こんにちは、つみれです。
このたび、市川憂人さんのミステリー小説『ボーンヤードは語らない』を読みました。
「マリア&漣」シリーズ4作目にして、初めての短編集です!
それでは、さっそく感想を書いていきます。
作品情報
書名:ボーンヤードは語らない
著者:市川憂人
出版:東京創元社(2021/6/21)
頁数:320ページ
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目次
「マリア&漣」第4作目はシリーズ初の短編集!
私が読んだ動機
「マリア&漣」シリーズがおもしろいので、第4作目に当たる本作も読みました。
こんな人におすすめ
- 「マリア&漣」シリーズが好き
- シリーズメインキャラの過去、出会いを知りたい
- 前作『グラスバードは還らない』がおもしろかった
あらすじ・作品説明
「マリア&漣」シリーズ4作目にして、初めての短編集。
様々な事件でマリア・漣と共同戦線を張ることになる空軍少佐ジョン・ニッセンの物語や、マリア・漣の過去が描かれる。
また、マリアと漣が初めて出会い、タッグを組んで事件に向き合うエピソードも収録。
シリーズメインキャラの過去や内面を深く掘り下げていく短編集となっている。
シリーズ初の短編集
本作『ボーンヤードは語らない』は「マリア&漣」シリーズの4作目にあたります。
過去3作は下記。
- 『ジェリーフィッシュは凍らない』
- 『ブルーローズは眠らない』
- 『グラスバードは還らない』
過去3作は長編ミステリーだったのに対し、本作はシリーズ初の短編集です。
また、過去3作は、二つの視点を切り替えながら同時進行していく展開が魅力でした。
しかし本作はそういった手法を取っておらず、正攻法のミステリーが4編収録された短編集となっています。
正統派本格ミステリー短編集
本作には短編ミステリーが4編収録されています。
各編のタイトルが「○○は▲▲ない」という名称で統一されているのは過去3作と同様ですね。
収録作のタイトルは下記の通り。カッコいいですよね。
- ボーンヤードは語らない
- 赤鉛筆は要らない
- レッドデビルは知らない
- スケープシープは笑わない
4編はすべて正統派の本格ミステリーで、謎解きに必要な要素はしっかりと読者に提示されます。
つまりがんばれば謎解きできる!(私は早々に諦めました)
謎解き面としては、短編である分、1本のトリックで完結しているものが多く、トリック自体も単純。
凝った作りでないからこそごまかしがきかず、各編ともにかなり高品質のトリックで楽しませてくれます。
私のお気に入りの一編は「レッドデビルは知らない」ですね。
これは本シリーズの主人公・マリアのハイスクール時代が描かれた一編です。
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メインキャラの過去・内面を掘り下げる4編
本短編集は、シリーズのサイドストーリーやエピソードゼロ的な物語を集めた一冊になっています。
主人公に抜擢されているのは下記の3名。
- マリア・ソールズベリー
- 九条漣
- ジョン・ニッセン
マリアと漣はシリーズ主役級の人物だからいいとして、ジョンが主役に抜擢されているのはファンとしてはうれしいところですね。
ジョンはマリア&漣と共同戦線を張ることが多い空軍少佐。
このジョンがイブシ銀でいいキャラしているんですよ。
収録作は、時系列的に過去3作以前、もしくは1作目『ジェリーフィッシュは凍らない』の直後となっています。
シリーズとして物語が進むのではなく、いったん立ち止まって各キャラの過去や内面を掘り下げる内容となっているのも本短編集の特徴です。
ボーンヤードは語らない
本短編集の1編目は、表題作でもある「ボーンヤードは語らない」。
空軍少佐ジョン・ニッセンを主役に据えた短編で、空軍基地で起きた不審死事件をジョンが調査していく物語です。
過去3作ではいい味出してる準主役にとどまっていたジョンがついに主役に抜擢されました。
ジョンの性格・人となりがよく描かれていて、彼のファンには特におすすめの一編です。
赤鉛筆は要らない
本短編集の2編目は「赤鉛筆は要らない」。
本シリーズの主役の一人、九条漣が高校時代に遭遇した不審死事件を描く。
ミステリーの王道「雪の足跡」トリックに挑戦した一編です。
雪の足跡トリック・・・雪に残された足跡から事件の経過や犯人を推理するタイプのミステリー。
「足跡がどのような筋で残っているか」「降雪の度合いと足跡の残り方」などで推理を進めるパズル的要素が楽しい。
このエピソードでも漣の冷静さが遺憾なく発揮されていて、「昔からそうだったのね!」とわかるのがいいですね。
何より、この事件が「漣が警官を目指すきっかけ」となっており、漣のキャラクターを深く知ることができるエピソードとなっています。
レッドデビルは知らない
本短編集の3編目は、「レッドデビルは知らない」。
本シリーズの主役の一人、マリア・ソールズベリーのハイスクール時代の物語です。
ズボラでだらしない性格も、いざというときに鋭い閃きを発揮するのもハイスクール時代から変わっていなくて安心します。
短編でありながら複雑なアリバイトリックを扱っていて、本格ミステリー好きにも大満足の作品。
本編は「マリアが警察官を志したきっかけとなった事件」として描かれていて、彼女のキャラクターを深掘りする一編となっています。
スケープシープは笑わない
本短編集の最後を飾る一編は「スケープシープは笑わない」。
本シリーズを読んできた人なら、誰もが知りたい「マリアと漣の出会いの物語」です。
過去の長編3作では、互いに憎まれ口を叩き合いながらも、強い信頼感を感じさせるマリアと漣。
そんなマリア&漣の「出会い」と「タッグを組んで最初に取り組む事件」が描かれたエピソードとなっていて、彼らの関係性の原点を知ることができます。
鮮やかな閃きで難問を軽やかに解いていくマリアと、冷静沈着で咄嗟の判断力に秀でる漣。
最初からいいコンビしているんですよ。
本シリーズの醍醐味の一つである「マリアと漣の掛け合いのおもしろさ」はこの一編でも健在。
何より、並外れた能力と強烈な個性を持つマリア&漣がお互いに相手を認めるシーンがあるのですが、これがめちゃくちゃいいんです!
メインキャラの過去・内面
過去の長編3作では、マリアと漣の過去にはあまり触れられていませんでした。
また、マリアと漣の出会いがどのような感じだったのかも描かれていませんでした。
そういったメインキャラの過去・内面を深く知ることができ、彼らをいっそう身近に感じられるようになるのが本短編集の醍醐味です。
また、過去作を読んでいると、マリアも漣もどこか余裕を感じさせる風格が漂っています。
本短編集を読むと、そんな彼らも「学生時代にはなかなかビターな経験をしていたんだな」とわかります。
上の意味で、本短編集は「メインキャラをより深く味わう」側面が強い一冊ということができそうですね。
謎解きとキャラクターを楽しむ一冊
本シリーズの特徴として、「オーバーテクノロジー的なアイテムが謎解きのキーになる」というのがありました。
「マリア&漣」シリーズの舞台は、特殊なテクノロジーが発展したパラレルワールドなんです。
しかし、本短編集はそういった特殊なアイテムがトリックに関わってこず、あくまで正統派の本格ミステリーです。
よく言えば読みやすくわかりやすいミステリー、悪く言えば本シリーズ特有のユニークさがないと言えます。
あくまで過去3作を読んできた人向けの「キャラクターのバックボーンを深く味わってもらう一冊」という意味合いが強い気がしました。
特殊な世界観よりも、本格属性の謎解きとキャラクターを楽しむ一冊ですね。
シリーズ作および本短編集収録作の時系列
『ボーンヤードは語らない』は「マリア&漣」シリーズ4作目に当たる短編集です。
基本的には下記のシリーズ発刊順に読むのがおすすめです。
- 『ジェリーフィッシュは凍らない』
- 『ブルーローズは眠らない』
- 『グラスバードは還らない』
- 『ボーンヤードは語らない』(本作)
ただし、時系列で物語を楽しみたいという人もいるかと思い、下記の通り、本短編集の各編と過去3作の時系列関係を調べました。
- レッドデビルは知らない(本作3編目)
- 赤鉛筆は要らない(本作2編目)
- スケープシープは笑わない(本作4編目)
- ジェリーフィッシュは眠らない(シリーズ1作目)
- ボーンヤードは語らない(本作1編目)
- ブルーローズは眠らない(シリーズ2作目)
- グラスバードは還らない(シリーズ3作目)
本短編集『ボーンヤードは語らない』は過去3作より先に読んでも問題なく楽しめると思います。
ただ、本短編集の4編はできれば時系列に関係なく収録順に読むことをおすすめします。
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終わりに
『ボーンヤードは語らない』は、「マリア&漣」シリーズの第4作目に当たる作品で、シリーズ初の短編集です。
シリーズ主要人物の過去や内面を深く掘り下げる内容となっていて、シリーズファンには特におすすめの一冊となっています。
本記事を読んで、市川憂人さんの『ボーンヤードは語らない』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
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