六人の嘘つきな大学生

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2021.10.13)

【感想】『六人の嘘つきな大学生』/浅倉秋成:優秀な学生たちの仮面が剝がれ落ちていく就活ミステリー!

こんにちは、つみれです。

このたび、浅倉秋成(アサクラアキナリ)さんの『六人の嘘つきな大学生』を読みました。

 

新進気鋭のIT企業の最終選考で、優秀な就活生6人の仮面が次々と剥がれ落ちていく不穏なミステリー小説です。

 

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
書名:六人の嘘つきな大学生

著者:浅倉秋成
出版:KADOKAWA(2021/3/2)
頁数:304ページ

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優秀な学生たちの仮面が剝がれ落ちていく就活ミステリー!

優秀な学生たちの仮面が剝がれ落ちていく就活ミステリー

私が読んだ動機

第12回山田風太郎賞候補作にノミネートされ、興味が湧いたので読みました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 就職活動で苦労した経験がある
  • 不穏な雰囲気の物語が読みたい
  • 二転三転する物語が好き

あらすじ・作品説明

新進気鋭のIT企業スピラリンクスの新卒採用最終選考に残った6人の優秀な就活生。

 

最終選考は全員合格も十分あり得る和気あいあいとした「チームディスカッション」のはずだった。

 

6人は最終選考を全員で通過するために協力体制を整える。

 

しかし、突然採用担当者から「採用枠が一つに変わった」という衝撃の連絡が入る。

 

新たに提示されたディスカッションの議題は、「話し合いで6人のなかから1人の内定者を決める」というものだった。

 

協力すべき心強い仲間だったはずの6人は一転ライバル同士となり、彼らは疑心暗鬼の渦に囚われていく。

就活ミステリー

スーツのボタンを留める男性

本作『六人の嘘つきな大学生』は就職活動をテーマにした「就活ミステリー」です。

スピラリンクスは、成長著しい新進気鋭のIT企業で初任給50万円を誇る人気企業。

そんな超人気企業が初めて行う新卒採用の最終選考に残ったのは、6人の優秀な就活生たちです。

最初、彼らは採用担当者から「全員が合格することも十分あり得るチームディスカッション」と聞かされていました。

なので6人は一ヵ月後の最終選考に向け、全員合格を目標に打合せを繰り返します。

ところが、突然採用担当から通達されたのは「採用枠が一つに変わった」ことと、最終選考の内容変更。

当日のグループディスカッションの議題は「六人の中で誰が最も内定に相応しいか」を議論していただく、というものに変更させていただきます。

 

『六人の嘘つきな大学生』kindle版、位置No.549

穏やかに行われるはずだった最終選考は、一転、たったひとつの内定を奪い合う「イス取りゲーム」に変わっていきます。

 

いったん喜ばせておいてから奈落に突き落とす感じ。

この絶望感がすごい・・・!

 

六通の封筒

たくさんの封筒

最終選考の議論の途中、会議室のなかで六通の不審な封筒が見つかります。

封筒には六人の最終選考のメンバー一人ひとりの名前が書かれていました。

メンバーの一人が封筒の一つを開けると、なんと中にはその人物が「人殺し」であることを告発する紙片と、その事実を証明する複数の写真が入っていたのです。

それを皮切りにこれまでの人当たりの良さを裏切るような、メンバーたちの「嘘」が次々に露わになっていきます。

ディスカッションでは、内定にふさわしい人物を選び出すという本来のテーマに加え、封筒を用意した「犯人」は誰かという新たなテーマが話し合われていくことに。

次第に議論の趣旨は「優良企業スピラリンクスにふさわしい優秀な人物は誰か」から「6人のなかで最もマシなのは誰か」に変わっていきます。

なごやかな最終選考の姿はすでになく、そこで展開されるのは疑心暗鬼を生ずる醜い心理戦です。

優秀な就活生の裏の顔

パソコンに向かう女性

本作では、IT企業スピラリンクスの採用で最終選考まで勝ち残った6人の就活生が登場します。

今を時めく超人気企業の新卒入社にリーチをかけた6人ですから、きわめて優秀な人物ばかりです。

知性的でリーダーシップを発揮する爽やか好青年、体育会系で元球児のムードメーカー、海外旅行好きで語学力に秀で人脈も多い美女、データ収集のプロ、などなど。

 

さすがは誰もが羨む優良企業の最終選考に残った面々だと思わされます。

 

しかし、本作のタイトル『六人の嘘つきな大学生』からも想像できる通り、それだけでは終わらないのがこの作品。

彼らが爽やかな笑顔の裏に隠している「本性」が、六通の封筒によって次第に明らかになっていくえげつない展開がなんとも魅力な一作となっています。

優秀な人物に見えていたはずの彼らの闇の面が少しずつ垣間見えていく、読者の好奇心を刺激しまくる趣味の悪いワイドショー的な展開が実におもしろいです。

「この関門さえクリアすれば入社への切符を手に入れることができる」という状況で、人はどのような判断をするのでしょうか。

選考メンバーたちはそれまでつけていた善人の仮面をかなぐり捨てます。

そんな彼らの「人間らしさ」も本作の見どころの一つですね。

就活の「他人を蹴落とす競争」という一面をめちゃくちゃ強調していて、妙な息苦しさがあります。

企業側も学生側も自分の短所を語らず、長所だけを最大限に美化してアピールする「就活のバカらしさ」を痛烈に皮肉っているのが最高ですね。

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解決編が良い!

コーヒー

本作の良いところは、最終選考での6人の駆け引きの描写で物語を終わらせず、それから8年後の後日談がかなりのボリュームで描かれていること。

この後日談が実質の解決編となっており、「封筒を置いた人物は誰だったのか」「その目的はなんだったのか」という謎に向き合っていく展開となっています。

 

8年の時を経て、社会人として働いているかつてのライバルたち一人ひとりに話を聞いていくわけですが、これが最高なんですよ。

 

物語前半部で嫌というほど彼らのダークサイドを見せつけられてきたわけですが、後半部では彼らの意外な一面も明らかになります。

物語的にもミステリー的にも読みごたえ抜群の解決編となっていますよ。

就活で苦労した人ほど共感できる

スーツの男性

就職活動というと、程度の差こそあれ苦労した経験のある人も多いのではないでしょうか。

私もその一人です。

何十社ものエントリーシートを書いては落ち、書いては落ち、精神的にもかなり追い詰められました。

就活については「二度と経験したくない」と思っている一方で、「いい経験だった」「いい思い出だ」とも思っています。

本作はそのような過去に就活で苦労した人の複雑な心情が見事に描き出されています。

就活という不思議な文化に対する皮肉や嫌味に満ちている一方で、その経験を強く懐かしむような部分もある作品なんですよ。

まさに就職活動経験者が「就活」に対して持つ感情と似たものが物語の根底に流れていて、読み進めるうちについつい共感してしまうんです。

 

就活に苦労した人、特別な思い出がある人はぜひとも読んでもらいたい一作です。

 

 

 

終わりに

『六人の嘘つきな大学生』は、新進気鋭のIT企業の最終選考で優秀な就活生6人の仮面が次々と剥がれ落ちていく長編ミステリー小説です。

 

なんといっても「一面を見ただけでは人は判断できない」という教訓じみた内容が魅力!

 

それまで爽やか属性だった6人の仮面が削げ落ち、ほの暗い一面が少しずつ垣間見えていく不穏さが何とも言えず良かったですね。

「これ以上彼らの闇の面を見たくない」という気持ちと、「怖いもの見たさで読み進めたい」という気持ちが相半ばする複雑な読書でした。

しかし、それだけでは終わらないのが本作の良いところ。

仕掛けたっぷりの解決編で読後はスッキリとさせてくれます。

本記事を読んで、浅倉秋成さんの『六人の嘘つきな大学生』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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