歴史

  (最終更新日:2019.01.26)

【感想】一般向けコーヒー通史本の決定版!『珈琲の世界史』/旦部幸博

あなたはコーヒーが好きですか?

私は大好きです。

朝、仕事に取りかかる前に一杯。
昼の休憩中に一杯。
読書をしながら一杯。

まさに至福のひと時!

ところで、コーヒーが好き!となると、やはり人気のあるカフェの情報だとか、おいしいコーヒー豆は何かだとか、そういうことがだんだん気になってくると思うんです。

私もそういうことが気にならないでもないですが、それらを差し置いてもまず気になったのはコーヒーの歴史。

これは歴史好きの悲しい性と言わざるをえません。

そこで、コーヒー好き、歴史好き、本好きという三つの好みを持つ私の知的探求心を満たしてくれるものはないだろうか!?と思って調べてみたのです。

ありましたよ・・・!

それが今回感想を書いていく旦部幸博『珈琲の世界史』(講談社現代新書)です。

どうでもいいですけど、珈琲って漢字で書くとおいしそうに見えませんか?どうでもいいですけど。

作品情報
書名:珈琲の世界史 (講談社現代新書)

著者:旦部幸博
出版:講談社 (2017/10/18)
頁数:256ページ

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わかりやすいコーヒー通史本

私が読んだ動機

コーヒーが好きで歴史を調べてみたくなったからです。

こんな人におすすめ

チェックポイント

コーヒーが好き

コーヒーの歴史を知りたい

どちらかというと文系寄り

1ページに一回以上は「コーヒー」という文字が登場しているのではないか?というほど、コーヒーだらけの本です。コーヒーがゲシュタルト崩壊します。

コーヒーの発祥について、だとか、コーヒーの伝播の過程について、だとか、時代や事象を限定せず、網羅的にコーヒー史を扱っている1冊。

漠然とコーヒーの歴史を知りたいなぁと思っている人にはうってつけですね。

歴史好きな文系の人向けに書いたと筆者が言っている通り、理系的な知識がなくてもスイスイと読むことができ、親しみやすさは抜群です。

コーヒーとコーヒーノキ

コーヒーの歴史の話に入る前に、本書は、まずコーヒーの基礎知識について一通り解説してくれています。

コーヒーの語源や「珈琲」という漢字をあてた人物に触れたり、コーヒーができるまでの過程に触れたりと、知っているようで知らないコーヒーの基礎について知ることができます。

コーヒー豆というのはコーヒーノキという木から採れます。

早い話が、コーヒーノキになる果実の中に半球形の種子が向かい合わせの形で入っていて、これがコーヒー豆です。

ところで、この「コーヒーノキ」という植物の名前なんですけどね。

この、「ノキ」ってところにそこはかとない不安というか違和感を覚えるんですよ。

この理論でいくと、桜は「サクラノキ」だし、楓は「カエデノキ」ってことになるでしょう?

しかるに、コーヒーだけ「コーヒーノキ」となっているのは命名規則的にけしからんというわけです。

これはいったいぜんたいどういうことなのか?

書きながら気づいたのですが、コーヒーノキをコーヒーと言ってしまうと飲料としてのコーヒーと区別がつかなくなるからですよね。

金のなる木を「カネ」と表すと、非常にややこしいことになりますもんね。

自己解決したので次のテーマにいきましょう。ハハハハ

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コーヒー前史

コーヒーが嗜好品として飲まれるようになったのはなんと15世紀頃だということです。

意外に歴史が浅いことに驚いてしまいますね。

しかし、これはあくまで「史書に現れるコーヒー」という意味で、古代の民族の生活儀礼や伝説などを詳しく見てみると、どうも15世紀よりもはるか以前に人類とコーヒーが接触していたと推測されるようです。

おぉ、こういう話題はワクワクします。ロマンだぜ。

コーヒーや輸入食品を扱うカルディコーヒーファームというお店があります。日本でも全国展開していますね。

この名前の由来となったカルディというヤギ飼いがコーヒーを発見する伝説などが、コーヒー前史として紹介されています。

 

その他、エチオピアのとある部族は、コーヒー豆とバターからつくる「エナジーボール」を兵糧として携帯していたなどという話も登場します。

カフェインの興奮作用とバターのカロリーから気分がハイになり、戦闘時に有効であったと書かれています。ほんとうかよ

それにしてもエナジーボール。なんという強烈で怪しげな名称でしょうか。

これはコーヒー加工品の域を逸脱したネーミングセンスと言わざるをえず、もはやドラゴンボールの必殺技です。

どちらかといえば、大技というよりは普段使いの小技ですかね!何の話だ。

コーヒー発祥、伝播の「物語」

ここから本格的にコーヒーの歴史に関する内容に入っていきます。

コーヒーの発祥地として重要なのがエチオピア、15世紀に入ってコーヒーがいよいよ活躍しはじめる最初の舞台となったのがイエメン

この2つの国はコーヒーの歴史を語るうえでは欠かせないようです。

コーヒーが人間にとって有用な飲み物であると認識されると、瞬く間に世界に広がっていきます。

その過程は本書に詳しく書かれているのですが、著者である旦部氏も言っているとおり、歴史というよりはまさに「物語」。非常におもしろいです。

コーヒー伝播の過程の各国のコーヒー事情も興味深いエピソードばかり。

今でこそ「紅茶の国」として名を馳せるイギリスが、もともとはコーヒー先進国だった話などは、すぐにでも他の人に話して聞かせたくなりますね。

現代でも今なお産地として有名な地域もあれば、色々な要因でコーヒーとは袂を分かった地域もあるようで、さまざまなコーヒーの栄枯盛衰秘話を楽しむことができます。

コーヒーさび病

明るい話だけではありません。

コーヒーノキに感染するさび病という疫病があるそうです。

感染するとコーヒーノキの葉の裏側に赤さびのような斑点が生じることからその名がつきました。

感染したコーヒーノキは枯れ果ててしまうのですが、空気感染するために猛烈ないきおいで広まってしまうのだそうです。おそろしいですね。

19世紀のアジアで猛威をふるい、コーヒー産地として将来有望といわれていたスリランカのコーヒー栽培を壊滅させてしまいます。

スリランカがコーヒー産業から撤退して紅茶の産地になった理由はこういう事情があったと書かれています。こうしてうまれたのがセイロンティーですね。(『珈琲の世界史』p.158)

さび病の蔓延さえなければ、セイロンコーヒーというブランドがあったのかもしれません。幻のコーヒーですねー。

ともあれ、このあたりの疫病との戦いの歴史を知ると、コーヒーのありがたみも一層増してくるというものです。

コーヒーの日本史

本書の後半に、「コーヒーの日本史」と題した章があります。

タイトルの通り、日本のコーヒーの歴史について書かれた箇所ということになります。

まずおもしろいのは、わが国日本のコーヒー文化というのは、どうも独自の進化を遂げたようで、本書では「ガラパゴス島のような」という魅力的な表現をしています

日本人がコーヒーに触れた最初期の記録や、大正から昭和にかけての「カフェー」、「純喫茶」事情などが詳説されています。

やはり、自国の歴史というのはおもしろいです。

紅毛船にて「カウヒイ」といふものを勧む、豆を黒く炒りて粉にし、白糖を和したるものなり、焦げくさくして味ふるに堪ず(大田南畝『蜀山人全集・巻三』より)『珈琲の世界史』p.191

日本人による初のコーヒー飲用体験記として紹介されているのが上の一文です。

コーヒーが焦げくさくてまずい、と言っています(笑)

気持ちはなんとなくわかりますね!

「カウヒイ」と書くと、なんとなくかわいらしい感じです。カウヒイ。

コラム「コーヒーブレイク」

本書の魅力的な特徴といえるのが、コラム「コーヒーブレイク」の存在です。

コーヒーの歴史を語りながら、少し本筋から脇道にそれたような内容がおもしろく、箸休め的に楽しむことができるすばらしいコンテンツです。

それでは、どんなコラムがあるのか少しだけ紹介してみましょう。

  • 動物の●●●から採れる最高級コーヒー(『珈琲の世界史』p.32)
  • コーヒー有害論とグスタフ3世の人体実験(『珈琲の世界史』p.109)
  • 緑の黄金(『珈琲の世界史』p.151)
  • 種無しコーヒーの作り方?(『珈琲の世界史』p.162)

ね?おもしろそうでしょ?

どのコラムもキャッチーで読者の心を鷲づかみにしてくるではありませんか!

終わりに

歴史というと、どうしても政治史を中心に考えてしまいがちですが、このようにあるテーマにしぼって歴史を見てみると意外な発見があるものですね。

ナポレオンやベートーヴェンもコーヒーを愛飲した人物として本書には登場します。

こうしてみると、有名な歴史上の人物もなんだか親しみを感じられるではありませんか。

コーヒーという切り口から歴史を再点検する読書体験、非常におもしろかったです!

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

つみれ

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