地獄の奇術師

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2022.04.29)

【感想】『地獄の奇術師』/二階堂黎人:昭和感あふれる古き良き本格ミステリー!

こんにちは、つみれです。

このたび、二階堂黎人(ニカイドウレイト)さんの『地獄の奇術師』を読みました。

 

国立(クニタチ)市の富豪・暮林(クレバヤシ)家の周辺をうろつく不審な包帯の男を相手取り、女子高生名探偵・二階堂蘭子(ニカイドウランコ)が謎解きを繰り広げるミステリー小説です。

 

「二階堂蘭子」シリーズの第一作でもあり、作家・二階堂黎人さんのデビュー作でもあります!

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
書名:地獄の奇術師(講談社文庫)

著者:二階堂
出版:講談社(1995/7/6)
頁数:480ページ

スポンサーリンク

昭和感あふれる古き良き本格ミステリー!

昭和感あふれる古き良き本格ミステリー

私が読んだ動機

シリーズ2作目『吸血の家』が、私が所属している文学サロン「朋来堂」の「ミステリ部」2022年2月の課題図書だったので、その準備としてシリーズ1作目を読みました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 本格ミステリーを読みたい
  • 古典的なトリックを楽しみたい
  • 怪人が登場するミステリーが好き

あらすじ・作品説明

国立市の富家・暮林家の邸宅「十字架屋敷」の周辺をミイラ男のような不審な人物がうろついている。

 

不審者は「地獄の奇術師」を自称し、暮林家に対する復讐を宣言。

 

最初の犠牲者の衣服には一枚のトランプと、「暮林家を皆殺しにしてやる」と書かれた画用紙が残されていた。

 

女子高生名探偵・二階堂蘭子は友人たちとともに地獄の奇術師を追う。

昭和的雰囲気

暗い夜道

本作『地獄の奇術師』の特徴として、作品全体を覆う昭和的な雰囲気が挙げられます。

昭和42年(1967)という時代設定と、国立・立川(タチカワ)周辺の住宅地が舞台になっていることが相まって、昭和的でひっそりとした雰囲気が漂っているんです。

特に事件の現場となる暮林家の邸宅「十字架屋敷」やタチカワ・ロイヤル・ホテルの空気感には何とも言えない陰鬱さがあります。

 

そのほの暗い雰囲気が、凄惨な事件が起こるミステリーの舞台と絶妙にマッチしていて良かったですね。

 

怪奇趣味

不気味な夜道

『地獄の奇術師』の魅力の一つに「怪奇趣味」があります。

本作では、序盤で顔面に汚らわしい包帯を巻いたミイラ男のような不審な人物が登場。

このミイラ男が、突然姿を消したり、また現れたりといった不気味な行動を繰り返します。

 

これらの描写がいい意味で非現実的なんですよ。

 

いかにも伝統的なミステリー作品の「怪人」といった感じで、現実にいたら即逮捕レベルの怪しさです。

この怪人が大胆不敵にも国立の富豪・暮林家一族を皆殺しにすると宣言し、二階堂蘭子ら探偵役や警察に挑戦してきます。

また、事件現場にトランプのカードとメッセージを残すなど、いかにもミステリーの犯人にありがちな稚気を発揮。

どちらかというとリアリティよりも、怪奇趣味や古風な手品的トリックなどが持ち味の作品です。

昭和的な雰囲気が漂う舞台で、昔ながらの古典的な怪人が事件を起こす古き良き本格ミステリーの味わいが醍醐味と言えます。

スポンサーリンク

名探偵・二階堂蘭子

アクションとペン

本作は語り手の二階堂黎人(作者と同名の登場人物)が義妹の女子高生名探偵・二階堂蘭子の謎解きっぷりを記述していくという体裁をとっています。

なので、主人公は二階堂黎人ですが、実際に謎解きで活躍するのは二階堂蘭子の方なんですね。

大のミステリー小説愛好家であり、実際の事件でも鋭い閃きを見せる蘭子ですが、何よりすごいのがその行動力。

物語序盤で黎人やその友人・暮林英希(クレバヤシヒデキ)と一緒に怪人のあとを尾行して隠れ家を突き止め、その内部に侵入していくなどすさまじいアクティブさを見せつけます。

 

この危なっかしいまでの行動力も探偵・二階堂蘭子の魅力だと思いましたね。

 

本作『地獄の奇術師』は「二階堂蘭子」シリーズの記念すべき第一作目でもあるだけでなく、蘭子が今後の推理スタイルを決定するシーンなども描かれています。

シリーズを追う上で重要な位置付けの一作となりそうですね。

巻末の注釈のすごさ

本から知識を得る

本作には巻末に豊富な注釈が用意されています。

文中で注釈がある箇所に差し掛かると「*1」のような形で示され、それに対応する巻末の注釈を読むとその内容が詳しくわかるといった具合。

 

この注釈がすごいんですよ。

 

作者・二階堂黎人さんのミステリー愛がほとばしっていて、読んでいるだけでも楽しいんです。

また、ミステリー用語の解説や雑学にとどまらず、この注釈自体も物語の一部になっていることもあります。

注釈の存在自体が本作の魅力の一つとなっていますので、単なる補足説明だからと読み落とすことのないようにしたいですね。

 

※電子書籍ストアebookjapanへ移動します

 

終わりに

『地獄の奇術師』は、国立市の富豪・暮林家の邸宅「十字架屋敷」の周辺をうろつく不審な包帯男を相手取り、女子高生名探偵・二階堂蘭子が謎解きを繰り広げるミステリー小説です。

 

昭和感の漂う舞台や古典的な怪人など、古き良きミステリーの雰囲気に浸れるのが最大の魅力ですね!

 

「二階堂蘭子」シリーズの第一作目であり、彼女の今後の推理スタイルが決まる描写があるなど、名探偵・二階堂蘭子の活躍を追う上でも大事な一冊となっています。

本記事を読んで、二階堂黎人さんの『地獄の奇術師』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

スポンサーリンク

時空旅行者の砂時計【感想】『時空旅行者の砂時計』/方丈貴恵:タイムトラベルが組み込まれた特殊設定ミステリー!前のページ

【感想】『老虎残夢』/桃野雑派:特殊能力を持つ武術の達人たちが活躍する特殊設定ミステリー!次のページ老虎残夢

980円で電子書籍が読み放題!?

Kindle Unlimited をご存じですか

本を読むときにおすすめなのが、Kindle Unlimited の30日無料体験。

Kindle Unlimited は、月額980円で対象の電子書籍が読み放題となるサービスです。

最初の30日間が無料です。

実際に使ってみて合わないと思ったら、30日以内に解約すれば一切お金はかかりません。

 

いつでも無料で解約できます

 

関連記事

  1. 落下する緑

    ミステリー、サスペンス

    【感想】『落下する緑』/田中啓文:ジャズマンが謎を解く日常系ミステリー!

    こんにちは、つみれです。このたび、田中啓文(ヒロフミ)さんのミステ…

  2. 二銭銅貨

    ミステリー、サスペンス

    【感想】「二銭銅貨」/江戸川乱歩:古典的な雰囲気が良い江戸川乱歩のデビュー作!

    こんにちは、つみれです。このたび、江戸川乱歩(エドガワランポ)さん…

  3. 推理大戦

    ミステリー、サスペンス

    【感想】『推理大戦』/似鳥鶏:最強の名探偵たちの推理バトルが熱い!

    こんにちは、つみれです。このたび、似鳥鶏(ニタドリケイ)さんのミス…

  4. モルグ街の殺人

    ミステリー、サスペンス

    【感想】『モルグ街の殺人』/ポー:世界初のミステリー小説!

    こんにちは、つみれです。このたび、アメリカの作家エドガー・アラン・…

  5. グラスバードは還らない

スポンサーリンク

最近の記事

  1. 密室黄金時代の殺人
  2. むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。
  3. 猿六とぶんぶく交換犯罪
  4. 真相・猿蟹合戦
  5. わらしべ多重殺人

カレンダー

2024年9月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30  
  1. 「屍人荘の殺人」シリーズ

    ミステリー、サスペンス

    「屍人荘の殺人」シリーズ(今村昌弘)の読む順番とあらすじを解説!
  2. 屍人荘の殺人

    ミステリー、サスペンス

    【感想】『屍人荘の殺人』/今村昌弘:ネタバレ厳禁!異色のクローズドサークル!
  3. 館島

    ミステリー、サスペンス

    【感想】『館島』/東川篤哉:軽く読める本格ミステリー!
  4. 犯人像がコロコロ変わる『ダリの繭』

    ミステリー、サスペンス

    【感想】『ダリの繭』/有栖川有栖:コロコロ変わる犯人像!
  5. 夏と冬の奏鳴曲

    ミステリー、サスペンス

    【感想】『夏と冬の奏鳴曲』/麻耶雄嵩:雪が降る夏の孤島で繰り広げられる邪道ミステ…
PAGE TOP