いけない

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2020.11.25)

【感想】『いけない』/道尾秀介:隠された真相に気づけるか?再読必至の連作短編!

こんにちは、つみれです。

このたび、道尾秀介さんのミステリー連作短編集『いけない』を読みました。

隠された真相に気づくと感嘆と驚愕が押し寄せる・・・。そんなミステリー作品です!

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
書名:いけない

著者:道尾秀介
出版:文春秋
頁数:251ページ

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隠された真相に気づけるか!?

隠された真相に気づけるか?

私が読んだ動機

読書会で友人にお借りしました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 巧みな伏線の妙を味わいたい
  • 読み終わってびっくりしたい
  • 連作短編が好き
  • 何度も繰り返し読むのが好き

あらすじ・作品説明

白沢(はくたく)市・蝦蟇倉(がまくら)市という隣接する二つの架空の市を舞台に起こるいくつかの事件を描く連作短編。

 

自殺の名所付近のトンネルで起きた交通事故の謎。

友達のいない中国人の少年が目撃した殺人現場の謎。

とある宗教団体の幹部女性の不審死の謎。

 

普通に読んでも楽しめる物語が、最後の1ページに配されたとある仕掛けによって変貌する。

4編全部おもしろい!

万年筆

「~してはいけない」というタイトルがつけられた4編を収録した連作短編集で、4編すべておもしろいです!

  • 第一章 弓投げの崖を見てはいけない
  • 第二章 その話を聞かせてはいけない
  • 第三章 絵の謎に気づいてはいけない
  • 第四章 街の平和を信じてはいけない

各編タイトルの文字数まできっちり揃えられていて、ここからしてすでに計算し尽された感がにじみ出ていますね!

どの物語も非常に凝ったつくりになっており、続きが気になってついつい先に読み進めてしまうような作品ばかりとなっています。

物語としては意外性のある展開のオンパレードで、真相をあらかじめ予測するのは不可能に近く、ラストではとても驚かされます。

ただし、結末の意外性が読後のスッキリ感につながるかというとそうでもなく、各編ともにゾッとするような、苦みが残るような後味の悪さがありますので、読む人を選ぶところがありますね。

個人的には、とある宗教団体幹部の不審死の謎を解明しようとする第三章がおもしろかったです。

謎解きは難しいかも

本作は、伏線・ミスリード・複雑な構成などを最大限に利用し、読む側の意識を最高にかき乱してくる攻撃力の高いミステリー作品です。

上にも書きましたが、真相を予想しながら読み進めるのはかなり難しいと思います。

「謎解き」を楽しむというよりは、作者の仕掛けた「凝った展開」「凝った演出」を楽しむエンタメ作品といった印象のほうが強いかもしれません。

詳細を書くことはできませんが、再読して、随所に配された伏線やミスリードの存在を知ると、その技巧の鮮やかさに思わずうめいてしまいます。

連作短編としてのおもしろさ

本作は、個々の短編として、各編単品で楽しめるだけではありません。

連作短編としても極めておもしろい構成になっていて、編を超えて登場人物や事件のつながりなどが見えてくると、おもしろさがどんどんと加速していきます。

一編を読み終えても、「なんだか完結していないような消化不良感」を覚えることがありましたが、他の編を読むとそれが解消されたりなど4編同士の関係性を味わうおもしろさもありましたね。

また、4編を前から順番に読んでいくと最大限に楽しめるようにしっかりと計算されて書かれているので、連作短編と言いながら、実質、一つの長編ミステリーとして読むのが正解かもしれません。

そういう意味では、連作短編のお手本のような作品と言えそうですね。

これはあくまで自分の見解ですが、「犯人が誰?」とか「動機は何?」とかそういう事件単体に焦点を当てた謎ではなく、4編を通してこの町で起きた複数の事件全体の構図を一つの大きな謎と見ることで、本作のミステリーとしてのおもしろさ・凄さが説明できる。

そんな作品のように思えました。

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章末の写真

本作の一番の特徴と言えるのが、各編の末尾にそっと添えられた写真です。

各編、複数の解釈ができるような結末を迎えるというのが、本作に収録された作品のおもしろさといえそうですが、その真相を伝えてくれているのが章末の写真です。

普通に読んでいるとサラッと流してしまいそうな写真なのですが、これが「単なる挿絵」ではなくれっきとした〝物語の一部″として配置されています。

何種類もの解釈ができるような本編に対する回答をはっきりと文章で明示せず、章末に配置されたこの写真で匂わせるという試みですね。

ネタバレを避けるため詳しく書くことはできませんが、文章での饒舌な説明でなく、写真による寡黙な回答提示が、事件の意外性・不気味さを増長させているようにも思えました。

これはおもしろい試みだと思いましたね!

本編を読んでいて受ける若干の消化不良感を、この写真が本当にすっきりと解消してくれます。

悔しいことに私は3章の終わりに至るまで、この趣向に気づくことができませんでしたが、気づいた時点で前の章にさかのぼってこの仕掛けを楽しみました(笑)

この「気づけなくても自然と読み進めてしまった」というのもポイントで、写真の意味に気づけなくても物語として成立しているという点もすさまじくすごいです。

本当によくできています!

普通、ミステリー小説の解決編などでは、作者が真相を丁寧に解説してくれる作品が多いですが、本作は「写真を見て真相に気づいてね」というスタンスなので、読者側に考える余地があります。

これが、「気づけたときの楽しさ・嬉しさ」を与えてくれるわけです。

まさに「体験型ミステリー」などと呼ばれている所以ですね。

「小説は文章で勝負するものだ!」と考える人にとっては邪道とも思える仕掛けですが、写真の寡黙さが読者側に与える心理的効果も無視できず、演出として最高に楽しかったです。

「答え合わせ」の楽しさ

本作にはメインの「蕎麦」を楽しんだあとの、「蕎麦湯を飲む」旨みも用意されています。

つまり、読み終わった後にネットでネタバレ解説を読むこと。これが最高に楽しい。

どうせなら何十箇所にも及んで配された伏線・ミスリードの数々をすべて楽しみたいと思い、ネタバレ解説サイトを複数読んで「答え合わせ」をしたわけですが、もうこれが最高に楽しい(二回目)

「ここまで考え抜かれて書かれていたのか!」となります。

ネタバレ要素のすべてを初読の段階で見抜くのはほぼ不可能と言えるのではないか、とさえ思いました。

それくらい複雑で緻密な設計がなされています。

読了済の人同士で感想を言い合うのにこれほど白熱しそうな本もなかなかありませんよ!

上のほうで「謎解きは難しいかも」と書きましたが、「伏線を探すのが得意」「謎解きなんて朝飯前」だという場合は、ぜひ本作の真相解明にチャレンジしてみてほしいなと思います。

 

 

終わりに

本作、おもしろすぎました!

こういう新たな試みで読者を翻弄するタイプのミステリーは楽しくて大好きですね。

本当に「小説家の頭のなかはどうなっているんだ?」と思わせる緻密な設計の連作短編集でした。

本記事を読んで「道尾秀介さんの『いけない』、おもしろそうだな!」と思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね。

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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