ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2021.05.15)

【感想】『月光ゲーム』/有栖川有栖:学生アリスシリーズ第1弾!

こんにちは、つみれです。

私、クローズドサークルもの(外界との往来が断たれ孤立するミステリー)が大好きです。

インターネットで物色していると、有栖川有栖の「学生アリス」シリーズがクローズドサークルをメインにしているとのこと。

同作者の「作家アリス」シリーズは何作か読んでいるのですが、学生アリスの方はまだ読んだことがありません。

これは、いま読まずにいつ読むというのか!

ということで、学生アリスシリーズ第1弾『月光ゲーム―Yの悲劇’88』(創元推理文庫)を読んでみました。

おもしろかったです!

奇抜さはないものの、謎解きに正面から向き合った優等生的ミステリーといえるでしょう。

ダイイング・メッセージや読者への挑戦(後で詳述)など、本格ミステリーを鮮やかに彩る小道具も豊富で飽きさせません。

以下、感想を書いていきます。

※ネタバレはありません。

作品情報
書名:月光ゲーム Yの悲劇’88 (創元推理文庫)

著者:有栖川有栖
出版:東京創元社 (1994/7/10)
頁数:361ページ

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有栖川有栖の真面目なミステリー

 

私が読んだ動機

クローズドサークルものが読みたくて、インターネットで検索して見つけました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • クローズドサークルものが好き
  • 「読者への挑戦」に挑みたい
  • 青春ものが好き

1989年度「このミステリーがすごい!」で第17位の作品です。

とある大学の推理小説研究会の合宿で主人公一行が矢吹山にやってきたところ、山の噴火によって、他の大学の数グループともどもキャンプ場に閉じ込められる、いわゆるクローズドサークルものです。

もう、これだけですでにワクワクしますねー。

なんといっても最大の見どころは、アクロバティックさこそないものの、パズル的なトリックに正々堂々向き合った精緻な謎解き要素にあります。

また、「学生アリス」シリーズの呼称を象徴するように登場人物は学生しか登場せず、青春ものとしての一面も持っています。

大学生の瑞々しく甘酸っぱいようなストーリーが好きだという方にもおすすめの一冊となっています。(でも人は死にます

ミステリー×青春もの×パニックもの

いろいろな要素が絡み合うなんとも贅沢な小説です。

前述のとおり、火山の噴火によって退路が断たれるという孤立のしかたですから、「館」系のミステリーのようにクローズドサークルの形成そのものに人間の悪意が介在していることはありません。

じゃあ、緊張感がないじゃないか!というと、そうでもないのです。

この小説では、火山の噴火が断続的に起こるという非日常的なスリルと常に隣り合わせです。

つまり、ただのミステリーに終始せず、パニックものの要素が加味されている

学生たちが合宿に来たら、火山が噴火して閉じ込められるというパニック的状況のなか、なんと殺人まで起こる。

まさに弱り目に祟り目。いやー、これは絶対に経験したくないですね。

危険地帯から脱出するために、学生同士協力しなければならないけれども、その中に殺人犯がいるという状況。

信頼と不信の間で揺れる学生たちの心情に恋愛要素までをも絡めた青春本格ミステリー。

ミステリーと青春とパニックが絶妙のさじ加減で配合されています。すばらしいですね。

私が学生メインの青春ものが好きだということもありますが、この雰囲気、最高ですねえ。

繰り返しますが、絶対に経験したくはありません

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プロローグの存在

時系列的に言うと、終盤にあたる1シーンがプロローグとして切り取られ、冒頭で語られています。

これは、読者にとある先入観を植え付けるための措置です。

それはそれでいいのですが、このプロローグの存在によって、序盤の犠牲者が消去法的に絞り込めてしまうというデメリットがあります。

つまりプロローグに登場していない人物は、死んでしまうかもしれないという予測が成り立ってしまう。

序盤の緊張感のいくばくかはこの措置によって削がれているといっていいでしょう。

私はプロローグは別エピソードでも良かったかなと思います。

登場人物多すぎ問題

この小説において、私がもっとも頭を抱えた問題がこれであります。

欠点と言ってしまうと言いすぎかもしれませんが、私のように登場人物を覚えるのが苦手な人にはなかなかきついものがあります。

どのくらい多いかと言うとだね!

登場人物は主人公の所属する推理小説研究会を含めて、4グループ計17名。彼らが最初の40ページまでに全員出てくる

ここまでは、まだいい。

最大の問題は彼ら全員が大学生で、差別化しづらいということ。

しかも、あだ名がついている。このあだ名は人物の特徴を覚えやすいようにという配慮かもしれないけれど、私にとっては覚える事項が増えただけだった。

くぅ、これは覚えられない!

あだ名も「ベン」と「弁護士」とか無駄に響きまで似通っていてほとほとまいりました。

正直、最初の犠牲者が出たとき、よし覚える人物が一人減ったぞ!と思いました。最低ですね

読者への挑戦

ミステリーの作者が読者に対して贈る、「ここまでですべての手がかり・ヒントを提示したから、謎を解いて真相を明らかにしてみなさい」という挑戦状。これが「読者への挑戦」です。

これが差し挟まれた時点で、謎解きに必要な全ての情報が出揃ったということになり、解けるかどうかは読者の能力次第ということになります。

本作は、どちらかというと、神業とか離れ業といったインパクトのある謎解きをウリにしているのではなく、細かいトリックを複合的に絡ませて複雑な謎を形成しているタイプです。

「難しいけれど、がんばれば解けそう」というギリギリのラインを攻めている感じがいいんですね。

なんとも燃えるではありませんか!

まあ、私は解けませんでしたけれど。

「読者への挑戦」は物語の流れをぶった切るので興ざめだという意見もあるようですが、これがあると本格ものを読んでいる!と実感できていいなと個人的には思います。

謎解きに自信があるなら、ぜひ解いてみてください。

本作では、この後に探偵役江神二郎による鮮やかな解決編が待っています。惚れ惚れするほどカッコいいシーンです。

 

 

▼関連記事

 

▼クローズドサークルまとめ

最後に

本作は、登場人物が多くて覚えづらいことを除けば、極めて模範的、優等生的なミステリーと言っていいです。

特に謎解き部分に関してはクオリティが非常に高く唸らされますが、なにより驚いたのはこれが有栖川有栖のデビュー作だということ。

デビュー作でこれほど緻密なトリックを組み立ててしまうというのだから空恐ろしいです。

月明かりのさすキャンプ場というロケーションも幻想的でよかったですね。噴火でめちゃくちゃになりますが

おもしろかったので、続編も近いうちに手に取ってみようかと思います。

最後までお読みくださり、ありがとうございます!

つみれ

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