こんにちは、つみれです。
先日、相沢沙呼さんの連作短編ミステリー『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』(講談社)を読みました。
私の周囲で話題になっていた作品だったので、「これは読まなければ!」と思い、取るものもとりあえず読んでみました。
さすがに話題になるだけあって、これはかなりおもしろかったです!
それでは、さっそく感想を書いていきます。
- 「2020本格ミステリ・ベスト10」(原書房)国内ランキング 第1位
- 「このミステリーがすごい! 2020年度版」(宝島社)国内編 第1位
本作の文庫版が発刊されました。本記事の引用箇所は単行本当時のものです。
ネタバレ感想は折りたたんでありますので、未読の場合は開かないようご注意ください。
作品情報
書名:medium 霊媒探偵 城塚翡翠
著者:相沢沙呼
出版:講談社(2019/9/12)
頁数:380ページ
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目次
異色の霊媒探偵ミステリー
私が読んだ動機
私の周りで「おもしろかった!」という声が多かったので読みました。
こんな人におすすめ
- 変わり種ミステリーを読みたい
- ロジカルな謎解きを味わいたい
- 魅力的なキャラクターが登場する物語を読みたい
上にも書きましたが、私の周囲で熱狂的なファンが次々と生まれている怪作です。
私もそのファンの一人に釣り込まれる形で読むことにしたわけですが、これは確かにおもしろい!
とにかく特殊な設定のミステリーであることが魅力の一冊ですね。
特にロジカルなミステリーが好きな人にはおすすめですよ。
翡翠ちゃんかわいい
私の界隈で何が起きていたかというと、本作を読んだ人の大半が「翡翠ちゃんかわいい~(*´з`)」という謎の感想を述べていたのです。
日本男児たるもの、ミステリー小説を読んで登場人物の一人にうつつを抜かすとは何事か!
ミステリーの醍醐味は謎解きやトリックにあるのであって云々かんぬん・・・と怒気をはらみつつ読み始めましたが、読み終わってみると、下記のようになるんです。
翡翠ちゃんかわいい~(((*´з`)))
やっぱりミステリー小説でもキャラクターは大事ですよね。
さてさて、本作で魅力的な謎解きを展開するふたりの探偵役をご紹介いたしましょう。
城塚翡翠
「先生、確かに、わたしは霊媒です。死んだ人間を降ろす――、正確には、死んだ人間の意識を、この身体に宿すことができます」『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』、p.71
数多くの読者を虜にした罪深き女性キャラクターです。息を呑むほどに美しい、と形容されるほどの美女です。最高ですね!おそらく表紙の女性が翡翠でしょう。
タイトルからも想像がつくかと思いますが、彼女は「霊媒」。
つまり、下のような技能を持っています。
- 死者の言葉を伝えることができる
- 霊視によって事件の一端を垣間見ることができる
ぶっとびミステリーかよ!!と思いましたが、本作のおもしろさは、この霊媒能力によって知り得た事実には「証拠能力」がないということにあるのです。
ミステリーで「死んだ被害者(故人)が幽霊となって語った」という論理は通用しませんよね。
城塚翡翠は、事件の真相の一部が先にわかってしまうという反則的な力を持ちながら、それを証拠として提示することができない、という偏った能力の持ち主です。
これではミステリーが成立しませんね!そこでもう一人のキャラクターの登場です。
香月史郎
「霊媒というのは、生者と死者を媒介する存在です。だとしたら、僕はあなたの力を、論理を用いて現実へと媒介する、お手伝いをしましょう」『medium 霊媒探偵 城塚翡翠』、p.92
香月史郎は推理作家としての推理能力を買われ、数々の難事件を解決してきた男性です。
ミステリー小説に頻出する設定のキャラクターですね!(笑)
彼が城塚翡翠と出会って、証拠能力のない霊媒由来の情報に論理的で常識的で説得力のある説明を付加していくことで、事件を解決に導いていきます。
本作のおもしろさの一端はここにあります。
翡翠の霊媒能力で反則的にわかってしまった事件の真相に対して、香月が後出しジャンケン的に論理の枠に当てはめていくいわば「辻褄合わせミステリー」。
霊媒によって犯人はわかっているのにそれを指摘することができず、なんとかしてその真相に結びつく「証拠」を後から探し出していかなければならないわけです。
これはなかなか類を見ない趣向ですよね!新しい!
真相を知りながらそれを容易に指摘できないもどかしさが、読む側になんともいえない緊張感を強いてきます。
霊視によってわかっている真相まで、警察や他の人物たちをいかに「誘導」するか、という特殊なミステリーを味わうことができるんです。
この設定には唸りましたね。
「いくらこのコンビの設定が魅力的だといっても、霊媒なんてインチキくさい能力使って謎解きするのは反則技だ!」なんて声も聞こえてきそうです。
しかし!なんと、そのあたりについても非常に魅力的な説明がなされているのです。
これ以上書くとネタバレになるのでやめますがとてもおもしろい仕掛けになっているので、気になっている場合はぜひ手に取って読んでみてくださいね。
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インタールード
翡翠と香月が事件を解決するたびに、「インタールード」という幕間のようなシーンが差し挟まれます。
インタールードとは「間奏曲」のことですね。(ドヤ顔)
巷で噂になっているという「姿なき連続殺人鬼」が登場する場面ですが、なかなか陰惨なシーンが描かれています。
読む側としては、「翡翠と香月はいずれこの連続殺人鬼と対峙するのだな」となんとなくわかる感じです。
異能の探偵コンビと一切証拠を残さない連続殺人鬼とが対決をするわけですから、これはいやが応でもワクワク感がほとばしってしまいますよね!
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続編『invert 城塚翡翠倒叙集』もおもしろい!
本作の続編『invert 城塚翡翠倒叙集』も読みましたが、これは倒叙形式(犯人が最初から読者に明かされている)の物語が3編収録された短編集となっています。
これもめちゃくちゃおもしろかったです!
『medium』は続編不可能と言われていたにもかかわらず、「倒叙」という武器を引っさげて軽々とそのハードルを超えてくれました。
ただ、『invert』は『medium』を読了していることを前提とした続編になっていて、読む順番を間違えるとお互いのおもしろさを激減させてしまいますのでご注意くださいね。
【ネタバレ感想】すでに読了した方へ
危険!ネタバレあり!本作は、ネタバレ厳禁の最たるものです。
なので私も基本的にはネタバレなしの方向で行きたいのですが、一つだけ名言を紹介したいと思います。
ネタバレが嫌いな人、これから読もうと思っている人は開かないようにね!
終わりに
いやー、これは本当におもしろかった。
帯にある「全てが、伏線。」という煽り文句は正直あまり好きではありませんが、そう評価したくなるのもわかるというものです。
設定からして特殊ミステリーといった感じですが、ぜひとも最後まで読んでいただきたいですね。
上の方でも書きましたが、ロジカルなミステリーが好きな人にはおすすめの一冊です。
ぜひ読んで、翡翠ちゃんかわいい~(*´з`)となりましょう!(笑)
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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