こんにちは、つみれです。
このたび、司馬遼太郎さんの歴史小説『国盗り物語』を再読しました。
司馬遼太郎さんの戦国4部作と呼ばれる作品のうちの第一作にあたる名作です。
本当に何度読んでもおもしろすぎる!
それでは、さっそく感想を書いていきます。
作品情報
書名:国盗り物語(新潮文庫)
著者:司馬遼太郎
出版:新潮社(1971/11/30)
頁数:(一巻)544ページ、(二巻)528ページ、(三巻)544ページ、(四巻)720ページ
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目次
斎藤道三・織田信長の人生を独自の視点で描く!
私が読んだ動機
別記事「読書で人生が良くなった話」で、本作『国盗り物語』を読んで読書の世界に夢中になった、という内容を書いて、久しぶりに再読したくなりました。
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こんな人におすすめ
- 長編歴史小説を読みたい
- 日本の戦国時代に興味がある
- 斎藤道三、織田信長、明智光秀が好き
あらすじ・作品説明
前半は、一介の油売りから大国美濃の国主まで成り上がった「美濃の蝮」斎藤道三(松波庄九郎)の人生を描く。
悪辣ながらどこかさっぱりとした道三の手練手管、テンポよく人生を駆けあがっていく生き方が心地よい。
後半は、道三の弟子ともいえる二人の鬼才、織田信長と明智光秀を中心に戦国時代の中心部分を描き取る。
道三の革新性は信長に、深い教養は光秀にそれぞれ受け継がれる。
その二人が主従関係を結び、やがて悲劇的な結末を迎えるまでの因縁的な物語を、司馬遼太郎独特の史観をまじえて語る。
戦国小説最初の一冊におすすめ
そもそも私が読書をするようになったきっかけとなった小説がこの『国盗り物語』だったので、本作には強い思い入れがあります。
この小説のおもしろさが私の人生を変えたといっても過言ではありません。
それから15年以上経った今でも、「戦国小説のおすすめは?」と聞かれたら、私は迷わずに『国盗り物語』を挙げます。
司馬遼太郎の語り口のおもしろさや、語られるエピソードの豊富さなどがその理由なのですが、最大のおすすめポイントは主役に据えられた人物がビッグスターばかりであること。
斎藤道三、織田信長、明智光秀の3名の人生は、日本の戦国時代の中心に近い部分を走っています。
本作は、日本の戦国時代のメイン通りを楽しく読ませてくれます。
読了後は、そのあとに続く豊臣秀吉の時代のことや、信長の敵役として登場する浅井長政・松永久秀らのことを知りたくなってくること間違いなしです。
最初の一冊を読むと、どんどんその周辺部を知りたくなってくるのが歴史小説です。
本作は戦国時代の最初の一冊にうってつけですよ。
斎藤道三編(一・二巻)
「梟雄」斎藤道三
「戦国の三梟雄」などと呼ばれる斎藤道三は、悪党のイメージが強いです。
ちなみに、戦国三梟雄の残りの二人は、宇喜多直家・松永久秀です。
確かに、古来からの非効率なルールや機構に疑義を呈し、それを破壊していく道三の生き方は、中世的な立場によれば「悪」かもしれません。
本作は、手品のような手段を使ってハイテンポで一介の素浪人から油屋の主人、美濃国の国主へと成り上がっていく斎藤道三がひたすらにカッコよく描かれています。
その手段は確かに「悪辣」としか言いようがないものばかりですが、道三自身のカラッとした性格がじめじめとした印象を拭い去り、読んでいて爽快感すらありました。
善悪というのはそれほど単純な概念ではないですよね。(たとえば歴史史料には後世の人の主観が混じることもあるため判断しづらい)
道三のやり方が、当時の日本に新風を巻き起こしたと考えると、単純に「悪」とは言いたくなくなってきます。
善悪とは、立場やものの見方によって変わってくる、ということを改めて考えさせられる読書となりました。
司馬遼太郎の描く爽快な梟雄斎藤道三の「悪の美学」をぜひ味わってほしいですね!
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女性関係にも注目
本作の斎藤道三は、その成り上がりの過程で様々な女性と関係を持っていきます。
冷静に考えると彼女らは道三に利用されているだけなのですが、その関係性はいずれも情緒的な色彩が濃く、この人間模様を楽しむのも本作の醍醐味と言えます。
様々な女性が登場し、それぞれの関わり方で道三とやりとりしていくので、とてもおもしろいですよ。
個人的には、京都の油商奈良屋の女主人「お万阿」がいい味出していて好きでしたね。(登場する女性のなかでは飛び抜けて人気がありそうなキャラではあります)
名将織田信秀
本作を読んで、私がかなり好きになったのが「尾張の虎」織田信秀。
織田信長の父で、斎藤道三とともに信長の一つ上の世代に当たる人物です。
信秀は、道三の統治する美濃の隣国・尾張で活動する野心家で、たびたび美濃国にちょっかいを出してきます。
その都度、道三に返り討ちにされてしまうのですが、彼がなんともいい味出しているんですよ。
道三が強すぎるので霞んでしまいますが、信秀も戦がうまく、謀略にも長けた名将です。
美濃を足掛かりに天下取りの夢を見る道三からすれば邪魔者以外の何者でもありませんが、このライバル関係がアツい。
そしてさらに「大うつけ」などと呼ばれてバカにされていた織田信長の素質を早い段階で見抜いていたのが、ライバル同士の信秀・道三の二人だったという展開はアツすぎにも程があるというものです!(越前の朝倉宗滴も信長の器に気づいていたという話があります)
単に「信長の父」というだけで語り捨てるには惜しすぎる好漢・織田信秀をぜひ味わってほしいです。
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織田信長編(三・四巻)
天才・織田信長
道三が退場したあと、その代わりに表舞台に登場してくるのが、戦国武将のなかで一番有名であろう織田信長です。
古来からの伝統的なやり方を盲信せず、その非効率を嫌い抜く姿勢によって数々の天才的な発想を生み出す戦国時代きってのチートキャラです。
もう、この信長がすさまじくカッコいい。
頭の回転が速すぎるのと、言葉が足りないのとが相まって、その下で働く部下はめちゃくちゃ大変という「やりづらい上司」キャラでもありますね。
信長の部下としてうまく立ち回った秀吉と、うまく立ち回れなかった光秀という対比の構図も、のちの破滅を予感させるスパイスとしてよく効いていると思いました。
光秀の視点
本作『国盗り物語』の後半部は、「織田信長編」を銘打っていながら、明智光秀の視点が非常に多く織りまぜられています。
公式には前半の主役は斎藤道三、後半の主役は織田信長となっていますが、実質、光秀は三人目の主人公と言っても過言ではありません。
天才的な信長の思考は、読者である私たちも簡単につかみきれるものではありません。
この信長の思考の捉えづらさが、秀才ながら常識的な視点を持つ光秀の目線を通して語られることにより、非常に理解しやすくなっています。
また、光秀に語らせることで信長の革新性を一層際立たせることに成功しています。
光秀の視点を多く取り入れることで、信長の一筋縄ではいかないキャラクターを巧く表現しているなと思いました。
そういう描写のせいか、実際、本作を読んでいると明智光秀に肩入れしたくなってしまうような箇所がいくつもありました。
作者の司馬遼太郎さんも光秀にだいぶ肩入れしていることを自覚していて、それを言い訳しているシーンまであるのがおもしろかったですね。
『国盗り物語』についての私の考え
道三親子二代説で本作は陳腐化するか?
『国盗り物語』で描かれているような、一介の油売りから身を起こし一代で美濃国主にまで成り上がった斎藤道三像というのは、実は歴史研究上では若干古くなっています。
今では道三とその父の二代による国盗りであったとする説が有力となってきているのですね。
だからといって、『国盗り物語』のお話が陳腐化するかというと、私は決してそうは思いません。
一昔前までは一代による国盗りだと解釈されていたという事実を反映しているという意味でも有意義ですし、何より小説として極めておもしろい。
「本作を読んで戦国時代に興味を持った!」という人を生むくらいにはおもしろいです。(私のことです)
「本作を読んで読書が好きになった!」という人を生むくらいにはおもしろいです。(私のことです)
今となっては古い解釈であることも含めて大いに楽しめる一冊だと思います。
文庫4巻は長いか?
本作、新潮文庫版4巻で合計2000ページを超えるという長編です。
一見、分量の多さに怯んでしまいますが、読み始めるとこれが少なく思えてくるから不思議。
やはり、斎藤道三と織田信長という二人の人生を描くのに4巻という冊数は少なく、読んでいるとどんどん他のことを知りたくなってきます。
膨らませて書こうと思えばいくらでも書けてしまう戦国という時代を、道三・信長・光秀に関わる部分に限定して書いているため、そこから外れる部分については淡白な描写が多いです。(浅井長政・松永久秀などの滅亡はそれほど詳しく描かれない)
その傾向は特に後半の「織田信長編」で顕著で、「歴史のダイジェスト」感を感じてしまう部分もあります。
このせいもあって読了後に、「もうちょっと読みたい!」「もうちょっと知りたい!」となるんです。
読者を次なる読書に導いているようにも感じられますね!
ちなみに私は今、信長の次に活躍する豊臣秀吉の物語、司馬遼太郎さんの『新史太閤記』を読む準備をしています(笑)
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終わりに
傑作すぎる!!
やはり何度読んでもおもしろいです。
物語のおもしろさもさることながら、司馬遼太郎さんの語り口・文章の魅力が光る一冊でもあります。
本記事を読んで、「戦国時代に興味が出てきたな!」「斎藤道三の小説読んでみたいな!」と思いましたら、ぜひ司馬遼太郎さんの『国盗り物語』を読んでみてくださいね。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
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