屍人荘の殺人

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2021.10.22)

【感想】『屍人荘の殺人』/今村昌弘:ネタバレ厳禁!異色のクローズドサークル!

こんにちは、つみれです。

このたび、今村昌弘(イマムラマサヒロ)さんの『屍人荘(シジンソウ)の殺人』(東京創元社)を読みました。

 

装丁が気になって「ちょっとだけ読んでみよう」と読みはじめたら、おもしろすぎて朝まで一気に読みつづけてしまいました。

 

▼「屍人荘の殺人」シリーズの読む順番とあらすじ

それではさっそく感想を書いていきます。

ちょっとだけネタバレ書評は折りたたんでありますので、未読の場合は開かないようご注意ください。

本作は文庫版も発刊されていますが、本記事は単行本を読んだときの感想です。引用元のページ数なども単行本のものに準拠しています。

作品情報
書名:屍人荘の殺人

著者:今村昌弘
出版:東京創元社 (2017/10/12)
頁数:336ページ

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ネタバレ厳禁!異色のクローズドサークル!

私が読んだ動機

私は読書メーターという読書コミュニティサイトに登録しているのですが、この『屍人荘の殺人』の評判がものすごくいいのです。

信頼している読書家さんたちのレビューでも軒並み高評価だったので、私も読んでみることにしました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • クローズドサークルものが好き
  • 普通の本格ものは飽きてきた
  • 話題になった本が好き

あらすじ・作品説明

神紅大学ミステリ愛好会会長にして名探偵・明智恭介(アケチキョウスケ)とその助手・葉村譲(ハムラユズル)は、なんとかして映研の夏合宿に参加したかったが断られ続けていた。

 

そんなとき彼らの前に不思議な体質を持つ少女・剣崎比留子(ケンザキヒルコ)が現れ、彼女を通して映研夏合宿への参加が決まる。

 

3名は映研メンバーとともにペンション・紫湛荘を訪れるが、そこで前代未聞の大事件に巻き込まれ、ペンション内に閉じ込められてしまう。

ミステリーランキング3冠

王冠

本作『屍人荘の殺人』は、作者である今村昌弘さんのデビュー作(鮎川哲也賞受賞)です。

以下のミステリーランキング3冠を達成したことで話題になりました。

  • このミステリーがすごい!2018
  • 週刊文春ミステリーベスト10
  • 本格ミステリ・ベスト10

これはめちゃくちゃすごいですね!

新本格ミステリーに慣れてきたときが読み時!

私が『屍人荘の殺人』を読んで思ったことは、ある程度「新本格ミステリー」を読んでから本作を味わった方がより楽しめるということ。

私も、綾辻行人(アヤツジユキト)さんの『十角館の殺人』を皮切りに本格ミステリーのおもしろさに目覚め、いろいろな「新本格」を味わってきました。

「新本格ミステリー」はおおざっぱに言うと、謎解きのおもしろさに主眼をおいたミステリーのことです。

「新本格」をある程度まで読んでいくと、「新本格のお約束」がわかってくるんです。

本作『屍人荘の殺人』はそんな新本格に慣れてきたタイミングこそが読み時です。

本作はいわゆる「クローズドサークル・ミステリー」に分類されます。

クローズドサークルの説明は下記の通り。

クローズドサークル

何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品 Wikipedia「クローズド・サークル」

外界との連絡手段が絶たれることも多い。

サークル内にいる人物のなかに高確率で犯人がいると思われたり、捜査のプロである警察が事件に関与できない理由づけになったりなど、パズルとしてのミステリーを効果的に演出する。

「嵐の孤島」「吹雪の山荘」などがその代表例として挙げられる。

本作はそのクローズドサークルを扱った新本格の作品のなかでもかなりの異色作で、変化球的作品に当たるからです。

その変化球としての設定がめちゃくちゃユニークで、まさにオンリーワンの魅力にあふれています。

 

ネタバレになっちゃうから、これ以上のことをここで語れないんですよ!!

 

ただ、このオリジナリティを味わうためには、事前に「王道」のクローズドサークル・ミステリーを読んでおくのが望ましいです。

王道を知ってから変化球を読むことで、その異色の凄さがわかるからです。

「これまでの常識を覆す」衝撃。

「そうくるのか、新しいな」という衝撃。

これが、『屍人荘の殺人』の持ち味の一つです。どうせ読むなら、ぜひともこの衝撃を味わってもらいたいですね!

>>つみれ的「クローズドサークルのおすすめ作品」紹介記事

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覚えやすい登場人物

『屍人荘の殺人』のいいところの一つに、登場人物が覚えやすいように工夫してあることが挙げられます。

本作の登場人物の一人、剣崎比留子は人物の特徴を捉えて記憶することを得意としていて、それを主人公の葉村譲に披露するシーンがあるのです。

それがおもしろいんですよ!下記に一例を挙げておきますね。

だっていかにも神経質そうじゃない。

名張(ナバリ)純江(スミエ)を縮めてナーバス、なんちゃって。

『屍人荘の殺人』p.75

あえて説明するのも野暮ですが、名張純江は若干ナーバスでヒステリック気味な少女。

ひどいダジャレですが、本作はこんな調子で登場人物の名前と特徴をうまく結びつけてあり、非常にキャラクターが覚えやすくなっています。

他のキャラクターもおもしろい名前が付けられているので必見ですよ。

ミステリー小説では巻頭で登場人物が一覧でまとめて紹介されていることもあります。

 

でも、私はこうやってワーッと列記してあると覚えられなくて、サラッと読み飛ばしてしまうんですよね。

 

えっ、そんなことない!?私はそうなんです!!

名前がその人物の特徴を表す趣向は、「キャラクターを覚えることに力を割かず、物語と謎に注力してください」という作者・今村さんのすばらしい配慮に違いありません。

もう本当にめちゃくちゃありがたい・・・!

圧倒的リーダビリティ

本をめくる

本作の凄いところはとにかく圧倒的にリーダビリティがあって、ガンガン読み進めていけるところ。

文章の読みやすさやキャラクターのわかりやすさなどが相まって、混乱することなく読めるんです。

むしろ「読みやすい」というより、「読み進めたくなる」という感じ。

そして何より、「続きが気になって止め時が見つからない」んです。

 

とにかく作者・今村さんの「続きを読ませたい!」という熱量がハンパじゃないんですよ。

 

冒頭にも書きましたが、私などは物語の続きが気になって徹夜してしまったほどです。

本を読者にガンガン読み進めさせる「圧倒的リーダビリティ」が特徴の一冊です。

 

 

続編もおもしろすぎる

2019年2月22日、続編魔眼(マガン)(ハコ)の殺人』が発売されました。

私は居ても立ってもいられず音速で購入し、大変楽しく読み終えました。

『屍人荘の殺人』とはまた一味違った奇抜なクローズドサークルが展開されていて、本作と比べても遜色ないすばらしい作品でした。

『魔眼の匣の殺人』単体でも楽しめますが、『屍人荘の殺人』を事前に読んでおくとそのおもしろさも倍増です。

▼ 続編の記事

▼ クローズドサークルまとめ

〈エピソード0〉『明智恭介 最初でも最後でもない事件』

「屍人荘の殺人」の前日譚

本作『屍人荘の殺人』には前日譚があります。

それが『明智恭介 最初でも最後でもない事件』という中編スピンオフ作品です。

内容としては、明智恭介と葉村譲のコンビが、大学構内で起こる事件の謎解きに奔走する「日常の謎」系ミステリー。

彼らの学生生活や気の抜けた会話など、本編では味わえない雰囲気があってこちらもとてもおすすめですよ。

▼ 『明智恭介 最初でも最後でもない事件』の感想の記事

【ちょっとだけネタバレ書評】
すでに読了した方へ

危険!ネタバレあり!

下記は本作の重大なネタバレを含みます。折りたたんでおくので、まだ読んでいない人は開かないでくださいね。

ネタバレあり!読了済の人だけクリックorタップしてね

上にも書きましたが、普通、クローズドサークルを構成するのは「嵐の孤島」「吹雪の山荘」などです。

しかし、本作がクローズドサークルを構成するのはなんと「ゾンビ」です。

ゾンビがペンションを取り囲み、そのせいで登場人物たちがペンション内に閉じ込められるという異色にもほどがあるクローズドサークル!

ゾンビがペンションを取り囲んだという珍しさで終わらず、ゾンビ自体が仕掛けとなっているのがめちゃくちゃ新しく、ここに未体験の緊張感があるんです。

まず、ゾンビ自体が攻撃者であり、殺人者になりうるというすばらしさ。

通常のミステリーでクローズドサークルを構成する海や雪山は攻撃してこないけれど、ゾンビは攻撃してくるんです。

それから、ペンション自体の構造のおもしろさも本作を味わう上での醍醐味の一つになっています。

ペンション内は扉によって複数のエリアに分かれていて、最初は対ゾンビという意味においては全エリアが安全圏なのですが、徐々に突破・侵攻され、安全圏が狭まっていきます。

これまでのクローズドサークルものは、サークル内の危険にだけ気を配っていればよかったのですが、本作では外部を圧倒的な脅威によって囲まれているという緊張があります。ここが新しいのです。

その他、ここでは詳述を控えますが、ペンション内で起こる殺人や動機にも「ゾンビ」という要素が絡み、「ゾンビ」自体が自然と論理のパズルに組み込まれているという見事さ。

これはすばらしすぎますね。

「ゾンビ」という要素が外に出られないだけの演出であったなら、本作はここまでの高評価を得られず、キワモノの域を出なかったことと思います。

クローズドサークルがゾンビから作られるという特殊な舞台装置の特性を最大限に引き出し、ミステリーとしての旨味にまで昇華させているところがポイントです。

私がゾンビについてもう少し詳しかったなら、さらに深く楽しめたかもしれませんね。

ちなみにゾンビが生まれた経緯についてのストーリーは本書一冊で語り終えたようには思えず、続編が期待されますが、実際のところはどうなのでしょうか。

続きを楽しみに待ちたいと思います。(※追記:続編で少しずつ真相が語られています)

終わりに

本当におもしろい作品でした。時が経つのを忘れるとはまさにこれです。

デビュー作でこの出来とは末恐ろしいですね。

私ならプレッシャーで2作目を生み出すのに苦労しそうなものですが、また本作のようなすばらしい作品を書いていただきたいです。

続編『魔眼の匣の殺人』も刊行されました。おもしろすぎて、まったくの杞憂でした。

最後まで読んでくださり、ありがとうございます。

つみれ

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