グラスバードは還らない

ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2021.05.15)

【感想】『グラスバードは還らない』/市川憂人:本格ミステリーとパニックもののいいとこどり!

こんにちは、つみれです。

このたび、市川憂人(イチカワユウト)さんの長編ミステリー『グラスバードは(カエ)らない』を読みました。

「マリア&(レン)」シリーズの第三作目にあたる作品です。

▼前作の記事

▼「マリア&漣」シリーズまとめ記事

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
書名:グラスバードは還らない(創元推理文庫)

著者:市川憂人
出版:東京創元社(2021/3/19)
頁数:384ページ

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本格ミステリーとパニックもののいいとこどり!

本格ミステリーとパニックもののいいとこどり

私が読んだ動機

「マリア&漣」シリーズがおもしろいので、最新作の文庫化を機に読みました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 奇抜なクローズドサークルものが読みたい
  • スリル感あふれる物語が好き
  • 理系要素のあるミステリーを読みたい
  • 前作『ブルーローズは眠らない』がおもしろかった

あらすじ・作品説明

「マリア&漣」シリーズ第三弾。

 

マリアと漣は希少動植物密売ルートの捜査中、その捜査線上に不動産王ヒューが浮かびあがった。

 

さっそくヒューを訪ねるために最上階が彼の邸宅となっている「サンドフォードタワー」に向かうと、タワーを爆破テロが襲う。

 

一方、ヒューの関係者4名は無機質で不気味なフロアに幽閉されてしまう。

 

ヒューの周辺では過去にも爆発事故が起こっていた。

「マリア&漣」シリーズと読む順番

摩天楼

本作『グラスバードは還らない』は市川憂人さんのミステリーシリーズ「マリア&漣」シリーズの三作目にあたります。

なので、前二作を事前に読んでおくとおもしろさが倍増しますよ!

例えば、本シリーズには「ジェリーフィッシュ」という現実世界には存在しない飛行船が登場するのですが、このジェリーフィッシュは本作でも物語上のキーになります。

そしてこのジェリーフィッシュがメインで活躍するのがシリーズ一作目『ジェリーフィッシュは凍らない』なんです。

また、本作では前作『ブルーローズは眠らない』に登場したキャラクターにも出番が用意されています。

基本的には前二作を読んでいなくても本作単体で楽しめるように描かれてはいますが、できれば前二作を読んでから本作を読むことをおすすめします。

「マリア&漣」シリーズの順番は下記の通りです。

  1. 『ジェリーフィッシュは凍らない』
  2. 『ブルーローズは眠らない』
  3. 『グラスバードは還らない』(本作)

前二作もかなりおもしろいので、ミステリーファンなら読んで後悔することはないはずです。

2つの物語が同時進行

ガラスの窓

「マリア&漣」シリーズの特徴として、2つの物語が交互に描かれる構成が挙げられます。

シリーズ三作目にあたる本作『グラスバードは還らない』もその特徴を引き継いでいます。

本作では下記の2つの視点が交互に描かれます。

  • グラスバード
  • タワー

基本的には「グラスバード」が事件パート、「タワー」が捜査パートとなっています。

本作のおもしろいところは、この2つの物語が全く別種のスリル感を提供してくれるところ。

「グラスバード」は、登場人物たちが外界と連絡・交通が遮断された不気味なフロアに幽閉され、一人ずつ退場していくクローズドサークルもの。

それもかなり本格的で奇抜なクローズドサークルになっていて、私はこういうミステリーが大好物なので、正直これだけで狂喜乱舞しましたね。

クローズドサークルの説明は下記の通り。

クローズドサークル

何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品 Wikipedia「クローズド・サークル」

外界との連絡手段が絶たれることも多い。

サークル内にいる人物のなかに高確率で犯人がいると思われたり、捜査のプロである警察が事件に関与できない理由づけになったりなど、パズルとしてのミステリーを効果的に演出する。

「嵐の孤島」「吹雪の山荘」などがその代表例として挙げられる。

一方「タワー」は、本シリーズの主人公格であるマリアと漣がとある超高層ビルに潜入捜査するんですが、そのビルを激しい爆破テロが襲い掛かるパニックものです。

本作で特徴的なのがこの「タワー」パート。

「タワー」では、主人公のマリアと漣は物語序盤で別行動を取ることになります。

超高層ビルに潜入して実地の捜査を試みるマリアと、ビルの外から聞き込み捜査を進める漣という感じ。

だから実質、事件パートが1つあるほかに捜査パートが2つあり、これら3つの物語が代わるがわる描かれるイメージです。

さらに「グラスバード」「タワー」それぞれの冒頭部で「ーー 一九八三年十二月二十日 十九:三〇 ーー」といった感じに時間が宣言されます。

この趣向によって各編が同時進行で進んでいる感があるのもハラハラ感を倍増させてくれますね。

これら3つの視点それぞれで異なるキャラクターたちの焦燥感が描かれるので、先が気になってグイグイと読み進めてしまいました。

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凝りに凝った舞台設定

本作『グラスバードは還らない』の魅力の一つに、舞台が凝りに凝っているということが挙げられます。

本作には透過状態と非透過状態を切り替えることができる特殊なガラスが登場します。

このようなオーバーテクノロジー的なアイテムが描かれるのも本シリーズの特徴ですね。

グラスバード編は、この新技術の研究者や開発に携わった会社の社員などが、無機質な謎のフロアに幽閉され、そこで凄惨な事件が起こっていくというクローズドサークルものです。

研究者や開発担当の社員たちが物語序盤で閉じ込められることになる謎のフロアは世界的な科学技術企業の社長「ヒュー・サンドフォード」の別宅に当たるのですが、これが想像以上に迷路ですごいんですよ。

見取り図を見たときには「なんじゃこの生活しづらそうな空間は!」と思わず笑ってしまいました。

本シリーズの第一作目『ジェリーフィッシュは凍らない』もそうでしたが、本作も舞台がかなり凝っていてとても良いですね!

また、本作の主人公マリアと漣がとある事情でヒューの周辺の捜査を始めるのですが、このヒューの住居兼オフィスに当たる「サンドフォードタワー」の構造もかなり凝っていておもしろいです。

「このエレベータはこの階までは行けるけど、ここから先は乗り換えないといけない」みたいな凝りに凝った舞台設定がミステリーを盛り上げています。

登場人物が覚えづらい

英語の本

本作は登場人物自体はそれほど多くありませんが、ほとんどの人物が最序盤にワーッと一気に登場します。

また、本シリーズの特徴でもありますが、登場人物の大部分がカタカナの名前です。

登場人物を覚えるのが苦手な場合やカタカナ名が苦手な場合はメモを取りながら読むことをおすすめします。

トリックは賛否両論

正直、本作のメイントリックは賛否両論ありそうだと思いました。

現実世界には実在しない科学的アイテムが登場するのが本シリーズの魅力です。

その発想力はおもしろいの一言なのですが、本作に限っては終盤に登場するとあるアイテムがミステリー的に若干反則ぎみなんです。

ただ、ミステリーとしては反則というだけでアイテムとしてはかなりおもしろく、物理的な原理をしっかりと説明してくれているシーンはとても興味深く読みました。

一方、解決編は本当にすばらしいの一言です。

事件の真相がかなり入り組んでいるにもかかわらず、解決編の描写は疾走感にあふれていてとても鮮やか。

正直めちゃくちゃ引き込まれました。

よくぞここまで複雑なことを思いついたな!という爽快な驚きがありましたね。

 

 

終わりに

本作は、終始ハラハラさせられっぱなしで一気読み必至のクローズドサークル・ミステリーです!

一部反則ぎみの展開もありますが、この解決編の爽快感をぜひ一度味わっていただきたいと思いました。

本記事を読んで、市川憂人さんの長編ミステリー小説『グラスバードは還らない』を読んでみたいと思いましたら、ぜひ手に取ってみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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