十五秒

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2022.05.16)

【感想】「十五秒」/榊林銘:余命十五秒の人間が復讐を誓う!

こんにちは、つみれです。

このたび、榊林銘(サカキバヤシメイ)さんの短編「十五秒」を読みました。

 

背後から銃撃され瀕死の重傷を負った「私」の死ぬ直前の十五秒を描いたミステリー短編です。

 

本記事は『あと十五秒で死ぬ』所収の一編「十五秒」について書いたものです。

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
短編名:十五秒(『あと十五秒で死ぬ』所収)

著者:榊林銘
出版:東京創元社
頁数:53ページ

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銃撃を受けた人間が残りの人生十五秒で復讐を誓う!

銃撃を受けた人間が残りの人生十五秒で復讐を誓う

私が読んだ動機

以前、本作収録の短編集『あと十五秒で死ぬ』の紹介を受け、おもしろそうだったので読みました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 特殊設定ミステリーが読みたい
  • 短編小説が好き
  • 奇抜な復讐譚を読んでみたい

あらすじ・作品説明

調剤室で残業していた薬剤師の「私」は、背後から銃撃され瀕死の重傷を負う。

 

そのとき突如目の前に現れた二足で立つ猫の姿の死神によって、「私」は時間の一時停止能力を手に入れる。

 

「私」は、余命の十五秒を最大限に有効活用できる方法を考えに考え抜いて小刻みに実行に移していく。

 

彼女は残された十五秒でいったい何を成し遂げたのか?

余命十五秒

砂時計とキャンドル

「十五秒」では、薬剤師の女性が調剤室で残業をしていたところ、いきなり背後から銃撃され瀕死の重傷を負います。

本作は、彼女が死ぬ直前の十五秒を描く不思議なミステリーです。

 

「死ぬ前の十五秒なんて一瞬で過ぎてしまうじゃないか」と思いますが、そうはならないのがこの作品のおもしろいところ。

 

なんと背中から鳩尾(みぞおち)を貫通した銃弾が目の前で浮遊した状態で時間が止まるのです。

いったい彼女の身に何が起こったのでしょうか。

特殊設定ミステリー

グレーのモザイク模様

実は「私」は、「死神」から時間の一時停止能力を授けられていたのです。

二本足で立つ猫の姿をした死神から能力の説明を受け、状況を理解した「私」。

本作は、死ぬ直前に時間停止能力を獲得した「私」が、残りの人生十五秒を最大限に有効活用してみせる特殊設定ミステリーというわけです。

 

人生のラスト十五秒に焦点を当てたミステリーとは珍しいですね。

 

わかりやすさが最高に良い

水滴

本作の良いところは、その特殊設定のわかりやすさです。

時間の一時停止能力を駆使して、死ぬ直前の十五秒を活用しきってやろうという単純明快な物語が最高にわかりやすくて良いんですよ。

ともすれば難解な説明が多くなりがちな「特殊設定ミステリー」というジャンルで、これほどスイスイと頭に入ってくる物語はめずらしいと思いました。

短さゆえに無駄のない十五秒

覚醒した脳みそ

本作を読んでいてすごいなと思わされるのが、十五秒という短い時間を無駄なく使いきってやろうという「私」の精神です。

十五秒なんて何もせずにボーっとしているだけであっという間に過ぎてしまいますよね。

しかし、本作の主人公「私」は、数秒前に致命傷を受けた事実を冷静に受け止め、時間を止めたうえで「十五秒で成し遂げられる効率のいい復讐方法」を静かに練り上げていきます。

 

たった十五秒でも、それを有効活用できる能力さえ手に入れれば、これだけ多くの作業を詰め込むことができるのか!と驚きを禁じえませんでした。

 

50ページ強の短編

本作は短編集『あと十五秒で死ぬ』に収録された短編の一つで、53ページという短さです。

ですが、そのなかで描かれているのがたったの十五秒だと考えると、これほど密度の濃い小説はないのではないかと思わされてしまいますね。

 

十五秒という刹那的な時間をよくぞここまで膨らませて描くことができたものだと素直に感心しちゃいました。

 

また、50ページ強というほどよいボリュームのおかげで、特殊設定ミステリーを初めて読む人にもおすすめできる一作となっています。

銃撃した犯人側の視点も描かれる

煙の中を歩く足

本作のおもしろい点は、銃撃された「私」だけでなく、銃撃した犯人側の視点も描かれること。

残された十五秒を最大限に活用するために「私」が練りに練り、小刻みに時間を止めて行った作業の数々。

 

それがどのような効果を発揮したのか、犯人側の目線でわかるというのがおもしろかったです。

 

「私」と犯人それぞれの心情にも注目

黒バラ

犯人側の視点が描かれることのメリットはもう一つあります。

それは、主人公である「私」だけでなく、犯人の心情も描かれるということです。

いきなり「私」を銃撃した殺人者の犯行動機は本作でもかなり気になるポイント。

それだけでなく「私」が心のうちに隠している後ろめたさにも言及されていて、単純な被害者で終わっていないところも良かったです。

 

かなり特殊な状況を描いたミステリーでありながら、登場人物それぞれの心情面の描写も隙がなく物語としてもかなり楽しめました。

 

ラストはちょっと切ない

夕焼けと雲

突如として人生の終わりを突き付けられ、残りのたった十五秒で働きに働きまくる「私」。

彼女がどういう心境で最期を迎えるのか気になって、ついつい一気読みしてしまいました。

本作のラストについてはネタバレになるので詳細は書きませんが、ちょっと切ない感じが良かったですね。

終わりに

「十五秒」は、背後から銃撃され瀕死の重傷を負った「私」が死ぬ直前の十五秒を最大限に活用して復讐を試みる特殊設定ミステリーです。

 

60ページに満たないほどよいボリュームの短編なので、特殊設定ミステリーを初めて読む人にもおすすめ!

 

本記事を読んで、榊林銘さんの「十五秒」がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ『あと十五秒で死ぬ』を手に取って読んでみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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