屍人荘の殺人

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2021.05.15)

【感想】『屍人荘の殺人』/今村昌弘:ネタバレ厳禁!

こんにちは、つみれです。

このたび、今村昌弘(イマムラマサヒロ)さんの『屍人荘(シジンソウ)の殺人』(東京創元社)を読みました。

装丁が気になって「ちょっとだけ読んでみよう」と読みはじめたら、おもしろすぎて朝まで一気に読みつづけてしまいました。

それではさっそく感想を書いていきます。

ちょっとだけネタバレ書評は折りたたんでありますので、未読の場合は開かないようご注意ください。

2019年3月30日に「続編もおもしろすぎる」を追記しました。

作品情報
書名:屍人荘の殺人

著者:今村昌弘
出版:東京創元社 (2017/10/12)
頁数:336ページ

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新しいクローズドサークル

私が読んだ動機

私は読書メーターという読書コミュニティサイトに登録しているのですが、この『屍人荘の殺人』の評判がものすごくいいのです。

信頼している読書家さんたちのレビューでも軒並み高評価だったので、私も読んでみることにしました。この上なく単純な動機ですね。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • クローズドサークルものが好き
  • 普通の本格ものは飽きてきた
  • 話題になった本が好き

本書は作者今村氏のデビュー作(鮎川哲也賞受賞)にして、以下ミステリーランキング3冠を達成したことで話題になりました。

  • このミステリーがすごい!2018
  • 週刊文春ミステリーベスト10
  • 本格ミステリ・ベスト10

これはめちゃくちゃすごいですね!

私も、綾辻行人(アヤツジユキト)さんの『十角館の殺人』を読んでから、本格ミステリーのおもしろさに目覚め、いろいろな「新本格」を味わってきました。

「新本格」はおおざっぱに言うと、謎解きのおもしろさに主眼をおいたミステリーのことです。

「新本格ミステリー」をある程度まで読んでいくと、「新本格のお約束」がわかってくるんです。

本作『屍人荘の殺人』はそんな新本格に慣れてきたタイミングこそが読み時です。

なぜかというと、本作はいわゆるクローズドサークル・ミステリー」(少し下に説明があるよ)に分類されますが、そのなかでもかなりの変化球です。

その変化球としての設定がめちゃくちゃユニークで、まさにオンリーワンの魅力にあふれています。

この変化球のオリジナリティを味わうためには、事前に「王道」のクローズドサークル・ミステリーを読んでおくのがベターだからです。

「これまでの常識を覆す」衝撃。

「そうくるのか、新しいな」という衝撃。

これが、『屍人荘の殺人』の持ち味の一つです。どうせ読むなら、この衝撃を味わってもらいたいですね!

クローズドサークル

何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品Wikipedia「クローズド・サークル」

外界との連絡手段が絶たれることも多い。サークル内にいる人物のなかに高確率で犯人がいると思われたり、捜査のプロである警察が事件に関与できない理由づけになったりなど、パズルとしてのミステリーを効果的に演出する。

「嵐の孤島」「吹雪の山荘」などがその代表例として挙げられ、熱心なファンはこれらのワードを聞くだけでよだれを垂らしたり、呼吸困難になったりする。

繰り返しになり申し訳ないが、本作を読む前にぜひこれらの「王道」を読んでおくことをおすすめする。

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覚えやすい登場人物

本作のいいところの一つに、登場人物が覚えやすいように工夫してあることが挙げられます。

だっていかにも神経質そうじゃない。

名張(ナバリ)純江(スミエ)を縮めてナーバス、なんちゃって。

『屍人荘の殺人』p.75

あえて説明するのも野暮ですが、名張純江は若干ナーバスでヒステリック気味な少女。

ひどいダジャレですが、本作はこんな調子で登場人物の名前と特徴をうまく結びつけてあり、非常にキャラクターが覚えやすくなっています。

巻頭に登場人物紹介がズラリと載っているようなミステリーの場合、矢継ぎ早に登場する幾多の人物をついに覚えきれずに「あれ、これ誰だっけ・・・」となって巻頭まで戻って「ああ、そうだった」みたいなことがありますよね?

えっ、ない!?

・・・私はあるんです!!

これは、作者である今村さんの「そういう余計なことでテンポを乱す必要はありません。思う存分物語と謎に没入してください」というすばらしい配慮に違いありません。

非常にありがたいですね。

 

 

続編もおもしろすぎる

2019年2月22日、続編『魔眼の(ハコ)の殺人』が発売されました。

私は居ても立ってもいられず、光の速さで購入し、大変楽しく読み終えました。

『屍人荘の殺人』とはまた一味違った奇抜なクローズドサークルが展開されていて、本作と比べても遜色ないすばらしい出来ばえです!やったー!

▼ 続編の記事

 

▼ クローズドサークルまとめ

【ちょっとだけネタバレ書評】
すでに読了した方へ

危険!ネタバレあり!

よーしネタバレするぞー!折りたたんでおくので、まだ読んでいない人は開かないでくださいね。

ネタバレあり!読了済の人だけクリックorタップしてね

上にも書きましたが、普通、クローズドサークルを構成するのは「嵐の孤島」「吹雪の山荘」などです。

しかるに、本作がクローズドサークルを構成するのは「ゾンビ」であります。

ゾンビがペンションを取り囲むのであります。

ゾンビに取り囲まれたペンション内で殺人事件が起こるのであります。

 

奇想と言わねばなるまい。

ただし、ただの奇想では終わらないのがこの小説のすばらしいところです。

クローズドサークルを構成するのがゾンビであるということが、新しい緊張感を提供してくれているのです。

まず、ゾンビ自体が攻撃者であり、殺人者である可能性があるということ。

海や雪山は攻撃してこないけれど、ゾンビは攻撃してくるんです。

 

それから、ペンション内は扉によって複数のエリアに分かれていて、最初は対ゾンビという意味においては全エリアが安全圏なのですが、徐々に突破・侵攻され、安全圏が狭まっていくということ。

これまでのクローズドサークルものは、サークル内の危険にだけ気を配っていればよかったのですが、本作では外部を圧倒的な脅威によって囲まれているという緊張がある。ここが新しいのです。

 

その他、ここでは詳述を控えますが、ペンション内で起こる殺人や動機にも「ゾンビ」という要素が絡み、自然に論理のパズルに組み込まれているという見事さ。

すばらしいですね。

「ゾンビ」という要素が外に出られないだけの演出であったなら、本作はここまでの高評価を得られず、キワモノの域を出なかったことと思います。

クローズドサークルがゾンビから作られるという特殊な舞台装置の特性を最大限に引き出し、ミステリーとしての旨味にまで昇華させているところがポイントです。

私がゾンビについてもう少し詳しかったなら、さらに深く楽しめたのでしょうか。

そういうの苦手なので、絶対無理ですけどね。

ちなみにゾンビが生まれた経緯についてのストーリーは本書一冊で語り終えたようには思えず、続編が期待されますが、実際のところはどうなのでしょうか。

続きを楽しみに待ちたいと思います。

終わりに

本当におもしろい作品でした。時が経つのを忘れるとはまさにこれです。

デビュー作でこの出来とは末恐ろしいですね。

私ならプレッシャーで2作目を生み出すのに苦労しそうなものですが、また本作のようなすばらしい作品を書いていただきたいです。

続編『魔眼の匣の殺人』も刊行されました。おもしろすぎて、まったくの杞憂でした。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

つみれ

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