こんにちは、つみれです。
この度、有栖川有栖さんの『こうして誰もいなくなった』(KADOKAWA)を読みました。
良質なミステリーの詰め合わせ的短編集となっています!
さっそく感想を書いていきます。
※2021年11月23日追記
本作の文庫版が発刊されました。本記事の引用箇所は単行本当時のものです。
作品情報
書名:こうして誰もいなくなった
著者:有栖川有栖
出版:KADOKAWA (2019/3/6)
頁数:400ページ
スポンサーリンク
目次
ミステリーの詰め合わせ的短編集
私が読んだ動機
ミステリーが読みたくなり、インターネットで探しました。
収録中編の表題作『こうして誰もいなくなった』は、明らかにアガサ・クリスティの名作『そして誰もいなくなった』のオマージュ。
さらに書き手が有栖川有栖さんとくれば、もうこれはおもしろくないはずがない!と思いましたね。
こんな人におすすめ
- ミステリー短編集が読みたい
- 有栖川有栖の引き出しの多彩さを味わいたい
- クローズドサークル(あるいは「誰もいなくなった系ミステリー」)が好き
本作はファンタジックなものから不思議な読み心地のもの、ごく短いものから本格的なミステリーに至るまで、多種多様なミステリーを味わえる一冊。
まさにミステリーの詰め合わせ的な読者を飽きさせない短編集となっています。
読み進めるとわかりますが、編ごとにまったく異なる趣向で読者を楽しませてくれ、有栖川有栖さんの引き出しの多さにびっくりです。
有栖川さんご本人が本書のことを「有栖川小説の見本市」(『こうして誰もいなくなった』kindle版、位置No. 8)と表現しているのはまさに言い得て妙!
何かミステリーが読みたいけど、読む本が決まっていないようなときにはうってつけの一冊ですね。
また、最後に収録されている中編『こうして誰もいなくなった』は、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を、有栖川さんらしい味付けで現代風にオマージュした作品となっています。
短くもなく長くもない適度さがとてもとっつきやすく、非常に読みやすいです。
クローズドサークル好きな人や、誰もいなくなった系ミステリーが好きな人はかなり満足できる一編に仕上がっています。
スポンサーリンク
お気に入りの作品
本書に収録されている14編のうち、特におもしろかったものを下に挙げます。
極力ネタバレはしない方向でいきます!
館の一夜
本短編集のトップバッターを飾る一編。初っ端からおもしろい!
山中で道に迷ってしまった男女が、夜の闇のなかで煉瓦造りの洋館を発見。
雨が降りしきる状況で車を走らせるのも危険ということで、その洋館に無断で宿泊をするというのがあらすじ。
山で道に迷うシーンの不気味さ、洋館の不穏さなどの描写がすばらしいです。
ラストのオチがまたいいんですよ。好きです。
線路の国のアリス
本短編集でも随一のファンタジックさを持つ短編ですね!
少女アリスが変な世界に迷い込み、奇妙な鉄道に乗って不思議な体験をするというなんともフワフワした物語になっています。
出てくるキャラクターも変なしゃべる動物ばかりで、明るいなかにそこはかとない狂気を感じましたね。
ナンセンスなおもしろさを前面に出した独特の読み味がおもしろいです。
私は本作のパロディのもととなった『不思議の国のアリス』を未読ですが、読んでいたらより楽しめたのかもしれないですね~。私は20歳頃まで読書をほとんどしてこなかった人間でして、こういう有名どころをけっこうすっ飛ばしてきているんですよね!うへへ!
劇的な幕切れ
これはかなり私の好みです!本短編集でもトップクラスにいい!
ネタバレせずにうまく書けないほど単純なお話なのですが、妖しさ全開の展開が最高です!
ラスト間近で主人公の男性の心情が変化するシーンがとてもいいのですが、これだけでは伝わらないですね・・・(笑)
あとがきで知りましたが、「毒」がテーマの作品のようですね。
本と謎の日々
これは別の短編集(『大崎梢リクエスト!本屋さんのアンソロジー』)で読んだことがありますね。
でも好きだから、ここに挙げちゃう。
一言で言うと書店ミステリー。日常の謎とかお仕事小説とか言われる類の短編ですね。
こういう系統のほんわかした短編もそつなくこなしてしまうところが、有栖川有栖さんの引き出しの多彩さを感じる部分ですよね~。
うむ!おもしろい!
こうして誰もいなくなった
この一編は外せませんね!
これを読むためだけに本書を買ってもいいんじゃないかというくらいおもしろかったです。
表題作でもある作品ですが、他の短編と比べ明らかにボリュームが大きく、まさに本書の目玉作品の位置づけなんじゃないかと思います。
タイトルからも想像がつきますが、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を、有栖川有栖さんらしい味付けで現代風にオマージュした作品です(二回目)
いわゆる「孤島ミステリー」というやつです。(「嵐の孤島」などともいわれますが、本作は特に嵐ではなかったので・・・)
わたくし、クローズドサークルが大好きなんですよ。綾辻行人さんの『十角館の殺人』なんかも夢中になって読みました。
何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品Wikipedia「クローズド・サークル」
外界との連絡手段が絶たれることも多い。サークル内にいる人物のなかに高確率で犯人がいると思われたり、捜査のプロである警察が事件に関与できない理由づけになったりなど、パズルとしてのミステリーを効果的に演出する。
はっきりいってめちゃくちゃおもしろい。
この系統の物語は、複数の登場人物が孤島に取り残され脱出できない状況のなか、事件が起こりどんどん人が減っていって・・・とお約束的な展開が繰り広げられるわけですが、パイオニアである「アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』とどういう形で差別化しているのか」というのが最大の楽しみ方になってきます。
アガサ・クリスティはもちろんすごいけれど、オマージュのこの作品はこういう切り口で読者を楽しませてくれるのか!こっちもすごいじゃん!!という楽しみ方です。
「誰もいなくなった」系作品は、その性質から終盤になって登場人物が減ってくると、犯人が消去法的に絞り込めてくる危険性があるのですが、そのあたりも有栖川流にうまくさばかれています。いいですねえ!
また、本短編に登場する探偵役がいい味出しているんですよ。他作品で再登場願いたいですね。(もう登場していたらすみません)
もちろん単独で読んでも楽しめますが、大元となったクリスティ作品を先に読んでおくと一層楽しめると思います。
※電子書籍ストアebookjapanへ移動します
▼クローズドサークルまとめ
終わりに
これは珠玉の短編集ですねー。
ほんとうにいろいろな種類のミステリーが楽しめる一冊になっています。
ごく短いものもありましたがその短さが味になっているなど、有栖川有栖さんの「技」が光る短編集でした!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
スポンサーリンク
この記事へのコメントはありません。