ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2020.01.18)

火曜サスペンス劇場のトラウマと東野圭吾

幼いころの恐怖体験は、時に深いトラウマとなって残ります。今回はそんな話を一つしてみましょう。

私の両親はそろって読書家で、父は歴史もの、母はミステリー・サスペンスといった具合。家にある本はほとんどがミステリー、サスペンスだったように思います。そして、私の家のリビングには両親の読みかけの文庫本が転がっていることも多かったのです。

これほど恵まれた環境にいながら、私は長い間読書をしてきませんでした。なぜかというと、幼い時のトラウマが関係しています。

怖かった火曜サスペンス劇場

母が火サス好き

私の母は、読書好きであると同時に、テレビ好きでもありました。とりわけ、火曜サスペンス劇場が好きでよく実家のリビングで視聴していたものです。

日本の日常風景といっていいでしょう。しかし、幼いころの私にとってあれほど怖いものはなかった。

人が殺される映像というのはやはり怖い。しかし本当の怖さは耳からくる

オープニングテーマ

これが怖い。

文字で書くと、

ジャンッ、ジャンッ、ジャーーン!ジャンッ、ジャンッ、ジャーーーン!
デンデンデンデンデンデンデンデン・・・

 

おいふざけるなよ、怖すぎるだろうが

調べてみると、幼少期の恐怖体験を鮮やかにフラッシュバックさせるこの曲のタイトルが、

「フラッシュバックテーマ」

というのだから明らかに確信犯である。悪ふざけもたいがいにしていただきたい。

アイキャッチ

これも怖い。

文字で表現するなら、

ジャジャジャジャッ!ジャジャジャッ!ジャージャーー!!

 

5秒という短い時間で確実に視聴者の精神を追い詰める戦慄のアイキャッチと言わねばなりません。

もう、お年玉でテレビを買ってあげるから他の部屋で観てくれと言いたくなる。これほど幼少期のガラスのハートを情けも容赦もなく木っ端微塵に粉砕してくる効果音はそうそうない。しいて挙げるなら、ドラゴンクエストの冒険の書が消えたときのあれくらいのものでしょう。

冒険の書が消えたときのあれ

ファミコン時代のドラクエは、Ⅱまでは「ふっかつのじゅもん」というパスワードを入力しなければ前回の続きをプレイできなかった。だが、次作にあたるⅢはバックアップ機能を搭載していた。これが「ぼうけんのしょ」である。

文字入力を排した即座のデータ復元は画期的だったが、 一つ欠点があった。とにかくデータが消えやすいのである。

データ消失という極めて絶望的な状況に、呪いの効果音で絶望の上塗りをしてくるという趣味の悪い演出に殺意を覚えたプレイヤーの数は計り知れない。「おきのどくですが」とソフトに同情までされた日にはもう笑うしかない。

 

サスペンス=怖いもの

幼少期のトラウマというのは根深く、

ミステリー、サスペンス=怖いもの

という図式がすっかり刷り込まれてしまっています。

加えて、我が家にたくさんあった本の大部分はミステリー、サスペンスでした。あんな怖いものの原作なんて、読めるはずがない。

他にも活字が苦手であるとか、ゲームの方が楽しいであるとか、さまざまな理由があって、長い間、読書という趣味は私の生活とは無縁のものであったのです。

東野圭吾の本に出会う

もう読めるんじゃないか

大学生になり、読書が習慣になってきたある日、リビングに転がっている小説を発見します。手に取ってみると、東野圭吾『眠りの森』でした。

「今ならもう読めるんじゃないか」

ミステリーって言ったって、死ぬのはたかだか一人や二人でしょ?赤壁の戦いなんて10万人だぜ?(諸説あり)

ミステリーというのは人気のあるジャンルですから、人を惹きつける何かがあるとはわかっていたのです。それに触れてみたいというのがあったのでしょう。

結果、大満足だったんですよね。はっきり言ってしまうと、ストーリーはもう忘れてしまっています。たしかバレエ団の話で、まあ要するに人が殺されるお話です。ただ、この謎解きがものすごくおもしろかったんです。初めて私がミステリーの謎のおもしろさに向き合った瞬間ですね。

もう完全にはまってしまい、『魔球』やら『鳥人計画』やらを立て続けに読みました。そして『白夜行』という私のミステリー史に残る傑作が登場し、こんなおもしろいものがこの世にあるのかと、完全にミステリー小説のとりこになるのです。

私にとって東野圭吾という作家は、幼年期から閉ざされていたミステリー界へのドアをこじ開けてくれた存在といっていいでしょう。

だから、好きな作家は?と聞かれたら、東野圭吾の名前は必ず挙げるようにしています。好きな作家が増え、相対的に読む機会が減ってしまっていますが、私の読書ライフを語るうえでは欠かせない作家の一人です。

東野圭吾小説の読みやすさ

小説としておもしろいというのはもちろんあるのです。

ただ、それ以上に感動したことがあります。それはクセがなくて極めてわかりやすい文章です。淡泊でソツがなく遊びもないといえばそうかもしれませんが、読者に読み違い、勘違いを起こさせません。こういう文章ってなかなか書けませんよね。

私は読書初心者に本を薦める場合は、東野圭吾を挙げることが多いです。「なんだかこんがらがっちゃってよくわからない」となりにくい作家だからです。

何から読めばいいの?という場合は、まず下記の2シリーズを読んでみることをお薦めします。

  • 「加賀恭一郎」シリーズ(『眠りの森』はシリーズ2作目)
  • 「ガリレオ」シリーズ

加賀恭一郎シリーズは人情ものの色が濃く、ガリレオシリーズは科学的な謎解きに主眼が置かれています。

※東野圭吾は工学部出身で、彼の作品の科学的な謎解きのおもしろさは持ち味の一つと言えます。ガリレオシリーズ、本当にお薦めです。

終わりに

わかっています。火曜サスペンス劇場のくだりがながすぎますね。反省しています。でも書いちゃったから公開しちゃうよ。

 

一つ悲しいことがあります。最近、読書好きの人と話す機会が増え、好きな作家の話になることも多いのですが、東野圭吾を挙げる人はあんまりいないのです。

ひょっとしたら、読書好きでなくても知っているようなビッグネームだからあえて挙げなくても、という意識が働くのかもしれません。

私は東野圭吾について語りたいです!他にもそういう人がいたら、私と話すときは遠慮なく東野圭吾が好きだと言ってくださいね。その時、私はおそらく火曜サスペンス劇場の話をすると思いますので、当該記事のことは知らないフリをしてウンウンうなずいてください。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

つみれ

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