駄に引っかきまわしているだけで、実質ワトソン役にもなり切れていない感じなんですよ。
もう一人の主人公・莉子に遠く及ばない自分をどこかふがいなく感じているらしい描写もあるので、今後の彼に期待ですね。
魅力的なサブキャラクターたち
メインキャラではないものの、味のある脇役として物語を盛り上げてくれるサブキャラクターがいます。
それが、早稲田大学の准教授にして科学鑑定のプロ・氷室拓真と、牛込警察署の警部補・葉山翔太です。
氷室は、知識で鑑定を行う莉子とは異なり、大規模な設備を使用して科学的な視点から鑑定を行うキャラ。
莉子の鑑定の裏付けなどを行ってくれる助っ人的な人物で、イケメンだけど変わり者という味わい深い人物です。
一方、葉山は莉子や小笠原と警察との橋渡しをしてくれるキャラです。
1・2巻では莉子の能力を認めていながらも気に食わないそぶりを隠さない独特の立ち位置が光るキャラでした。
二人とも、今後の活躍に注目の人物ですね。
実在の珍事件を題材に
本作では、実在する珍事件が題材として扱われています。
たとえば、この1・2巻でも「力士シール」という実際にネット上で話題になった都市伝説的な事象が描かれます。
詳細は本作を読んで欲しいのですが、これは都内を中心に貼られた不気味なシールのことです。
恥ずかしながら私はこの「力士シール」について本作を読むまで知らなかったのですが、「へぇー、こんな出来事があったんだ」と過去を復習する形で楽しむことができました。
私は都市伝説的な話が大好きなので、この「力士シール」のくだりはかなり興味深かったです。
この後のシリーズ作品でもこういった事象を扱っているようなので、読むのが楽しみですね。
突然のディストピア描写
本作を読んでいて強烈に興味を惹かれるのが、途中でいきなり差し挟まれる「世紀末感マックスの日本」の描写。
それまではほのぼのとした日常系ミステリーの枠内で収まっていた物語が、突然それまでとはかけ離れた悲惨な物語に変貌します。
突然差し挟まれるこのディストピア描写はいったい何なのか?
この本作最大の謎に引っ張られるように、どんどんと先へと読み進めたくなってしまいました。
1巻だけで完結しないので注意
「万能鑑定士Q」シリーズを楽しむうえで注意しておきたいポイントがあります。
それは、本シリーズの1・2巻に限り上下巻の関係になっていて、一冊で完結しないということ。
1巻の表紙だけ見ても2巻までの続き物だということになかなか気づけないんですよ。
1巻だけしか購入していないと、解決編となる2巻の内容がお預けとなり、宙ぶらりん状態となってしまいます。
また、一気に2冊読むとページ数的にも膨れ上がりますので、ある程度まとまった時間のあるときに読むのがいいかもしれません。
かく言う私も、1・2巻が上下巻の関係にあることを知らずに読み始め、「うおっ、2巻に続くのか!」となりました。
私は1巻読後のモヤモヤを早く解消したくてすぐさま2巻を買いに行きました。
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終わりに
本作『万能鑑定士Qの事件簿』1巻・2巻は、鑑定士・凜田莉子が幅広い知識と稀有な観察力で数々の謎を解いていくミステリ―小説です。
読んでいると自然と雑学に詳しくなれるのが楽しく、「面白くて知恵がつく」のキャッチフレーズはダテではありません。
本記事を読んで、松岡圭祐さんの『万能鑑定士Qの事件簿』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
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