ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2021.07.24)

【感想】『暗色コメディ』/連城三紀彦:伊坂幸太郎が復刊を熱望!

こんにちは、つみれです。

このたび、連城三紀彦(レンジョウミキヒコ)さんのミステリー小説『暗色コメディ』を読みました。

どこか捉えどころのない不思議な物語が4つ同時進行していく不穏で難解な一作です。

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
書名:暗色コメディ(双葉文庫)

著者:連城三紀彦
出版:双葉社(2021/4/15)
頁数:392ページ

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伊坂幸太郎が復刊を熱望した異色のミステリー!

伊坂幸太郎が復刊を熱望した異色のミステリー

私が読んだ動機

私が所属している文学サロン「朋来堂」の「ミステリ部」5月の課題図書だったので読みました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 普通のミステリーに飽きてしまった
  • 不穏で不安になる物語を読みたい
  • 人によって解釈の分かれる作品を読んでみたい

あらすじ・作品説明

もう一人の自分を目撃する人妻・古谷羊子(フルヤヨウコ)

 

自分を轢いたはずの車が消えたと言い張る画家・碧川宏(アオカワヒロシ)

 

「あんたは事故で死んだ」と妻から言われ続ける葬儀屋・鞍田惣吉(クラタソウキチ)

 

妻が別人にすり替わったと訴える外科医・高橋充弘(タカハシミツヒロ)

 

接点がないはずの四人の物語が、とある精神病院で交錯する。

序盤の難しさ

夜の交差点

『暗色コメディ』の特徴は、なんと言っても序盤の難しさです。

本作は4つの物語が並行して進んでいく「群像劇」スタイルをとっています。

4つの視点が入り混じるため、しっかりと頭のなかで整理して読み進めないと理解しづらいかもしれません。

また、それぞれの物語の主人公や彼らを取り巻く環境がかなり特殊で、それが理解のしづらさに拍車をかけています。

4つの物語の登場人物たちは、程度の差はあるにせよ現実味のない不思議な体験をします。

主役級の人物がみんなそんな感じなので、本作はシーンが切り替わっても現実の話なのか妄想の話なのかはっきりしない描写が連続します。

何が起きているのかわからないストーリーが4つも同時進行していくので、単純な因果関係で物語を理解することができず正直かなり難しかったですね。

ちなみに本作は四部構成になっていて、それは下記の通り。

  • 序章
  • 第一部
  • 第二部
  • 終章

本作の序章から第一部にかけて、私は読むのにけっこう苦労しました。

ところが第二部になると、様子が変わってくるんです。

第二部から読みやすくなる

エレベーターのボタン

序章と第一部は登場人物たちの狂気レベルが非常に高く、前後の脈絡があるようでないような文章が続き、正直読み進めるのに結構な精神力を必要としました。

これが第二部になると、様子が変わってきます。

それまで謎が謎を呼ぶ展開が連続していたのに、第二部になると物語がその謎を解き明かす方向にシフトしていくのです。

ここに至ってようやく慣れ親しんだミステリーの雰囲気が感じられて安心しましたね。(とはいえ、難しいのは相変わらずですが)

第一部まではこの物語がどこに向かって収束していくのか全く想像できなかったのが、第二部に至ってようやくぼんやりと行く先が見えた気がしました。

そうなると、「ラストはどうなるの!?」という強烈な興味が生まれてきて、それに引っ張られるようにして読み進めました。

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不思議な余韻を残す異色のミステリー

本作が一般的なミステリーと大きく違うのは、物語の終着点が予想できないところです。

普通のミステリーであれば、物語序盤で事件や謎が発生し、それらを解明していくというわかりやすい目的があります。

ところが本作は、物語が4つに分かれていてそれぞれが同時進行していく上、各物語の主人公が異なる別の問題を抱えています。

つまり何を解決したら本作としての謎が解明されるのか、誰を主体に、何を目的に読み進めたらいいのかが掴みづらいのです。

これらの4つの物語が本作の終盤に至ってはじめて有機的に繋がっていきます。

最終的には主人公四人の抱えていた問題や彼らを取り巻く状況は理解できますが、読了後も「あれは何だったの?」という細かい謎は残ったまま。

不思議な表現ですが、「読了後の不穏な消化不良感のような余韻」が印象的な一作でした。

最終的にすべてのことについて明確な答えが提示されない作品なので、読み終わった人同士で感想を話し合うとおもしろい作品かもしれませんね。

実際、私も他の読了者と感想を語り合う機会がありましたが、けっこう人によって解釈が異なっていておもしろかったです。

正直、ミステリーを読みなれていない人にはかなり難解な作品だと思いますが、逆に普通のミステリーには飽きてきたという人はおもしろく読めると思います。

主人公たちのクセが強すぎる

上記の通り、本作は4つの物語が同時進行で展開していきます。

それぞれの物語に主人公がいるわけですが、彼ら一人ひとりが非常に濃いキャラをしています。

簡単に感情移入できるような良くも悪くも普通のキャラが一人もおらず、みんなかなり強烈な個性の持ち主です。

仮に一人であっても一冊の小説の主人公をはれるような独特な境遇のキャラなのに、それが四人も集まっているという狂気。

この独特のキャラクターの魅力を四人分も味わえるところが本作の醍醐味と言えるでしょう。

彼らが最終的にどこに向かっていくのか、ぜひ本作を読んで見届けてほしいなと思います。

 

 

伊坂幸太郎が復刊を熱望

交差点

本作『暗色コメディ』は一度絶版になったのですが、作家伊坂幸太郎(イサカコウタロウ)さんが復刊を熱望したことで知られています。

伊坂さんといえば、複数の主人公の視点を切り替えながら物語を展開していく作品が多いですね。

実は伊坂さんは連城三紀彦さんの『暗色コメディ』に挑戦するつもりで『ラッシュライフ』を書いたそうです。

『ラッシュライフ』も複数の視点を切り替えながら進行していくスタイルになっていて、確かに『暗色コメディ』から影響を受けたであろう要素を嗅ぎ取ることができます。

このあたりに伊坂幸太郎さんの作風のルーツがあるのかもしれませんね。

ちなみに、読み心地だけでいえば『暗色コメディ』と『ラッシュライフ』は全くの別モノ。

『暗色コメディ』はどこか読者を突き放すかのような玄人向け感があるのに対し、『ラッシュライフ』はパラメータをエンタメに全振りした感じです。

内容がかなり違うので単純比較はできないものの、不穏さ・異色さでいえば『暗色コメディ』、読みやすさ・ワクワク感でいえば『ラッシュライフ』に軍配が上がりそうですね。

終わりに

連城三紀彦さんの『暗色コメディ』はなかなか強烈なミステリー作品でした!

何が起きているのかわからない状況が連続し頭のなかがグチャグチャになりながらの居心地の悪い読書でしたが、読み終わるとその不可解さ・不安感が魅力の一冊だということがわかります。

ミステリー作品に親しみのない場合には難しく感じるかもしれませんが、ぜひこの不可思議な世界に浸ってほしいです。

本記事を読んで、連城三紀彦さんのミステリー小説『暗色コメディ』が気になったという場合は、手に取って読んでもらえるとうれしいです!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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