オルタネート

ヒューマンドラマ

  (最終更新日:2021.05.15)

【感想】『オルタネート』/加藤シゲアキ:高校生専用SNSアプリを軸に若者の葛藤と成長を描く!

こんにちは、つみれです。

このたび、加藤シゲアキさんの『オルタネート』を読みました。

第164回直木賞候補作にノミネートされた作品で、「オルタネート」という高校生専用のSNSアプリを軸に、3人の若者の葛藤と成長を描く青春小説となっています。

また、2021年本屋大賞にノミネートされた作品でもあります!

それでは、さっそく感想を書いていきます。

※2021年3月3日追記

本作は、第42回吉川英治文学新人賞を受賞しました。

加藤シゲアキさん、おめでとうございます!!

▼第164回直木賞候補作をまとめています。

▼2021年本屋大賞ノミネート作10作をまとめています。

作品情報
書名:オルタネート

著者:加藤シゲアキ
出版:新潮社(2020/11/19)
頁数:384ページ

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高校生専用SNSアプリ「オルタネート」を軸に若者の葛藤と成長を描く!

高校生専用のSNSアプリを軸に若者の葛藤と成長を描く

私が読んだ動機

第164回直木賞候補作にノミネートされたので読んでみようと思いました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 青春物語が読みたい
  • 複数の物語が並行で進行する小説が好き
  • SNS・マッチングアプリをテーマにした物語が読みたい
  • 直木賞候補作が読みたい
  • 本屋大賞候補作が読みたい

あらすじ・作品説明

高校生専用のSNSアプリ「オルタネート」が当たり前のように使われている現代を舞台に、3人の若者の青春が描かれる。

  • 料理コンテストで優勝を目指す新見蓉(ニイミイルル)の物語。
  • 「オルタネート」を信奉している伴凪津(バンナヅ)の物語。
  • 音楽を志して高校を中退した楤丘尚志(タラオカナオシ)の物語。

3人の主人公を描いた3つの物語が交錯する。

高校生専用SNSアプリ「オルタネート」

本作は、登場人物たちが高校生専用のSNSアプリ「オルタネート」を通して、他の高校生たちと繋がっていく現代的な交友関係をテーマにしています。

ウェブサービス上での交流を軸に描いていながら、リアルでの付き合いを大事に描いているところに安心感を覚えました。

本作の序盤で、「オルタネート」という言葉についての説明があります。

複数の意味を持っていて、下記のような意味があるようですね。

  1. 交互
  2. 交流
  3. 代理人

恐らく作者の加藤シゲアキさんは、高校生たちがウェブ上でつながっていくアプリの名称という意味以外に、下記のような複数の意味を込めているように思います。

  • 3つの物語が交互に語られる
  • 3つの物語が交流する(関連しあう)

本作の特徴を説明する言葉遊び的な要素として、非常によく考えられているなと思いました。

高校生たちの青春物語

高校

高校生専用のSNSアプリが物語のキーとなってくるだけあって、本作は現役高校生たちのみずみずしい青春物語となっています。(厳密にいうと楤丘尚志は中退したので高校生ではないですが)

青春ものとして変にスレたところがなくて、登場人物がみんな素直。

特に読後の爽やかさは天下一品で、読んでよかった~、と思わせてくれる小説です。

読む前までは、30代後半の私がこういう青春炸裂系の物語にどこまで共感できるかはなはだ疑問でしたが、思いがけず夢中になって読んでしまいましたね。

私もまだまだ捨てたモンじゃないってことかな!わはは!

3つの物語が交互に語られる

本作は、下記の3つの物語が交互に語られます。

新見蓉の物語

円明学園高校3年生で調理部部長の新見蓉の物語。

苦い思い出のある高校生の料理コンテスト「ワンポーション」に再挑戦し、優勝を目指す。

蓉は距離感が掴みづらい調理部の後輩やライバル校の生徒とのやり取りなどを通して少しずつ成長していきます。

蓉の物語は高校生らしいみずみずしさと不安定さを持った少女の心理や葛藤を見事に描き出していて、まさに王道の青春物語です。

伴凪津の物語

円明学園高校1年生で高校生専用のSNSアプリ「オルタネート」を信奉している伴凪津の物語。

アプリに搭載されているマッチング機能を駆使して運命の相手を探す。

オルタネートの機能について、凪津の口から他の生徒に説明するという体裁を取りながら、読者に対してもわかりやすく説明する役割を兼ねている。

遺伝子による相性診断に自分の人間関係をゆだねようとする凪津の効率的思考は興味深かったし、かなりおもしろいテーマだった。

このあたりを小説に落とし込んだのはめちゃくちゃおもしろい。

楤丘尚志の物語

バンドマンになるために高校を中退した楤丘尚志の物語。

小学生時代に家庭の事情で転校したバンド仲間と再会するために単身上京し、音楽を志す者だけが入居できるシェアハウスに移り住む。

高校を中退した人物(オルタネートが使えない)を主役の一人に据えることで、「高校生専用」のアプリであるオルタネートの便利さ、オルタネートが高校生に浸透している世の中を逆説的に描出しています。

終盤は物語が一気に加速

本作は、まさに高校生の年代の3人の物語が同時進行で語られる群像劇スタイルです。

途中までは3つの物語が規則正しく交互に配列されていたのが、終盤のあるところからその法則がくずれ始め、大きな1つの物語に収斂されていきます。(主役3人の視点はそれぞれ残るが、1章につき1人という形ではなくなる)

頻繁な場面切替えによって物語のテンポが一気に加速し、疾走感のある終盤を演出しているのは見事でした。

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作者はNEWSの加藤シゲアキさん

本作『オルタネート』の作者は、ジャニーズのアイドルグループ「NEWS」の加藤シゲアキさんです。

私はアイドルに詳しくないので、一人の作家としての加藤シゲアキ作品を読んだつもりで感想を書いています。

それでも一言だけ言うとすれば、アイドルという激務をこなしながらここまでの小説を書けるのは単純にすごいなと思いました。

正直、アイドルが書いた小説を直木賞候補にすることでの話題性を期待したもの、とかなり斜に構えた態度で読み始めてしまいました。

本作はアイドルが書いたとかそういうことは関係なくすばらしい青春小説です。

私のようにこの作品を「アイドルの筆によるものだから」と色眼鏡で見るようなことがあったらもったいないです。

あと、料理・遺伝子・音楽など、作者の広範な知識、もしくは入念な調査のほどがうかがい知れ、素直に感服しました。

天は二物を与えず、なんてウソじゃんか!!

気になった点

本作を読んでいて気になって点を下記に挙げていきます。

凝りすぎて読みづらい箇所がある

本作を読んでいて気になった点の一つは、細部にこだわりが感じられる一方、覚えづらかったり読みづらかったりする箇所があったことです。

例えば、本作に登場するキャラクターの名前には作者の並々ならぬこだわりが感じられるのですが、若干キラキラネームっぽさがあって馴染みづらかったです。

主人公の蓉を「いるる」と読ませたり、武生を「たけお」ではなく「むう」と読ませたりしていて、これがなかなか脳に染み込んでいかない。

こういった物語と関係ないところで脳のリソースをあまり使いたくないな、と思いました。まあ、これは私が古い人間だからなのかもしれないけれど・・・。

他にも、冒頭から「コネクトする」「フロウする」など「オルタネート」独特の用語がバンバン出てくるのですが、これがサラッと登場するので面食らいましたね。(とはいえ、なんとなく意味はわかる)

これは後で説明が出てくるのですが、その説明を読んだあとに前に戻って文脈を確認して、という煩雑さがありました。

脇役のほうが魅力的

上にも書いた通り、本作のメインとなる3つのストーリーにはそれぞれ主人公が設定されていて、その3名の視点で物語が語られていくことになります。

しかし、正直なところ、脇役のキャラクターのほうに魅力が備わっている気がしました。

例えば、蓉編で登場する山桐(ヤマギリ)えみくや、尚志編で登場する安辺豊(アンベユタカ)などは、私は主人公よりも魅力的に感じましたね。

とくに山桐えみくは、物語が進んでいくにつれて登場時とのギャップが映えていく、とてもいいキャラクターだと思いました。

やや急ぎ足の物語

単行本で400ページ弱というのは、短くはないけれど、長くもない適度な分量です。

しかし、そこに3つの物語を詰め込むとなると、各編ともにややボリューム的に足りない感じがしました。

どの物語も中盤の盛り上がりにやや欠けるといった感じで、「起転結」になっています。

主役級のキャラクターの成長とか、他のキャラクターとの触れ合いの部分をもう少し掘り下げても良かったように思います。

どの物語もまだ始まったばかりなのに、いつの間にかもう終盤なのかという感じ。

各物語にあと1、2エピソードあると、転・結の盛り上がりにより拍車がかかったかなと個人的には思いました。

これはもうちょっと本作を深く、長く味わいたかった、という意味でもあります。

終わりに

本作『オルタネート』は、高校生専用のSNSアプリ「オルタネート」を軸に据えて、立場の違う3人の若者を描く青春小説です。

アイドルが書いた作品という先入観をいったん捨てて、真っ向から読んでほしいな、と思わせてくれるいい作品でした。

本記事を読んで、加藤シゲアキさんの青春小説『オルタネート』を読んでみたいなと思いましたら、ぜひ手に取ってみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

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つみれ

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