いよいよ三国志らしくなる二巻!

歴史

  (最終更新日:2020.10.8)

【感想】『曹操 卑劣なる聖人(二)』/王暁磊:いよいよ黄巾の乱勃発!

こんにちは、つみれです。

このたび、王暁磊(オウギョウライ)さんの『曹操(ソウソウ) 卑劣なる聖人(二)』を読み終えました。

全10巻のうちの2巻目となります!

1巻は曹操の幼年期に始まり、希望に燃えて官途に就く様子などを描いていました。

▼前巻の記事

 

2巻ではいよいよ黄巾の乱(コウキンノラン)(下のほうに説明があります!)が勃発します!

それではさっそく感想を書いていきます。

作品情報
書名:曹操 (2) 卑劣なる聖人 (発行:曹操社、発売:はる書房)

著者:王暁(オウギョウライ)
出版: (2020/1/20)
頁数:560ページ

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いよいよ三国志らしくなる二巻!

いよいよ三国志らしくなる二巻!

私が読んだ動機

前巻がおもしろかったので、継続して読んでいきます。

こんな人におすすめ

チェックポイント
  • 三国志が好き
  • 大長編歴史小説に挑戦したい
  • 三国志中級者くらいの知識があると思う
  • 一巻を読み終わり続きが気になる

26歳から34歳の曹操を描く

一巻は曹操の幼少期から青年期までを描いており、曹操の父の世代が現役で活躍している時代。言ってみれば「三国志前夜」の世界でした。

二巻に入ると、いよいよ曹操も成人し、一般的によく知られた三国志の物語の時代に突入します

三国志を読んだことがある人なら聞きなれた人物名が頻出するようになり、なじみ深さを感じることができる時代です。

厳密に言うと三国時代というのは、「()()(ショク)」の三国が鼎立(並び立った)時代を指します。

しかし三国が並び立った状態から語りはじめると三国それぞれがどのように成立したかわからなくなります。

だから、だいたい三国志の物語はそのちょっと前の時代、後漢の末期から語り始めることになるのです。

逆に言うと、「三国志前夜」にまるまる一巻を費やした本作はよほど丁寧に曹操の人生を描いていると言えますね。

黄巾の乱勃発

二巻の最初のほうで張角(チョウカク)という人物が中心となって「黄巾の乱」という農民反乱が引き起こされます。

よく知られる一般的な三国志の物語では、この黄巾の乱がすでに始まった状態で物語がスタートします。

そしてそれを鎮めるために若き曹操、孫堅(ソンケン)劉備(リュウビ)たちが活躍するという構図で、三国志の主人公格の人物たちをもてはやすのです。簡単に言うと黄巾の乱は主人公たちのデビュー戦です。

曹操、孫堅、劉備は、それぞれ魏・呉・蜀の基礎を作った最重要人物たちです。

ところが本作では、黄巾の乱の描写も一味違います!

普通、黄巾の乱を起こした張角たちは悪役として描かれる(黄巾賊(コウキンゾク))ことが多く、反対に鎮圧する側の曹操、孫堅、劉備は善玉的な描き方をされます。これは勧善懲悪的で非常にわかりやすい構図ですね。

ところが本作は違います。

そもそも、後漢末期は王朝自体が腐敗しており、本作二巻の霊帝(レイテイ)の時代には賄賂や売官(官職を売ること)が横行し、その悪政が民衆を困窮させる・・・そんな時代なのです。

つまり、黄巾の乱には腐敗した政治をなんとかしてやろうという世直しの側面があるのです。

こうなると、黄巾=悪vs朝廷=善という単純な構図では語れなくなってきます。

つまり、正義はどちらにあるのか?という難しい問いに悩みながら曹操は乱の鎮圧を推し進めていくわけですね。

このあたりの曹操の悩みまくる様子を本書は非常にうまく捉えてくれています。

最高におもしろいですね!!

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袁紹との確執

一巻で曹操は、袁紹(エンショウ)という名家の青年と意気投合、お互いを理解し合い、ともに何顒(カギョウ)を救い出したりした仲間でした。

当時は何顒は指名手配犯のようなもので、助けたりかくまったりすること自体が危険だったにもかかわらず、それを二人はやってのけたのです。

しかし、二巻には、そんな曹操と袁紹の仲のわずかな亀裂を感じさせるエピソードが差し挟まれています。

二人の関係は今後も注目すべき事柄の一つですね。楽しみです。

実戦の師

二巻には曹操に実戦のイロハを教える百戦錬磨の武将が登場します。

一巻でも曹操の師匠にあたる人物が多く登場し、曹操を教え導いていくのが本作の特徴の一つでした。

しかしあくまで彼らは机上の師匠。

そんななか、黄巾の乱という実戦の場で朱儁(シュシュン)皇甫嵩(コウホスウ)という師と巡り合うことになります。

朱儁と皇甫嵩はまったくタイプの異なる武将ですが、彼らの優れたところを盗みながら曹操は実戦を通して戦いの呼吸を学習していくのです。

この朱儁と皇甫嵩の描き分けがかなりイイです!二巻のおすすめポイントの一つですね!

ともあれ、一巻に引き続き、二巻でも成長していく魅力的な曹操の姿を見ることができますよ。

挫折

黄巾の乱鎮圧に功績のあった曹操は済南(サイナン)(ショウ)に昇進することになります。

そこで曹操は、不正を行ったり私利私欲をむさぼったりするような官吏をトコトン追及するなど、善政を敷きます。

曹操は自分の正義に基づいて仕事をしていくわけですが、自分がよかれと思って行ったとある事柄が裏目に出てしまい、私欲のない高潔な人物が複数命を落としてしまいます。

これに曹操は落胆し、官職を棄てて郷里に帰ってしまうのです。

通常、三国志の物語では、曹操という人物は自信満々に描かれることが多いですから、この曹操の挫折っぷりは珍しく味わい深いものがあります。

また、そこからどうやって復活していくのか、というところも必見ですね。

本作二巻の時点の曹操は、ずば抜けた素質や才能を感じさせるところはあるものの、まだまだ頼りなさが目立つといった印象で、今後どのようにその才能が開花していくのか非常に楽しみなところです。

二巻のキーマン

いよいよ三国志らしい物語に突入してきた二巻ですが、黄巾の乱前後の時期に活躍する人物として押さえておきたい人物が二人います。

一人は何進(カシン)、もう一人は董卓(トウタク)です。

何進

何進は時の皇帝霊帝の皇后、何皇后(カコウゴウ)の異母兄にあたる人物で、外戚という立場です。

外戚・・・皇帝の母親、または妃の一族のことです。後漢の時代にはたびたび外戚が権力を持って政権に介入し、政治の腐敗を招いてしまいます。

何進はもともと肉屋出身でしたが、異母妹の美しさが皇帝の目に留まり皇后にまでなったことから、自らも外戚として出世していきます。

何進自体は凡人と言っていいくらいの能力しか持ちませんが、彼が謀略うずまく後漢の朝廷内で右往左往しながら、歴史に流されていく様子はなんとも味わい深いです。

董卓

董卓は西涼という地域出身の武官で、黄巾の乱では目立った活躍をすることができなかった人物でした。

三国志では十常侍(ジュウジョウジ)という宦官たちに次いで二番目に登場する立派な悪役で、二巻後半になってようやくその本性を現してきます。

董卓がメインとなって活躍するのはおそらく三巻になるでしょうから、ここではそれほど語ることはありません。

彼の暴虐ぶりを楽しみに三巻を待つことにします(笑)

今後の活躍が気になる人物

『曹操 卑劣なる聖人』二巻に登場したキャラで、今後の活躍が楽しみな人物について書いていきます。

二巻には下のような描写がありました。

「はっはっは……」張り詰めたその場の雰囲気とは裏腹に、ひときわ大きな笑い声が議論を中断した。みなが目を遣れば、広間の隅にいる田豊(デンホウ)蒯越(カイエツ)、それに荀攸(ジュンユウ)である。『曹操 卑劣なる聖人(二)』、p.444

ここでは、このうち、田豊、蒯越について書いてみましょう。

この二人はメインで活躍するシーンは三巻以降になるかと思いますが、その前にちょっとだけ登場するというのがとてもおもしろいのです。

小説『三国志演義』ではどういう活躍をするのかを書いていきますが、折りたたんでありますので見たくない人は開かないでくださいね!

田豊

三国志演義の田豊はどんな人?知りたい人だけクリックorタップしてね

三国志演義での田豊は、のちに袁紹の幕僚となり、その智謀を発揮していきます。

時の皇帝献帝(後漢最後の皇帝)が戦火を避けるため長安を脱出し、洛陽で途方に暮れていたとき、献帝を保護するか否かで迷った人物が二人いました。

それが曹操と袁紹です。二人ともかなり迷います。

悩んだ末に曹操が部下の荀彧(ジュンイク)の勧めもあって献帝を保護すると、田豊は袁紹に対し、曹操を攻撃してでも献帝を奪取すべきです!と提案します。過激ですね!

しかし、結局袁紹は田豊の策を採用しなかったため、曹操が献帝の皇帝としての権威を最大限利用するようになっていきます。

田豊は時勢を見る目を備えた優秀な人物でしたが、その策を袁紹に用いられることのない悲劇的な人物として描かれているんですね。

部下の提案をしっかりと理解しそれを容れる度量を持つ曹操と、部下の提案をうまく用いることのできない器の小さい袁紹という対比を鮮やかに描いた一幕といえますね。

少し付け加えると、献帝というのはもともと逆賊董卓が担ぎ上げて即位した皇帝なので、そんな皇帝の正当性を認められるか!!という立場を貫いたのが袁紹、という見方もできます。

実際に袁紹は劉虞(リュウグ)という別の皇族を担ぎ上げようとしますから。(この劉虞は二巻でも登場していましたね。公孫瓚(コウソンサン)と一緒に反乱鎮圧をしています)

このあたりの事情を、本作がどのように扱ってくれるのか、とても楽しみですね。

蒯越

三国志演義の蒯越はどんな人?知りたい人だけクリックorタップしてね

蒯越は荊州刺史(長官)劉表に仕えた策士です。

演義では、伝国の玉璽(ギョクジ)(皇帝が使うハンコ、政権の正統性を示すスーパーアイテムです)をネコババしようとした孫堅を蔡瑁(サイボウ)と一緒に追い詰めたり、劉備を暗殺しようとする蔡瑁に協力したりと、何かと蔡瑁とコンビを組んで陰謀をめぐらす役割。ちょっと陰湿なイメージですね。

三国志正史におもしろい話が載っています。

劉表は荊州に赴任して間もない頃、服従しない現地の豪族に手を焼いていました。

配下の蒯良(カイリョウ)・蒯越にどうすべきか相談したところ、二人の答えは以下の通りでした。

蒯良「仁愛をもって民衆を大事に扱うべきです」

蒯越「利でもって誘ったうえで従わない者は殺し、残りの者を大事に扱うべきです」

劉表は両方の策をそれぞれ高く評価しますが、最終的には蒯越の策を採用するのです。

目的のためには時に非情の手段をとることも厭わない蒯越の智謀の深さをうかがわせるシーンだと思いますね。

後に曹操が荊州を征服したとき、曹操は「私は荊州を得たことよりも、蒯越を得たことのほうが嬉しい」なんて言いだすくらいです。これは言いすぎだろ(笑)

智者蒯越が本作で今後どのような策謀をめぐらすのか楽しみです!

終わりに

どうしよう!本作、おもしろすぎます!

一巻の感想の時も書きましたが、三国志好きなら絶対に読んで損はしないはずです。

物語は黄巾の乱に突入していよいよ三国志らしくなってきました。

今までの三国志小説にはない切り口でのものの見方なども盛り込まれていて、読み応え抜群ですよ!

2020年3月の時点ではまだ2巻までしか出ていませんが、今後も続きを追っていくつもりです。

▼次巻の記事

 

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

つみれ

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