こんにちは、つみれです。
このたび、青山美智子さんの『お探し物は図書室まで』を読みました。
図書室のレファレンス(資料を探してくれるサービス)で人生が少しだけいい方向に向かっていく人たちの物語を描いた連作短編集です。
また、2021年本屋大賞ノミネート作でもあります。
それでは、さっそく感想を書いていきます。
▼2021年本屋大賞ノミネート作10作をまとめています。
作品情報
書名:お探し物は図書室まで
著者:青山美恵子
出版:ポプラ社(2020/11/11)
頁数:304ページ
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目次
図書室のレファレンスサービスで人生が好転!
私が読んだ動機
2021年本屋大賞にノミネートされたので読んでみようと思いました。
こんな人におすすめ
- 心温まる物語を読みたい
- 本がテーマの小説が好き
- 長編よりも短編が好き
- 読後感の良い物語が好き
- 本屋大賞ノミネート作品が読みたい
あらすじ・作品説明
人生に行き詰まっている人たちが小さな図書室の司書から教えてもらった一冊の本の力で元気づけられる。
図書室を訪れるのは下記の人たち。
- 婦人服販売員
- 家具メーカー経理部員
- 元雑誌編集者
- ニート
- 定年退職直後の元仕事人間
等身大の悩みを抱える彼らの人生が少しだけ好転する瞬間を描いた5つの物語を収録。
いいお話系の連作短編
本作『お探し物は図書室まで』は連作短編集で物語が5編収録されています。
5編ともに、基本的には同じ町を舞台に物語が展開。
各編の主人公5人はそれぞれ悩みを抱えています。
そんな彼らの悩みが一冊の本に出会うことで解決に向かっていくのです。
図書室レファレンスで人生が好転
上にも書いた通り、各編の主人公5人はそれぞれ悩みを抱えていて人生に行き詰まっています。
この悩みが等身大で共感しやすいものばかりなんです。
彼らの悩みに寄り添いながら読書を進めることができました。
彼らはその悩みの解決に向けて新しい趣味を探したり、新しい技術の習得を目指したり、自分で動き出そうとします。すばらしいですね。
ところがその新しい動きを始めるなかでもちょっとしたつまづきを感じてしまう。
その流れのなかで、小学校併設のコミュニティハウスに入っている図書室で調べ物をするところから物語は動き始めます。
図書室の司書さんが主人公たちの新しい趣味やスキルに関する本を紹介するのですが、最初は本探しのレファレンスだったのが、次第に人生相談的な色彩を帯びていきます。
最終的に何冊か紹介してもらう本のなかに一冊だけ異彩を放つ本が混じっていて、それが主人公の抱えている悩みの本質にダイレクトに響いてくる。そんなお話になっています。
月並み展開の安心感
収録作5編とも上記のような共通した物語展開を迎え、これがテンプレート的な型になっています。
だから最初の1編を読んだあと、それ以降の4編は「なんとなくこういう展開になるんだろうな~」というふうに流れが予測できます。
この展開の「月並み加減」が絶妙で、決して陳腐化されずにむしろ安心感に繋がっている。
水戸黄門の毎度おなじみの展開を視聴したときに感じるような、「先が予測できる楽しさ」「お約束の展開の安心感」があります。
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司書の小町さんがいい
本作に登場する図書室には司書の小町さんというキャラクターが登場します。
彼女がいい味出していてとてもいいんですよ。
ぶっきらぼうで不愛想ながらとても聞き上手、主人公たちに対するアドバイスも的確で妙に含蓄があります。
主人公たちも思わず自然と悩みを吐露してしまうような不思議な魅力の持ち主です。
また、小町さんは非常に身体が大きく、各編でそのことが言及されています。
ものすごく……ものすごく、大きな女の人だった。太っているというより、大きいのだ。顎と首の境がなく色白で、ベージュのエプロンの上にオフホワイトのざっくりしたカーディガンを着ている。その姿は穴で冬ごもりしている白熊を思わせた。
『お探し物は図書室まで』kindle版、位置No.225本短編集のおもしろいところは、上記引用箇所では「穴で冬ごもりしている白熊」と表現されている部分が、主人公によって変わることです。
主人公の感性によって小町さんをどのように比喩するのかが変わってくるので、編を読み進めるごとに次は何に例えられているのか楽しみになってくるのです。
また、小町さんにはとある趣味があって、その作品を本の「ふろく」として相談者に手渡します。
このふろくも編によって変わるので、今度は何がふろくになっているんだろうという楽しみが生まれています。
収録作5編ともベースになっているのがお約束の展開であることを逆手にとり、「細かい部分の変化で楽しませる」という趣向になっていてうまいなあと思いましたね。
余談ですが、この小町さんの風貌について、私はお笑いコンビ「メイプル超合金」の安藤なつさんをイメージしながら読みましたが実際のところはどうなのでしょうか。
モデルになった図書室
本作に登場する図書室にはモデルがあるそうです。
モデルとなったのは、横浜市戸塚区「下郷小学校コミュニティハウス」のなかに入っている市立図書室。
実は私は本作を読み終わったあとにモデルとなったこの図書室の存在を知ったのですが、事前に知っていればよりレファレンスのシーンなどをリアルにイメージできたかもしれませんね!
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終わりに
最近はあまり読んでいなかったハートウォーミング系の優しい物語でしたが、穏やかな気持ちになるし読後感もスッキリでとてもいい作品でした。
読後に、本作に登場したコミュニティハウス及び図書室のモデルがあることを知って急遽調べてみたのですが、こういう心落ち着く空間が身近にあると羨ましい気持ちになりますね。
本記事を読んで、青山美智子さんの連作短編『お探し物は図書室まで』を読んでみたいと思いましたら、ぜひ手に取ってみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
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