むかしむかしあるところに、死体がありました。

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2022.04.29)

【感想】『むかしむかしあるところに、死体がありました。』/青柳碧人:日本の昔話を本格ミステリーにリメイク!

こんにちは、つみれです。

このたび、青柳碧人(アオヤギアイト)さんのミステリー短編集『むかしむかしあるところに、死体がありました。』を読みました。

 

日本の有名な昔話を本格ミステリーの手法に則ってリメイクした「おとぎ話ミステリー」です。

 

それでは、さっそく感想を書いていきます。

本作は2020年本屋大賞のノミネート作です。

作品情報
書名:むかしむかしあるところに、死体がありました。(文庫)

著者:青柳碧人
出版:双葉社
頁数:296ページ

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日本の昔話をミステリーにリメイク!

日本の昔話を本格ミステリーにリメイク

私が読んだ動機

実は先に西洋童話を元にした2作目『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』を読んでしまったのですが、それがおもしろかったのでさかのぼって読みました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 日本の昔話を題材にした変わったミステリーが読みたい
  • 本格ミステリーが好き
  • ミステリー短編集が読みたい

あらすじ・作品説明

「浦島太郎」「花咲かじいさん」などの日本の有名な昔話を、「密室」「ダイイングメッセージ」のようなミステリー的な手法を織り交ぜて解釈しなおした新機軸ミステリー短編集。

 

元になった昔話は「一寸法師」「花咲かじいさん」「鶴の恩返し」「浦島太郎」「桃太郎」の5作。

 

よく知られた昔話がミステリー作家の手によって全く新しい読み応えのミステリーに生まれ変わる。

日本の昔話を元ネタにしたミステリー短編集

桃太郎

本作は、日本の昔話を元ネタにしたミステリー短編集です。

子どものころに読んでよく知っているおなじみのおとぎ話の主人公たちがミステリーの世界で大活躍(?)していきます。

題材として取られている昔話は下記の5作。

  • 一寸法師
  • 花咲かじいさん
  • 鶴の恩返し
  • 浦島太郎
  • 桃太郎

これら名作5作が、本格ミステリーでおなじみの手法と融合することによって全く新しい「おとぎ話ミステリー」として生まれ変わっています。

実際に使用されているミステリー的手法は下記。

  • アリバイ崩し
  • ダイイングメッセージ
  • 倒叙(トウジョ)
  • 密室トリック
  • クローズドサークル

倒叙とは・・・最初から読者に犯人が明かされているミステリー作品。

クローズドサークルとは・・・何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱ったミステリー作品。

おとぎ話をミステリー化したという趣向や、ふざけ気味の表紙・タイトルからは想像できないほど見事な本格ミステリー短編集です。

シュールでブラックなおとぎ話ミステリー

本をめくる

本作は、日本のおとぎ話を題材にとったシュールでブラックなミステリー短編集です。

元となったおとぎ話は寓話的な教訓めいた内容を含むものもありますが、基本的にどこかほのぼのとした世界。

ところが、本作はその世界にミステリー的な成分を取り込むことによって、人の欲深さや醜い感情などを浮き彫りにしています。

 

本来のおとぎ話で希釈されていた醜い部分をことさら強く目立たせているような印象でしたね。

 

よく見知っているはずの登場人物や物語世界の意外な一面を楽しむことができるのが本作最大の醍醐味と言ってもいいかもしれません。

従来のおとぎ話の印象をおおげさに覆してみせることで、シュールでブラックな独特の笑いが生まれています。

ブラックユーモアあふれる珠玉の「おとぎ話ミステリー」を味わってほしいですね。

見取り図のおもしろさ

間取り図とペン

私は館系ミステリーの巻頭などに収録されている見取り図を見るのが好きです。

 

マニアックな話ですが、見取り図を見ながら「この館は住みづらそうだな」とか「この部屋あやしいな」とか想像するのが楽しいんですよ。

 

本作では、なんと竜宮城や鬼ヶ島の見取り図が登場します。

おとぎ話で読んだ有名な舞台が、ミステリーの舞台としてリニューアルされているのに不思議な感動がありました。

生まれ変わったおとぎ話の舞台を楽しんでくださいね。

各編のあらすじ

本作に収録された短編5編のあらすじを下記で紹介します。

一寸法師の不在証明

一寸法師と打ち出の小槌

存生祀(ゾンジョウマツ)りの参詣の帰路、下栗村(シモクリムラ)のあたりで鬼に襲われた春姫(ハルヒメ)一行。

 

しかし、一行に同行していた身の丈一寸の一寸法師が鬼を撃退し、一行は事なきを得た。

 

春姫一行が下栗村を通過した頃、付近の上栗村(カミクリムラ)冬吉(フユキチ)という男が不審死を遂げていた。

花咲か死者伝言

川辺の桜

枯れ木に花を咲かせることができる不思議な灰を使って殿の歓心を買い、褒美をもらえることになったお爺さん。

 

腹を空かせたとある犬が、お爺さんが開くであろう宴をあてこんで彼に付いていったところ、お爺さんに飼ってもらえることになった。

 

その夜、隣人の太作(タサク)がお爺さん宅にやってきて灰を奪い取っていってしまった。

 

数日後、お爺さんの死体が見つかった。

つるの倒叙がえし

鶴の恩返し

父の代、庄屋に大きな借金を抱えてしまった弥兵衛(ヤヘエ)

 

そんな弥兵衛のもとに当の庄屋が借金返済の督促に現れるが、言い争いの末、弥兵衛は庄屋を殺害してしまう。

 

弥兵衛が死体を隠し終えると、家の戸口をこつこつと叩く音がした。

密室竜宮城

海を泳ぐウミガメ

いじめっ子の子どもたちから亀を助けた浦島太郎は、海底の竜宮城に招待される。

 

竜宮城ではさまざまな海の生き物たちが浦島太郎を歓待してくれた。

 

浦島太郎が海の生き物同士のちょっとした諍いを収めたあと一休みしていると、とある海の生き物の死体が密室で発見される。

絶海の鬼ヶ島

桃

昔、桃太郎によって壊滅させられた鬼ヶ島の鬼たち。

 

その生き残りは鬼ヶ島で静かに暮らしていた。

 

二人の少年鬼の諍いを発端に、鬼ヶ島の生き残りたちが一人ずつ殺されていく。

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特殊設定ミステリー

小槌

 

私が本作を特に読んで「おもしろいな」と思ったのが、おとぎ話を舞台にした特殊設定ミステリーになっている点。

 

元ネタとなったおとぎ話の設定や世界観を最大限に生かしたミステリーになっているんです。

たとえば、一寸法師の「打ち出の小槌」や花咲かじいさんの「灰」など、おとぎ話に出てくるマジックアイテムが本作でも登場します。

これらおとぎ話のマジックアイテムが、ミステリーのトリックや謎解きのカギになってくるのは非常におもしろいと思いましたね。

特殊設定ミステリーの欠点は、作者独自のオリジナル要素を説明しなければならず序盤の展開が冗長になりがちな点。

しかし本作は、「おとぎ話」という周知の世界を特殊設定として扱っているため、説明なしでも問題なく楽しめるところが良かったです。

二作目『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』と比較

西洋童話を元にした連作短編

実は私は本作の続編となるシリーズ二作目『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』を先に読んでしまいました。

 

せっかくなので、本作と二作目とを比べてみます。

 

二作目は完全な連作短編になっていて、いろいろな童話を元ネタとして取り上げながら、「主人公は一貫して赤ずきん」という形を取っていました。

要するに基本的には短編集でありながら、長編としても読める構成になっていたのです。

一方、本作は各編がほぼ完全に独立していて一話完結の風味が強いので、二作目に比べ気軽に読み進めやすい印象でしたね。

また、本作は各編ごとにミステリー的なテーマが決まっており、(例えば「一寸法師」は「アリバイ崩し」など)ミステリーとして極めてわかりやすく楽しめる点もよかったです。

元ネタのおとぎ話を知っているとより楽しめる

浦島太郎

日本のおとぎ話を題材に取っている本作。

やはり元ネタを知っているのと知らないのとでは本作のおもしろさが格段に変わってきます。

もちろん元ネタとなる各おとぎ話を知らなくてもミステリーとして楽しむことができるように書かれています。

しかし、やはり「原作」を知っていればこそ本作のブラックユーモアも生きてくるので、元の昔話を忘れてしまった人は事前に原作を読んでおくのがおすすめ。

元ネタのおとぎ話はそんなに長くないので、サクッと読めちゃいますしね!

お気に入りの一編は「絶海の鬼ヶ島」

海に浮かぶ孤島

本短編集に収録されている作品のなかでも、特にお気に入りの一編は「絶海の鬼ヶ島」。

鬼ヶ島を孤島系クローズドサークルに見立て、アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』風に事件を進行させるという着想がすばらしかったです。

そして何より「桃太郎」といえば、日本生まれの英雄と言ってもいい存在ですが、本作に登場する桃太郎は私たちが知っている桃太郎とはかなり様子が異なります。

 

このギャップをぜひとも味わってもらいたいですね!

 

上で本作は各編独立していると書きました。

しかし、「絶海の鬼ヶ島」については本短編集のラストを飾る短編ということで、一冊のまとめ的な位置づけの一編になっています。

基本的にどの短編から読んでも楽しめますが、「絶海の鬼ヶ島」だけは最後に読むことをおすすめします。

 

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終わりに

『むかしむかしあるところに、死体がありました。』は、日本のおとぎ話を本格ミステリーに書き換えたミステリー短編集です。

 

元ネタのおとぎ話とは一風変わったミステリー的な技巧に満ちた一冊となっていて、質の高い謎解きとシュールでブラックな笑いを提供してくれます。

 

本記事を読んで、青柳碧人さんの『むかしむかしあるところに、死体がありました。』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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