二廃人

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2022.04.29)

【感想】「二癈人」/江戸川乱歩:回顧談を楽しむ二人の不穏な関係性とは?

こんにちは、つみれです。

このたび、江戸川乱歩(エドガワランポ)さんの短編「二癈人(ニハイジン)」を読みました。

 

湯治場で知り合った二人の男性・井原(イハラ)斎藤(サイトウ)が回顧談に花を咲かせつつ、少しずつその不穏な関係性をにじませていく怪奇ミステリーです。

 

本記事は『江戸川乱歩傑作選』所収の一編「二癈人」について書いたものです。

正式なタイトル表記は「二癈人」ですが、パッと見の印象がわかりづらいので、以下記事内では新字体表記の「二廃人」で統一します。

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
短編名:二廃人(『江戸川乱歩傑作選』所収)

著者:江戸川乱歩
出版:新潮社(1960/12/27)
頁数:19ページ

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ラストの余韻が不気味な怪奇ミステリー!

ラストの余韻が不気味な怪奇ミステリー

私が読んだ動機

本編が収録されている『江戸川乱歩傑作選』が、私が所属している文学サロン「朋来堂」の「ミステリ部」2022年4月の課題図書だったので読みました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 不穏な物語が好き
  • ラストの余韻を味わいたい
  • 巧みな伏線を味わいたい

あらすじ・作品説明

湯治場で意気投合し、回顧談に花を咲かせる井原氏と斎藤氏。

 

井原氏は、自分が過去に犯したとある罪について告白を始める。

 

しかし、相槌を打ちながら話を聞いている斎藤氏の様子がどうもおかしい。

短いながら巧妙な小編

開いた本

本編「二廃人」は19ページという短い物語ながら、ミステリーとして極めて巧妙な作りになっています。

むしろ、短編で物語の筋自体が単純だからこそ、一つの謎の質だけで勝負している感がありましたね。

物語のオチもどこか凄みがあり、怒りや諦め以上の複雑な感情を覚えさせる余韻のあるラスト。

最後で読んだあとに改めて「二廃人」というタイトルを見返すと、何とも言えず感情の置き所に困るような気持ちにさせられてしまいます。

 

良くも悪くも、独特な余韻を楽しめる巧みな短編でした。

 

回顧談を楽しんでいる二人の不穏な関係

湯治場

本作は基本的に、湯治場で意気投合した二人の男性「井原氏と斎藤氏の会話」と、「井原氏の話す昔話」で進行していきます。

十日ほど前に湯治場で初めて会ったはずの二人でしたが、ふとした瞬間に井原氏は斎藤氏の表情に既視感を覚えます。

ミステリーとしては明らかに不穏な描写で、ここからどのように物語が展開していくのか、いやでも期待が高まりますよね。

正直、ミステリーで既視感的な描写が出てきて、過去に何もないはずがないんですよ。

 

とはいえ、ミステリー作品の序盤で、「明らかにこれは伏線!」という描写があるのはやはりワクワクします。

 

先を読む楽しみもありますし、真相を言い当ててやろうという気にもなりますね。

井原氏の話す昔話

暗い背景

湯治場で意気投合した井原氏と斎藤氏は、それぞれの過去を語り合います。

斎藤氏は戦地で味わった血なまぐさい経験にまつわる話をしましたが、一方の井原氏は自分が過去に犯したとある罪についての告白をします。

斎藤氏が井原氏と無関係とは思えない既視感の描写と、井原氏の過去の罪の描写がどう繋がるのか、妙に先が気になる展開ですね。

戦争で体中に大けがを負い今なお不便さを強いられている斎藤氏と、過去に犯した罪がいまだに自身を縛り付けている井原氏。

改めて「二廃人」というタイトルが意味深に響きますね。

井原氏の抱える病

暗い森

本作の重要な柱となる事項として、井原氏の抱える病のことがあります。

井原氏が患っているのはいわゆる「夢遊病」

彼が斎藤氏に話す回顧談は、睡眠中の彼が自分でも気づかないうちに数々の罪を犯してきたことの告白だったのです。

「眠りながら犯した罪」というセンセーショナルな内容に、読者側も「この男はいったい何をしでかしたのか」と気になってしまうわけです。

 

「無自覚の犯罪行為」という衝撃的な告白内容が読者を惹きつけて離さず、ついついページを次々とめくってしまいます。

 

具体的に井原氏がどのような罪を犯してきたのかはここでは書きませんので、ぜひ本作を読んで確かめてみてくださいね。

ミステリーとして

本や眼鏡などの雑貨

本短編は、上にも書きましたが分量的に短めである上、登場人物も限られているので真相を当てること自体は難しくありません。

しかし、真相以上に乱歩の書き方の巧みさが、ラストの余韻を半端じゃないものにしています。

もちろん純粋にミステリーとして読んでも楽しめますが、それ以上に印象に残るのは真相が判明した時の何とも言えないやるせなさ

読後感に独特の味わいがあり、「怪奇ミステリー」として完成度が非常に高い作品だと思いました。

終わりに

「二廃人」は、湯治場で知り合った井原・斎藤の二人が回顧談に花を咲かせつつも、次第に不穏な関係性をにじませていく怪奇ミステリーです。

 

ミステリー的な謎解きよりも、読後の独特な味わいに趣がある怪奇小説といった印象が強い作品ですね。

 

本記事を読んで、江戸川乱歩さんの「二銭銅貨」がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ『江戸川乱歩傑作選』を手に取って読んでみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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