こんにちは、つみれです。
このたび、方丈貴恵さんの『孤島の来訪者』を読みました。
とある無人島を訪れた主人公一行を「人ならざる者」が襲う特殊設定ミステリーです。
また、「竜泉家の一族」シリーズの第二作目でもあります。
それでは、さっそく感想を書いていきます。
作品情報
書名:孤島の来訪者
著者:方丈貴恵
出版:東京創元社(2020/11/30)
頁数:352ページ
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目次
人ならざる殺人者が暗躍する特殊設定ミステリー!
私が読んだ動機
前作『時空旅行者の砂時計』がおもしろかったので、続編の本作も読みました。
こんな人におすすめ
- 本格ミステリーを読みたい
- 特殊設定ミステリーを読みたい
- クローズドサークル・ミステリーが好き
- 前作『時空旅行者の砂時計』がおもしろかった
あらすじ・作品説明
テレビ局のAD・竜泉佑樹は、番組のロケクルーとして無人島「幽世島」を訪れる。
この幽世島は、かつて13名の死者を出した事件が発生したいわくつきの島。
佑樹は幼馴染みを事故で失っているが、実はその事故は故意に起こされた犯罪だった。
事故を装って殺人を犯した罪深き3名に復讐するため、佑樹はテレビ局に入社したのだ。
ロケクルーはターゲットの3名を含む計9名。
機会を窺っていた佑樹だったが、なんとターゲットのうちの一人が何者かに殺されてしまう。
佑樹は自分の手で復讐を遂げるために、クルーのなかに潜む「犯人」を探し始める。
「竜泉家の一族」シリーズ第二作目
本作『孤島の来訪者』は、『時空旅行者の砂時計』の続編で、ミステリー・シリーズ「竜泉家の一族」シリーズ第二作目です。
「竜泉家の一族」シリーズは特殊設定ミステリーを扱っており、普通の本格ミステリーにはない特殊な要素が謎解き・トリックに使われているのが特徴。
前作『時空旅行者の砂時計』は「タイムトラベル」というSF要素を組み込んだ本格ミステリーでした。
この「タイムトラベル」要素を前面に押し出し、前作の延長線上で続編を書いてもよかったはず。
しかし、本作はあえて「前作とは異なる特殊設定」を採用しています。
前作の特殊設定を安易に引き継がず、新しいものにチャレンジする精神がすごすぎますね。
前作との繋がりは薄め
上にも書いた通り、本作『孤島の来訪者』は『時空旅行者の砂時計』の続編となります。
しかし、主人公が前作と異なるうえ、特殊設定の内容も前作とは無関係。
物語的に前作との繋がりは薄いです。
正直にいうと、前作をすっ飛ばしていきなり本作から読み始めてもほとんど問題ありません。
一部、前作の主人公の名前が出てくる箇所もありますが、これもオマケ程度の扱いです。
個人的にはシリーズものは一作目から順番に読むのが好きですが、本シリーズは一作目と二作目の読む順序が逆転しても大丈夫です。
▼前作『時空旅行者の砂時計』の記事
クローズドサークルと特殊設定の融合
本作『孤島の来訪者』は、クローズドサークル・ミステリー(説明は下記)に特殊設定をかけ合わせたミステリー作品です。
クローズドサークル
『孤島の来訪者』はタイトルからも想像がつきますが、孤島系のクローズドサークル・ミステリーです。
クローズドサークルとは・・・何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱ったミステリー作品。
本作の舞台は、鹿児島県の南方に浮かぶ無人島「幽世島」。
もともと幽世島には人が住んでいましたが、1974年に発生した「幽世島の獣」事件によって島民は全滅してしまいました。
この島に眠ると言われる財宝に目がくらんだ民俗学者・笹倉敏夫教授がその犯人とされており、この事件では島民12名と笹倉当人の計13名が死亡しています。
2019年、テレビ局のADにして本作の主人公・竜泉佑樹は、テレビ番組のロケクルーとしてこの幽世島を訪れます。
45年の時を経て、この無人島は再び連続殺人事件の舞台と化します。
滞在期間は二泊三日で、主人公一行を島に運んだ船はいったんロケ終了時に迎えに来ることになっているので、それまで島は外界から隔絶された状況となります。
クローズドサークルですね。
このわずかな滞在時間のうちに、凄惨な連続殺人が発生してしまいます。ワクワクしますねえ!
▼おすすめクローズドサークルの記事
特殊設定は物語中盤で明らかに
本作は、前作『時空旅行者の砂時計』と同じく、作品独自の設定を盛り込んだ「特殊設定ミステリー」です。
ただ、前作は物語序盤から「タイムトラベル」がテーマになっていることが明かされ、それを前提とした本格ミステリーが展開されることが示唆されていました。
しかし、本作の「特殊設定」は物語中盤まで詳細が明かされないので、ネタバレを避けるためここでその内容を書くことはしません。
東京創元社さんの公式の紹介文の範囲で説明すると、犯行に「人ではないもの」が絡んでくるというもの。
この「人ならざる者」が、人間には到底実行できないような手段で犯罪を行います。
これが本作の「特殊設定」です。
- 『時空旅行者の砂時計』・・・特殊設定は「タイムトラベル」
- 『孤島の来訪者』・・・特殊設定は「人ならざる者の存在」
「人ならざる者」の特性については物語中盤で詳しく説明され、それを考慮に入れて謎解きを行っていくというミステリーとなります。
本作の一番おもしろいところをここで書くことができないのはなんとももどかしいですが、物語や謎解きの根幹に関わるネタバレをしないのが本ブログの方針。
本当は書きたくてたまらないんだけどね・・・!
ミステリーとしてかなりオリジナリティあふれた設定となっており、新機軸の謎解きを味わえたのがめちゃくちゃ良かったです。
ぜひ実際に作品を読んで、新しい謎解きに挑戦してみてくださいね。
ちょっと複雑かも
本作の特殊設定は新鮮でめちゃくちゃおもしろいのですが、欠点もあります。
特殊設定ミステリー全般に言えることですが、設定が複雑で物語・謎解きの内容がスッと頭に入ってこないこと。(私の頭が悪いだけかも)
作品独自の特殊設定が頭に定着するまでに時間がかかるし、慣れない頭の使い方をするので読書スピードも落ちがちです。
本気で本作の謎解きを楽しもうと思ったら、特殊設定の内容をしっかり頭に叩き込んだ上で読み進める必要があります。
ある程度、本格ミステリー作品に慣れ親しんだ人のほうが本作のおもしろさを堪能できるかもしれませんね。
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復讐者・竜泉佑樹
本作の主人公・竜泉佑樹は決して清廉な人物というわけでなく、とある思惑を持って幽世島のロケに参加しています。
実は、彼は幼馴染みの女性を事故で失っています。
しかし、この事故は故意に起こされたもので、その陰謀に関わった3名の人物がロケクルーにいるのです。
佑樹は彼女の仇を討つために、この無人島で復讐の機会を狙っています。
一見、「おっ、これは倒叙ミステリーか!?」と思ってしまいますね。
倒叙とは・・・最初から読者に犯人が明かされているミステリー作品。多くの場合、犯人視点で物語が進行する。
しかし、そう単純にいかないのが本作のいいところです。
なんと何者かに殺人を先回りされてしまうのです。
先回りされる殺人
本作は「人ならざる者」が、孤島「幽世島」で連続殺人事件を起こしていきます。
佑樹は自分自身の手で復讐することにこだわっていますが、なんと佑樹が手を下す前に「人ならざる者」が彼の復讐対象者の一人を殺害してしまいます。
本作のおもしろいところは、佑樹が自分の手で復讐を成し遂げるために、復讐対象者を「人ならざる者」の魔手から守るという倒錯した物語展開。
ターゲットの命を「人ならざる者」から守りつつ、自らターゲットの命を狙っていくという矛盾に満ちた前代未聞のミステリーなのです。
この駆け引き要素が本作のおもしろさを何倍にも高めてくれています。
読者への挑戦
奇抜な特殊設定が目立ってしまう本作ですが、基本は本格ミステリー小説です。
この本格ミステリー感を強く味わえるのが終盤の「読者への挑戦」です。
読者への挑戦とは・・・解決編の直前で読者に犯人、または真相を問う趣向のこと。
謎解きに必要な全ての要素が出尽くし、解決編に入る前に読者に「さあ、解いてみてくださいね」と問うてくる本格ミステリー独特の遊び心ですね。
個人的には「読者への挑戦」があると、「ここから先は解決編」と明確にわかるのでうれしいんですよね。
ちなみに、私はいろいろな作品の「読者への挑戦」を見てきましたが、正答したことは一回もありません。だって難しいんだもん。
練りに練られた解決編
「読者への挑戦」のあと、本作は解決編を迎えます。
この解決編がめちゃくちゃ練り込まれていて一筋縄ではいかず、まさにミステリーファン必見の内容です。
一度提示された真相が二転三転し、都度ひっくり返る鮮やかな展開は見事としか言いようがありません。
本作独自の特殊設定を「これでもか!」と詰め込んだオリジナリティあふれる解決編をぜひ味わってほしいです。
『孤島の来訪者』の素敵なつぶやき
『孤島の来訪者』に関するTwitterのつぶやきのうち、参考になるものや素敵なものをご紹介します。
孤島の来訪者/方丈貴恵#読了
幼馴染の復讐のため孤島でのロケに参加した主人公。
彼は復讐を果たすことが出来るのか。
ビックリする特殊設定を楽しみながら読みました。
謎解きもしっかり練られていて読みごたえがあり大満足でした。#読書 #読書好きと繋がりたい pic.twitter.com/GE7h3Ocof3— めぐみ@読書垢 (@meg2287mj) January 27, 2022
孤島の来訪者/方丈貴恵 #読了
幼馴染の復讐の為にロケを装い孤島に渡った主人公。
しかし標的の1人が他殺体となって発見される。絶海の孤島×特殊設定×連続殺人。
特殊設定をうまく活かした仕掛けが面白かった!
が、特殊設定抜きのこの作者のミステリーを読んでみたいと思った。 pic.twitter.com/PaDZkkco2D— 凛@読書垢 (@Ri_nemurihime) December 3, 2021
竜泉家シリーズ2作目ですが、前作との繋がりは少ないのでこちらからでも大丈夫かも?今回も特殊設定ミステリです。
読みながら前作とは全然違う特殊さに驚きましたが相変わらず読者への挑戦はとてもフェアで解決を読むと納得してしまいました。本当に面白かったです! pic.twitter.com/lp7au9j1vj
— あゆ@読書垢 (@ayuhonyomu) March 8, 2022
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終わりに
『孤島の来訪者』は、いわくつきの無人島「幽世島」を訪れたロケクルー一行を「人ならざる者」が襲う特殊設定ミステリーです。
ミステリーとしてかなり珍しい特殊設定が扱われていて、新鮮な驚きを体験できるのが最高でした。
主人公が自分の手で復讐を遂げるためにターゲットの命を敵から守るという斬新な構図もおもしろいですね。
本記事を読んで、方丈貴恵さんの『孤島の来訪者』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
▼前作『時空旅行者の砂時計』の記事
>>【感想】『時空旅行者の砂時計』/方丈貴恵:タイムトラベルが組み込まれた特殊設定ミステリー!
▼次作『名探偵に甘美なる死を』の記事
>>【感想】『名探偵に甘美なる死を』/方丈貴恵:現実とVRの両方で事件が起こる!
▼「竜泉家の一族」シリーズの解説記事
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