こんにちは、つみれです。
このたび、犬飼ねこそぎさんの『密室は御手の中』を読みました。
怪しげな新興宗教団体の総本山で起こる密室殺人の謎を解くミステリーです。
それでは、さっそく感想を書いていきます。
作品情報
書名:密室は御手の中
著者:犬飼ねこそぎ
出版:光文社(2021/7/28)
頁数:320ページ
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目次
山奥の宗教施設で起こる密室殺人の謎!
私が読んだ動機
おもしろそうなミステリーを書店で物色していて見つけました。
こんな人におすすめ
- 本格ミステリーが好き
- 密室もののミステリーが読みたい
- バチバチの論理バトルを楽しみたい
あらすじ・作品説明
人里離れた山奥にある新興宗教『こころの宇宙』の施設「心在院」に、ある目的をもって潜入した探偵・安威和音。
「心在院」の裏手の山道を登った先には、百年前に修行者が姿を消したといういわくつきの瞑想室「掌室堂」があった。
その「掌室堂」でバラバラ殺人が起こり、和音は探偵として調査に乗り出すことになる。
舞台装置のおもしろさ
本作は、人里離れた山奥で活動する宗教団体の内部で起こる密室殺人事件を描いています。
この山奥の宗教施設がなかなか本格ミステリーらしい雰囲気が出ていていいんですよ。
新興宗教『こころの宇宙』は指導者の死亡により弱体化している状況です。
再起をはかっている最中の『こころの宇宙』としては殺人事件発生の事実は外聞が悪く、できれば捜査を警察に頼ることなく内々で処理してしまいたいのが実情。
僻地の施設で警察の介入もないという舞台設定は本格ミステリー好きからするとワクワクしますね。
山奥とはいえ、出ていこうと思えば自由に出ていけるので、純然たるクローズドサークルというわけではありません。
しかし、舞台が山奥である上、積極的に外部と接触を取ろうとする人物も存在しないので、「陸の孤島」的な雰囲気を十分に味わうことができます。
見取り図
本作の舞台となるのは、『こころの宇宙』の施設「心在院」です。
建物の構造はそれほど複雑ではありませんが、冒頭には見取り図も付いていて、本格ミステリーファンとしてはうれしい限り。
登場人物たちの行動を見取り図と見比べながら追っていくのが楽しい一冊となっています。
個性豊かな信者たち
新興宗教団体『こころの宇宙』には個性豊かな信者たちがいます。(細かく言うと、『こころの宇宙』では「信者」という言葉は使わず、「意徒」という言葉を使います)
彼らがみんなほどよく怪しいので、ミステリーとしてはめちゃくちゃおもしろいです。
信仰心の厚い人物ばかりでなく、人を食ったような態度を取る人物やよくわからない議論を吹っ掛けてくる人物など、いかにもミステリーで死にそうなキャラが揃っているのもワクワクします。
彼らが決して一枚岩ではないということが言動の端々から感じられるのも怪しげでいいですね。
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探偵・安威和音と夢
本作の主人公は探偵の安威和音です。
彼女自身は比較的常識的な性格でとがったところがないので、読者としても親しみやすい探偵役です。
しかし、一点気になる描写があるんですよ。
それは和音の夢の描写。
物語の途中でたびたび彼女が夢を見るシーンが差し挟まれます。
和音は過去につらい経験をしていて、それが現在の彼女に何らかの影響を与えている様子なのです。
普段の和音はフラットで穏やかな性格をしているので、この過去がめちゃくちゃ気になるんですよね。
探偵・安威和音の過去にも注目の一冊ですね。
『こころの宇宙』代表者・神室密
宗教法人『こころの宇宙』の代表者(教祖)は、神室密という弱冠14歳の少年です。
上にも書いた通り、『こころの宇宙』は前指導者が死亡しており、その子・密が後を継いだ形になっています。
密は頭の回転が速く、謎解きにも積極的に絡んできます。
それどころか主人公の和音を「助手」扱いし、自らが探偵役となって事件を解決してやろうという気概すら見せます。
本来協力しあうはずの和音と密が、なぜか互いにライバル的に対抗意識を燃やし、謎解き競争さながらの展開になるのはおもしろかったですね。
主人公の探偵・安威和音と新興宗教代表者・神室密のやりとりが味わい深い一冊です。
ガチガチの密室トリック
本作ではタイトルからも想像できる通り、密室トリックが扱われています。
事件現場は目を覆いたくなるほど凄惨で、思わず「一体何が起こった!?」とつぶやいてしまいそうになるほど。
「密室の謎+凄惨な事件現場の謎」の合わせ技でめちゃくちゃ興味をかき立てられますよ。
謎解きに関してはかなり難度が高く、私はまったく太刀打ちできませんでしたが、自信のある人は真相の謎解きにも挑戦してみてください。
怒涛の論理バトル
本作は、終盤の展開がめちゃくちゃおもしろいんですよ。
ネタバレになってしまうのでここで詳述はしませんが、本格ミステリーらしくしっかりとロジカルであることに加え、細かな描写も伏線として生きていてとても丁寧な作りになっています。
何よりおもしろいのが、複数の人物が自分の推理を怒涛の如く披露するバチバチの論理バトル展開。
この論理バトルによって、事件の真相が二転三転していくのがおもしろすぎるんです。
終盤は先が気になりすぎてページを繰る手が止まらなくなり一気読みしてしまいました。
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終わりに
『密室は御手の中』は、人里離れた山奥にある新興宗教団体の施設で起こる密室殺人の謎を解く本格ミステリーです。
「密室の謎」と「ショッキングな事件現場の謎」の合わせ技で読者を驚かせてくれます。
とりわけ終盤の疾走感のある展開が特徴的で、私はそれに惹き込まれて一気読みしてしまいました。
本記事を読んで、犬飼ねこそぎさんの『密室は御手の中』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
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つみれ
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