こんにちは、つみれです。
このたび、辻村深月さんの『冷たい校舎の時は止まる』を読みました。
とある雪の日に8人の高校生たちが無人の高校に閉じ込められるクローズドサークル・ミステリーです。
また、本作は辻村深月さんのデビュー作でもあります。
それでは、さっそく感想を書いていきます。
作品情報
書名:冷たい校舎の時は止まる(講談社文庫)
著者:辻村深月
出版:講談社(2007/8/10)
頁数:(上)608ページ、(下)584ページ
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目次
無人の高校に閉じ込められる青春ミステリー!
私が読んだ動機
学園もののミステリーを読むことになり、本作を再読しようと思いました。
こんな人におすすめ
- クローズドサークルが好き
- 高校生の青春物語を味わいたい
- 若干のホラー要素を楽しみたい
あらすじ・作品説明
雪の降る日、いつも通りに登校した8人の高校生たちは、無人の高校に閉じ込められる。
5時53分で時が止まった不思議な空間で、8人はどうしても思い出せないことがあった。
2ヵ月前の学園祭で飛び降り自殺をしたクラスメイトが誰だったか、ということだ。
実は8人のうちの1人がその自殺したクラスメイトで、その人物が他のメンバーを冷たい校舎に閉じ込めているのではないか・・・。
疑心暗鬼に囚われた8人が一人ずつ校舎から消えていく。
辻村深月さんのデビュー作
『冷たい校舎の時は止まる』は、辻村深月さんのデビュー作です。
デビュー作でありながら、文庫本上下巻で合計1,000ページ超えという長編!
時間に余裕があるときに読むのがおすすめですよ。
また、本作は2004年に第31回メフィスト賞を受賞しています。
ミステリー×ホラー×青春
本作『冷たい校舎の時は止まる』は、下記の3要素が融合した作品です。
- ミステリー要素
- ホラー要素
- 青春要素
「校舎から飛び降りてしまった自殺者は誰なのか」という一つの大きな謎を主軸に展開するミステリー作品となっており、そこに若干のホラー風味が加えられています。
今回、私は再読だったのですが、10年前、最初に読んだときはかなりホラー要素が強めだと感じた記憶があります。
改めて再読してみるとそこまでホラー感を強く感じず、私の記憶の当てにならなさを思い知らされました。
ホラーが苦手な私でも、「ちょっと怖いな」くらいの印象でしたので大抵の人は読むことができるのではないかと思います。
その代わりにかなり強く感じたのが本作の青春要素の濃密さです。
学生たちの青春を鋭く描写
上にも書いた通り、10年振りに本作を再読して強く感じたのが青春要素の濃さ。
メインの高校生8人の心の傷や内面の変化が鋭く描写されていて、全体を通して青春小説感が強めです。
登場人物一人ひとりの抱える悩みを過去のエピソードを絡めてかなり丁寧に掘り下げており、8人誰ひとりとして脇役がいません。
8人それぞれのストーリーをじっくりと読ませる構成なので、一つの作品でありながら複数の青春物語を味わっている気持ちになれますね。
もちろん8人の抱える悩みも、勉学・恋愛・家庭・友人関係などなど十人十色。
高校生が直面しがちな問題を一作のなかで幅広く取り扱っていて、いろいろな青春を楽しめると思います。
もちろん私のようなオッサンでも楽しめましたよ!
辻村深月さんの巧みな青春描写
辻村深月さんは高校生くらいの若者の心の機微をすくいとるのが抜群にうまいんですよ。
本作でもメインキャラ8人の微妙な心の動きをとても丁寧に描いてくれています。
「確かに高校生くらいの頃ってこういうところあるよな~」と納得させられてしまうんですよね。
本作に限らず、辻村深月作品は中学生や高校生などの心理をかなり巧みにすくいとっています。
少年少女の心理や心の機微に鋭く切り込む物語が好きな人は、ぜひ辻村作品を読んでみてくださいね。
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ミステリー要素
本作では、大学受験が間近に迫った雪の降る日、メインキャラの高校生8人が普通に登校してくると、無人状態の学校に閉じ込められてしまいます。
いわゆるクローズドサークル・ミステリーです。
クローズドサークルとは・・・何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱ったミステリー作品。
しかし、本作については「雪の山荘」「嵐の孤島」のようなガチガチのクローズドサークル・ミステリーの印象はありません。
どちらかというと彼ら8人の過去や悩みを掘り下げることに重点を置いています。
「謎解きを楽しむ」というよりも「彼ら8人の物語を楽しむ」側面が強い印象です。
謎のおもしろさ
上で本作は「謎解き要素が薄め」と書きましたが、それは「読者が謎を解く」ことに主眼を置いていないという意味。
『冷たい校舎の時は止まる』にもしっかりと大きな謎があり、それを解明することが物語の目的です。
本作ではメインの8人が、無人の不気味な校舎に閉じ込められるという不思議な現象に遭遇します。
その現象の裏には「誰のどのような思惑があるのか」。これが謎です。
また、この事件の2ヵ月前には、学園祭でクラスメイトが自殺する痛ましい事件がありました。
しかし、校舎に閉じ込められた8人が覚えているのは2ヵ月前に友人の自殺があったという事実のみ。
「自殺者が誰だったか」という肝心なことが8人全員の記憶から消えているという異常な状況なのです。
彼らは、「仲間8人のうちの誰かが自殺者で、その人物がクローズドサークル的な状況を引き起こしているのではないか」という推論にたどり着きます。
すると今度は「8人のうちの誰が死者なのか」という新たな謎が浮上し、彼らは次第に疑心暗鬼にとりつかれていくことになるわけです。
8人それぞれの抱える事情を深掘りしながら、「死者は誰なのか」という大きな謎に迫っていく、というのが本作の大筋ですね。
本作の謎をまとめると下記の通りです。
- 2ヵ月前の学園祭で飛び降り自殺したクラスメイトは誰なのか?
- なぜ8人のメンバーは冷たい校舎に閉じ込められたのか?
- 閉じ込められた8人のなかに自殺者はいるのか?
- 不自然な記憶の欠落は何を意味するのか?
超常現象の絡む物語なので自力での謎解きはかなり難しいものの、これらの謎自体はめちゃくちゃ気になりますね!
ついつい先を知りたくて読み進めてしまう一作です。
冷たい校舎も安全ではない
本作の醍醐味の一つは、無人の校舎に閉じ込められた8人の高校生たちが一人ずつ恐ろしい現象に巻き込まれて消えてしまうところ。
それぞれ自分の過去や悩みと向き合う展開を迎えたあとに、何者かの意思によってマネキンのような姿に変えられてしまうのです。
マネキン化して人が消えていくという不気味な現象によって、残された登場人物たちは冷たい校舎内が決して安全でないことを理解するわけですね。
謎解き要素は低めではあるものの、最初は8人いた仲間が一人ずついなくなっていくというのはクローズドサークル系本格ミステリーの醍醐味でもあります。
ちょっとホラー的で怖い展開ですが、本作の見所と言えるシーンなのでぜひ味わってほしいです。
イレギュラーの「読者への挑戦」
上にも書いた通り、本作は超常現象を扱っているので、純粋なミステリー作品として読むと謎解きが難しいところがあります。
しかし、ミステリー的な趣向も取り入れられていて、その一つが「読者への挑戦」。
読者への挑戦とは・・・解決編の直前で読者に犯人、または真相を問う趣向のこと。
この「読者への挑戦」自体は普通の本格ミステリー作品でもよくある趣向なのですが、本作のものはちょっとオシャレなんですよ。
「学園もの」だからこそのオリジナリティがあふれた形で表現されていて、私は「おー、なるほどこう来たか!」となりましたね。
ここで詳細は書きませんが、ぜひその箇所までたどり着いて辻村深月さんのお茶目でオシャレな「読者への挑戦」を確認してみてくださいね。
最後は爽やか
本作は、基本的に薄気味悪くて暗いトーンを維持しながら物語が進んでいきますが、最終的には温かくて爽やかなラストを迎えます。
ずっと暗めの展開が続いていたのが、ラストで一気に爽やか展開に変わるのも辻村作品の特徴の一つなんです。(違う作品もあります)
このラストで急浮上するかのような爽快感にはカタルシスにも似た感覚があります。
本作ではそれに加えて、序盤からの大きな謎が氷解する気持ちよさもあるので、読後は最高にスッキリしましたね。
『冷たい校舎の時は止まる』の素敵なつぶやき
『冷たい校舎の時は止まる』に関するTwitterのつぶやきのうち、参考になるものや素敵なものをご紹介します。
『冷たい校舎の時は止まる 上』
辻村深月学生特有の閉塞感、学校の中の世界が全てだった浅慮な思考がとてもリアルに描かれています😔
これがデビュー作なんて本当にすごいですね
自殺者は誰なのか、ホストの狙いとは一体…下巻が楽しみです#読了 #読書好きな人と繋がりたい pic.twitter.com/8Oy0SlhGog
— しらたま@読書垢 (@cOak1HT0ts6GoxE) November 9, 2021
冷たい校舎の時は止まる(上)/辻村深月
雪降る冷たい日に校舎に閉じ込められた8人の高校生。
イジメや悩み、辛くて苦しい思い出が交錯しながら物語は進む
ホスト? 自殺者は誰か?
「早く思い出して」
5時53分で止まった時計
謎に包まれながら下巻へと続く。
展開が気になって仕方がありません! pic.twitter.com/2k6XfsMnE8— YONDE TARO (@suekichi1109) September 21, 2021
冷たい校舎の時は止まる
辻村深月下巻の解決編からの怒涛の展開がもうなんていうか息止めて読んでたかも
青春小説だし、推理小説だし、ホラーだしすごいこれ pic.twitter.com/IEDt05tGxt— たかり (@zVucLGy7wgzMnAD) February 4, 2022
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終わりに
『冷たい校舎の時は止まる』は、とある雪の日に8人の高校生たちが無人の高校に閉じ込められるクローズドサークル・ミステリーです。
若干のホラー要素と、濃厚な青春感を味わえ、単なるミステリーにとどまらない贅沢な一作となっています。
本記事を読んで、辻村深月さんの『冷たい校舎の時は止まる』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!
▼辻村深月作品の読む順番について
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
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