こんにちは、つみれです。
このたび、青柳碧人さんの短編「竹取探偵物語」を読みました。
日本の昔話『竹取物語』をモチーフにしたミステリー短編です。
本記事は『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』所収の一編「竹取探偵物語」について書いたものです。
それでは、さっそく感想を書いていきます。
作品情報
短編名:竹取探偵物語(『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』所収)
著者:青柳碧人
出版:双葉社(2021/10/21)
頁数:58ページ
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目次
『竹取物語』をモチーフにしたミステリー!
私が読んだ動機
前作『むかしむかしあるところに、死体がありました。』がおもしろかったので続編にあたる本作も読みました。
こんな人におすすめ
- 『竹取物語』が好き
- 特殊設定ミステリーが好き
- 日本の昔話をモチーフにしたミステリーを読んでみたい
あらすじ・作品説明
竹取を生業にしている堤重直が友人の有坂泰比良とともに竹林に行くと、光っている竹を発見。
さっそくその竹を切ってみると中には親指ほどの大きさの少女が。
「かぐや」と名乗るその少女はみるみるうちに成長し、絶世の美少女となった。
かぐやの成人の儀式にはその美貌のうわさを聞き付けた都の貴族が集まり、次々と求婚した。
かぐやは五人の求婚者に対し、<ゆかしき物>を持ってきた者と結婚する旨を伝える。
<ゆかしき物>の提出期限の日、なんと有坂泰比良が焼死体となって発見される。
昔話『竹取物語』をモチーフにしたミステリー
本作「竹取探偵物語」は、そのタイトルからもわかる通り、昔話の『竹取物語』をモチーフにしたミステリー作品です。
『竹取物語』は千年以上前に書かれたと言われ、「日本最古の物語」として有名ですね。
本作はその『竹取物語』の世界にミステリー的なエッセンスを取り入れた作品です。
竹を取ることを生業にしている主人公の堤重直が、山で発見した光る竹のなかから現れた「かぐや」という少女と出会うところから物語は始まります。
特殊設定ミステリー
上にも書いた通り、本作は『竹取物語』という昔話の世界を舞台にしています。
竹から少女が発見されたり、不思議なアイテムが登場したりと、昔話由来の特殊設定が見事にミステリーに落とし込まれているのが特徴。
つまり本作は、昔話によくある不思議な現象を謎解きに取り入れた特殊設定ミステリーなのです。
結婚の条件
絶世の美少女に成長したかぐやは、成人の儀式の席で同時に五人の貴族から結婚を申し込まれます。
かぐやは堤重直を通して「結婚の条件」を五人の求婚者に伝えさせます。
その条件が<ゆかしき物>を期日までに持ってくるということ。
五人の貴族たちは一年の間に<ゆかしき物>を入手するという難題を突き付けられるわけです。
<ゆかしき物>
五人の求婚者が入手しなければならない<ゆかしき物>とはどれも珍品ばかり。
例えば「思いのままの光景を映し出すことができる鉢」や「業火の中にいても決して焼かれることのない衣」などです。
いずれも入手が困難と思われるマジックアイテムばかりで、五人がこれをどのように用意するのか楽しみでついつい先を読み進めたくなります。
有坂泰比良の死
五人の貴族が結婚の条件を言い渡されてから一年が経過し、いよいよ<ゆかしき物>の提出日という日、なんと堤の友人・有坂泰比良が死んでしまいます。
かぐやが「何だか焦げ臭い」というので堤が周辺を調べたところ、有坂の家が出火しており、そのなかから有坂が焼死しているのが見つかるのです。
現場は密室状態でその犯行は常人にはとても難しいものでした。
しかし、<ゆかしき物>の所有者であれば、その不思議な力を用いて犯行が可能ということから、五人の求婚者たちは一転して殺人事件の容疑者となってしまいます。
<ゆかしき物>の不思議な力のおもしろさが、そのまま特殊設定ミステリーとしてのおもしろさに繋がっているのがとても良いですね。
ミステリーとして
まず、本作のミステリーとしてのおもしろさは、「竹取探偵物語」と銘打っていながら、誰が探偵なのか終盤までわからないこと。
終盤になって探偵役がわかると、物語全体の構図が一気に明らかになるという鮮やかな展開が最高に良かったです。
そして58ページと短い物語ながら、下記の通り見どころ満載な点も良いですね。
- 不思議な<ゆかしき物>の魅力
- 不穏な殺人事件
- 鮮やかな解決編
こうして見てみると、見事に特殊設定ミステリーの醍醐味を兼ね備えています。
かなり突飛な設定であるにもかかわらず、自然と物語世界に没入でき、特別な説明が不要な点もポイント高いです。
やはりモチーフとなった大元の物語『竹取物語』があまりにも有名で、前提知識が読者側にもあるからというのが大きいですね。
終わりに
「竹取探偵物語」は、日本の昔話『竹取物語』をモチーフにしたミステリー短編です。
よく知っている物語がモチーフになっていることと、<ゆかしき物>というマジックアイテムが使われたミステリーというおもしろさが光る一編でした。
本記事を読んで、青柳碧人さんの「竹取探偵物語」がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ『むかしむかしあるところに、やっぱり死体がありました。』を手に取って読んでみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
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