炯眼に候

歴史

  (最終更新日:2021.12.9)

【感想】『炯眼に候』/木下昌輝:織田信長を7人の視点から多角的に描く!

こんにちは、つみれです。

このたび、木下昌輝(キノシタマサキ)さんの戦国時代の短編集『炯眼(ケイガン)に候』を読みました。

戦国の鬼才、織田信長(オダノブナガ)を7人の人物の視点で多角的に描いた一冊です。

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
書名:眼に候

著者:木下昌輝
出版:文春秋
頁数:336ページ

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織田信長ってやっぱりすごい!

織田信長ってやっぱりす

私が読んだ動機

いろいろな視点から織田信長像を見ることができるのがおもしろそうだったから。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 歴史小説を短編で読みたい
  • 日本の戦国時代を扱う小説が読みたい
  • ミステリー仕立ての歴史ものを読んでみたい
  • 織田信長が好き

あらすじ・作品説明

戦国時代の鬼才、織田信長はどのような人物だったのか。

 

信長の周囲にはさまざまな立場の人物がいる。

 

信長の側に仕える者、信長に協力する者、信長を裏切ろうとしている者。

 

7名の視点から、織田信長像を立体的に浮かび上がらせる一作。

織田信長を他者からの視点で描く

織田信長像

本作『炯眼に候』は戦国時代の主役の一人、織田信長を描いた短編集です。

しかし単純に織田信長を語り手に据えるのではありません。

本作の語り手は、織田信長とかかわりのある戦国時代の他の人物たちです。

それも、時代を大きく変えた戦国時代の大物ではなく、歴史の表舞台に現れない脇役や端役が主人公として選ばれています。(明智光秀(アケチミツヒデ)以外)

明智光秀以外はマイナーどころが選ばれており、そのイブシ銀なチョイスにワクワクしてしまいますね!

正直、主人公として選ばれている荒川新八郎(アラカワシンパチロウ)や、サブキャラとして登場する山中の猿などは本作を読んで初めて知りました。

とにかく仕えるのが難しく、他者からは理解されづらいイメージのある織田信長。

そんな信長を複数の人物からの視点で多角的に描き、客観的な信長像を浮かび上がらせるという趣向の一作となっています。

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7編を収録

本のページがパラパラめくれる

本作は、それぞれ別の立場で織田信長に関わっていく7人の人物を主役に据えることで、いろいろな角度から信長を描いています。

それぞれの主役は、荒川新八郎・毛利新介(モウリシンスケ)杉谷善住坊(スギタニゼンジュウボウ)太田又助(オオタマタスケ)九鬼嘉隆(クキヨシタカ)・明智光秀・弥助(ヤスケ)の7名。

みんな信長の関係者ですが、有名な人物もいれば全く無名な人物もいて、この雑多な感じについつい惹きつけられてしまいますね。

下記で7編を簡単に紹介します。

「水鏡」:荒川新八郎

主人公は信長に仕えた武将の荒川新八郎。

死を恐れない猛将だった荒川新八郎が、一転して臆病で腰抜けの武将になり果ててしまった事情とその死に様を、兜の前立(マエダテ)と水鏡の因縁から語っていきます。

人間心理に精通した信長ならではの鋭い洞察が際立つ一編になっています。

「偽首」:毛利新介

主人公は信長に仕えた武将毛利新介です。

桶狭間(オケハザマ)の戦いで敵の総大将今川義元(イマガワヨシモト)の首をとる大手柄を挙げた毛利新介と、今一歩のところでその手柄を彼に譲った服部小平太(ハットリコヘイタ)の物語。

歴史書や記録類が語らない歴史の闇の部分を鮮やかに描き出しています。

「弾丸」:杉谷善住坊

主人公は鉄砲の名手、杉谷善住坊。

織田信長の暗殺を狙って鉄砲で銃撃したものの失敗してしまい、無残に処刑された杉谷善住坊の裏事情を語っています。

通説を大胆に脚色してみせた作者の巧さに感服しました。

「軍師」:太田又助

主人公は信長に仕えた武将の太田又助。

天候を操る呪いを用いて信長に勝利をもたらす「軍師」山中の猿と、彼の世話を任された太田又助の物語です。

山中の猿の呪いの謎と又助の秘密の両面でミステリー色が強く、モダンな謎解きに作者のセンスが光る一編。

史実と虚構の織り交ぜかたがとにかくうまくて、7編のなかでは一番好きでしたね。

「鉄船」:九鬼嘉隆

主人公は織田信長に仕えた九鬼水軍を率いる九鬼嘉隆。

襲い来る強敵の毛利水軍に悩まされていた九鬼嘉隆が、奇策によって毛利勢を撃退する物語です。

秀吉の墨俣一夜城のエピソードをうまく絡めたストーリーがめちゃくちゃおもしろかったですね。

九鬼嘉隆の視点から見る二人の天才、織田信長・羽柴秀吉(ハシバヒデヨシ)の姿がひときわ輝く一編でした。

「鉄砲」:明智光秀

主人公は信長配下の有力な武将の一人、明智光秀です。

長篠の戦いを前に、いかに強敵武田騎馬隊に対抗するかに頭を悩ませる明智光秀を描いた物語。

やがて訪れる本能寺の変に連なる光秀のひそかな邪心がなんとも魅力的な一編ですね。

「首級」:弥助

主人公は信長に寵愛された黒人の侍、弥助。

本能寺の変で弥助が取った型破りな行動を、彼が異国で培った技術の面から説明します。

収録された7編のうちでは最も異国情緒にあふれた作品で、歴史のスケールの大きさを感じさせてくれました。

ミステリー仕立て

本作『炯眼に候』は歴史小説でありながら、ミステリー要素を多分に含んでいます。

ジャンルとしては「歴史+ミステリー」といった感じで、メインとなる歴史小説部分にミステリーの味付けを上乗せしたイメージです。

一般的に知られている既存の史実解釈とは違った異説的なおもしろさがあってめちゃくちゃ良かったです。

「ほほー!そういう解釈があるのか!」という新たな発見がありましたね!

信長の洞察力の鋭さ

電球

本短編集に登場する信長はとにかくカッコいいです。

信長は小さい頃に「大うつけ(大馬鹿)」と言われたことで有名ですが、まったくそんな印象を与えません。

本作の信長は物事を鋭く見抜く力を持っていて、まさに「炯眼」。

そこから常に合理的な判断をくだしていきます。

少し話を聴いただけでたちどころに事情の全貌にたどり着く信長の洞察力はカッコいいとしか言いようがありません。

この信長像、私はめちゃくちゃ好きですね!

 

※電子書籍ストアebookjapanへ移動します

 

終わりに

史実を従来の視点とは異なる切り口から解釈して、「異説」と呼ぶにふさわしい新しい物語が作り上げられていて目からウロコの短編集でした。

思わず「もしかしたら真相はこれが正しいんじゃないか!?」と納得させられそうになってしまう力強い一冊でしたね!

加えて私が織田信長のことが大好きなので、とにかく楽しく読むことができました。

本記事を読んで、木下昌輝さんの戦国短編集『炯眼に候』を読んでみたいと思いましたら、ぜひ手に取ってみてくださいね!

また、織田信長の視点で物語を楽しみたい場合には、斎藤道三と織田信長の二人を描いた司馬遼太郎さんの長編歴史小説『国盗り物語』がおすすめです。

『国盗り物語』については別記事に感想を書いていますので、興味があればご覧ください。
>>【感想】『国盗り物語』/司馬遼太郎:斎藤道三・織田信長の人生を描く傑作!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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