ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2021.07.27)

【感想】『黒牢城』/米澤穂信:戦国時代を舞台にした安楽椅子探偵ミステリー!

こんにちは、つみれです。

このたび、米澤穂信(ヨネザワホノブ)さんの『黒牢城(コクロウジョウ)』を読みました。

戦国武将の荒木村重(アラキムラシゲ)が籠城中に直面する事件の謎を、敵将の黒田官兵衛(クロダカンベエ)が牢のなかから解き明かしていく一風変わった安楽椅子探偵ミステリーです。

それでは、さっそく感想を書いていきます。

作品情報
書名:黒牢城

著者:米穂信
出版:KADOKAWA(2021/6/2)
頁数:448ページ

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戦国時代を舞台にした安楽椅子探偵ミステリー!

戦国時代を舞台にした安楽椅子探偵ミステリー

私が読んだ動機

戦国武将の荒木村重が好きなのと、彼が主人公のミステリーという珍しさに惹かれて読みました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 戦国時代を舞台にしたミステリーが読みたい
  • 戦国武将「荒木村重」「黒田官兵衛」が好き
  • 「安楽椅子探偵」もののミステリーが好き

あらすじ・作品説明

織田信長(オダノブナガ)の天下統一事業が軌道に乗り始めるなか、突如として謀反を起こした荒木村重。

 

村重の謀反を翻意させようと、黒田官兵衛は単騎で説得を試みるが、官兵衛は村重の居城有岡城(アリオカジョウ)地下の土牢に幽閉されてしまう。

 

織田軍との交戦が続くなか、村重の周辺でさまざまな謎が発生する。

 

謎解きに行き詰まった村重は、敵ながら稀世の知恵者である黒田官兵衛の頭脳を期待して土牢に向かう。

荒木村重と黒田官兵衛

本作『黒牢城』のメインキャラは、「荒木村重」と「黒田官兵衛」という2名の実在の戦国武将です。

彼らはどんな人物で、二人はどのような関係があったのか下記で少しだけ紹介します。

荒木村重

紅葉の近影

荒木村重はもともと池田氏の家臣でしたが、紆余曲折あって織田信長に仕えるようになります。

村重は信長のもとで頭角を現し、有岡城主として摂津一国の経略を任されます。

知名度こそ羽柴秀吉(ハシバヒデヨシ)明智光秀(アケチミツヒデ)に及ばないものの、村重も彼らに引けを取らない有能な武将で、信長にもその能力を買われていたことがわかりますね。

また茶を愛するなど文化人的な素養もあり、単なる猪武者ではない多才な武将です。

ところが、村重は突如として信長に反旗を翻します。

重用していた村重の突然の造反に信長も驚き、考えを改めるよう説得するために使者を送ります。

この使者が本作のもう一人の主人公、黒田官兵衛です。

黒田官兵衛

地下への階段

黒田官兵衛は播磨の小寺(コデラ)氏に仕えましたが、やがて羽柴秀吉に仕えるようになります。

秀吉のもとでは参謀を務め、その類まれな頭脳で秀吉の天下統一事業を助けました。

そのことから、同じく秀吉の参謀を務めた竹中半兵衛(タケナカハンベエ)重治(シゲハル))と並んで「両兵衛(リョウベエ)」「二兵衛(ニヘエ)」と称されます。

ちなみに「官兵衛」は通称で本名は孝高(ヨシタカ)といい、剃髪後に名乗った如水(ジョスイ)の名でも有名。

秀吉の天下統一が成ったあとは、秀吉からその実力を恐れられ、功績に見合わぬ低い禄高に抑えられてしまいました。それほどの実力者だったわけですね。

官兵衛は村重の謀反を翻意させようと彼を訪ねるものの、成功せず逆に有岡城地下の土牢に幽閉されてしまうところから本作の物語は始まります。

イレギュラーな安楽椅子探偵ミステリー

本作は、イレギュラーな安楽椅子探偵もののミステリーです。

安楽椅子探偵とは、事件現場に赴かず、伝え聞いた情報だけを頼りに推理を展開していくスタイルの探偵です。

古典的なところで探偵役が安楽椅子に座りながら遠くの地で発生した謎を解き明かす作品があることから、この種の探偵が登場するミステリーがこのように名付けられたのでしょう。

本作では織田軍と交戦中の有岡城主荒木村重の周辺で奇怪な謎が次々と発生します。

村重も優秀な武将ですので、謎の真相に近いところまでたどり着くのですが一歩及ばないんです。

村重は家中で一番の知恵者なので周囲に相談できる者がいません。

仕方なく村重は、敵ながら自身を上回る知恵者である黒田官兵衛にこの謎解きを依頼するのです。

官兵衛は村重から話を聞いただけでたちどころに謎を解いていきます。

本作では、土牢に捕らえられている官兵衛が安楽椅子探偵となって謎を解くのです。

すごい!この設定、よく思いついたなあー!

戦国の空気とうまく溶け合った謎の魅力

頭を垂れる稲穂

『黒牢城』でいいなあと思ったのは、謎が魅力的だということです。

本作は戦国時代を舞台にしたミステリーですが、戦国部分とミステリー部分が不自然に分離していないんです。

歴史小説内でキワモノ的に謎解きを扱うのではなく、謎を解くこと自体が戦の成否に関係している等、両者が密接に関係しています。

正直、これはめちゃくちゃよく練られているな!と感心してしまいました。

荒木村重が謎を抱き黒田官兵衛が謎を解くというミステリー的な一連の流れが、戦国時代の風景にうまく溶け込んでいて、全く不自然さを感じさせません。

いかにも戦国武将が直面しそうな謎がテーマになっているのがユニークでとても良かったです!

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4編のあらすじ

火が灯る4つのろうそく

『黒牢城』でメインで描かれる4編のあらすじを簡単に紹介します。

本作は連作短編のような形になっていて、1編につき一つの大きな謎が提示されます。

一冊を通して計4つの謎を解き明かしつつ、荒木村重の有岡城籠城の顛末全体が楽しめるつくりになっていますよ。

漢字四字でまとめられた各編タイトルがオシャレでカッコいいですね。

雪夜灯籠

雪の結晶

荒木村重の配下から織田軍に寝返った武将が現れた。

 

しかし、村重は人質として留めておいたその武将の子・自念(ジネン)を殺さず、牢に繋いでおくことにした。

 

牢は翌日完成予定だったので、それまでは自念を自分の屋敷に留め置き、厳重な見張りをつけて監視させた。

 

翌朝、自念は何者かに殺害されていた。

花影手柄

桜の花を接写

村重の居城有岡城側に突出してきた織田軍の部隊がいた。

 

村重は、客将鈴木孫六(スズキマゴロク)高山大慮(タカヤマダリヨ)の二名とともに夜襲をかける。

 

夜襲はうまくいき、敵の大将の首を挙げる快挙!

 

しかし、大将首を挙げたのが孫六なのか大慮なのかわからず、手柄の所在も曖昧になってしまう。

 

夜襲の真実を詳らかにするため、村重は調査を始める。

遠雷念仏

夕暮れのひまわり

籠城の長期化に悩む荒木村重はとある交渉をするために、僧侶・無辺(ムヘン)に密書を持たせてとある人物に遣わせることにした。

 

有岡の入出城は織田軍に見張られているため、夜陰に乗じて無辺を城外に脱出させる手筈だ。

 

村重は夜を待つために城内の庵に無辺を滞在させ、厳重な警固をつけて彼を護衛させた。

 

ところが警固を破って無辺は何者かに殺害されてしまう。

落日孤影

雷

白昼、軍議に向かう途上で落雷が直撃しとある武将が死亡する。

 

武将の亡骸を検めると、村重は不審なものを発見する。

 

村重は、この武将の死の真相を突き止めるため独自で調査を開始する。

村重と官兵衛の関係がいい

地下洞窟への階段

本作、メインキャラの荒木村重と黒田官兵衛の関係がとてもおもしろいです。

そもそも二人は敵同士であるはずなんですよね。

だから官兵衛はあからさまに敵に利する行動を取れないのですが、それでも村重の持ち込んだ謎が解けたことを示すために、村重に謎解きのヒントだけを与えます。

村重は官兵衛から得たヒントを手掛かりに謎を解いていくという展開を迎えます。

探偵役がササッと謎を解いてしまうのではなく、この一筋縄ではいかない感じが魅力的ですね。

また、村重と官兵衛の関係も決して穏やかではなく、どことなく不穏な感じなんです。(官兵衛からすれば不当に拘束されているので当然ですが)

謎解きを依頼する側と謎を解く側とがここまで険悪なミステリーもなかなか珍しいのではないでしょうか。

ではなぜ官兵衛は村重の抱える謎を解くのでしょうか。

村重の謎を解くことは織田に対する裏切りにあたるし、官兵衛にその義理はないはずですよね。

それでも謎解きを行う官兵衛の不条理な行動・心情にも大注目ですよ!

歴史小説として

やはり戦国時代を舞台にしている作品である以上、歴史小説としておもしろいのか?という視点も大事ですよね。

荒木村重は個人的には大好きな武将ですが、実際はけっこう好みの分かれる人物です。

なぜかというと、荒木村重は織田信長を裏切ったり妻子を捨てて一人戦場から離脱したりと、何かとダーティなイメージがつきまとうんですよ。

本作は従来のダーティな村重像に新しい解釈を試みており、歴史小説ファンでも大いに楽しめる一冊となっています。

 

 

終わりに

『黒牢城』は、謀反の武将荒木村重が籠城中に見舞われる数々の謎を、敵将黒田官兵衛の知恵を借りながら解決していく戦国ミステリー小説です。

敵同士で互いに反目しながらも、謎解きで一時的に協力体制をとる二人の関係が見どころの一冊ですね!

本記事を読んで、米澤穂信さんの戦国ミステリー『黒牢城』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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