このあと衝撃の結末が

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2022.05.11)

【感想】「このあと衝撃の結末が」/榊林銘:見逃したドラマ終盤十五秒の真相は?

こんにちは、つみれです。

このたび、榊林銘(サカキバヤシメイ)さんの短編「このあと衝撃の結末が」を読みました。

 

とあるテレビドラマの結末部分の十五秒を見逃した弟が、姉による重要なシーンの解説を聞いてラストの展開を言い当てようとするミステリー短編です。

 

本記事は『あと十五秒で死ぬ』所収の一編「このあと衝撃の結末が」について書いたものです。

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
短編名:このあと衝撃の結末が(『あと十五秒で死ぬ』所収)

著者:榊林銘
出版:東京創元社
頁数:71ページ

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テレビドラマの結末部分十五秒の間に何があったのか!

テレビドラマの結末部分十五秒の間に何があったのか

私が読んだ動機

以前、本作収録の短編集『あと十五秒で死ぬ』の紹介を受け、おもしろそうだったので読みました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • SF要素があるミステリーが読みたい
  • 作中作が登場する作品が好き
  • 一捻りあるラストが好き

あらすじ・作品説明

テレビドラマ『クイズ時空探偵』の結末部分の十五秒を見逃した「俺」。

 

ハッピーエンドかと思われたそのテレビドラマは、ちょっと目を離した隙にヒロインの死という衝撃の結末を迎えていた。

 

その展開を目の当たりにした「俺」は驚き、姉に十五秒の間に何があったのかと問う。

 

すると姉がこれまでこのテレビドラマを真剣に視聴していなかった弟のため、欠落部分の謎解きに必要な過去のシーンを解説しはじめる。

 

「俺」は姉の解説をすべて聴いたあと、十五秒の真実を言い当てることができるのか。

見逃した十五秒

リビングの大きなテレビ

本作の主人公である「俺」は、テレビドラマ『クイズ時空探偵』が最終回のラスト部分にさしかかるとき十五秒ほど離席します。

離席前のドラマの展開はいかにもハッピーエンドらしい雰囲気でした。

しかし、「俺」が席に戻ってくると、目を離した十五秒の間にドラマは「ヒロインの死」という衝撃的な展開を迎えていました。

 

「俺」が席を外していた「たった十五秒」の間にいったい何があったのでしょうか?

 

もともと「俺」は『クイズ時空探偵』をそれほど熱心に観ていたわけではありませんので、ラストの急展開を予想する材料がありません。

そこで、この『クイズ時空探偵』を全話視聴していた姉が重要なシーンをピックアップして「俺」に解説してくれることになったのです。

姉の説明を聞いて「俺」が見逃した十五秒の内容を言い当てることができるのでしょうか。

ミステリードラマ『クイズ時空探偵』

砂時計とタイムトラベル

作中に登場するテレビドラマは、『クイズ時空探偵』というタイトル。

探偵とヒロインが「時間旅行」の能力を使って過去と現在を往復しながらゴーストタウンになってしまった町の秘密に肉薄していくという内容です。

 

SF要素が絡んだミステリーが好きな人はかなり楽しめそうですね。

 

犯人当てクイズ

ペンで書いたクエスチョンマーク

本作に登場するテレビドラマ『クイズ時空探偵』のおもしろいところは、毎回、番組終盤で犯人当てクイズが出題される点。

視聴者参加型のミステリードラマになっているわけです。

ここで詳細は書きませんが、本編最終回では「犯人当てクイズがなかった」ことがSNS等で取り沙汰されるなど、このクイズも視聴者の興味をかき立てる一要素となっています。

また、本編終了後には犯人当てクイズの答え合わせをするミニ番組が生放送で放映されるなど、非常におもしろい工夫が凝らされているようです。

『クイズ時空探偵』は「このあと衝撃の結末が」においてはあくまで仕掛けの一部でしかないドラマですが、普通に企画や物語がおもしろそうなんですよ。

 

私など、一回全編を観てみたいと思ってしまいましたね。

作中作の変化形

選ぶ

このテレビドラマ『クイズ時空探偵』は、作中作の変化形といえるかもしれません。

本格的な作中作と違うのは、ラストの展開を予想するために必要なシーンを姉が選り抜いて弟である「俺」に視聴させる点。

 

一続きの物語ではなく、重要なシーンのピックアップなんですね。

 

あくまでラストの展開を言い当てる材料の提供に主眼を置いた作中作であることがわかります。

ドラマの余計な部分は省いているという意味で、良くも悪くも短編向きの趣向と言えるかもしれませんね。

優秀な姉弟のやりとりがおもしろい

テレビにリモコンを向ける

本作は、弟の「俺」が姉のクイズ形式でテレビドラマの展開を当てていく物語です。

まず、姉はドラマの展開を知っていて、姉の誘導に沿う形で弟がドラマのラストを言い当てようとする構図がおもしろいですね。

 

そして、とにかくこの姉弟が優秀なんですよ。

 

姉の出題問題に対する「俺」の反応が見事で、その観察力・洞察力には目を見張るものがあります。

また、姉は姉で丁寧な解説をしているように見えますが、ときおり何かを隠していそうな振る舞いを見せるんですよね。

この優秀な姉弟のやり取りの果てに本作はどのようなラストを迎えるのでしょうか。

ミステリー好きには必見の「一捻りが最高に楽しいラスト」になっていますので、気になる人はぜひ読んでみてくださいね。

「死の前の十五秒」がテーマの短編

腕時計の秒針

本作「このあと衝撃の結末が」は、短編集『あと十五秒で死ぬ』に収録された一編。

『あと十五秒で死ぬ』は「死の前の十五秒」という共通のテーマを扱ったミステリー短編集です。

本作も主人公が見逃した「ヒロインの死の直前の十五秒」が重要な意味を持つという意味でしっかりとテーマに沿っていますね。

71ページと短編としてはそこそこのボリュームですが、読んでみるとそれ以上に骨太な印象を受ける一編となっています。

 

メイントリックもおもしろく、作中で描かれるテレビドラマの内容も楽しめるので、ミステリー好きは読んでみてくださいね。

 

終わりに

「このあと衝撃の結末が」は、とあるテレビドラマの結末部分の十五秒を見逃した弟が、姉による重要なシーンの解説を聞いてラストの展開を言い当てるミステリー短編です。

 

SF要素があるミステリードラマの内容を言い当てる物語なので、SF的な展開が好きな人にもおすすめですよ。

 

本記事を読んで、榊林銘さんの「このあと衝撃の結末が」がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ『あと十五秒で死ぬ』を手に取って読んでみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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