不眠症

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2022.05.13)

【感想】「不眠症」/榊林銘:細部が微妙に異なる「同じ夢」の意味は?

こんにちは、つみれです。

このたび、榊林銘(サカキバヤシメイ)さんの短編「不眠症」を読みました。

 

主人公の少女・茉莉(マツリ)毎夜同じ悪夢に苛まれる不穏な短編ミステリーです。

 

本記事は『あと十五秒で死ぬ』所収の一編「不眠症」について書いたものです。

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
短編名:不眠症(『あと十五秒で死ぬ』所収)

著者:榊林銘
出版:東京創元社
頁数:44ページ

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夜ごと繰り返される十五秒の夢の意味は?

夜ごと繰り返される十五秒の夢の意味は

私が読んだ動機

以前、本作収録の短編集『あと十五秒で死ぬ』の紹介を受け、おもしろそうだったので読みました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 短編小説が読みたい
  • 不穏な物語を読みたい
  • 何度も同じシーンがループする怖さが好き

あらすじ・作品説明

茉莉は母・(ヨウ)の運転している車の中で目を覚ます。

 

運転中の葉は助手席の茉莉に何か話しかけるのだが、その直後大きな自動車事故に遭ってしまう。

 

茉莉が再び目を覚ますと、自動車事故は夢であったことがわかる。

 

その後、茉莉は何度も自動車事故の夢を見るようになる。

 

しかし、その夢の内容は毎回細部が微妙に異なっていた。

茉莉の夢

車のダッシュボード

本作「不眠症」の主人公・茉莉は、母の葉と二人きりで暮らしており、主に家事全般を担っています。

茉莉はとある理由から葉に恩を強く感じていて、葉をかなり慕っている様子がうかがえる描写が多いです。

そんな茉莉ですが、ある時から何度も同じ夢を見るようになります。

夢の内容は、葉が運転する車の助手席に乗っているというもの。

 

運転席の葉が茉莉に語り掛けてくるのですが、なんと十五秒後に自動車事故を起こしてしまうという衝撃的な内容です。

 

上で「同じ夢」と書きましたが、厳密にいうとまったく同じ夢ではありません。

夜ごとに細部が微妙に違っているのです。

細部が異なる同じ夢

グラデーションの色鉛筆

茉莉が毎夜見るようになった夢は同じようで細部が微妙に異なっています。

母・葉が茉莉にかける言葉が、ときに「別れの言葉」であったり、ときに「感謝の言葉」であったり。

当然、それに対する茉莉の反応もさまざまなパターンに分かれます。

しかし、きっかり十五秒経過すると事故に遭遇するのはいつも同じというめちゃくちゃ不穏な夢なのです。

眠ることが怖くなる

不眠症の女性

毎夜のように悪夢に苛まれる茉莉は、だんだんと眠ることが怖くなっていきます。

 

タイトルの「不眠症」は、このあたりに由来するものでしょう。

 

すると今度は睡眠不足がたたり、茉莉は普段担当している家事でミスを頻発するように。

繰り返される悪夢が現実世界の茉莉を苦しめ、物語は加速度的に不穏さを増していきます。

夢と現実

晴天の高速道路

本作は、下記の二つがメインの描写となっています。

  • 茉莉の夢のなかの十五秒
  • 現実世界での葉と茉莉のやり取り

夢の世界と現実の世界が交互に描かれるんですね。

毎回微妙に異なる茉莉の夢はいったい何を表しているのでしょうか。

なぜ同じような夢が毎夜繰り返されるのか?

内容が微妙に違っているわけは?

 

読んでいると疑問がつぎつぎと湧いてきてしまいます。

 

心因性難聴

耳を澄ます

本作では夢の描写と現実の描写が交互に繰り返されますが、現実世界の描写では、茉莉の耳が聞こえなくなるシーンがたびたび差し挟まれます。

日常の些細なことで、茉莉の耳は一時的に音が聞こえなくなるのです。

ミステリー的にはこの難聴が何か意味を持っていることが容易に想像でき、先を読み進めるのが怖いような、事実を知りたいような気持ちにさせられます。

 

「悪夢と難聴には何か関係があるのか?」などいろいろと考えちゃいますね。

 

短編集『あと十五秒で死ぬ』所収の一編

砂が落ちている最中の砂時計

「不眠症」は榊林銘さんの短編集『あと十五秒で死ぬ』所収の一編で、本作は収録作4作のなかでも44ページと特に短いものとなっています。

本短編集は「死の前の十五秒」という共通したテーマを扱うミステリー作品を集めたもの。

本作は「十五秒後に事故に遭う夢」が繰り返されるという内容となっていて、「死の前の十五秒」というテーマをストレートに満たしています。

この短編集は連作短編ではないため各編が完全に独立していますが、「死の前の十五秒」という共通テーマがまったく異なる味付けでそれぞれ4編に生かされていておもしろかったですね。

 

なかなかこういうテーマで複数種類の物語を読む機会はないと思いますので、興味があればぜひ『あと十五秒で死ぬ』を読んでみてください。

 

終わりに

「不眠症」は、主人公の茉莉が毎夜同じ悪夢に苛まれる不穏な短編ミステリー。

 

現実世界での落ち着いた描写と夢の世界の破滅的な描写のギャップが不穏で、ついつい先へと読み進めたくなってしまう一編でした。

 

本記事を読んで、榊林銘さんの「不眠症」がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ短編集『あと十五秒で死ぬ』を手に取って読んでみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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