アンダードッグス

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2021.07.24)

【感想】『アンダードッグス』/長浦京:負け犬たちが国家機密強奪作戦の完遂を目指す!

こんにちは、つみれです。

このたび、長浦京(ナガウラキョウ)さんの『アンダードッグス』を読みました。

第164回直木賞候補作にノミネートされた作品で、香港返還直前の各国情報機関同士のキナ臭いやり取りに翻弄されながらも、主人公たちがとある計画を遂行していくアクションサスペンス長編小説となっています。

それでは、さっそく感想を書いていきます。

▼第164回直木賞候補作をまとめています。

作品情報
書名:アンダードッグス

著者:長浦京
出版:KADOKAWA(2020/08/19)
頁数:400ページ

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負け犬たちが国家機密強奪作戦の完遂を目指す!

負け犬たちが国家機密強奪作戦の完遂を目指す

私が読んだ動機

第164回直木賞候補作にノミネートされたので読んでみようと思いました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • アクションサスペンスが読みたい
  • バイオレンスな物語が好き
  • 先が読めない展開の物語が好み
  • 香港返還に関する小説が読みたい
  • 直木賞候補作が読みたい

あらすじ・作品説明

1996年末、元官僚で今は証券会社に勤める古葉慶太(コバケイタ)が、香港在住のイタリア人大富豪マッシモ・ジョルジアンニからとある計画の実行メンバーに指名される。

 

その計画とは、中国返還直前の香港から運び出される国家機密文書の強奪計画だった。

 

各国の情報機関から、時に命をつけ狙われ、時に共闘を持ちかけられる混戦状況のなか、国籍も性格も抱えている事情も異なる「負け犬」仲間たちと計画の完遂を目指す。

スピード感あふれるアクションサスペンス

スピード感

この『アンダードッグス』は、スピード感・スリル感あふれるアクションサスペンスです。

とにかくスリルの連続、常に死と隣り合わせで落ち着くヒマがありません。

うまい表現かどうかはわかりませんが、いい意味で緩急がなく、常に緊急事態のような小説です。

アクション要素が強めで疾走感のある物語になっているので、一気に読み進めることができますよ。

また、常に駆け足で進んでいくような小説でありながら、たいへんに密度が濃く、無駄なシーンがほとんどないのも特徴ですね。

何気ないちょっとしたできごとでも後々に伏線となって生きてきますので、さりげない描写にも注意を払って読み進めるとより楽しめると思います。

古葉慶太編と古葉瑛美編

標識

本作は、1997年の古葉慶太編と、それから約20年が経過した2018年の古葉瑛美(コバエイミ)編に分かれていて、それが交互に語られます。

古葉慶太編

古葉慶太編は、1997年の香港返還前夜の各国の謀略に巻き込まれながらも特別な立ち位置を確保していく元官僚の古葉慶太の活躍が描かれています。

本作のメインとなるのは、主にこの古葉慶太編で、陰謀うず巻く各国情報機関との駆け引きや、胡散臭い「負け犬」仲間たちとのやり取りもここで描かれています。

古葉瑛美編

一方、古葉瑛美編は、古葉慶太の物語の約20年後を描いていて、慶太の関係者と思われる瑛美が、20年前に何があったのかを徐々に知らされていくという物語になっており、本作の解決編に当たります。

古葉瑛美編を効果的に差しはさむことによって、メインとなる古葉慶太編のわかりづらい箇所を整理してくれています。この点は本当に助かりました。

それと同時に、古葉慶太編で活躍していた古葉慶太とその仲間たちは20年後にはどうなったのか?とやきもきさせるような効果も担っていますね。

古葉慶太とその仲間が個性的

主人公の古葉慶太は、大富豪マッシモの指示により、数名の仲間+1名の女性ボディーガードとともに行動することになります。

その仲間たちは国籍も性格も置かれている状況もみんなバラバラ。

しかしその誰もが人生につまづきを感じていたり、緊急でお金を稼がなければならなかったりと複雑な事情を抱えています。

そういう事情を利用されて、見知らぬメンバー同士で組んで危険な仕事に着手せざるを得なくなっていくわけですが、このあたりの事情なんかもとてもおもしろく描かれています。

追い詰められた者たちの負け犬(アンダードッグス)根性がとてもいいんですよ!

負け犬仲間は、みんな仲間にも隠している特殊な事情などを抱えていて、仲間同士でそれを見抜き見抜かれの油断ならないやり取りを続けながらも、いざというときには協力して危機を乗り切っていく。アツいですねえ!

とくに主人公の古葉慶太に関しては、一般人とは思えない胆力、行動力と、元官僚らしい緻密な計算、入念な下準備で危地を乗り越えていくしぶとさがあります。

正直、自分の命だけでも助かれば御の字という状況で、ちゃっかりと自分が損をしない判断をしている点がすごすぎて、ここが本作の見どころの一つですね。

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二転三転する物語

本作、物語が二転三転していきます。

数ページ前の描写は覆されるためにある、といっても過言ではないほど目まぐるしく展開が翻されていきます。

人物関係も、ほんのちょっと目を離したスキに敵が味方に、味方が敵に、といった感じで非常に慌ただしいんですよ。

登場人物の誰もが腹に一物あるといった態度で、これほど仲間が信用できない小説もめずらしいです(笑)

誰がどの派閥に属して行動しているのか、というところは本当に混乱する箇所なので、なんとか整理して読み進めていきたいところですね。

本当に数ページごとに「予想を裏切る展開」が続くので、正直なところ、途中からは書いてあることが全然信じられなくなってしまいました。

ここに書いてあることも数ページ後にはくつがえされるんだろうな、と思いながらの読書となったので、よく練られた伏線というよりは場当たり的なくつがえし展開といった印象が強くなってしまったんです。

読む側の意表をつくなら、伏線を伏線と感じさせない仕掛けがもう少しあっても良かったかなと思いました。

バイオレンスな描写が多い

本作、アクションシーンが多めです。

そういったアクションシーンは派手で迫力があって、その描写も頭のなかで勝手に映像化されてしまうくらいうまいんですよ。

しかし、それと同時に、本作はとにかくアンダーグラウンド感が強すぎて、バイオレンスで痛々しいシーンも多かったです。

そういう描写が苦手な人にはもしかしたら向かないかもしれませんね。

私にとっても普段なら読まない系統の物語なので、新鮮でどんどん読み進めることができましたが、バイオレンスなシーンはちょっと苦手でしたね。

香港の固有名詞が覚えづらい

本作のメインとなる舞台は、中国返還前の香港です。

なのでどうしても香港の地名や中国系の固有名詞が増えてきます。

頻繁に登場する読み慣れていない香港の固有名詞(地名、食べ物など)がとにかく読みづらく、覚えづらかったです。

正直、地名が連続して登場するシーンは、軽く読み飛ばしながらの感じになりましたね。(冒頭に地図をつけてくれているのを忘れていました。これを思い出していればもう少しわかりやすかったかもしれません)

しかし、香港の固有名詞が読みづらい箇所を読み飛ばしながらでも、物語を追う上では問題なく読み進めることができますので心配はいりませんよ。

 

 

終わりに

次々と主人公の古葉慶太を襲う危険にハラハラし、各国情報機関のやり口にドキドキしっぱなしの一冊でした。

正直、かなり味付けがこってりしたアクションサスペンス小説で、密度も濃いので読んでいて疲れてしまうところもありましたが、それでも先が気になってガンガン読み進めてしまうような読書となりました。

本記事を読んで、長浦さんの長編小説『アンダードッグス』を読んでみたいなと思いましたら、ぜひ手に取ってみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

▼第164回直木賞候補作をまとめています。

つみれ

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