こんにちは、つみれです。
このたび、伊坂幸太郎さんの長編小説『ペッパーズ・ゴースト』を読みました。
不思議な能力を持つ中学校の教師・壇千郷がとある出会いをきっかけに危険な企みに巻き込まれていくエンタメ作品です。
それでは、さっそく感想を書いていきます。
作品情報
書名:ペッパーズ・ゴースト
著者:伊坂幸太郎
出版:朝日新聞出版(2021/10/1)
頁数:392ページ
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目次
他人の明日が視える中学校教師が物騒な事件に巻き込まれる!
私が読んだ動機
伊坂幸太郎さんが大好きなので、新刊発売と同時に購入しました。
こんな人におすすめ
- 主人公が特殊な能力を持っている作品を読みたい
- 語り手を切り替えながら進む物語が好き
- 独特の「伊坂節」を味わいたい
あらすじ・作品説明
中学校教師の壇千郷は不思議な能力を持っており「他人の明日の体験」を視ることができる。
彼はその能力がきっかけとなって物騒な事件に巻き込まれることになる。
また、彼は教え子の一人から自作小説の原稿を手渡される。
小説には猫好きの二人組「ネコジゴハンター」の軽妙な掛け合いと物騒な仕事が描かれていた。
この奇妙な小説はいったい何なのか?そして、壇千郷を襲った事件は何だったのか?
未来が視える主人公
本作『ペッパーズ・ゴースト』の主人公のは壇千郷中学校の国語教師・壇千郷。
どこを読み飛ばしたのかわかりませんが、私はこの壇千郷をしばらく女性だと勘違いしていましたが、れっきとした男性です。
壇千郷は〈先行上映〉という特殊な能力を持っています。
この特殊能力〈先行上映〉がおもしろいんですよ。
一言で言うと、〈先行上映〉は「他人の明日の体験」を視ることができる能力です。
そして、〈先行上映〉で視た未来は、その人物に直接働きかけることで変えることもできます。
いろいろと制約はあるものの、悪い未来を避けることができる可能性を秘めた能力なのでかなりスゴいですね。
能力の発動条件
壇千郷の〈先行上映〉のおもしろいところは、その能力が発動する条件です。
たとえば他人が近くでくしゃみをすると「飛沫感染」し、その人物の明日の映像が視えるのです。
未来視という能力自体にはさほどの目新しさはありませんが、それが飛沫感染により可能となるという発想はかなりユニークですね。
事件に巻き込まれる
壇千郷は〈先行上映〉という能力を持っていること以外はいたって普通の人物です。
ところが紆余曲折あってこの能力を他人に知られることになり、それをきっかけにとある陰謀に巻き込まれます。
壇千郷自身は身体能力的に一般人と変わらないにもかかわらず、銃で武装した人物や格闘術を身につけた人物と関わっていくことになります。
凡人がヤバい人物に追われたり捕まったりするハラハラする展開が、いかにも伊坂作品らしくておもしろかったです。
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複数の語り手
本作では、主人公の壇千郷だけでなく、他の人物の視点も描かれます。
複数の人物を語り手に据え、視点の切り替えを繰り返すことで物語を多角的に描く演出は伊坂幸太郎さんの得意技ですね。
「これぞまさに伊坂作品!」という感じです。
作中作
上記で本作は語り手が複数存在することを説明しました。
なんとそのうちの一人は、小説の登場人物なんです。
主人公・壇千郷の教え子に布藤鞠子という女子中学生がいるのですが、彼女は自作小説を書いています。
本作では、彼女の書いた自作小説の描写が物語の途中で「作中作」の形で差し挟まれるんです。
この作中作では、小説の登場人物の一人ロシアンブルの視点が描かれています。
かなりトリッキーな仕掛けですが、この作中作の存在が物語本筋とどのように絡んでいくのかも本作の見どころの一つですね。
キャラクターが最高
『ペッパーズ・ゴースト』はキャラクターがめちゃくちゃ良いです!
特に良かったのが、ロシアンブルとアメショーのコンビ。
この二人は主人公・壇千郷の受け持ち生徒の一人、布藤鞠子が書く自作小説のなかの登場人物です。
ロシアンブルが底抜けの悲観主義で、アメショーが底抜けの楽観主義という対比が楽しい二人組です。
ロシアンブルとアメショーは「ネコジゴハンター」という仕事をしています。
仕事の内容を簡単に言うと、虐待を受けた猫の復讐。
正直、かなり物騒なキャラクターたちであるにもかかわらずどこか憎めないところがあって「これぞ伊坂キャラ!」という感じですね。
そこそこ多くの人物が登場する作品ですが、私はこのロシアンブルとアメショーの二人組が別格で好きでした。
あえてどちらが好きかと問われれば、断然ロシアンブル派です。
伊坂節炸裂
本作でも伊坂さん独特の言い回し「伊坂節」が「これでもか!」と炸裂しています。
正直、私はこのオンリーワンの読み心地を求めて伊坂作品を読んでいるところがあるんですよね。
これまでの伊坂作品が好きな人なら、この『ペッパーズ・ゴースト』も間違いなく楽しめるでしょう。
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終わりに
『ペッパーズ・ゴースト』は、他人の未来を視ることができる中学校教師・壇千郷が、物騒な事件に巻き込まれていくエンタメ作品です。
全編にわたって「伊坂節」が炸裂しており、ファンならずともその独特な表現に魅了されてしまうことうけあいですよ。
また、ネコジゴハンターのロシアンブルなどキャラクターも魅力的な一冊でした。
本記事を読んで、伊坂幸太郎さんの『ペッパーズ・ゴースト』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
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