ミステリー、サスペンス

  (最終更新日:2020.11.5)

【感想】『迷路館の殺人』/綾辻行人:奇抜すぎる館と作中作の使い方に驚愕!

こんにちは、つみれです。

このたび、綾辻行人さんの『迷路館の殺人』(講談社文庫)を読み終えました。

2016年に一度読んでいるので、今回は再読です。

『迷路館の殺人』は、綾辻行人さんの「館シリーズ」の第三作目にあたる作品で、前作は『水車館の殺人』です。

これも最高におもしろかった・・・!

それではさっそく感想を書いていきます。

作品情報
書名:迷路館の殺人〈新装改訂版〉 (講談社文庫)

著者:綾辻行人
出版: (2009/11/13)
頁数:496ページ

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奇抜な館が舞台の古典的クローズドサークル!

迷路

私が読んだ動機

ブログでクローズドサークルの記事を書いていたら読みたくなりました。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • クローズドサークルが好き
  • 変わった館が舞台のミステリーを楽しみたい
  • 前作『水車館の殺人』の続編が読みたい

綾辻行人さんの「館シリーズ」のなかで私が3番目に好きなのが、本作『迷路館の殺人』。(1番は一作目『十角館の殺人』、2番は五作目『時計館の殺人』です)

まず迷路館の構造がすごい。はっきりいって人が住める館じゃない。館の奇抜さではおそらくシリーズトップクラスだと思います。

それからクローズドサークルものである点も見逃せません。典型的な「館に閉じ込められる系」クローズドサークルです!

クローズドサークル

何らかの事情で外界との往来が断たれた状況、あるいはそうした状況下でおこる事件を扱った作品Wikipedia「クローズド・サークル」

外界との連絡手段が絶たれることも多い。サークル内にいる人物のなかに高確率で犯人がいると思われたり、捜査のプロである警察が事件に関与できない理由づけになったりなど、パズルとしてのミステリーを効果的に演出する。

さらに、かなりおもしろい見立て殺人(童謡や言い伝えなどになぞらえた趣味の悪い殺人のこと)なども盛り込まれています。

ミステリーとしてはかなり具の詰まった感じで、毒殺、密室など盛りだくさんの内容となっています。むしろちょっと凝りすぎなのではないか、と思ってしまうくらい。

ロジック寄りのかなりこってりした本格ミステリーとなっており、そういうのがお好きな方には特におすすめできる一冊といえます。

もちろん、前作『水車館の殺人』を読んで、その続編を読みたいと思っている方にもおすすめですよ~!

あらすじ 

推理小説界で独自の地位を築いてきた作家、宮垣葉太郎はその居館「迷路館」に4人の作家とその他数名の友人を招待した。

しかし、宮垣葉太郎は、客人が来着したその日に自殺してしまう。「遺書」と「遺言が録音されたテープ」を残して。

つみれ
この時点でテンションが上がりまくりだ

 

「テープ」には、宮垣の多額にわたる資産の使い途が録音されていた。

曰く、4人の作家が「迷路館」を舞台とした推理小説を書き、それを他の招待客である3人の審査員が評価する。最優秀作品を書き上げた者に遺産相続権を与える、という。

競作の場となった迷路館は、やがて本物の連続殺人劇の舞台と化す。

つみれ
遺産をめぐる惨劇・・・最高すぎる・・・!

 

館の構造がやばい

綾辻行人さんの「館シリーズ」では、冒頭部、あるいは序盤に、舞台となる館の見取り図が掲載されるのですが、本作の舞台「迷路館」の構造がもうやばすぎるんです。

「迷路館」という名前からも想像がつきますが、訪問者が滞在する部屋は館の周縁部を囲うように存在し、館の中央部は全て迷路という狂気的な構造になっています。

私は見取り図のページを開いた瞬間、あまりのバカバカしい構造に「フフッ」と笑みが漏れました!(笑)

つみれ
人が住める家じゃない

 

見取り図を見たことからくる軽い疲労感と、これからこの迷路館を舞台に悲惨な事件が起きるというワクワク感がないまぜになった複雑な気持ちで読み進めることになります。

この見取り図は一見の価値ありですね!!個人的には館シリーズ屈指のネタ館だと思っています!

ミノタウロスや、アリアドネなどのギリシャ神話の迷路に関する小ネタが物語中に散りばめられ、これらが雰囲気を盛り上げる味付けになっていますが、神話を知らなくても心配はいりません。(私もよく知りません)

本書のなかで神話由来のネタをきちんと説明してくれるので、前知識は一切必要ありませんよ。

それにしても、こんな館に閉じ込められたら絶望感マックスだよな・・・と嬉々として思いました。

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作中作中作!

本作のおもしろいところは他にもあります。

本作の大部分を使って描かれる迷路館での惨劇自体が、「現実で起きた事件を後から推理小説風に書き直した一冊の本」という体裁をとっているのです。

つまり、作中作(作品の中でさらに作品が展開される)、「『迷路館の殺人』という本のなかで『迷路館の殺人』という作品が描かれている」という複雑な構造になっています。

さらに、「あらすじ」にも書きましたが、作中の『迷路館の殺人』のなかで、登場人物である作家たちが推理小説を書くのですから、それは作中作中作ということになり、頭のなかはもう訳がわからなくなってウワー(笑)となります。

小説のなかに一回り小さい小説が、さらにそのなかに一回り小さい小説が、という趣向です。

ロシアのマトリョーシカ人形のような小説になっているのですね。ウワー(笑)

 

 

▼続編を読みたい方は『人形館の殺人』!

 

▼関連記事『十角館の殺人』

 

▼他のクローズドサークルを読みたい方は

【ネタバレあり】すでに読了した方へ

危険!ネタバレあり!

本作、非常におもしろい作品なのですが、フェアかアンフェアか、ということについては意見の分かれるところ。

初読のときにも、これは本当にフェアなミステリーだろうか・・・と思った記憶があります。

しかしただのアンフェアで終わらず、アンフェアっぽさ自体が物語として巧く機能しているというすばらしさもあります。ちょっと書いてみましょう。

かなりネタバレぎみなのでご注意ください!

今後本作を読む予定の方は開かないでくださいね!

ネタバレあり!読了済の人だけクリックorタップしてね

本作がアンフェアだ!と言われてしまいかねない箇所が2つほどあります。

まず1点目。

本作、冒頭に思わず「フフッ」となるほどのすばらしい見取り図が掲載されています。

複数の来訪者が滞在中に使用する館周縁部の各個室と、館中央部に位置する巨大な迷路。

見た瞬間、思考が停止してしまうほどの衝撃的見取り図ですね!

しかし、この見取り図は完全ではないのですね。意図的に欠落させている情報がある。

それが、「隠し通路」の存在。「館シリーズ」を最初から読むと分かるのですが、この奇抜な館を設計した中村青司という人物は、建造した館に隠し通路を仕込むのです。

つまり、隠し通路があるということが織り込み済みのトリックが展開されていく。

本作の途中でもそれが示唆される箇所が確かにあるのですが、それでも読者が存在を想像しえない隠し通路などというものを使われると、そんなんアリ!?という気分になります。

だって、隠し通路って何でもありですもんね。実は密室じゃなかった、とか、実はクローズドサークルじゃなかったというトリックがいくらでも作れてしまう。

だから隠し通路は、本格ミステリーでは「禁じ手」とされることも多い。

それを本作は、「館シリーズ」というシリーズものだから想像できるでしょ、という論法で押し通してくるわけです。

ここをフェアととるかアンフェアととるかは大いに議論の分かれるところだと思います。

 

それから2点目のアンフェアポイント。

(現実事件の、〝推理小説的再現〟……か)『迷路館の殺人』kindle版、位置No. 83

あらすじでも書きましたが、本作は実際に起きた事件を推理小説風に書き直したという構造を持っています。

この「推理小説的再現」というのがクセモノでして、評論家鮫島智生の性別を意図的にぼかす言い訳として使われています。(要するに女性を男性に誤認させる叙述トリック)

これがかなり読者を驚かせてくれるのですが、問題は下記の箇所。

痩身中背。短くした髪に彫りの深い知的な顔立ち。白いスーツでも着こなせば、若い頃は〝美青年〟で通用しただろうなと思わせる『迷路館の殺人』kindle版、位置No. 658

この「美青年で通用しただろうなと思わせる」というのがフェアかどうか非常に微妙な表現で、読者の意識を「鮫島智生=男性」と強烈にミスリードしてくる。これは若干卑怯では・・・と思わないでもありません。

ただ、これが第一の事件の謎に対する答えになっているだけでなく、鮫島に対する告発の意味も含まれてくるというのがすばらしすぎて私は唸りました。

作中作という趣向がここで生きてくる。これ、本当に最高すぎます。今回は再読なので、唸ったのも2回目です。

本作がめちゃくちゃおもしろかったというのも、ひとえにこの仕掛けによるもの。

本当によくこれを思いついたな、と思いました。いやー、すごい作品だ!

終わりに

正直、奇抜すぎる館の構造や、フェアとアンフェアの間の微妙なところをついた物語展開など、賛否が分かれる作品だと思います。

ただ、メイントリックの意図するところのすばらしさは唯一無二のものだと思うんです。

これを味わえるなら多少アンフェア気味でもいいじゃないか、とさえ思えてくるものがありました。

再読でしたが、それでもめちゃくちゃ楽しめるいい作品でした!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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