赤と青とエスキース

ヒューマンドラマ

  (最終更新日:2022.04.29)

【感想】『赤と青とエスキース』/青山美智子:一枚の絵画が見守る赤と青の物語!

こんにちは、つみれです。

このたび、青山美智子(アオヤマミチコ)さんの『赤と青とエスキース』を読みました。

 

一枚の絵画を軸に、さまざまな二人の関係を描いていく優しい連作短編です。

 

また、本作は2022年本屋大賞ノミネート作でもあります。

それでは、さっそく感想を書いていきます。

▼2022年本屋大賞ノミネート作をまとめています。

>>【2022年】本屋大賞ノミネート10作まとめ!

作品情報
書名:赤と青とエスキース

著者:青山美智子
出版:PHP研究所(2021/8/30)
頁数:248ページ

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一枚の絵画が見守る赤と青の物語!

優しくて温かい赤と青の物語

私が読んだ動機

2022年本屋大賞にノミネートされたので読んでみようと思いました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 優しくて温かい物語が好き
  • 連作短編を読みたい

あらすじ・作品説明

オーストラリア・メルボルンの若手画家ジャック・ジャクソンが描いた一枚の「絵画」がいろいろな二人の人間関係を見守っていく。

 

下記4章が収録されている。

 

一章「金魚とカワセミ」

交換留学生として日本からメルボルンに渡った女子大生・レイは、現地の陽気な日系人・ブーと出会う。

 

彼らはレイが日本に帰るまでの間、「期限限定の恋」を楽しむことになる。

 

二章「東京タワーとアーツ・センター」

将来のことを真剣に考えないまま、成り行き任せで額縁職人の道を選んでしまった青年・空知(ソラチ)

 

それから8年、30歳になった空知はいまだに迷いを感じながら仕事をこなしていたところ、とある絵に出会う。

 

三章「トマトジュースとバタフライピー」

かつて、ベテラン漫画家タカシマの元でアシスタントをしていた砂川(スナガワ)が漫画界で大注目の賞を受賞。

 

とある喫茶店で行われた雑誌の対談企画で久しぶりに砂川に再会したタカシマは、若い天才の言動に劣等意識を抱いてしまう。

 

四章「赤鬼と青鬼」

輸入雑貨店で働く51歳の女性・(アカネ)はオーナーに仕事が認められ、海外での買い付けを担当することを打診される。

 

新しい業務に胸がふくらむ茜だったが、ある日彼女はパニック障害を発症し、休暇をとることになる。

 

別れた恋人の部屋にパスポートを置いてきてしまったことを思い出した茜は、休暇中に彼の元を訪れる。

エスキースとは

窓際に置かれたイーゼル

エスキース(仏:esquisse)とは下絵のことで、本番に入る前に構図を取る目的で描かれるものです。

 

耳慣れない言葉ですよね。

私も本作を読んで初めて知りました。

 

三章「トマトジュースとバタフライピー」のなかで、エスキースを下記のように表現している箇所があります。

「エスキースって、下絵のことです。いったんイメージを落とし込んで、それを元にあらためて新しく本番を描くんです」

(中略)

「じゃあ、漫画のネームみたいなことか」『赤と青とエスキース』p.113

例えとして漫画のネームを持ってくるところがいかにも漫画家の二人の関係性を描く三章らしくて良いですね。

語り手ともう一人の関係を描く連作短編

金魚

本作『赤と青とエスキース』は、全部で四章からなる連作短編です。

各章、語り手となる人物と、その人物に対する「もう一人」の関係性を深掘りしていく展開となっています。

赤と青のモチーフ

バタフライピーと花

各章にはそれぞれ赤と青をモチーフとするものが登場し、それがそのまま章タイトルとなっています。

各章タイトルは下記の通り。

  • 金魚とカワセミ
  • 東京タワーとアーツ・センター
  • トマトジュースとバタフライピー
  • 赤鬼と青鬼
 

見事に赤と青の対比になっていますね。

 

実はこの赤と青のモチーフが、下記を象徴するアイテムとして描かれています。

  • 赤:各章の語り手
  • 青:語り手に対する「もう一人」

本短編集は、基本的にこの赤と青の関係性を味わうものとなっています。

ちなみに知らない人のために言っておくと、三章の「バタフライピー」とは青いハーブティーのことです(ドヤ顔)

 

偉そうに書きましたが、私はこのハーブティーを本作を読んで初めて知りました。

笑わば笑え!

 

赤のモチーフと青のモチーフがそれぞれどのように描かれ、それらが登場人物とどのような関わりがあるのかを意識しながら読んでみるとおもしろいですよ。

各章に『エスキース』が登場

枝にとまるカワセミ

一章「金魚とカワセミ」では、交換留学生としてメルボルンに渡った日本の女子大生レイが、現地の日系人男性ブーと「期間限定」の恋愛を楽しみます。

ある日、ブーは友人の画家ジャック・ジャクソンが描く絵のモデルになってほしいとレイに頼み込むのです。

その時、レイをモデルとしてジャックによって描かれた一枚の絵が本作の裏の主人公『エスキース』

上にも書いた通り、本作は収録作全てにおいて、赤いモチーフが各章の語り手を象徴し、青いモチーフが語り手に対する「もう一人」を象徴しています。

この語り手と「もう一人」は章ごとに変わるのですが、『エスキース』という一枚の絵画は毎話登場し、各章を繋げる役割を果たしてくれているんです。

そして、絵画『エスキース』は各章の主役二人の人間関係に何かしらの影響を及ぼす、という構図になっています。

 

各章でどのような形で『エスキース』が登場するかも見どころの一つですね!

 

改めて本短編集の『赤と青とエスキース』というタイトルを見ると、その絶妙なネーミングに思わず唸ってしまいますね。

優しくて温かい短編集

グラスに淹れたバタフライピー

本作は、人が生きていくなかで、そして人と関わっていくなかで抱きがちな悩みに焦点を当てています。

しかし、それを決して暗く重いトーンで描いてはいないんです。

とにかく優しく、温かく、全体的に毒気というものを全く感じさせず、最後まで爽やかに描き切ってくれています。

 

どんな人でも安心して読める、癒し効果の高い作品になっていますので、気になる人は読んでみてくださいね。

 

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私が好きな一編

トマトジュースとミニトマト

私が本作で個人的に一番良いと思った短編は三章「トマトジュースとバタフライピー」。

ベテラン漫画家・タカシマの元でアシスタントをしていた若手漫画家の砂川が漫画界で注目されている賞を受賞し、雑誌の対談企画を受けることになります。

そこに同席するタカシマがこの短編の語り手です。

一言でいうと、弟子にあっさり抜かれる師匠の意地・プライド・虚栄心の物語なのですが、これが私くらいのオッサンになると想像以上にグサグサ刺さってきます。

会社や部活動など、先輩後輩の上下関係が存在するところには、後進に抜かれる先達の図など世界中どこにでもある話です。

 

もちろん私もそういう経験を何度もしています。

 

そんな先輩サイドの微妙な心の動きが非常に繊細かつユーモラスに描かれていて、本作のなかではとりわけ心が動いた短編でしたね。

各章によって「主役の二人」の関係性が全く異なるので、私のように登場人物に自分を投影して楽しめる一編が見つかるかもしれません。

そうなれば、本短編集がより楽しい一冊になると思います。

前から順番に読もう!

ファーストとファイナル

本作は各章が完全に独立した短編集でなく連作短編となっており、一冊の長編としても楽しめるようになっています。

巻頭にプロローグ、巻末にエピローグが配されたり、章が変わるたびに10年近く時間が経過するなど、基本的に前から順番に読んでいくことを前提に描かれています。

 

本作を最大限に楽しむためにも、前から順番に読んでいくことをおすすめします。

 

『赤と青とエスキース』の素敵なつぶやき

『赤と青とエスキース』に関するTwitterのつぶやきのうち、参考になるものや素敵なものをご紹介します。

 

※電子書籍ストアebookjapanへ移動します

 

終わりに

『赤と青とエスキース』は、一枚の絵画『エスキース』を軸にさまざまな二人の関係を描いていく優しくて温かい連作短編です。

 

人間が生きていくうえで抱きがちな悩みを軽快に吹き飛ばしてくれるような爽やかな一冊でした!

 

本記事を読んで、青山美智子さんの『赤と青とエスキース』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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