こんにちは、つみれです。
第164回直木賞候補(2020年下半期)の6作品を読み終えましたので、各作品を振り返ってまとめたいと思います。
それではさっそく書いていきます。
※2021年1月20日追記
第164回直木賞は、西條奈加さんの『心淋し川』が受賞しました。
おめでとうございます!
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目次
第164回直木賞候補6作まとめ!
『汚れた手をそこで拭かない』/芦沢央
第164回直木賞候補の1作目は、芦沢央さんのミステリー短編集『汚れた手をそこで拭かない』です。
収録された5編はともに、読み終わったあとの後味の悪さが魅力の「イヤミス」(嫌な気分になるミステリー)。
- 「イヤミス」が好き
- ミステリー短編集が読みたい
- 「焦燥感」「緊迫感」のある物語が好き
登場人物が自分に都合の悪いことをごまかしたり隠したりしようとして、結局、それがバレてしまったときの「焦燥感」「切迫感」などが、芦沢さんの端正な文章で綴られています。
特におすすめなのは2編目「埋め合わせ」ですね!
緻密に計算された不穏さ全開の5編を味わっていただきたい作品です。
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作品情報
書名:汚れた手をそこで拭かない
著者:芦沢央
出版:文藝春秋(2020/9/26)
頁数:237ページ
『八月の銀の雪』/伊与原新
第164回直木賞候補の2作目は、伊与原新さんの短編集『八月の銀の雪』です。
収録の5編は、心がじんわりとあたたかくなるような優しい物語となっています。
- じんわりと心があたたかくなるような短編が読みたい
- 普通の人たちの再生の物語、再出発の物語が好き
- 陰鬱な物語・殺伐な物語に疲れてしまった
作者の伊与原さんは以前に大学の理学部助教として働いていたことがあるそうで、本作の各編を彩る多岐にわたる自然科学的要素はその面影を濃厚に残しています。
まさに「人間ドラマ」と「自然科学」を融合させためずらしい作風。
表題作「八月の銀の雪」、「玻璃を拾う」の2編が特によかったです。
個人的には、今回の直木賞候補作のなかでイチオシの作品がこの『八月の銀の雪』となります。
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作品情報
書名:八月の銀の雪
著者:伊与原新
出版:新潮社(2020/10/20)
頁数:255ページ
『オルタネート』/加藤シゲアキ
第164回直木賞候補の3作目は、加藤シゲアキさんの青春小説『オルタネート』です。
「オルタネート」という高校生専用のSNSアプリを軸に、3人の若者の葛藤と成長を描いた作品となっています。
- 青春物語が読みたい
- 複数の物語が並行で進行する小説が好き
- SNS・マッチングアプリをテーマにした物語が読みたい
3人の主人公を物語の主軸に据え、3つのストーリーが交互に語られていく群像劇スタイルが特徴で、各物語が交差するシーンが楽しめたりとよく練り込まれた一作です。
また、マッチングアプリや、遺伝子情報による相性診断、LGBTなど、多様なテーマを物語中に組み込んでおり、現代社会に生きる一人の書き手としての加藤シゲアキさんの洞察に触れられる作品でもありました。
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作品情報
書名:オルタネート
著者:加藤シゲアキ
出版:新潮社(2020/11/19)
頁数:384ページ
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『心淋し川』/西條奈加
第164回直木賞候補の4作目は、西條奈加さんの時代小説『心淋し川』。
本作は、江戸時代が舞台の人情もの6編を集めた連作短編集です。
- 人情ものが好き
- 時代小説が好き
- 江戸時代の庶民の生活に興味がある
- わかりやすいハッピーエンドよりも解釈の分かれる物語が好き
千駄木町の一角に流れる淀んだ川「心淋し川」の両岸に並ぶ長屋に住んでいる、さまざまな事情を抱えた人物たちの一筋縄ではいかない人生を、切なく人情味あふれる筆致で綴っています。
人と人の関わりと心の動きをメインに描いた作品ですが、ミステリー的な味わいや連作短編ならではの仕掛けなど、多様な楽しみ方ができる一冊です。
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作品情報
書名:心淋し川
著者:西條奈加
出版:集英社(2020/9/4)
頁数:248ページ
『インビジブル』/坂上泉
第164回直木賞候補の5作目は、坂上泉さんのミステリー小説『インビジブル』です。
大戦後に大阪で起きた連続殺人事件に挑む刑事たちを描いた長編作品となっています。
- 警察もの、バディものが好き
- 裏社会の事情に興味がある
- 大戦中、大戦直後の世相や事件について知りたい
読者に対し謎を投げかけ、それを解く過程で楽しませるタイプのミステリーではなく、あくまで物語・世界観を楽しむタイプのミステリーです。
ソリのあわない刑事バディが、仕事を通してお互いに認め合っていく様子に胸が熱くなります。
また、大戦中・大戦直後の大阪の雑多で混沌とした雰囲気を濃厚に伝えるダークな筆致が特徴的ですが、何より驚いたのが本作を書いたのが平成生まれの若手作家だということ。
若手作家の描く昭和中期の世界をぜひ味わっていただきたい作品です。
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作品情報
書名:インビジブル
著者:坂上泉
出版:文藝春秋(2020/8/26)
頁数:352ページ
『アンダードッグス』/長浦京
第164回直木賞候補の6作目は、長浦京さんのアクションサスペンス作品『アンダードッグス』です。
香港返還(1997年)直前の各国情報機関同士のキナ臭いやり取りに巻き込まれながら、主人公の古葉慶太たちが重大な任務を遂行していく長編小説です。
- アクションサスペンスが読みたい
- バイオレンスな物語が好き
- 先が読めない展開の物語が好み
- 香港返還に関する小説が読みたい
とにかくスピード感・スリル感にあふれる一作で、物語は緊張の連続、常に死と隣り合わせで落ち着くヒマがまったくありません。
予想を裏切る展開の連続で、先が読めないおもしろさという意味では候補作随一。
エネルギッシュでバイオレンスなアクションドラマが好きならおすすめの一作です。
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作品情報
書名:アンダードッグス
著者:長浦京
出版:KADOKAWA(2020/08/19)
頁数:400ページ
終わりに
今回、初めて直木賞候補作を選考会までに全部読むというチャレンジをやってみました。
普段、私が読まないような作品にも出会うことができ、大変たのしかったです。
本記事を読んで、第164回直木賞候補の6作に興味を持たれましたら、ぜひ手に取って読んでみてください。
また、各作品の個別記事も書いていますので、詳細を知りたい場合はそちらも読んでいただけると嬉しいです!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
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