ベレニス

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2022.04.29)

【感想】「ベレニス」/エドガー・アラン・ポー:喪失感と不気味さがダイレクトに伝わる一編!

こんにちは、つみれです。

このたび、アメリカのミステリー作家、エドガー・アラン・ポーの短編「ベレニス」を読みました。

 

快活な少女だったベレニスが病を得て変貌していくのを尻目に、語り手・イジーアスの特殊な性向が露わになっていく怪奇色強めの短編です。

 

本記事は『ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人』所収の一編「ベレニス」について書いたものです。

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
短編名:ベレニス(『ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人』所収)

著者:エドガー・アラン・ポー
出版:KADOKAWA(2022/3/23)
頁数:16ページ

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ラストの異常性と猟奇性がヤバい!

ラストの異常性と猟奇性がヤバい

私が読んだ動機

本編が収録されている『ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人』が、私が所属している文学サロン「朋来堂」の「ミステリ部」2022年4月の課題図書だったので読みました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 短めの物語を読みたい
  • 異常で猟奇性の強い物語が好き

あらすじ・作品説明

先祖伝来の館で一緒に育ったいとこ同士のイジーアスとベレニス。

 

イジーアスは生まれつき病気がちで口数が少ない性質の少年で、一方、ベレニスは天真爛漫かつ元気溌溂な少女だった。

 

しかし、ベレニスは病を得、痙攣の発作をたびたび起こすようになり、生来の快活さを失っていった。

 

イジーアスはそんなベレニスに対し、病的な態度を取るようになる。

完成度が高い短編怪奇小説

机の上の本と羽根ペン

「ベレニス」は極めて短い物語ながら高い完成度を誇る怪奇小説です。

文庫本で20ページに満たない短い物語ですが、そのなかで伏線がしっかりと張られており、ラストシーンのなんともいえない不気味さが映えています。

短編怪奇小説としてかなり読みやすく、著者が意図した「ゾワッとくる不気味さ」がわかりやすいのが良いですね。

 

読書に慣れていない人にもおすすめの一編ですよ。

 

メインは二名の登場人物

男女のシルエット

メインキャラはイジーアスという男性とベレニスという女性の二名。

彼ら二人はいとこ同士の関係にあり、幼いころからとある館で一緒に育ちました。

本作の語り手でもあるイジーアスは、生まれつき病気がちで口数が少ない性質の持ち主で、一つのことに異常な執着を示す驚異的偏執狂(モノマニア)の傾向があります。

一方、従妹のベレニスはもともと天真爛漫・元気溌溂な美少女でしたが、不治の病にかかってしまい、その快活な性格が失われていきます。

ベレニスはたびたび痙攣の発作を起こすようになり、しかも発作後には死と見分けがつかないほどの失神状態になってしまいます。

登場人物が最小限に抑えられており、余計な演出がない分、本作の伏線の巧さやラストの不気味さが映えています。

喪失感と不気味さ

封筒と花びら

本作の喪失感と不気味さは、そのまま二人のメインキャラ・ベレニスとイジーアスの二人の性質に由来します。

喪失感

枯れた花と夕焼け

本作全体に漂う喪失感の発生源は、「ベレニスの変貌」にあります。

本作は短編ということもあり、昔日のベレニスの描写はそれほど多くはありません。

それでもその少ない描写から、かつてのベレニスが元気で健康的な少女だったことが存分に伝わってきます。

そんな彼女が病によって見る影もなく変貌。

短い物語のなかで強烈に喪失感を覚えさせられる作りになっていますね。

不気味さ

不気味な尖塔

従来はとても明るかったベレニスに対し、語り手のイジーアスはもともとどこか陰鬱とした性質の持ち主です。

ただ暗いだけではない異常性を感じさせるのが、イジーアスの驚異的偏執狂という性向。

彼の独白部分では偏執的な精神世界に住む人がまとう不穏な空気を味わうことができます。

 

とりわけイジーアスの語りが終盤にさしかかると、その異常さと猟奇性の強さに思わず背筋が凍るほどの不気味さを体験することができますよ。

 

ラストの描写が秀逸

図書室の本棚

本作はなんといってもラストの描写が極めて秀逸です。

イジーアスが最終的にとった行動について、本作は直接的にそのシーンを描きません。

決定的なシーンの描写をあえて省き、あくまでその行動の結果のみを示すことで、間接的に「何があった」かを読者に悟らせるという趣向です。

これはイジーアスが「瞑想」状態で沈思黙考しているときの精神状態を表しつつ、読後に不気味な余韻を残すという二重の意味ですばらしい効果をもたらしています。

 

一見遠回りな手法に思えますが、読者に時間差で不気味さを感じさせるという意味で秀逸な表現となっていますね。

 

終わりに

「ベレニス」は、快活な少女だったベレニスが病を得て変貌していくのを尻目に、語り手・イジーアスの特殊な性向が露わになっていく怪奇色強めの短編です。

 

短編だからこそ、ポーのストーリーテラーとしての純粋な技巧が光る一編だと思いましたね。

個人的にはかなり好きな物語でした。

 

本記事を読んで、エドガー・アラン・ポーの「ベレニス」がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ『ポー傑作選2 怪奇ミステリー編 モルグ街の殺人』を手に取って読んでみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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