こんにちは、つみれです。
このたび、彩瀬まるさんの『新しい星』を読みました。
学生時代に合気道部の仲間だった4人の男女が、30代にさしかかって再会し、ほどよい距離感の友情を復活させる連作短編です。
それでは、さっそく感想を書いていきます。
本作は第166回直木賞(2021年下半期)の候補作です。
▼第166回直木賞候補作をまとめています。
作品情報
書名:新しい星
著者:彩瀬まる
出版:文藝春秋
頁数:232ページ
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目次
再会した学生時代の仲間との穏やかな交流を描く!
私が読んだ動機
第166回直木賞候補作(2021年下半期)に選ばれたので読みました。
こんな人におすすめ
- 30代男女の友情の物語を読みたい
- 落ち着いた話が好き
- 読後感のスッキリした物語が好き
- 直木賞候補作を読みたい
あらすじ・作品説明
学生時代に同じ合気道部で苦楽を共にした男女4人が、十数年ぶりに再会する。
4人は大小さまざまな悩みを抱えているが、復活した友情によってそれぞれの悩みとの付き合い方を模索していく。
30代半ばにさしかかった4人のそれぞれの悩みと、心地よい距離感の友情を描く一冊。
学生時代の仲間と再会
本作にはメインの登場人物が4人います。
大学時代に合気道部で苦楽を共にしてきた4人の男女が30代にさしかかり、とある出来事をきっかけに十数年ぶりに再会。
現在の4人は、4人とも人生のちょっとした壁にぶつかってしまっている状況です。
しかし、久しぶりに再会した4人の、学生時代の関係をそのまま解凍したような気心の知れた感じがどこかあたたかい。
この再会によって、それぞれの人生が少しだけいい方向に向かっていく、そんな物語となっています。
4人がそれぞれ悩みを抱えている
上にも書いた通り、本作に登場する主役4人はみんな悩みを抱えています。
30代にさしかかり、それぞれが想定していた人生から少し外れてしまっています。
少なくとも彼ら自身はそう思い込んでいるわけです。
でも、彼ら自身がもともと想定していた「普通」からは外れてしまっていても、このそれぞれの悩みがものすごくリアルなんですよ。
それこそ、そういう悩みがあってこそ「普通」だと言わんばかりに。
読者のなかにも似たような境遇にある人が多くいそうだと思いました。
彼らは「普通」からハミ出たと思っているかもしれないけれど、外から見ると「よくありそうな人生」の範疇なんですよね。
だからこそ、彼らに近い悩みを持っている人には余計に響きそうな物語という印象を受けました。
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4人の距離感のすばらしさ
本作を読んですばらしいと思ったのが、久しぶりに再会したメインキャラ4人の距離感。
近すぎて煩わしかったり、逆に遠すぎて心の支えにならなかったりということがなく、絶妙に心地よい関係性なんですよ。
人間関係のわずらわしさや面倒くささとは無縁の適度で大人な距離感。
学生時代のやんちゃな部分と、年を重ねたことによる落ち着きが絶妙なバランスで配合された心地よさが温かみのある筆致で綴られています。
また、簡単に恋愛関係とか不倫関係に陥らず、4人の適度な距離感が終始維持されている感じが個人的にはとても良かったです。
仲間の存在が悩みを軽くしてくれる
上にも書いた通り、4人とも自分の人生と向き合うときに多少なり心に重みを感じてしまっています。
その重みが、仲間と触れ合う時間によってちょっとだけ軽くなるんです。
心が安らげる場所があるというのは大事なことなんだな、ということを改めて認識させてくれます。
「こういう友達っていいなあ~」と思わせてくれる物語でしたね。
2人だけのときのやり取りもいい
学生時代の仲間4人が集まったときのワイワイした感じもいいのだけれど、そのなかの2人だけでやり取りしている様子などもとても自然で良いんですよ。
心理的に辛い状況にある友人に対して、「どこまでなら踏み込んでも良いのか?」という寄り添う側のバランス感覚の描写が素直にすごい。
相手の負担にならない距離の取り方を自分なりに模索する大人の配慮が微細なタッチで描かれていて思わず感心してしまいました。
正直、本作で扱われているのはかなり微妙で繊細な心情なのですが、それを彩瀬まるさんは非常に丁寧な筆致ですくい取っています。
自分では到底説明できない心の機微を、彩瀬まるさんの絶妙な言葉遣いで解説されているような納得感があって、作家のすごさを改めて感じましたね。
普段読まないジャンルだけど
これは個人的な好みの話ですが、私はミステリー小説や歴史小説を好んで読み、本作のような物語はあまり手に取りません。
それこそ直木賞候補にノミネートされなければおそらく読まなかった作品です。
でも、読み終わってみてまず漏れ出たのが「ああ、いい小説だったなあ」という素直な感想。
「どこが良かった」というのを言葉にしづらいのだけど、「読んで良かった~!」となる、そんな小説でしたね。
私はあまり小説を読んで泣いたりすることはないのですが、本作は鼻がツーンときてしまうくらいに良かったです。
こういう作品と思いがけず出会えることが、賞の候補作をまとめて読むことの醍醐味だと感じましたね。
たまには自分に馴染みのないジャンルの本を読んでみるのもいいものだと改めて思いました。
終わりに
『新しい星』は、学生時代に合気道部の仲間だった4人の男女が、30代にさしかかって再会し友情を復活させる物語です。
どんでん返しのような驚きのある展開があるわけではありませんが、4人の近すぎず遠すぎないほどよい距離感が最高に心地よい、とても落ち着いた物語でした。
本記事を読んで、彩瀬まるさんの『新しい星』がおもしろそうだと思いましたら、ぜひ手に取って読んでみてくださいね!
最後までお読みくださり、ありがとうございます。
つみれ
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