こんにちは、つみれです。
このたび、江戸川乱歩さんの短編「二銭銅貨」を読みました。
とある工場から盗まれた5万円の在処をめぐって、困窮した二人の青年が暗号の絡む知恵比べを繰り広げる短編です。
また、江戸川乱歩さんのデビュー作でもあります。
本記事は『江戸川乱歩傑作選』所収の一編「二銭銅貨」について書いたものです。
それでは、さっそく感想を書いていきます。
作品情報
短編名:二銭銅貨(『江戸川乱歩傑作選』所収)
著者:江戸川乱歩
出版:新潮社(1960/12/27)
頁数:33ページ
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目次
江戸川乱歩のデビュー作!
私が読んだ動機
本編が収録されている『江戸川乱歩傑作選』が、私が所属している文学サロン「朋来堂」の「ミステリ部」2022年4月の課題図書だったので読みました。
こんな人におすすめ
- 短めの物語を読みたい
- 江戸川乱歩のデビュー作を読みたい
- 古典的な探偵小説が好き
あらすじ・作品説明
とある電機工場の給料日、新聞記者に変装した泥棒・通称「紳士盗賊」が現れ、5万円(当時としては大金)を奪って逃げた。
紳士盗賊はほどなくして捕まったが、盗まれた5万円の在処は杳として知れなかった。
「私」と同居している友人・松村武の二人は貧窮のドン底におり、日々の生活に困っていた。
ある日、松村は「私」が机の上に置いておいた二銭銅貨に異様な執着を見せ、あれこれと尋ね始める。
松村はその二銭銅貨に、盗まれた5万円の在処にまつわる謎を嗅ぎつけたようだ。
古典的探偵小説
「二銭銅貨」は30ページ強ほどの短い探偵小説です。
舞台設定や「暗号解読」などがいかにも古典的で雰囲気がとても良いです。
短めのお話なのでサクッと読めちゃいますし、江戸川乱歩さんのデビュー作でもあるので、乱歩初心者にもおすすめの一編ですね。
かくいう私も乱歩初心者ですが、とても読みやすかったです。
キャラクターがおもしろい
「二銭銅貨」の魅力として、登場人物がおもしろいことが挙げられます。
私が特におもしろいと思ったキャラクターについて書いていきます。
短編なのでこれ以外の登場人物はほぼいませんけどね。
「私」と松村
本作「二銭銅貨」のメインキャラは語り手の「私」とその友人・松村武の二人です。
この「私」と松村のやり取りがどこか滑稽でとても良いんですよ。
下駄屋の二階に同居している二人は困窮に喘ぐ青年たちで、かの松本清張が褒めたたえたという冒頭部でも彼らの貧窮具合が描かれています。
「あの泥棒が羨ましい」二人のあいだにこんな言葉がかわされるほど、そのころは窮迫していた。『江戸川乱歩傑作選』、p.7
セリフから始まる冒頭部っていいですよね。
貧乏青年二人は日頃からいろいろな議論を戦わせているようで、「頭のよさ」を競っているという少し子供じみた関係が最高。
この松村が「私」の二銭銅貨に着目し、不審な調査を始めたところから物語は転がっていきます。
以上のような二人の関係が単なる「キャラ付け」に留まらず、物語の重大な伏線になっているのもすばらしいです。
紳士盗賊
もう一人、本作には魅力的なキャラクターがいます。
それが「紳士盗賊」です。
紳士盗賊は電機工場の給料日に大金を盗みおおせたやり手の泥棒で、本作で描かれる一連の事件の発端となった人物ですね。
「私」と松村の関係を中心に描く本作としては、この紳士盗賊の存在は脇役に近いです。
しかしそれでも堂々と工場の支配人と面会をして、大胆不敵にも大金を盗み出す手際の良さが光っていますね。
給料日を狙って盗みに入る泥棒という令和では絶滅したキャラ設定がいかにも古典的で、これがまたいい味を出しています。
王道ながらよく練られたミステリー
「二銭銅貨」は王道ながらよく練られたミステリー小説です。
下記では本作のミステリー的な見どころについて書いていきます。
暗号解読
本作に登場する謎解きでおもしろいのは、なんといっても「暗号解読」です。
個人的には大正や昭和初期を描く物語で暗号が出てくると、もはやミステリー小説と呼ぶより探偵小説と呼んだほうがしっくりくる感じがしますね。
実際、この記事でも意図的に探偵小説という言葉を多く使っていますよ。
暗号解読のような「いかにも」な謎解きも味があっていいですねえ。
本作の謎解きとしてはこの暗号解読がメインに据えられています。
なかなか解きごたえがある暗号なので、自信がある人はぜひチャレンジしてみてくださいね。
言うまでもなく私は解けませんでした。
構造的におもしろい一編
本作の謎解きとしてのおもしろさは「暗号解読」に集約されていますが、それとは別にもう一つおもしろい仕掛けがあります。
ネタバレになるのでここで詳細は明かしませんが、小説の構造的なおもしろさといった感じでしょうか。
ラストまで読むと物語全体の「よく練られた構図」がよく見えるようになるという趣向になっています。
この仕掛けの存在によって初読時と再読時の印象がガラリと変わるため、二度読み必至の作品です。
再読の際は注意して読んでみるとかなり多くの「伏線」が散りばめられていることがわかり、そのよく練られた構成に改めてハッとさせられるはず。
30ページ強ほどの短めの物語なので、「何も知らない状態で初読」と「構造を理解した状態で再読」の二回を楽しむのがおすすめですよ。
終わりに
「二銭銅貨」は、とある工場から盗まれた5万円の在処をめぐって、困窮した二人の青年が暗号の絡む知恵比べを繰り広げる短編短編です。
とにかく「探偵小説」らしい古典的な雰囲気が最高に良い一編でした。
本記事を読んで、江戸川乱歩さんの「二銭銅貨」がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ『江戸川乱歩傑作選』を手に取って読んでみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
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つみれ
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