歴史

  (最終更新日:2018.06.27)

宮城谷昌光!中国古代の歴史小説を読みたいときにおすすめ

中国古代史はおもしろいです。

中国4000年の歴史などという表現もありますし、どこか現代人を惹きつける魔性の魅力のようなものがあります。

今回は宮城谷昌光の中国歴史小説の魅力について書いてみようと思います。

私は光栄(現コーエーテクモゲームス)のゲーム「三國志Ⅱ」から歴史の世界に興味を持ち、司馬遼太郎の著作を読んで読書の世界に足を踏み入れました。読書を始めたばかりの私の脳裏をある疑問がかすめます。

「司馬遼太郎は『三国志』を書いていないのだろうか?」

司馬遼太郎の語り口による三国志!なんと魅力的な世界だろうか。当時の私はそう考え早速調べてみました。

しかし結局、司馬遼太郎は『三国志』を書いていませんでしたし、私が読書をし始めたころにはすでに故人となっていたのです。これは本当に残念でした。

※ちなみに司馬遼太郎には、三国志よりさらに400年ほど前の時代を扱った『項羽と劉邦』という小説があります。ものすごい名作です。私のバイブル。

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宮城谷昌光という作家

宮城谷昌光を知る

それからしばらく経って、社会人になった私は中国の偉人について調べていました。詳しく言うと、三国志に登場する中国の偉人についてです。

どういうことかといいますと、三国志の物語のなかで、「昔(つまり三国志の時代より前)、こんな偉い人がいた」だとか「こんな強い人がいた」だとか、そういったエピソードが差し挟まれており、私はたいへん興味を持ったのです。

具体的に挙げてみると、「諸葛亮は、いにしえの管仲楽毅にあこがれていた」だとか、「典韋、お前はいにしえの悪来の生まれ変わりだ」だとか、「荀彧、お前は我が張子房である」だとか、そういう具合です。

※諸葛亮、典韋、荀彧はともに三国志の登場人物。

こうなると、管仲、楽毅って誰だ?悪来とはどんな人物だ?張子房とは?と居ても立ってもいられなくなるのが、重度の歴史好きの自然な精神活動であります。

そんなわけで、三国志の時代よりもさらに大昔の人物について調べてみようとなったのです。

大昔の中国の歴史についてインターネット検索をすると、すぐにヒットする一人の作家がいます。

調べてみると、古代中国の歴史小説、特に偉人を主役に据えた作品をたくさん書いているようなのです。

まさに私が探し求めていた作家といっていいでしょう。それが、宮城谷昌光でした。

『妟子』

早速、宮城谷昌光の著作をいくつか読んでみようということになって、買ってみたのが『妟子』と『楽毅』でした。

両作品とも文庫本にして4冊、計8冊というなかなかの攻撃的ページ数であります。

そして、とりあえず『妟子』の方から読んでみたわけです。

激ハマりである。

妟子というのは、中国春秋時代という大昔に活躍した政治家「妟嬰(アンエイ)」のことなのですが、これが「三国志」の世界でもめったに見られないほどの大器。言ってみればチートである。

こういった反則的才能の持ち主の活躍を楽しむのが歴史小説の醍醐味の一つです。

そして、こういう書き方をしてしまうと宮城谷さんに失礼かもしれませんが、思ったことを正直に書いてしまいますと

「あれっ、読み心地が司馬遼太郎に似ているな」

小説家に対して、ほかの作家を引き合いに出して語るなどというのは失礼に当たると思います。

ですが、私にとって司馬遼太郎は最も尊敬する作家の一人ですから、宮城谷昌光の「すごさ」を私流に表現するとこうなってしまいます。

本当にどこがというわけではないのですが、読んだときの印象というか、肌触りというか。知識があるからこその余裕、いい意味での力の抜け具合が司馬作品に似ているのです。

歴史小説家の力とは

宮城谷昌光も司馬遼太郎も、主役に据えた人物に入れ込んで思いっきり好意的に描きます。

だから、自然と主役が魅力的に映るような作品が多い。これは物語のおもしろさに直結する大事な要素です。

なにより、史実と史実の間にある創作部分に説得力があるということ。歴史小説の場合、これはかなり大切です。「あー、なるほど」と納得できてしまう蓋然性がある。簡単にいうと創作部分の「もっともらしさ」です。

歴史家(歴史の研究者)の研究は史書や史料の裏付けがなければ、自説に説得力を持たせることはできません。

ですが、歴史小説家はその壁を乗り越えることができます。小説家というのは創作するのが商売ですから、むしろその壁を乗り越えてからが本領発揮です。

結局、「史実」という過去の事実をもとに物語を書いている以上、創作部分にもある程度のリアリティが求められます。

史書や史料の裏付けがない部分を、いかに読者が納得できるレベルで創作できるか。これは史実と史実の間を創作で紐づける仕事に他ならず、相当の知識と解釈力が必要です。

そして、これが抜群にうまかったのが司馬遼太郎なのではないかと思うのです。

司馬遼太郎の良さは、歴史を題材にこんなにおもしろいお話を作ってみたよというところ。このおもしろさが受け入れられたということなのではないかと思うのです。

そして、古代中国を題材にした歴史小説で創作のもっともらしさを表現するのがうまいのが宮城谷昌光なのです。

史書のテキストなんかもふんだんに使っているから、読んでいるだけで頭がよくなったような気さえしてきます。

娯楽であるはずの小説を読みながら、昔中学や高校で習った「漢文」の世界の勉強ができ、歴史に詳しくなれてしまう。そんな一挙両得感が歴史小説の魅力であることは間違いないでしょう。

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宮城谷『三国志』

繰り返しになりますが、宮城谷昌光作品の特徴の一つは中国の歴史小説が多いということです。宮城谷昌光という作家を知り、その作品リストを目にしたとき、私は震えました。

「宮城谷昌光は『三国志』を書いている!」

まさに宮城谷昌光が『三国志』を執筆途中という状況でした。すべてが単行本化したときに一気読みしよう!と心に決めた瞬間です。

ちなみにその数年後に二ヵ月かけて読みました。

はっきりいって玄人好みの三国志といった仕上がりです。

一般的な三国志の物語のスタート地点は「黄巾の乱」に置かれることが多いですが、宮城谷『三国志』は黄巾の乱が起こるまでに2巻という紙幅を費やします。つまり2巻までがプロローグ。凄まじすぎます。

三国志の物語は大半が『三国志演義』という中国の小説がもとになっていて、これは歴史小説の御多分にもれず創作が多いです。

ところが宮城谷三国志は演義由来の創作部分を極力排除し、歴史書である正史『三国志』から想像できる範囲での創作という形に三国志の世界を再構築しています。

『三国志演義』は、正史『三国志』をおもしろくしようとしてあえて大胆で娯楽性の高い創作を試みています。

だから、その創作部分を排除するというのは広く知られた三国志としてのおもしろみを切り捨てることに等しいです。

これは三国志小説を書くうえではかなりのリスクなのですが、逆にいえば『正史』属性に特化した三国志小説を読みたいという人にはうってつけということになります。

『三国志演義』の世界を長く味わっていると、『演義』と『正史』との境目はどこか、ということが気になってくる瞬間があります。

宮城谷『三国志』は、まさにその頃が読み時といっていい小説です。私が玄人好みだと言ったのはそういうわけです。

 

☟ 関連記事

最後に

小説を読みながら古代中国史についてちょっと詳しくなりたい。古代中国の有名人の小説が読みたい。というときには、宮城谷昌光さんの小説がうってつけです。文章もきれいで丁寧なので読みやすいです。

どれから読んだらいいかわからないというときは、『春秋名臣列伝』『戦国名臣列伝』など、人物にフォーカスした短編集がおすすめです。

短編集でおもしろそうな人物を探し、その人物が登場する長編を読めばきっと楽しめるはずです。

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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