こんにちは、つみれです。
このたび、青柳碧人さんのミステリー連作短編集『ウサギの天使が呼んでいる ほしがり探偵ユリオ』(創元推理文庫)を読みました。
普通のミステリーではなかなかありえなそうな舞台や事件を取り扱っていて、とてもおもしろい一冊でした!
それでは、さっそく感想を書いていきます。
作品情報
書名:ウサギの天使が呼んでいる ほしがり探偵ユリオ(文庫)
著者:青柳碧人
出版:東京創元社(2017/5/21)
頁数:320ページ
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目次
エキセントリックなガラクタ収集家が謎解き!
私が読んだ動機
- インターネットでおもしろそうな本を探していて見つけました。
- kindle unlimited の対象作品(2020年10月現在)だったので読みました。
こんな人におすすめ
- 軽めのミステリー短編集が読みたい
- エキセントリックなキャラクターを楽しみたい
- 雑学が好き
あらすじ・作品説明
深町ユリオは、ショッピングサイト《ほしがり堂》を運営し、自分が収集したガラクタをほしがる人に売っている。
彼はガラクタ収集のために各地に出向くのだが、行く先々で事件に巻き込まれてしまう。
ユリオとその妹さくらが数々の難事件・珍事件に挑むミステリー連作短編集。
ユリオ&さくらの主人公兄妹がいい
本作『ウサギの天使が呼んでいる』は、主人公格の2名のキャラクターが非常に良いです!
変人の兄ユリオ(30歳)としっかりものの妹さくら(24歳)の兄妹二人がメインの登場人物となっていて、物語は主にさくらの視点から語られています。
兄のユリオはガラクタ集めが趣味で、「ほしい……」が口癖。
インターネットで《ほしがり堂》というECサイトを運営しており、各所から集めたガラクタをほしがっている人たちに適切な価格で売るという仕事をしています。
一方、妹のさくらは、いったん一般企業に就職したものの上司とのトラブルで退職し、ユリオのマンションに転がり込んでガラクタ販売の手伝いをしているという状況。
各地を駆けずり回らなければならない商売をしているユリオが運転免許を持っていないので、運転手としてユリオにくっ付いていくうちに事件に巻き込まれる、というのがお約束の展開です。
変人の探偵役ユリオと常識人のワトソン役さくらという配役が、いかにも典型的な探偵ものミステリーといった感じで、違和感なくスッと物語世界に入っていけますね。
特にユリオのキャラクターがかなりエキセントリックでいい味出しています。
作者の青柳さんはあとがきで、「名探偵」について書きのように書いています。
「探偵」に比べ、「名探偵」には遊び心がある。現場の状況も、扱われるトリックも、協力する助手も、怪しげな登場人物も、対決する犯人も、すべてをわくわくさせるものに満ちている事件。――そういう事件に出会い、時にはピンチに直面し、時には悩みながらも、飄々と謎の中を泳ぐように真相を突き止めていく。これが「名探偵」ではないだろうか。
『ウサギの天使が呼んでいる』/青柳碧人 kindle版、位置No. 3250
こういうところをしっかり考え抜いているから、ユリオのような魅力的なキャラクターが生まれたのでしょうね!
ライトだが謎解きは本格的
メインキャラのユリオとさくらのキャラクター造形もライトですが、物語もライト寄りで気軽に読み進めることができます。
殺人事件や人死にを扱った物語もありますが、そのあたりはアッサリと描写されていて、殺人事件が苦手な人でも抵抗なく読めます。
キャラや事件自体はライトなのですが、その反面、トリックや謎解きはなかなか本格的で、物語中にいろいろとヒント(伏線)が散りばめられています。
このヒントが、「あからさまにヒントとわからないが印象には残る」といった感じで、伏線として絶妙に巧く配置されています。いいですねえ!
見取り図的なものが登場する話もあり、短編ながら謎解きの楽しさを味わわせてくれる一冊となっています。
「キャラ読みもできるし、謎解きも楽しめる」といういいとこどりの短編集ですね!
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事件の舞台がユニーク
本短編集は、事件が起こる舞台が多種多様で、「普通のミステリーに飽きた!」といった場合にも、新鮮に楽しむことができます。
本短編集で舞台になったのは下記の5箇所。
- 怪奇居酒屋《スーザンズ・ヘル》
- 巨大なガラスのオブジェ「スケルトン・キューブ」
- ゴミ屋敷
- 老人ホーム《立川ふくふく園》
- 隠居した元旅行会社重役の別荘
従来のミステリーではなかなか扱われなかったような場所が舞台として選ばれていて、そういった特殊な場所だからこそ起こるトリックや謎解きが新鮮です。
舞台が珍しいというのはそれだけで楽しいですね。
豊富な雑学
探偵役のユリオがとにかく知識豊富で、ここぞとばかりに雑学を披露してくるのですが、これがなかなか興味深いものぞろい。
本短編集に収録された物語のなかでも、下記のようなマニアックなものについて知識をひけらかしています。
- アンティキティラの機械
- デメニギス
- オルメカの巨石人頭像
- ナザールボンジュウ
ユリオの説明を聞いているとなんだか無性に気になってきて、いつの間にかWikipediaで調べていたりするんですよ!
私は上に挙げた4点については、全部調べました(笑)
おかげで読書がはかどらないんです!楽しいからいいですけど!
ユリオのほしがりも、なんの根拠もないものではなく、こういった雑学に裏打ちされたものであるところが本作の魅力ですね。
上記のような雑学的な内容に興味がある場合、よりいっそう本作を楽しめるでしょう。
犯人も魅力的
本作に収録されている各短編は、いずれも単純な勧善懲悪ものではありません。
問題解決後に犯人側の事情もこと細かに描き出されるため、思わず犯人に肩入れしてしまいそうになってしまう物語もありましたね。
犯罪がなぜ起きたのか、というところまでをしっかりと描き切ってくれているので、読みおわったあとに納得感・爽快感があります。
特に「琥珀の心臓を盗ったのは」の犯人側の事情はとてもよかったです。
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終わりに
普通ではありえなそうな事件・謎を扱っていて、正直言うとリアリティはあまりありませんが、いい意味でエンタメに振り切っている潔さがあります。
リアリティを求めすぎず、軽く楽しむのがよさそうな一冊ですね!
個人的には、こういう軽めのミステリーは大好きなので、続編も読んでみたいと思いました。
役に立たないウンチクがたくさん登場する小説や、軽めのミステリーを読みたい場合にうってつけの一冊ですので、興味があったら手に取ってみてくださいね。
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
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