こんにちは、つみれです。
三度の飯よりも三国志が好きな私が三国志演義の第三回について語ります。
前回の三国志演義第二回では、後漢の大将軍何進が地方から軍勢を招集し、宦官を庇護する何太后に圧力をかけ、宦官排除をもくろみました。
宦官・・・去勢された官吏のこと。後宮(皇帝用のハーレム)の使用人や皇帝の相談役といった役割をもつ。
しかし、その計画を曹操は一笑に付したのです。何進の計画にはなにか問題があったのでしょうか。
第三回は、何進の方針に対して曹操が意見するところからスタートします。
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目次
魔王董卓の野心と猛将呂布の寝返り!
第三回 温明に議して 董卓 丁原を叱し 金珠を餽りて 李粛 呂布に説く
(議温明董卓叱丁原 餽金珠李粛説呂布)
何進の死
地方から軍勢を呼び寄せ、その軍事力を背景に宦官排除をもくろむ何進に対し、曹操は言います。
元凶となる十常侍(有力な宦官10人で構成される三国志序盤の悪役)のみを除けば問題は解決するのに、地方の軍勢を呼び寄せて事を大きくすれば、必ず計画は露見してしまいます、と。
さらに、鄭泰・盧植などの知識人は、何進が呼び寄せようとしている有力者のなかに、評判の悪い董卓の名が入っているのをみて、必死に何進を諫めます。
しかし、何進は曹操、鄭泰、盧植の諫言に耳を貸さず、ついに地方の有力者に密使を送ってしまいます。
こうなるとこれはかなり大きな動きですから、十常侍側が察知しないはずがありません。
待っていれば排除されてしまう十常侍は、先手必勝とばかりに手を打ちます。このあたりのスピード感は何進の比ではありませんね。
十常侍は、何進の異母妹にして今や皇帝の母の地位にある何太后に助けを求めたのです。
どうか太后さまには、大将軍を宮中にお召しになり、おなだめになってください
『三国志演義(一)』/井波律子 kindle版、位置No. 1270
何太后は、自分が太后の地位を得ることができたのは十常侍のおかげという思いがあるので、恩のある彼らの言う通りに詔を下し、何進を宮中に呼びつけます。
すでに何進の企んだ宦官誅滅の計画は十常侍に筒抜けになっている状況です。
しかし、何進はそれを知っていながら、宮中の何太后のもとに参内しようとします。
これは丸腰で敵の本拠地に乗り込むようなもので、このときの何進の危機意識の低さはもはや驚異的です。
陳琳は口を極めて何進を諫め、参内することの危険性を説きましたが、何進は聞き入れません。
普段から優柔不断なところがある何進ですが、なぜか変な方向にだけ決断力を発揮し、優れた諫言のほとんどをはねつけてしまいます。
結果、十常侍におびき出された形の何進は、ついに嘉徳殿の前で暗殺されてしまいます。
何進は、権謀うずまく政治の中枢で要領よく立ち回るには詰めが甘く、少し素直すぎたのかもしれません。
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宦官虐殺
何進の死を知った部下の袁紹は、弟の袁術(演義では弟。史実では従弟)や、同じく何進の部下の呉匡とともに宮中に突入し、見境なしに宦官に斬りかかります。
ほとんどの宦官が殺されるなか、十常侍の張譲・段珪は、少帝(劉弁、先帝霊帝と何太后の子)・陳留王(劉協、霊帝と側室王美人の子)を連れて命からがら脱出します。しぶとい。
しかし、追手の河南中部掾閔貢が差し迫ると、張譲らはもはやこれまでとばかりに河に身を投げ入水自殺してしまいます。無責任にもほどがある。
結局、政敵の何進を倒した十常侍も、間を置かず何進の部下たちによって滅ぼされてしまいました。
この箇所を読むといつも、このときの十常侍はもう少し後先考えた行動をしたほうがよかったんじゃないかな・・・と思ってしまいます(笑)
何進を勢いに任せて殺してしまったのは、少し行き当たりばったりな行動に見えてしまいますね。
董卓再登場
少帝と陳留王を保護した閔貢は、袁紹・王允らと合流し、洛陽までの帰路を急いでいると、予想外の人物に出くわします。
なんと董卓です。
何進の求めに応じて、涼州から出てきた董卓が、ちょうど洛陽に帰還しようとする少帝・陳留王一行と遭遇するのです。
董卓は娘婿の牛輔を本拠地の涼州に残し、同じく娘婿の謀士李儒を筆頭に多くの配下を引き連れています。
ここで、董卓の配下を紹介しておきます。
武将名 | 説明 |
牛輔 | 董卓の娘婿。涼州陝西で董卓の留守を預かる。極めて臆病な性格。 |
李儒 | 董卓の娘婿。董卓の知恵袋。 |
李傕 | 董卓の配下。董卓四天王の一人とする物語も。郭汜とは幼馴染み。呪術に大ハマりする。 |
郭汜 | 董卓の配下。董卓四天王の一人とする物語も。李傕とは幼馴染み。武勇に秀でる。妻が嫉妬深い。 |
張済 | 董卓の配下。董卓四天王の一人とする物語も。甥は張繍。妻が絶世の美女。 |
樊稠 | 董卓の配下。董卓四天王の一人とする物語も。勇猛な武将だったが・・・。 |
李粛 | 董卓の配下。今回の三国志演義第三回が最大の見せ場。 |
董卓は政権掌握の機会を狙って涼州で力を蓄えていたところ、何進から都合よく招集がかかりました。
ところが実際に洛陽に向かってみれば、すでに何進と十常侍は互いに争って相討ちしていたのです。
さらに少帝とその義弟陳留王まで確保できてしまったのですから、思えば董卓の幸運は相当のものです。
董卓は洛陽までの道すがら、少帝・陳留王の兄弟と会話をするに及んで、とある邪心を抱きます。
董卓、皇帝廃立を提言
董卓は高官たちを招いて酒宴を行います。
その酒宴の席で董卓はいきなり言い放ちます。
今の皇帝は柔弱であり、陳留王の聡明で学問を好み、帝位を受け継ぐにふさわしい人物であるのに、とうてい及ばない。
わしは皇帝を廃して陳留王を立てたいと思うが、大臣諸氏はどう考えるか
『三国志演義(一)』/井波律子 kindle版、位置No. 1389
魔王董卓の本性が少しずつ現れ始めています(笑)
宴席では董卓を恐れる者ばかりだったので、誰も反論しないかと思いきや、招待客のうちの一人が声を張り上げて反論します。
并州刺史の丁原です。丁原も董卓と同様、今は亡き何進の求めに応じて洛陽にやってきた実力者の一人です。
今の天子はまさしく先帝のご嫡男であり、なんの落度もないのに、どうしてわけもなく廃立を論議したりするのか。
おまえは簒奪をもくろんでいるのか
『三国志演義(一)』/井波律子 kindle版、位置No. 1393
董卓は短気ですから、丁原のこの思いがけない反論に怒り狂い、斬って捨てようとします。
しかし、董卓の娘婿李儒が、丁原の後ろに威圧感マックスで控えている偉丈夫の存在に気づき、あわてて董卓を制止します。
董卓の皇帝廃立の提言は、この宴席の場ではいったん引っ込めざるを得なくなりました。
散会後、董卓は、丁原の後ろに控えていた威圧感マックスの男について腹心の李儒に尋ねます。
そして董卓はあの偉丈夫が丁原の義理の息子、猛将呂布であることを知るのです。
董卓の機知を示す逸話
どちらかというと粗野で乱暴者のイメージがつきまとう董卓ですが、彼の機知を示すおもしろいエピソードがあります。
三国志演義では、何進の求めに応じて洛陽に向かった董卓の軍勢は20万とあります。多すぎるだろ(笑)
これはすさまじく水増ししてあり、『九州春秋』(後漢末期の群雄割拠の様子を州ごとに記した書物)という歴史書によると、実はこのときの董卓の軍勢は3000人ほどしかいなかったそうです。
さすがに3000人の兵力では都の人士に圧力をかけることは難しい、と考えた董卓は一計を案じます。
夜陰に乗じて兵の一部を城外に出し、翌日、仰々しく入城させる、ということを連日何度も繰り返したのです。
そうすることで、董卓軍の兵士たちが引きも切らず涼州から駆け付け、どんどん軍勢が強大になっているかのように見せかけたのです。
子供だましのようなトリックですが、これに都の人士はすっかり騙され、董卓に逆らえなくなってしまったのでした。
董卓はそうやって兵力の大きさをごまかしながら、裏で旧何進の軍勢などを吸収する工作を進め、本当に兵力を巨大化させていきます。
呂布の武勇
董卓の邪心に気づいた丁原は、酒宴の翌日、なんと董卓軍を襲撃します。
驚いた董卓は謀臣の李儒とともに丁原軍を迎え撃ちます。
すると例の呂布が化け物じみた武勇を発揮して董卓軍に襲い掛かってくるのです。
ちなみに呂布の得物は方天画戟という長柄の武器で、これが彼のトレードマークです。
武将名 | 武器名 | 説明 |
呂布 | 方天画戟 | 斬撃用の三日月形の刃を側面に、刺突用の矛先を先端部に持ち、斬ることも突くこともできる長柄の武器。 |
董卓・李儒は、戦場を縦横無尽に暴れまわる呂布のすさまじい武威に押され、大敗北してしまいます。
呂布を懐柔
董卓は呂布さえ手に入れてしまえば、自分に逆らう者はいなくなると考え、部下に相談してみると、一人の男が言います。
私は呂布と同郷でありますゆえ、やつが勇敢ではあるが知謀に欠け、利益を見れば義理を忘れてしまうことをよく知っております。
私が三寸不爛の舌を以て呂布を説得し、拱手して降伏させてみせましょう
『三国志演義(一)』/井波律子 kindle版、位置No. 1432
男の名は李粛。李粛は、董卓の所有する名馬「赤兎」を呂布に贈ったのちに説得すれば、味方に付けることができると自信満々に言い放ちます。
董卓は大喜びでゴーサインを出します。
ヘッドハンター李粛はさっそく呂布の陣営に出かけていき、旧交を温めるのもつかの間、伝家の宝刀「赤兎」を呂布に贈ります。
『良禽は木を択んで棲み、賢臣は主を択んで事える(良い鳥は木を選んでとまり、賢明な臣下は主君を選んで仕える)』だ。
機会を逸し、あとになってから悔やんでも間に合わないぞ
『三国志演義(一)』/井波律子 kindle版、位置No. 1469
「良禽択木」。ヘッドハンティング定番の名文句です(笑)
最高の名馬という贈り物と名ヘッドハンター李粛の会心の口説き文句に、呂布の心はいともたやすく傾きます。
呂布は、義父の丁原を裏切るだけでなく、こともあろうに丁原を斬り捨てて、董卓のもとに馳せ参じます。
呂布の裏切りの人生は、ここに幕を開けるのです。
ここに丁原の軍勢も董卓軍に吸収され、いよいよ董卓の兵力も大きくなっていきます。
赤兎馬
三国志で一番有名な馬が、「一日千里を走る」といわれる名馬「赤兎」です。
上でも書きましたが、三国志演義では、呂布への贈り物としてめちゃくちゃかっこよく登場します。
全身、燃える炭のような赤毛で、雑毛は一本もない。鼻先から尾まで長さ一丈、ひづめから頭のてっぺんまで高さ八尺。いななき吼えると、いまにも天に上り海に入るようである
『三国志演義(一)』/井波律子 kindle版、位置No. 1450
これは名馬ですわ・・・。かっこいい・・・。
中国史上で名馬として登場する馬種で、大宛(フェルガナ)で産出した汗血馬という馬の種類があります。
「血のように赤い汗を流して走る」ことから汗血馬の名がつきました。かっこよすぎる。
一説には、赤兎馬はこの汗血馬をイメージしたものと言われていますよ。
今度は袁紹が反発
丁原が倒れ、呂布を味方につけた董卓は邪魔者がいなくなったので、かねてよりの懸案であった皇帝廃立の件を、ふたたび酒宴でぶち上げます。
すると今度は、今は亡き何進の部下であった袁紹が董卓にたてつきます。
董卓はブチ切れ剣を抜くと、袁紹も負けじと剣を抜きます。
両者にらみ合いの状況で、次回に続きます。袁紹の運命や、いかに!?
終わりに
『三国志演義』の第三回について書きました。
第二回までは、劉備・曹操・孫堅の3人の英傑の周辺について書かれていましたが、第三回はそれとは打って変わって悪役側の描写が目立っています。
こういうメリハリ、緩急のつけ方がすばらしいですね。
本記事を読んで少しでも三国志に興味を持っていただけたら幸いです。未読の方はぜひ読んでみてくださいね。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
つみれ
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