52ヘルツのクジラたち

ヒューマンドラマ

  (最終更新日:2021.05.15)

【感想】『52ヘルツのクジラたち』/町田そのこ:誰にも届かない孤独な叫びをすくい取れ!

こんにちは、つみれです。

このたび、町田(マチダ)そのこさんの『52ヘルツのクジラたち』を読みました。

虐待を受けていた過去を持つ女性が、現在進行形で虐待を受けている少年を助けていく長編小説です。

また、2021年本屋大賞にノミネートされた作品でもあります!

それでは、さっそく感想を書いていきます。

※2021年4月15日追記

2021年本屋大賞は、本作『52ヘルツのクジラたち』が受賞しました。

町田そのこさん、おめでとうございます!!

▼2021年本屋大賞ノミネート作10作をまとめています。

作品情報
書名:52ヘルツのクジラたち

著者:町田そのこ
出版:中央公論新社(2020/4/21)
頁数:272ページ

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誰にも届かない孤独な叫びをすくい取れ!

誰にも届かない孤独な叫びをすくい取れ

私が読んだ動機

2021年本屋大賞にノミネートされたので読んでみようと思いました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 現代社会の問題をテーマにした物語を読みたい
  • 読後感の良い物語が好き
  • 九州が舞台の小説を読みたい
  • 本屋大賞ノミネート作品が読みたい

あらすじ・作品説明

家族から虐待を受けた経験を持つ三島貴瑚(ミシマキコ)は、大分の海沿いの田舎町で暮らしはじめる。

 

ところが、貴瑚は引っ越し先の町で虐待の跡が認められる一人の少年と出会う。

 

孤独の痛みを知る者として、貴瑚は少年の心の叫びに耳を傾けていく。

52ヘルツのクジラとは

深海を泳ぐクジラ

本作のタイトルにもなっている「52ヘルツのクジラ」とは、鳴き声の周波数が他のクジラとは異なっていて自分の意思を仲間に伝えることのできない孤独なクジラのことです。

となると、本作はそのクジラを助ける話か!と思うかもしれませんが、そうではありません。

海のなかの孤独な52ヘルツのクジラのように、自分の声が他者に届かない存在は人間社会にもたくさんいるのだという話です。

人間社会の52ヘルツの声をしっかりと受け止められる存在「魂の(ツガイ)」が一人でも現れれば、それが救いにつながっていく。

そういう救いを描いた一作となっています。

テーマがテーマだけに、基本的に重めの物語でしたね。

現代社会の問題をあぶり出す

上に書いた通り、本作には、助けを求めながらもその声が周囲に届かず苦しんでいる人物が多数登場します。

では、そういう人物たちはどのような状況に陥って助けを求めるのでしょうか。

本作には、ネグレクトや虐待などのキーワードが散りばめられていて、現代社会でよく取り沙汰される問題を取り上げています。

ネタバレになってしまうので詳細を書くことは避けますが、本作で重要な役割を担う人物「アンさん」もある事情を抱えていて、この事情も現代社会に対する問題提起の側面を持っています。

社会に対するアンテナの張り方が高めで、問題提起的な側面が強い一冊だと感じましたね。

また、そういう現代社会の問題に疎い人に対し、物語を通じて教え諭すような側面も持ち合わせているように思いました。

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主人公の現在と過去が交互に語られる

本作の主人公は三島貴瑚(ニックネームはキナコ)という女性で、彼女の現在の状況を描く現在編と、彼女の過去の事情を描く過去編が交互に語られていきます。

現在編は貴瑚が大分の海沿いの田舎町に引越してきて、一人の少年と出会う物語。

大分に移住してから出会ったこの少年の身体に虐待の形跡を見て取った貴瑚が、彼の「52ヘルツの声」を聞く、という文脈で物語は始まります。

一方、過去編は貴瑚が家族から虐待を受けており、「アンさん」という存在に出会うことで救われていく物語。

家族から虐待を受けていた貴瑚の過去が少しずつ明らかになることで、なぜ貴瑚が少年にそこまで肩入れするのかがわかるようになっています。

過去編では助けられるばかりだった貴瑚が、現在編で助ける側にまわるというのは、単純に嬉しさ倍増効果がありますね。

勧善懲悪的な部分も

本作を読んでいて違和感を覚えた箇所もあります。

それは、登場人物がはっきりと善玉と悪玉とに分かれていて、なんともわかりやすい勧善懲悪的な展開を迎えることです。

かなり深刻で重い物語ですので、なるべく最後はすっきりと終わりにしようという思いが作者の町田さんにあったのかもしれません。

悪玉とみなされている人物は、自らの過ちを反省するでもなく断罪されるでもなく、バッサリと物語から切り捨てられるようにただ消えていきます。

人というのは容易には変わらないと言われているようで、寂しい感じがしました。

単に「元からそういう人だった」というのでなく、悪玉には悪玉なりの事情があったというところを読ませてほしかったというのが本音です。

風景描写がとてもいい

本作を読んでいていいなあと思ったのが、貴瑚が新しく暮らすようになる大分の海沿いの風景描写や、物語の途中で訪れることになる福岡県小倉(コクラ)の街並みの描写。

文章を読んでいると風景や街並みが頭のなかではっきりとイメージできて、思わず九州に行きたくなるほどでした。

小倉での食事のシーンもめちゃくちゃおいしそうなんですよ。

調べてみると、作者の町田そのこさんは福岡県出身ということで、本作の舞台周辺に土地勘があるのかもしれませんね。

 

 

終わりに

本作『52ヘルツのクジラたち』の登場人物たちのように、人知れず悲痛な叫びを上げている存在は少なくないのだろうと思いましたね。

本作はそういう人たちが救われていく心優しい物語でしたが、その裏には現代社会が抱える多くの問題も垣間見えました。

本記事を読んで、町田そのこさんの長編小説『52ヘルツのクジラたち』を読んでみたいと思いましたら、ぜひ手に取ってみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

▼2021年本屋大賞ノミネート作10作をまとめています。

つみれ

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