2022年本屋大賞ノミネート10作まとめ

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  (最終更新日:2022.04.12)

【2022年】本屋大賞ノミネート10作まとめ!

こんにちは、つみれです。

 

2022年本屋大賞ノミネート作の10作全てを読み終えましたので、各作品を振り返ってまとめたいと思います。

 

本屋大賞とは「書店員の投票でその年に最も売りたい本を決める」文学賞です。

※2022年4月6日追記

2022年本屋大賞は、逢坂冬馬(アイサカトウマ)さんの『同志少女よ、敵を撃て』が受賞しました。

おめでとうございます!!

2022年本屋大賞の順位は下記の通りです。

  • 大賞:『同志少女よ、敵を撃て』/逢坂冬馬
  • 2位:『赤と青とエスキース』/青山美智子(アオヤマミチコ)
  • 3位:『スモールワールズ』/一穂(イチホ)ミチ
  • 4位:『正欲(セイヨク)』/朝井(アサイ)リョウ
  • 5位:『六人の嘘つきな大学生』/浅倉秋成(アサクラアキナリ)
  • 6位:『夜が明ける』/西加奈子(ニシカナコ)
  • 7位:『残月記(ザンゲツキ)』/小田雅久仁(オダマサクニ)
  • 8位:『硝子(ガラス)の塔の殺人』/知念実希人(チネンミキト)
  • 9位:『黒牢城(コクロウジョウ)』/米澤穂信(ヨネザワホノブ)
  • 10位:『星を(すく)う』/町田(マチダ)そのこ

それではさっそく書いていきます。

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2022年本屋大賞まとめ!

大賞:『同志少女よ、敵を撃て』/逢坂冬馬

戦争ですべてを失った少女の復讐譚

2022年本屋大賞受賞作は、逢坂冬馬さんの戦争文学小説『同志少女よ、敵を撃て』。

突如襲来したドイツ軍により故郷を喪ったソ連の少女セラフィマが狙撃兵となり、復讐を胸に独ソ戦を戦い抜いていく物語です。

<あらすじ・作品説明>

第二次世界大戦中のソ連・モスクワ近郊の村で狩りをしながら平和に暮らしていた少女セラフィマ。

 

彼女は突然村を襲撃してきたドイツ軍により家族や友人を失う。

 

セラフィマは母を殺したドイツ人狙撃手への復讐を誓い、狙撃訓練学校で厳しい訓練を受ける。

 

女性狙撃隊の一員となったセラフィマは、狙撃手として独ソ戦を戦い抜いていく。

こんな人におすすめ!
  • 戦争文学小説を読みたい
  • 第二次世界大戦、特に独ソ戦に興味がある
  • 狙撃兵が活躍する物語を読みたい

本作は、もともとは狩りをしながら平和に暮らしていた少女セラフィマが、狙撃兵として仲間とともに戦う戦争文学小説です。

普通の少女が悲惨な経験・厳しい訓練を経て身も心も狙撃手に変わっていく過程や、緊迫感あふれる狙撃シーンが見どころ。

私は第二次世界大戦や独ソ戦について全く詳しくありませんでしたが、本作は記述も簡潔でわかりやすくて良かったです。

 

個人的にすこし独ソ戦に興味が出てくるくらいにのめり込みました。

 

作品情報
書名:同志少女よ、敵を撃て

著者:逢坂冬馬
出版:早川書房(2021/11/17)
頁数:496ページ

2位:『赤と青とエスキース』/青山美智子

優しくて温かい赤と青の物語

2022年本屋大賞2位の作品は、青山美智子さんの『赤と青とエスキース』。

一枚の絵画『エスキース』を軸に、さまざまな二人の関係を描いていく優しい連作短編です。

<あらすじ・作品説明>

オーストラリア・メルボルンの若手画家ジャック・ジャクソンが描いた一枚の「絵画」がいろいろな二人の人間関係を見守っていく。

 

下記4章が収録されている。

 

一章「金魚とカワセミ」

交換留学生として日本からメルボルンに渡った女子大生・レイは、現地の陽気な日系人・ブーと出会う。

 

彼らはレイが日本に帰るまでの間、「期限限定の恋」を楽しむことになる。

 

二章「東京タワーとアーツ・センター」

将来のことを真剣に考えないまま、成り行き任せで額縁職人の道を選んでしまった青年・空知(ソラチ)

 

それから8年、30歳になった空知はいまだに迷いを感じながら仕事をこなしていたところ、とある絵に出会う。

 

三章「トマトジュースとバタフライピー」

かつて、ベテラン漫画家タカシマの元でアシスタントをしていた砂川(スナガワ)が漫画界で大注目の賞を受賞。

 

とある喫茶店で行われた雑誌の対談企画で久しぶりに砂川に再会したタカシマは、若い天才の言動に劣等意識を抱いてしまう。

 

四章「赤鬼と青鬼」

輸入雑貨店で働く51歳の女性・(アカネ)はオーナーに仕事が認められ、海外での買い付けを担当することを打診される。

 

新しい業務に胸がふくらむ茜だったが、ある日彼女はパニック障害を発症し、休暇をとることになる。

 

別れた恋人の部屋にパスポートを置いてきてしまったことを思い出した茜は、休暇中に彼の元を訪れる。

こんな人におすすめ!
  • 優しくて温かい物語が好き
  • 連作短編を読みたい

本作『赤と青とエスキース』は、全4章で構成された連作短編です。

エスキース(仏:esquisse)とは下絵のこと。

全ての章において、語り手・その人物と関わりのある「もう一人」・一枚の『エスキース』の3者の関係性を深掘りしていきます。

「赤」と「青」がそれぞれ各章でどのような意味合いを持つのかを考えながら読むとめちゃくちゃおもしろい一作になっていますよ。

どんな人でも安心して読める、癒し効果の高い作品ですので、気になる人はぜひ手に取って読んでみてくださいね。

作品情報
書名:赤と青とエスキース

著者:青山美智子
出版:PHP研究所(2021/8/30)
頁数:248ページ

3位:『スモールワールズ』/一穂ミチ

どこかせつない家族を描いた短編集

2022年本屋大賞3位の作品は、一穂ミチさんの短編集『スモールワールズ』。

収録作6編はすべて家族をテーマとなっていますが、各編ごとに趣向・読み心地が異なっているバラエティに富んだ短編集です。

<あらすじ・作品説明>

さまざまな読み心地の短編6編を収録。

 

  • ぎこちない夫婦関係に不穏さを滲ませる妻と、父から虐待を受けている少年の交流を描く「ネオンテトラ」
  • 離婚して出戻ってきた恐怖の姉と高校生の弟のやり取りをユーモアたっぷりに描く「魔王の帰還」
  • 初孫の誕生に喜ぶ祖母と娘夫婦の穏やかな日常の裏に隠された過去をひも解いていく「ピクニック」
  • 被害者遺族の女性と加害者の男性が手紙で交流を続ける様子を描く「花うた」
  • 離婚後長い時を経て再開した父子の奇妙な同居生活を描く「愛を適量」
  • 一年ぶりに連絡を取った先輩と後輩の旅先での何気ないできごとを描く「式日」

6編ともに「家族」をテーマにしていながら、全く違った読後感を提供してくれる短編集。

こんな人におすすめ!
  • 家族がテーマの物語を読みたい
  • いろいろな読後感を味わえる短編集が読みたい

「家族」という共通のテーマはありますが、実質いろいろなジャンルの盛り合わせといった印象の本短編集。

イヤミス風味の苦みたっぷりな作品があるかと思えば、読後の余韻が爽やかな青春ものがあったりと多彩な読後感で読者を楽しませてくれます。

個人的におすすめなのは下記のとおりです。

  • 2編目「魔王の帰還」
  • 3編目「ピクニック」
  • 5編目「愛を適量」

いろいろな読み心地・読後感を味わえるので、6編のうち何編かはお気に入りの作品が見つかるはずです。

作品情報
書名:スモールワールズ

著者:一穂ミチ
出版:講談社(2021/4/22)
頁数:306ページ

4位:『正欲』/朝井リョウ

「多様性」を称賛する風潮に切り込む

2022年本屋大賞4位の作品は、朝井リョウさんの『正欲』。

「性的マイノリティ」をテーマに、「多様性」称揚の風潮を風刺する問題提起色の強い一作です

<あらすじ・作品説明>

「社会の正義」を強く意識する検事・寺井啓喜(テライヒロキ)は、不登校の一人息子・泰希(タイキ)がとある動画配信者に触発され、自身も動画投稿を開始したことに悩む。

 

寝具店に勤める桐生夏月(キリュウナツキ)は、とある理由で生きづらさを感じているが、その生きづらさを共有できる一人の人物と再会する。

 

学祭実行委員の神戸八重子(カンベヤエコ)は、外見偏重のイベント「ミスコン」の開催に違和を感じ、新たに「多様性」をテーマに据えた「ダイバーシティフェス」の開催を閃く。

 

2019年5月1日の改元に向け、彼ら3人の視点を切り替えながら物語は展開する。

こんな人におすすめ!
  • 現代社会が抱える問題に興味がある
  • 性的マイノリティをテーマにした小説が読みたい
  • 「多様性」を称揚する風潮に違和感を覚える
  • 複数人物の視点を切り替えながら展開する物語が好き

「性的マイノリティ」というデリケートなテーマを扱っていながら、ここまで自然に人の心に訴えかける物語を描けるのか、と身震いする想いで読みました。

 

冒頭からラストまで首尾一貫して「一つの主張」を曲げずに描き切っており、朝井リョウさんの「主張」がガンガンと響いてきます。

 

好みの分かれる作品だとは思いますが、「多様性」を無批判に褒めたたえる昨今の風潮に違和感を覚えている人におすすめの一作です。

作品情報
書名:正欲

著者:朝井リョウ
出版:新潮社(2021/3/26)
頁数:386ページ

5位:『六人の噓つきな大学生』/浅倉秋成

優秀な学生たちの仮面が剝がれ落ちていく就活ミステリー

2022年本屋大賞5位の作品は、浅倉秋成さんの『六人の噓つきな大学生』。

新進気鋭のIT企業の最終選考で、優秀な就活生6人の仮面が次々と剥がれ落ちていく不穏なミステリー小説です。

<あらすじ・作品説明>

新進気鋭のIT企業スピラリンクスの新卒採用最終選考に残った六人の優秀な就活生。

 

最終選考は全員合格も十分あり得る和気あいあいとした「チームディスカッション」のはずだった。

 

六人は最終選考を全員で通過するために協力体制を整える。

 

しかし、突然採用担当者から「採用枠が一つに変わった」という衝撃の連絡が入る。

 

新たに提示されたディスカッションの議題は、「話し合いで六人のなかから一人の内定者を決める」というものだった。

 

協力すべき心強い仲間だったはずの六人は一転ライバル同士となり、彼らは疑心暗鬼の渦に囚われていく。

こんな人におすすめ!
  • 就職活動で苦労した経験がある
  • 不穏な雰囲気の物語が読みたい
  • 二転三転する物語が好き

紆余曲折を経て、人気IT企業の最終選考は「六人の中で誰が最も内定に相応しいか」を議論するという内容に決定。

議論の最中に見つかった不審な封筒が見つかります。

封筒のなかには、最終選考に残った6人にとって不都合な事実が書かれた紙片が入っており、それを材料に就活のライバルを蹴落とす醜い心理戦が幕を開けます。

「これ以上彼らの闇の面を見たくない」という気持ちと、「怖いもの見たさで読み進めたい」という気持ちが相半ばする一冊でした。

作品情報
書名:六人の嘘つきな大学生

著者:浅倉秋成
出版:KADOKAWA(2021/3/2)
頁数:304ページ

6位:『夜が明ける』/西加奈子

夜はいつ明けるのか

2022年本屋大賞6位の作品は、西加奈子さんの『夜が明ける』。

高校時代に出会った「俺」と「アキ」の二人の人生を通して、現代社会が抱える問題をあぶり出す物語です。

<あらすじ・作品説明>

高校時代に俺は深沢暁(フカザワアキラ)という男に出会う。

 

暁はフィンランドの無名の俳優、アキ・マケライネンにそっくりだったので、俺はそれを教えてやった。

 

それ以来、暁はアキの言動を真似るようになり、周囲からも「アキ」と呼ばれるようになる。

 

高校時代から33歳までの俺とアキの人生を交互に描く。

こんな人におすすめ!
  • 貧困・虐待・過重労働などのテーマに興味がある
  • 現代社会が抱える問題をテーマにした物語を読みたい
  • 二人の視点を切り替えながら展開する物語が好き

もともと映画好きだった俺は、いかつい風貌で孤立していた深沢暁を見てフィンランドの無名俳優「アキ・マケライネン」に似ていることに気づきます。

実際に俺はそのことを暁に教えてやると、暁はアキ・マケライネンにドはまりし、その言動を真似るようになります。

下手をすれば孤立しっぱなしだった恐れのある暁は、その「モノマネ」が周囲に受け、いつしか「アキ」と呼ばれるように。

本作は「アキ・マケライネン」で繋がった俺とアキの友情の物語なのです。

そんな青春感あふれる高校時代に反し、社会に出てからの二人の人生は苦難の連続。

本作は、さまざまな社会問題を交えながら彼ら二人の物語を交互に紡いでいきます。

作品情報
書名:夜が明ける

著者:西加奈子
出版:新潮社(2021/10/20)
頁数:416ページ

7位:『残月記』/小田雅久仁

月がモチーフのディストピア短編集

2022年本屋大賞7位の作品は、小田雅久仁さんの『残月記』。

「月」をモチーフにした「異世界」を舞台にしたSF、もしくはファンタジー短編集です。

<あらすじ・作品説明>

「月」にまつわる下記3編を収録した短編集。

 

「そして月がふりかえる」

家族とレストランに食事をしにきた大槻高志(オオツキタカシ)は、トイレに行くため席を外す。

 

トイレで不気味な男とすれ違い、席に戻る途中で「月」が振り返った。

 

月の裏面が完全に姿を現すと、家族は高志のことを忘れていた。

 

高志の人生は同姓同名の男に取って代わられてしまったのだ。

 

「月景石」

とある町で男と一緒に暮らしている澄香(スミカ)は、かつて叔母の桂子(ケイコ)から不思議な石「月景石」を譲り受けた。

 

この月景石を枕の下に潜ませて眠ると悪い夢を見るという。

 

ある日、澄香は月景石を枕の下に入れて眠りに落ちた。

 

「残月記」

月昂(ゲッコウ)」という感染症が蔓延する近未来の日本。

 

「月昂」に感染した人間は、満月に近づくにつれて狂暴な一面が姿を現す。

 

家具職人の宇野冬芽(ウノトウガ)も「月昂」に感染し、隔離のために療養所に「強制収容」される運命が待ち受けていた。

 

彼は補導員の男にとある取引を持ち掛けられる。

 

冬芽の戦いの日々が始まった。

こんな人におすすめ!
  • SFやファンタジーが好き
  • 短編集が読みたい
  • 予測不能な「何でもあり」の物語が好き
  • 現実と地続きの「異世界」を楽しみたい

収録作3編はともに現実世界と地続きの「異世界」が、そして突然平和な日常を失う主人公たちの姿が描かれています。

いずれもすっかり変わり果ててしまった暗く重い世界を舞台としており、まさにディストピア短編集といった一冊。

3編すべてで「月」が特殊な役割を果たしており、その魔性の力による不穏さ全開のダークな物語を味わってほしいです。

作品情報
書名:残月記

著者:小田雅久仁
出版:双葉社(2021/11/18)
頁数:384ページ

8位:『硝子の塔の殺人』/知念実希人

奇妙なガラスの尖塔で起こる連続殺人

2022年本屋大賞8位の作品は、知念実希人さんの『硝子の塔の殺人』。

奇妙なガラスの塔で起こる連続殺人事件の謎を名探偵と医師のコンビが追っていく長編ミステリー小説です。

<あらすじ・作品説明>

雪山に空高くそびえる奇妙なガラスの塔に一癖も二癖もあるゲストたちが招かれる。

 

しかし、ホスト役の館の主人は自室で毒殺され、その翌日にはダイニングで別の殺人も発生。

 

連続する惨劇の謎に名探偵・碧月夜(アオイツキヨ)と医師・一条遊馬(イチジョウユウマ)が挑む。

こんな人におすすめ!
  • 本格ミステリーを読みたい
  • 「館もの」のミステリーを読みたい
  • 密室トリックが好き
  • クローズドサークルが好き
  • これまでいろいろな本格ミステリーを読んできた

『硝子の塔の殺人』は、人里離れた山奥に建てられた尖塔「硝子館」を舞台に惨劇が繰り広げられるクローズドサークル・ミステリーです。

クローズドサークルとは・・・何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱ったミステリー作品。

電話線が切られ、館への道も雪によって遮断されてしまうという典型的なクローズドサークル的状況に思わずワクワクしてしまいます。

また、本格ミステリー作品でよくある事象「ミステリーあるある」や、往年の名作ミステリーのウンチクにあふれているのも本作の特徴。

ミステリーに詳しければ詳しいほど楽しめる作品となっていますので、熟練のミステリー読者には特におすすめの一冊です。

逆にミステリーをあまり読んでいない場合は、最低限、綾辻行人(アヤツジユキト)さんの『十角館の殺人』を読んでから本作を読むことをおすすめいたします。

作品情報
書名:硝子の塔の殺人

著者:知念実希人
出版:実業之日本社(2021/7/30)
頁数:504ページ

9位:『黒牢城』/米澤穂信

戦国時代を舞台にした安楽椅子探偵ミステリー

2022年本屋大賞9位の作品は、米澤穂信さんの『黒牢城』。

戦国武将の荒木村重(アラキムラシゲ)が籠城中に直面する事件の謎を、敵将の黒田官兵衛(クロダカンベエ)が牢のなかから解き明かしていく一風変わった安楽椅子探偵ミステリーです。

<あらすじ・作品説明>

織田信長(オダノブナガ)の天下統一事業が軌道に乗り始めるなか、突如として謀反を起こした荒木村重。

 

村重の謀反を翻意させようと、黒田官兵衛は単騎で説得を試みるが、官兵衛は村重の居城有岡城(アリオカジョウ)地下の土牢に幽閉されてしまう。

 

織田軍との交戦が続くなか、村重の周辺でさまざまな謎が発生する。

 

謎解きに行き詰まった村重は、敵ながら稀世の知恵者である黒田官兵衛の頭脳を期待して土牢に向かう。

こんな人におすすめ!
  • 戦国時代を舞台にしたミステリーが読みたい
  • 戦国武将「荒木村重」「黒田官兵衛」が好き
  • 「安楽椅子探偵」もののミステリーが好き

本作のすごいところは歴史小説的な舞台に本格ミステリー的な謎解き要素を取り入れた点。

そしてなんといっても戦国時代きっての謀将・黒田官兵衛の扱い方のオリジナリティです。

織田信長に対し謀反を起こした荒木村重を翻意させるため、黒田官兵衛は単身で村重の居城・有岡城を訪ねます。

しかし村重はその説得に応じなかったばかりか、官兵衛を捕らえ城内地下の土牢に幽閉してしまいます。

この史実を利用し、牢のなかにいる黒田官兵衛を「安楽椅子探偵」に見立てて、有岡城中の荒木村重が直面する謎を解かせてみせたのが本作です。

歴史小説とミステリー小説をキワモノ的にくっつけたのでなく、まったく違和感を感じさせないレベルで両ジャンルをかけ合わせているバランス感覚が見事!

 

歴史小説としてもミステリー小説としても大変に完成度が高いおすすめの一冊ですよ。

 

作品情報
書名:黒牢城

著者:米穂信
出版:KADOKAWA(2021/6/2)
頁数:448ページ

10位:『星を掬う』/町田そのこ

賛否両論に分かれるさまざまな母娘の物語

2022年本屋大賞10位の作品は、町田そのこさんの『星を掬う』。

かつて自分を捨てた母・聖子(セイコ)と奇妙な共同生活を送ることになった千鶴(チヅル)が、いろいろな問題に触れていくなかで精神的に成長していく姿を描いた一冊です。

<あらすじ・作品説明>

パン工場で働く芳野(ヨシノ)千鶴はラジオ番組の賞金目当てに、とある夏の思い出を投稿。

 

自分を捨てた母・聖子との関係がまだ良好だった幼少期、母娘で各地を旅した古い記憶を投稿したのだ。

 

その放送を聞いて千鶴の前に現れたのは、聖子の娘を名乗る女性・恵真(エマ)だった。

 

紆余曲折を経て、千鶴は母・聖子や恵真らと奇妙な共同生活を送ることになる。

こんな人におすすめ!
  • 母娘の物語を読みたい
  • 現代社会が抱える問題に興味がある
  • 賛否両論で分かれる物語を味わいたい

本作は、過去に自分を捨てた母・聖子とその他複数の女性との共同生活に不本意ながらも参加することになった千鶴が、さまざまな問題に直面しつつも少しずつ成長していく物語です。

聖子と千鶴の関係だけでなく、他の同居女性たちの母娘関係についても細かな心情をすくい取りながら描写しています。

どの女性もいろいろな問題を抱えている上、DV(ドメスティックバイオレンス)や介護問題などの現代社会的な問題も絡んできて、読者にさまざまな問いかけを投げかけてくる一冊となっています。

賛否両論のありそうな作品ですが、ぜひ読んでみてくださいね。

作品情報
書名:星を掬う

著者:町田そのこ
出版:中央公論新社(20211/10/18)
頁数:328ページ

終わりに

2022年本屋大賞ノミネート作品を全部読んで簡単にまとめてみました。

本記事を読んで、本屋大賞ノミネート作に興味を持たれましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね。

 

候補作について個別に記事を書いていますので、詳細を知りたい場合はそちらも読んでいただけると嬉しいです!

 

ちなみに2022年本屋大賞ノミネート作のなかで個人的にズガンと響いた作品は朝井リョウさんの『生欲』です。

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

▼前回(2021年)本屋大賞ノミネート作の記事はこちら!

>>【2021年】本屋大賞ノミネート10作まとめ!

つみれ

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