首が取れても死なない僕らの首無殺人事件

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2022.05.13)

【感想】「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」/榊林銘:首の着脱可能な人間が登場する特殊設定ミステリー!

こんにちは、つみれです。

このたび、榊林銘(サカキバヤシメイ)さんの短編「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」を読みました。

 

タイトルの通り、首が取れても死なない特殊体質の人々が「首なし殺人事件」の謎解きを行う特殊設定ミステリーです。

 

殺人事件を扱っていながら妙にテンション高めなタイトルが秀逸ですね。

本記事は『あと十五秒で死ぬ』所収の一編「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」について書いたものです。

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
短編名:首が取れても死なない僕らの首無殺人事件(『あと十五秒で死ぬ』所収)

著者:榊林銘
出版:東京創元社
頁数:123ページ

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十五秒だけ首が着脱可能な島で起こる殺人事件!

十五秒だけ首が着脱可能な島で起こる殺人事件

私が読んだ動機

以前、本作収録の短編集『あと十五秒で死ぬ』の紹介を受け、おもしろそうだったので読みました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 特殊設定ミステリーが好き
  • 「バカミス(おバカなミステリー)」が好き
  • 本格的な謎解きを楽しみたい

あらすじ・作品説明

離島・赤兎島(セキトジマ)の島民は、首が取れても十五秒間以内にくっつければ死なない特殊な体質を持っている。

 

その日、島は首の着脱を見世物として楽しむ首芸の秘祭「鶴首祭(カクシュサイ)」で盛り上がっていた。

 

祭が終わり、夜が明けると祭会場の倉庫で「首なし」の焼死体が発見される。

 

この死体はいったい誰のものなのか。

首が取れても死なない人の特殊設定ミステリー

椿の花

本作の舞台、日本海の北方に浮かぶ島「赤兎島」の島民は、首が取れてもすぐには死なないという特殊体質の持ち主です。

 

なんと、取れた首を元通りにくっつければ死なない恐るべき体質なのです。

 

赤兎島の人々はもともと首が取れやすく、首が外れた状態を「首脱(シュダツ)」と呼んで祭の見世物にするなど伝統文化的に楽しんでいます。

首が着脱可能という衝撃的な事実は島外不出の秘密とされ、赤兎島の島民は長い間その事実を隠し通してきました。

ただし、この「首の着脱」にも条件・ルールがあり、これを守らないと彼らであっても死を免れません。

条件・ルールは下記の通り。

  • 首が取れても十五秒以内にくっつければ死なない。
  • 取れた首を他人の胴体に繋ぎなおすことも可能。
  • 他人との首交換は、満年齢が一歳以上離れていたり性別が異なっていたりすると不可。

なかなかユニークな設定ですね。

この作品は、この首が取れても死なない人たちが事件に巻き込まれる特殊設定ミステリーです。

本作でしか味わうことのできないかなり珍しい謎解きを楽しむことができますよ。

 

本作には首を使った芸がたくさん登場するのですが、三国志オタクの私としては、首を真後ろに向ける技名が「司馬懿(シバイ)」というのに笑ってしまいました。

 

三国志の武将・司馬懿の首は180度回り、後ろを見ることができたといわれています。

襲撃される主人公・水藤克人

暗くて不気味な森

本作の主人公は赤兎島の高校生・水藤克人(スイトウカツト)という青年。

勉学・運動ともに秀でており、島に三人しかいない同学年の長部智大(オサベトモヒロ)姫路公(ヒメジコウ)とは幼馴染同士です。

克人は祭の夜、何者かに襲われてしまい、なんと「首脱」状態に。

十五秒の経過によってあわや死亡かと思われましたが、たまたま通りかかった公の機転によってどうにか一命をとりとめます。

公の機転

閃きの電球

公は自分の胴体を一時的に克人の首と接続することで彼を救いました。

その後、紆余曲折あって、公の胴体を軸として克人の頭と公の頭を十五秒間隔で交互に継ぎ合わせるという応急対応で生き延びます。

 

なんともシュールな光景で、「これはバカミスではないのか」という思いが頭をよぎりますが、当の本人たちは命がかかっているので至ってマジメ。

 

バカミス・・・「おバカなミステリー」もしくは「バカバカしいミステリー」のこと。本気でバカにしてはおらず、むしろそのバカバカしさに敬意を表した呼称。

襲撃者は克人の胴体を持ち去ったと考えられ、それを取り返すことが目下の目的となるわけです。

首なしの焼死体

ゆらめく炎

克人は自分の胴体を取り返そうと考えますが、祭の会場・鶴首神社の倉庫からなんと首のない胴体だけの焼死体が見つかってしまいます。

克人は自分の胴体を失ったことに絶望。

下半身を亡失してしまった克人は生き延びることを諦め、襲撃者に復讐を遂げたうえで自分の命を終えようと決心します。

克人は公、智大の協力を取り付け、十五秒の間に絶えず首を交換を行って命を繋ぎながら「襲撃者は誰か」の調査を開始するという展開になっていくのです。

ぶっ飛んだ展開はシュールに過ぎるとしか言いようがありませんが、この前代未聞の設定によってこれまでにない新しい謎解きを楽しめるようになっています。

 

細かい説明が不要なわかりやすい特殊設定ミステリーと言えますね。

 

本格的な謎解き

クエスチョンマークと虫眼鏡

「首が取れても死なない」という奇抜でシュールな設定から、「バカミス」っぽさを感じてしまう本作。

ふざけた設定に反して、トリックや謎解きなどのミステリー部分はかなり本格的です。

 

正直なところ、この珍しい設定のなかで展開されるミステリーを楽しめるというだけでも一読の価値がある作品だと思いました。

 

終盤はパズル的な理詰めの解決編を堪能でき、ミステリーファンも大満足の内容となっています。

ちょっと長めの短編といったボリューム感ですが、この作者が書いた長編ミステリーも読んでみたいと思わせる一作でしたね。

「死ぬ直前の十五秒」がテーマの短編集収録作

テンポを刻むメトロノーム

本作「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」は、榊林銘さんのミステリー短編集『あと十五秒で死ぬ』に収録されています。

『あと十五秒で死ぬ』は、「死ぬ直前の十五秒」をテーマにした特殊なミステリー短編集です。

その収録作のなかでも本作は123ページととりわけボリュームのある一編となっています。

事件の舞台となった神社の見取り図が冒頭で提示されるなど多分に本格ミステリー要素を含み、謎解きも本格ミステリーそのもの。

 

収録作4編のなかでは個人的には一番おもしろかったですね。

謎解き好きには特におすすめの一編ですよ。

 

終わりに

「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」は、首が取れても死なない特殊体質の人々が「首なし殺人事件」の謎解きを行う特殊設定ミステリー。

 

シュールでトリッキーな特殊設定が目を引きますが、終盤の謎解きなどはかなり本格路線でめちゃくちゃおもしろかったです。

 

本記事を読んで、榊林銘さんの「首が取れても死なない僕らの首無殺人事件」がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ短編集『あと十五秒で死ぬ』を手に取って読んでみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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