三国志演義

  (最終更新日:2020.09.28)

【三国志演義:第二回】督郵の鞭打ちと朝廷の暗闘

こんにちは、つみれです。

三国志大好きな私が三国志演義の第二回について語ります。

前回の三国志演義第一回では、劉備(リュウビ)は、黄巾軍と戦い敗走する官軍の将軍董卓(トウタク)を助けました。

にもかかわらず、董卓は、劉備一行が官職を持たないことを理由に軽視し、適当にあしらったのです。

劉備の義弟張飛(チョウヒ)は董卓の態度に烈火のごとく怒り、董卓をやつをたたっ斬ると怒鳴り出したのでした。

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督郵の鞭打ちと朝廷の暗闘!

督郵の鞭打ちと朝廷の暗闘

第二回 張翼徳(チョウヨクトク) 怒って督郵(トクユウ)を鞭うち 何国舅(カコクキュウ) 宦豎(カンジュ)を誅さんと謀る

(張翼徳怒鞭督郵 何国舅謀誅宦官)

再び黄巾軍と対戦

張宝が妖術を使用

官軍であることを笠に着て傲慢な態度をとる董卓のもとで戦うくらいならと、劉備ら3兄弟は別の官軍の将軍朱儁(シュシュン)のもとに身を寄せます。

朱儁は黄巾軍の将領の一人「地公将軍」張宝(チョウホウ)と交戦中だったので、大喜びで劉備たちを迎え入れます。

さっそく張宝の副将高升(コウショウ)が挑みかかってきますが、張飛がこれをたやすく瞬殺します。

すると、張宝は得意技の妖術を使って反撃してきます。

張宝は馬上で髪をふり乱し剣を小わきにかかえて妖術をつかいはじめた。

みるみるうちに、大風が吹き雷鳴がとどろいて、一すじの黒気が天から降りてくる

<span class="su-quote-cite">『三国志演義(一)』/井波律子 kindle版、位置No. 874</span>

 

黒気のなかから無数の人馬が現れ襲い掛かってきますが、この思いがけない攻撃に朱儁・劉備軍は大恐慌に陥ります。

朱儁は「豚・羊・犬の血を相手に浴びせかければ妖術を封じることができる」として、さっそく関羽(カンウ)、張飛がそれを実行に移します。どこから知ったんだ、その情報。

結果、妖術は破れ、黒気のなかから現れた「魔軍」は紙製の人間や藁製の馬となって地面に落ちていくのでした。

張宝は陽城まで退却しますが、朱儁は陽城に猛攻撃を加えます。

やがて、黄巾軍側の将厳政(ゲンセイ)が張宝を刺し、投降します。

吉川『三国志』鉄門峡の攻防

吉川英治の『三国志』では、この張宝との戦いの描写に少し脚色を加えています。

朱儁・劉備軍は、山地に陣取る張宝を攻撃するのに、鉄門峡(テツモンキョウ)という谷間を通ることになります。

やはり張宝が妖術を使って大風を起こしたりしてくるわけですが、劉備がこの異様な現象の原因を突き止めるのです。

幻術の不思議は、わしには解けている。それは、あの鉄門峡の地形にあるのだ。

あの峡谷には、常に雲霧が立ちこめていて、その気流が、烈風となって、峡門から麓へいつも吹いているのだと思う

<span class="su-quote-cite">『三国志 全12巻完全版』/吉川英治 kindle版、位置No. 3028</span>

 

鉄門峡に霧が発生したり、大風が吹いたりするのは、あくまでその地形に原因があり、妖術ではないということを見抜いたのです。

張宝はそれを妖術ということにして味方を勇気づけ、敵の士気を下げるのに利用したということですね。

本場の『三国志演義』では朱儁が破った妖術を、吉川版では劉備が見破ったというふうに手柄のすり替えを行っているのもおもしろいポイントです。

吉川英治の『三国志』、及びそれをもとにした横山光輝のマンガ『三国志』では、朱儁の手柄や功績はすべて劉備たちの活躍にすり替えられており、朱儁自身はただの凡将に成り下がっています。

張角の死

黄巾軍のナンバーツー張宝が朱儁や劉備と戦っている頃、黄巾のトップ張角(チョウカク)広宗(コウソウ)で官軍の将皇甫嵩(コウホスウ)を相手に抗戦していました。

しかし、なんと張角は戦いの最中に病没してしまいます。

弟の「人公将軍」張梁(チョウリョウ)があとを継いで官軍と戦いましたが、戦巧者の皇甫嵩に7戦して7敗、ついに捕えられて処刑されます。

ちなみに三国志の主役の一人、曹操(ソウソウ)も皇甫嵩と一緒に戦っています。

黄巾の指導者たちの相次ぐ死に反乱も収まるかとおもいきや、次なる戦いが発生します。

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黄巾残党討伐

張角の死後、その仇討ちと称して黄巾の残党が宛城を拠点に大暴れします。

朝廷は張宝討伐の戦いで功績のあった朱儁にその鎮圧を命じます。

賊軍の将は、趙弘(チョウコウ)韓忠(カンチュウ)孫仲(ソンチュウ)の3名です。

ここで朱儁・劉備軍に心強い援軍が合流します。それが三国志のもう一人の主役、孫堅(ソンケン)です。

孫堅はのちのち三国のうちの呉の基礎を築く英傑の一人で、同じく三国の祖となる劉備・曹操から一話遅れての登場となります。

朱儁・劉備・孫堅は黄巾残党の立て籠もる宛城(エンジョウ)を取り囲みます。

上の図は三国志演義の記述をもとに私が描いてみたこの戦いの布陣図です。(ショボイとか言わないで!!(笑))

小競り合いですでに黄巾軍の韓忠は戦死し、残る賊将は趙弘・孫仲のみ。

孫堅が趙弘を、劉備が孫仲をそれぞれ討ち果たし、この戦いにも勝利します。

後漢朝廷の名将朱儁と、のちの三国の祖になった武将二人(劉備・孫堅)に包囲されたのですから、黄巾軍としてはちょっと相手が悪すぎましたね。

ともあれ、黄巾討伐に功績のあった朱儁・皇甫嵩・孫堅は軒並み昇進していきました。

ところが劉備には長いあいだ恩賞の沙汰がなく、待ちぼうけを食った先にやっと得た官職も、安喜(アンキ)の県尉(警察署長)といった低いものでした。

そして赴任先の安喜県で事件が起こるのです。

督郵を鞭打つ

督郵を鞭打つ

赴任先の安喜県で、劉備一行はマジメに職務に励み、民衆からの評判も上々です。

そこに督郵という役人が、劉備たちの仕事ぶりを視察にやってくるのです。

ちなみに私はけっこう長いあいだ、この督郵というのを人名だと勘違いしていました。

督郵とは県の役人の仕事ぶりを監察するのが役目で、カンタンに言うと役人の通信簿をつける係です。

劉備はこの督郵に賄賂を贈らなかったため、督郵は「劉備が民を苦しめている」とウソの報告をしようとします。

これにブチ切れた張飛は、督郵を馬をつなぐ柱に縛りつけて柳の枝でビシバシ打ちまくります。

前回につづいて今回も張飛のブチ切れシーンです。

だいたい張飛がブチ切れると面倒ごとが起きたり問題が大きくなったりしますが、逆に言うと、張飛のおかげで物語のおもしろみが増している一面もあります。

劉備はいちおう張飛を制止しますが、劉備は劉備でやはり督郵のやり方がおもしろくなかったのと、もうこうなったらどうしようもない状況だということで、安喜県尉の仕事をバックレて逃げます

このあたりの逃げ足の速さは、さすが劉備といったところです。

督郵を鞭打ったのは張飛じゃない?

上で紹介した張飛の「督郵を鞭打つ」エピソードですが、記録には別の形で残っています。

『三国志演義』のもととなった陳寿(チンジュ)の歴史書、正史『三国志』では、劉備が督郵を打ったことになっています。その数なんと200打!ボッコボコです。

しかも、その理由は、督郵が劉備の面会希望を断ったというもの。

『三国志演義』のエピソードはものすごく脚色されていることがわかりますね。

小説『三国志演義』としては、善玉の主人公劉備の清廉なイメージをここで崩すわけにはいかず、代わりに張飛が叩いたことにしたのでしょう。

こういう作者の作為から、作者が目指した劉備像・張飛像、『三国志演義』の物語としての姿勢などをうかがい知ることができ、おもしろいですね。

反乱続発

黄巾軍は指導者を失い、急速に勢力が弱まっていきました。

しかし、黄巾の乱のそもそもの原因の後漢朝廷の腐敗自体は全く改善しないどころか、むしろ加速していきます。

黄巾討伐に功績のあった皇甫嵩や朱儁などは、十常侍(ジュウジョウジ)(有力な宦官10人で構成される三国志序盤の悪役)に賄賂を贈らなかったため罷免されてしまいます。

宦官・・・去勢された官吏のことです。後宮(皇帝用のハーレム)の使用人や皇帝の相談役といった役割をもちます。

こういう状況なので、各地で反乱が起こります。

反乱発生の報告は次々と朝廷に送られましたが、霊帝(レイテイ)のもとに届く前に十常侍が握りつぶしてしまいます。

とはいえ、十常侍はさすがにまずいと思ったのか詔勅を偽造して反乱軍を討伐させます。

首謀者(自称した肩書き) 決起場所 討伐
区星(オウセイ)(将軍) 荊州(ケイシュウ)長沙(チョウサ) 孫堅
張挙(チョウキョ)(天子)・張純(チョウジュン)(弥天将軍) 幽州(ユウシュウ)漁陽(ギョヨウ) 幽州(ユウシュウ)(ボク)劉虞(リュウグ)・劉備

区星はオウセイと読みます。難しいですね。

ここでも孫堅と劉備が活躍しています。

外戚と宦官の駆け引き

朝廷周辺に話が移りますが、このあたりの朝廷内部の事情はかなり複雑です。

時の皇帝霊帝は重体となり、跡継ぎを決めなければなりませんでした。

跡継ぎの候補は二人。何皇后(カコウゴウ)(大将軍何進(カシン)の異母妹)との皇子劉弁(リュウベン)と、王美人(オウビジン)(何皇后に嫉妬され毒殺されています)との皇子劉協(リュウキョウ)陳留王(チンリュウオウ))です。

ちなみに王美人の「美人」というのは「見た目が美しい」ということではなく、後宮の女性に与えられた称号です。

正妻を「皇后」、それに次ぐ側室を「貴人」、以下「美人」「宮人」「采女」と続きます。

霊帝は、聡明な劉協を跡継ぎにしたいと考えていました。

そんな霊帝に十常侍の蹇碩(ケンセキ)が入れ知恵をするのです。

もし協さまを立てたいとお思いならば、まず何進を誅殺し、後顧の憂いをお断ちになるべきです

<span class="su-quote-cite">『三国志演義(一)』/井波律子 kindle版、位置No. 1087</span>

 

外戚として力を持っている何進が邪魔だったということもあると思いますが、張譲(チョウジョウ)などの他の十常侍メンバーや、劉協をかわいがっている董太后(トウタイゴウ)なども同じ考えでした。

外戚・・・皇帝の母親、または妃の一族のことです。後漢の時代にはたびたび外戚が権力を持って政権に介入し、政治の腐敗を招いてしまいます。

ところがこの陰謀が何進にばれ、何進は激怒します。陰謀なんてだいたいバレちゃうもんだよね。

そんな折に霊帝が崩御すると、何進は部下の袁紹(エンショウ)などを引き連れて宮中に乗り込み、劉弁を即位させてしまいます。このとき、劉協派の宦官蹇碩は何進一派に斬られています。

何進・袁紹はその余勢を駆って宮中の宦官を全滅させようとしますが、これは何太后(劉弁が即位したので皇后ではなく太后になっています)に反対されます。

ともあれ、劉弁の即位によって状況は一変してしまいました。

それまで董太后よりだった張譲などの十常侍メンバーは何太后に付いた方が得策だと考え、そちら側に寝返ります。

何進は邪魔者の董太后を毒殺(何一族の得意技か?)し、いよいよ何一派の天下が来るかとおもいきや、宦官を滅ぼすか否かで意見が分かれ何進と何太后が対立するようになります。

何進は宦官排除を断行したかったのですが、何太后がうなずかないため、何太后派に圧力をかけるために董卓や丁原(テイゲン)などの地方の有力者を呼んで対抗しようとします。

董卓は黄巾軍との戦いの敗戦で責任を問われて処分されそうになりましたが、賄賂を使って切り抜け、出身地の涼州に舞い戻っています。

以上のように、このあたりの政治情勢はかなり複雑です。

というのも、状況が変わるたびに宦官たちがあっちについたりこっちについたりして、その動きを追うのが難しいからですね。

そして、各地から有力者を集めて何太后に圧力をかけようとした何進・袁紹に対し、曹操はそのアイディアの愚かさをあざ笑います。

なぜ曹操が笑い出したのかについては次回・・・ということで第二回は幕を閉じます。

また、いいところで終わりますねえ(笑)

終わりに

『三国志演義』の第二回について書きました。

まだまだ三国志の序盤ですが、劉備・曹操・孫堅の3人の英雄が揃い、十常侍や董卓などの悪役も登場し、少しずつ盛り上がってきましたね。

本記事を読んで少しでも三国志に興味を持っていただけたらうれしいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

つみれ

▼次回の記事

 

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