月光ゲーム

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2022.03.12)

【感想】『月光ゲーム』/有栖川有栖:学生アリスシリーズ第1弾!

こんにちは、つみれです。

このたび、有栖川有栖(アリスガワアリス)さんの『月光ゲーム―Yの悲劇’88』を読みました。

 

火山の噴火によって学生たちがキャンプ場に取り残され、極限状態のなかで連続殺人が発生するクローズドサークル・ミステリーです。

 

「学生アリス」シリーズの第一作目です!

また、1989年の「このミステリーがすごい!」で第17位の作品でもあります。

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
書名:月光ゲーム Yの悲劇’88 (創元推理文庫)

著者:有栖川有栖
出版:東京創元社 (1994/7/10)
頁数:361ページ

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有栖川有栖の真面目なミステリー

月光のもとで起こる惨劇

私が読んだ動機

クローズドサークルものが読みたくて、インターネットで検索して見つけました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • クローズドサークルものが好き
  • 「読者への挑戦」に挑みたい
  • 青春ものが好き

あらすじ・作品説明

英都大学(エイトダイガク)推理小説研究会の夏合宿で、有栖川有栖は部長の江神二郎(エガミジロウ)らとともに矢吹山(ヤブキヤマ)にやってきた。

 

彼らがキャンプを楽しんでいたところ、矢吹山が噴火し、他の大学の学生グループとともにキャンプ場に閉じ込められてしまう。

 

陸の孤島となったキャンプ場で連続殺人鬼が学生たちを襲う。

クローズドサークル

火山の噴火

本作はキャンプ場が噴火によって孤立し、外界への往来が不可能になるクローズドサークル・ミステリーです。

クローズドサークルとは・・・何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱ったミステリー作品。

山の噴火によってクローズドサークルが形成されるという珍しい状況が本作のウリですね!

なんといっても本作最大の見どころは、クローズドサークルのなかで展開される正々堂々としたパズル的トリック、そして精緻な謎解きです。

 

非常に上質なクローズドサークル・ミステリーとなっていますので、興味のある人はぜひ読んでみてくださいね。

 

本格ミステリー×青春小説×パニック小説

キャンプ場

本作は、下記の通りいろいろな要素が絡み合うなんとも贅沢なミステリー小説です。

  • 本格ミステリー(クローズドサークル)
  • 青春小説
  • パニック小説

上にも書きましたが、本作では登場人物たちが「火山の噴火」によって退路が断たれ、孤立します。

「館」系のクローズドサークル・ミステリーのように、「閉じ込められる」ことに人間の悪意が介在しておらず、あくまで自然の力によるものです。

 

「じゃあ、緊張感がないじゃないか!」と思う人もいるかもしれませんが、決してそんなことはありません。

 

本作では、火山の噴火が断続的に起こるという非日常的なスリルと常に隣り合わせです。

つまり、普通の本格ミステリー要素に加え、パニック小説的な属性が付与されているのです。

学生たちが合宿に来たら、火山が噴火して閉じ込められるというパニック的状況のなか、なんと殺人まで起こる。

 

まさに弱り目に祟り目の極限状態。

いやー、これは絶対に経験したくないですよね。

 

疑心暗鬼の青春ミステリー

キャンプファイア

本作は、キャンプ場で偶然行き会った4つの学生グループが、協力して危地からの脱出を目指すという物語です。

「学生アリス」シリーズの名を冠しているように大学生しか登場せず、明らかに青春要素満載の状況設定です。

しかし、その学生たちのなかに殺人犯がいるという恐ろしい事実があります。

協力しなければ危険地帯からの脱出は難しいけれど、完全に信頼もできないという絶妙な人間関係。

信頼と不信の間で揺れる学生たちの心情に恋愛要素までも絡むことになり、まさに青春本格ミステリーといった一冊ですね。

大学生の瑞々しく甘酸っぱいストーリーが好きだという人にもおすすめの一冊となっています。(でも人は死にます)

本作は、ミステリー要素・青春要素・パニック要素が絶妙なさじ加減で配合されていて、めちゃくちゃおもしろかったです。

私は学生がメインで活躍する青春ものがけっこう好きなので、本作の雰囲気は最高でしたね。

 

ただ、私は絶対に経験したくない状況ですが。

 

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物語後半を描くプロローグ

本をめくる

本作は、冒頭部でプロローグが描かれています。

このプロローグ、実は時系列的には物語終盤にあたるワンシーンなんです。

ネタバレになるのでここで詳細は書きませんが、後半のエピソードが前倒しで描かれているのは読者に「とある先入観」を植え付けるための措置。

この措置によって本作がミステリー的におもしろくなっている側面は確かにあります。

一方で、このプロローグの存在によって、序盤の犠牲者が消去法的に絞り込めてしまうというデメリットがあります。

 

反対に、「プロローグに登場している人物は後半まで死なない」という予測も成り立ちますね。

 

この描写によって、本作序盤の緊張感が多少削がれているかなと思いました。

登場人物多すぎ問題

手を繋ぐ若者たち

本作において、私がもっとも頭を抱えたのが「登場人物多すぎ問題」です。

これは読む人によっては嬉しい要素かもしれませんが、私のように登場人物を覚えるのが苦手な人にとっては苦戦要素になります。

どのくらい登場人物が多いかと言うと、有栖川有栖らが所属する英都大学推理小説研究会を含め、3大学4グループ合計17名!

この17名が40ページまでに全員出てきます。

 

まさに大学生ラッシュ。

登場人物全員が大学生なので、差別化しづらく覚えるのに苦労してしまいます。

 

挙句の果てに、あだ名がついているキャラクターまで存在。

このあだ名も、読む人によってはキャラの特徴を覚える助けになるかもしれません。

ただ、このあだ名も「ベン」と「弁護士」などに至っては無駄に響きまで似通っていて、「ひえー、覚えられん!」となりましたね。

正直なところを言うと、私は最初の犠牲者が出たとき、「よし覚える人物が一人減ったぞ!」と思いました。最低。

読者への挑戦

飾られた手紙

本作終盤には、本格ミステリーによくある趣向の一つ「読者への挑戦」が用意されています。

「読者への挑戦」とは、ミステリーの作者が読者に対して贈る「ここまでですべての手がかり・ヒントを提示したから、謎を解いて真相を明らかにしてみなさい」という挑戦状です。

「読者への挑戦」が登場した時点で、謎解きに必要な全ての情報が出揃ったということ。

謎が解けるかどうかは読者の能力次第ということになります。

本作は、神業・離れ業のようなインパクトのある謎解きをウリにしているの作品ではありません。

細かいトリックを複合的に絡ませることによって、複雑な謎を形成しているタイプです。

「難しいけれどがんばれば解けそう」というギリギリのラインを攻めていて、ついつい「よっしゃ、解いたるで!」となります。

 

まあ、私は解けませんでしたが。

 

「読者への挑戦」は物語の流れをぶった切るので興ざめだという意見もあります。

でも私は「読者への挑戦」があると、「私は今、本格ミステリーを読んでいる!」と実感できてとても良いなと思います。

謎解きに自信がある人は、ぜひ本作の「読者への挑戦」にチャレンジしてみてくださいね。

本作では、この後に探偵・江神二郎による鮮やかな解決編が待っています。

惚れ惚れするほどカッコいいシーンですので、お楽しみに。

 

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最後に

本作は、登場人物が多くて覚えづらいことを除けば、極めて模範的、優等生的なミステリーです。

特に謎解き部分に関してはクオリティが非常に高く唸らされますが、なにより驚いたのはこれが有栖川有栖さんのデビュー作だということ。

デビュー作でこれほど緻密なトリックを組み立ててしまうというのだから空恐ろしいです。

 

月明かりのさすキャンプ場というロケーションも幻想的でよかったですね。

噴火でめちゃくちゃになりますが

 

本記事を読んで、有栖川有栖さんの『月光ゲーム―Yの悲劇’88』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます!

つみれ

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