こんにちは、つみれです。
12月も半ばを過ぎましたので、この1年を振り返って、2020年に読んでおもしろかった本についてまとめたいと思います。
それではさっそく書いていきます。
再読作品は含みません。また、2020年発刊ではないものもあります。
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目次
2020年に読んでおもしろかった本!
『ジェリーフィッシュは凍らない』/市川憂人
1作目は、市川憂人さんのミステリー小説『ジェリーフィッシュは凍らない』。
ミステリーとSFを融合させた新しい読み心地が魅力のクローズドサークル・ミステリーです。
クローズドサークル:外界との往来・接触が断たれた状況のこと。
あるいはその状況下において起こる事件を扱った作品のこと。
クローズドサークルは、「嵐の孤島」「吹雪の山荘」系ミステリーというとイメージしやすいかもしれませんね。
閉ざされた空間のなかで、登場人物たちが一人ずつ殺されていくスリルがたまりません。
- 本格ミステリーを読みたい
- 「そして誰もいなくなった」系のミステリーが好き
- 新感覚のミステリーを味わいたい
時代背景としては、80年代のアメリカを思わせる古き良き時代。
そんな、どこか懐かしさすら感じさせる世界観のなかで、架空のクラゲ型飛行船「ジェリーフィッシュ」が開発され、それが普及しているというSF設定がすばらしい。
そしてクローズドサークルの舞台が、この飛行船「ジェリーフィッシュ」の内部。つまり、飛行船の中でクルーたちが一人ずつ殺されていくスタイルです。
この古臭さと目新しさが同居した独特の雰囲気がなんとも新鮮!
ミステリーとSFが入り混じった新しい緊張感をぜひ味わっていただきたい一冊です。
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作品情報
書名:ジェリーフィッシュは凍らない (創元推理文庫)
著者:市川憂人
出版:東京創元社 (2019/6/28)
頁数:382ページ
『じんかん』/今村翔吾
2作目は、今村翔吾さんの歴史小説『じんかん』。
織田信長と同じ時代に活躍した戦国武将「松永久秀」を主役に据えた歴史ものです。
第163回直木賞候補作
第11回山田風太郎賞受賞作
- 戦国時代の歴史小説が好き
- 松永久秀に興味がある
- 歴史は苦手だけど、読みやすい歴史小説を読んでみたい
松永久秀は能力的には極めて優れた武将ですが、「戦国三大梟雄」の一人に数えられているほどの悪党です(今は再評価されてきていますが)。
とくに彼の行った「三悪」という3つの悪行のインパクトがすさまじい。
- 主家(三好家)乗っ取り
- 室町幕府第13代将軍・足利義輝の暗殺
- 東大寺大仏殿焼き討ち
これだけでも輝かしいほどの悪逆さを誇りますが、さらには最終的に仕えることになる織田信長に対し、二度も謀反を起こすという暴れっぷり(一度は許されたのにもう一回やった)。
どうやっても弁護しようのない松永久秀という奸物に対して、「彼のやった悪事の裏には実はこんな事情があったんだよ」と聖なる光を当てていく物語展開がおもしろいです。
歴史書などからは窺うことのできない松永久秀の人生の空白部分を、作者今村翔吾さんの想像力で補完し、新しい久秀像をかたち作ったまさに「ザ・歴史小説」です。
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作品情報
書名:じんかん
著者:今村翔吾
出版:講談社(2020/5/27)
頁数:514ページ
『曹操 卑劣なる聖人』/王暁磊
3作目は、王暁磊さんの『曹操 卑劣なる聖人』。
三国志好きの私を喜びに打ち震えさせた一作です。
- 三国志が好き
- 曹操(三国志の主役の一人)が好き
- 大長編歴史小説に挑戦したい
日本で三国志小説の決定版といえば、もう吉川英治さんの『三国志』をおいて他にありません。これは先駆者にして不動の王者です。
吉川『三国志』と正面きって戦おうとすると非常に厳しい戦いを強いられますが、これとは視点をズラした形で三国志世界をうまく小説化したのが王暁磊さんの『曹操 卑劣なる聖人』です。
三国志には3人の主役がいます。
- 曹操(魏)
- 孫権(呉)
- 劉備(蜀)
そのうちの劉備を主人公に据えながら3国をバランスよく描いたのが吉川『三国志』。
一方、本作『曹操 卑劣なる聖人』は曹操の周辺を描くことに重点を置き、孫権や劉備を描くシーンは脇役級に少ないという極端な描写の偏りに特徴があります。(私が読んだ3巻までの感想です)
したがって、曹操周辺の描写は数ある三国志小説のなかでも群を抜いて精緻です。
王暁磊さんは「曹操の21世紀の代弁者」を自任するほどの曹操マニアで、三国志歴25年を誇る私ですら知らないようなめちゃくちゃマイナーな人物まで登場させ、私を大いに歓喜させてくれました。
「三国志を初めて読む」場合にはやや難しい作品となりますが、ある程度三国志の知識がある人にとってはこれほどおもしろい三国志小説もなかなかないという名作です。
本作は、全10巻を予定していて、2020年12月現在で4巻まで発刊されています。
私は3巻まで読了済みで、4巻も近々読みたいなと思っています。
続編の発売を待つ楽しみもある三国志です!
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1巻の作品情報
書名:曹操 (1) 卑劣なる聖人 (発行:曹操社、発売:はる書房)
著者:王暁磊(オウギョウライ)
出版: (2019/11/12)
頁数:528ページ
『Another』シリーズ/綾辻行人
4作目はシリーズでの紹介ということで綾辻行人さんの『Another』シリーズ。
ホラーとミステリーを融合させた独特の世界観が魅力のシリーズです。
- ホラーとミステリーをかけ合わせた作品を読みたい
- でもあんまり怖すぎるのは無理
- 青春学園ものが大好き
私はホラーが大の苦手なので、ホラー要素をふくむ本シリーズをこれまで避けてきました。
しかし、2020年9月にシリーズ最新作の『Another 2001』が発売されるというので、それを機に1作目の『Another』から読み始めたところ、これがおもしろすぎて激ハマり(笑)
「夜見山北中学校3年3組」は、クラスメイト、またはその関係者が次々に死んでいく呪われたクラス。
降りかかる〈災厄〉に翻弄されながらも、その不気味で不可思議な〈現象〉に立ち向かっていく中学生たちを描くホラー&ミステリーとなっています。
緻密に設計されたホラー的舞台設定・世界観と、その設定のうえで成り立つミステリー的謎解きとが絶妙のさじ加減で配合されていて、他では味わえない独特の恐怖・スリルを体験できますよ。
下記の発刊順で読むのがおすすめです!
- 『Another』
- 『Another エピソードS』
- 『Another 2001』
私が所属する文学サロン「朋来堂」のYouTubeチャンネルで、『Another 2001』刊行記念で出した動画があります。
私も「つみれ」という名前で登場していますのでぜひご覧ください!
▼綾辻行人さんを褒めちぎる「朋来堂」の動画
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『Another』の作品情報
書名:Another(角川文庫)
著者:綾辻行人
出版:角川書店 (2011/11/25)
頁数:(上)402ページ、(下)384ページ
『いけない』/道尾秀介
5作目は、道尾秀介さんのミステリー連作短編集『いけない』を紹介します。
「普通のミステリーに飽きちゃった!」という場合におすすめの一作ですね!
- 巧みな伏線の妙を味わいたい
- 読み終わってびっくりしたい
- 連作短編が好き
- 何度も繰り返し読むのが好き
下記2点が魅力の一冊です。
- 起こった事件に対して裏事情を何通りにも解釈できる複雑な構成
- 章末に配置された「写真」でさりげなく「真相」を示す目新しさ
本作には、作者が書いた文章から答えが提供されるのでなく、章末の「写真」から読者側が主体的に真相を発見していく「体験型」のおもしろさがあります。
また、これでもか!というほどいろいろな箇所に伏線が張り巡らされていて、一読しただけでは作者道尾さんの意図するところに気づけない可能性すらあります。
読んで楽しいだけでなく、読後にインターネットのネタバレサイトで「答え合わせ」する楽しさまで提供してくれる、エンタメに振り切ったミステリー小説です。
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作品情報
書名:いけない
著者:道尾秀介
出版:文藝春秋
頁数:251ページ
終わりに
今年もいい作品たちに出会えました。
上記作品は、いずれも私が自信をもっておすすめできるおもしろい作品ばかりです。
興味を持たれた場合は、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
本記事は、私が在籍しているブログのオンラインサロン「ヨッセンスクール」の「アドベントカレンダー」という企画で書きました。
12月1日~25日までの間、所属メンバーが毎日リレー形式で記事を公開していくという企画です。
私は12月18日を担当して書きました!
他のメンバーの記事もおもしろいものばかりですのでぜひ読んでみてくださいね!
つみれ
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