こんにちは、つみれです。
このたび、倉阪鬼一郎さんの『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』(講談社ノベルス)を読み終えました。
確かにすごい作品・・・!
ですが、すごさの方向性がおかしすぎるんです!
バカミスっていうのは、こういう作品のことを言うのか・・・!
それでは、さっそく感想を書いていきます。
世界バカミス☆アワード2010年の受賞作(こんなのあったのか!)
ネタバレ感想は折りたたんでありますので、未読の場合は開かないようご注意ください。
作品情報
書名:三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人 (講談社ノベルス)
著者:倉阪鬼一郎
出版:東京創元社 (2009/9/7)
頁数:202ページ
スポンサーリンク
渾身のバカミス!
私が読んだ動機
インターネットでおもしろいミステリーを探していて見つけました。
こんな人におすすめ
- バカミス(おバカなミステリー)が好き
- 新機軸の邪道ミステリーを読んでみたい
本作の感想を書くにあたって何が難しいかと言えば、もう何を書いてもネタバレになってしまいそうな本であるということなんです。
もっと言えば、ネタバレからが本番というくらいの作品。
とりあえず、バカミスだからと決してバカにはできなくて、むしろ突き抜けたバカバカしさは尊敬の対象にすらなるんだな・・・と感じた一冊です。
バカミスってこと自体知りたくなかったよ!という人がいましたら、ほんとごめんね(*´з`)ノ
バカミス
私はバカミスだと知らずに買いましたが、読み終わってみると、これぞバカミスの最たるものだ!と胸を張っていうことができます。
バカミスとは、日本国内における推理小説の分類の1つで、「おバカなミステリー」もしくは「バカバカしいミステリー」の略語である。ただし、この「バカな」は小説作品を侮辱するような意味合いの「馬鹿な」ではなく、「そんなバカな!!」のような感嘆、賛嘆などの意味を込めたものと解釈される。Wikipedia「バカミス」
このWikipediaの説明にもありますが、本気でバカにして「バカミス」と言っているわけではなく、まさに「そんなバカな!!」、もしくは「そんなバカな!!(笑)」のバカなのです。
ときにバカという言葉が最大の賛辞になるということがあります。本作の「バカ」はまさにそれ。褒め言葉としての「バカ」。
本作を書き上げた作者に対して、それこそ私は「バカだなぁ」と言いたくなってしまいますが、その言葉の中にはかけらの侮蔑もありません。
むしろ最大級の「ねぎらい」や「いたわり」を込めてしまいます。
本作はそういうバカミスなのです。
上下二段組
私は本作をKindleで買ったのですが、まず驚いたのが上下二段組であるということです。
上下二段組というのは、文字通り1ページに上下二段で文章が並べられているスタイルで、読者の目線としては文章をS字で追うことになります。
短いセリフが連続するような本の場合、上下二段組にするとセリフ終わりの改行の時のスペースを稼げるといった出版サイドの事情があるといいます。
実は私、上下二段組の小説はあまり得意ではないので、開いた瞬間「うわぁ・・・キツいな」と思ったことを覚えています(笑)
しかし、それ以上の事情があるんです。本作の場合。出版サイドの事情度外視。
私は、読み進めている途中でその事情になんとなく気づきました。そのとき、この本のバカミスたる所以の一部を知ることになったのです。
これ以上は本作の根幹にかかわるので書けないのですが、要するにこれもバカの一環(尊敬の対象)です。
私が気づいた特殊な事情については、ネタバレの項で軽く書いています。
スポンサーリンク
館ミステリー
タイトルからも想像できるかもしれませんが、本作は「館もの」のミステリーを思わせる描写が非常に多いです。
目次を見ると、次のサイクルが繰り返されています。
- 黒鳥館
- 白鳥館
- 幕間
双子と言ってもいいくらいそっくりな「黒鳥館」と「白鳥館」は距離的には近いのですが、その間に深い谷があって吊り橋などもかかっておらず、簡単に行き来できません。
かつてとある美術系の大学で美術を学んだ男女たちが、どちらかの館を訪れ事件に巻き込まれる、という展開を迎えるわけですが、まさにその味わいは館ミステリーそのもの。もうワクワクですね!
文章から受ける両二つの館の印象はかなり格調高いものがあります。
しかし、本作はあくまでバカミスです。そんな印象は何の役にも立たないのです。
不自然さ
とにかく本作を読み進めていて思うことは、なんか文章が不自然で読みづらく、何が起きているのかスッと頭に入ってこないことがあるということです。
正直言いますと、よくわからない状況を描いているシーンが多すぎて集中力がもたないのです。
鳥海という青年画家が館を訪れた美術系大学の男女に対し、復讐を遂げていくシーンが描かれているだけで、物語的にもおもしろみがあまり感じられません。
しかし!上にも書きましたが、あることに気付いてからは本作の趣向が物語にあるのではないことを知ったのです。
それを知ると、本作のバカっぽさの一端が見えてきます。
登場人物にも魅力があるとは言えないのですが、やはり本作の魅力はキャラクターにあるわけではないのです。
作者は物語的な魅力や文章の端正さなどを犠牲にしてまで、とある趣向を凝らすことに夢中になっているのです!
ここが、本作のおもしろいところですね。
未読の方は何を言ってるのかわからないと思います。すみません!
※電子書籍ストアebookjapanへ移動します
【ネタバレ感想】すでに読了した方へ
危険!ネタバレあり!本作は、ネタバレを先に見てしまうとおもしろさが半減します。
ネタバレが嫌いな人、これから読もうと思っている人は開かないようにね!
終わりに
とりあえず、読んだあとに思うのは、バカミスだったなあー!ということなんです。
真相を知ると、正直言って力が抜けたような気分になります。もしかしたら、本を壁に投げたくなる人もいるかもしれません。
でも、本作を完成させた作者の苦労を思うと、その情熱、執念に思わず感動してしまいそうになります。
いやー、ほんとうにすごいものを読んでしまったなー。
巻末の著書リストの本作『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』の項目にきっちり「バカミス」マークが付いているのには笑いました。
究極のバカミスを読んでみたいという方は、ぜひ『黒鳥館白鳥館連続密室殺人』を読んでみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
スポンサーリンク
この記事へのコメントはありません。